モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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バハリさん罵倒され過ぎな気がスル……。


閑話:ある犬の研究

 ハァ~イ、皆さ~ん!

 研究員、バハリのお時間でぇ~す!

 ……という事で、調査拠点エルガド随一の天才科学者、竜人族のバハリさんだぜぇ。

 だが、最近はその事に自信が無くなりつつある。今までは原因不明の縄張り拡大と王域三公の活性化について実地調査を進めていた訳だが、昨今はそれらの謎が解かれつつも、新たな問題が発生しまくっている。

 その中心に居るのが、噛生虫キュリアという寄生生物だ。

 フルフルベビーの亜種に、蝶々とも花びらともつかない羽を生やした、非常に気持ちの悪い見た目をした生き物なのだが、何とこいつ、爵銀龍メル・ゼナの眷属であるという。厚鱗すら貫く牙でモンスターに噛み付き、精気を吸い取り献上する代わりに、メル・ゼナには“棲み処”兼“恒常的な餌場”として機能して貰うのである。寄生生物は基本的に宿主無しでは長期間の生存は望めないからな。

 さらに、牙に体液由来の毒を持っており、噛み傷から打ち込む事で、小型モンスターは即座に死へ至らしめ、大型モンスターは生命力のリミッターを外して寿命を大幅に削って衰弱死させる。この特性により、羽虫程度の大きさながら、その影響力は計り知れず、異常な縄張りの変動と王域三公の活発化の元凶となっている事からも、それが分かるだろう。

 結晶化した死骸とは言え、サンプルを持って来てくれたフィオレーネには感謝しか無いな。

 しかし、多くの事が解明されたと同時に、不可解な点が幾つも浮上している。

 先ず、さっきまでの話を覆す事に為り兼ねないが、“メル・ゼナが本来の宿主ではない可能性が有る”という事。証言元はガレアス提督を含む“城塞高地の生き残り”の人たちのみだが、彼ら曰く「以前現れたメル・ゼナはキュリアを従えていなかった」らしい。

 また、つい先日やって来た薬師のタドリ氏によると、キュリアを従えていないメル・ゼナが出現した頃に王国で流行した疫病は、眼に見えない(もしくは見ても気付かない)程に小さな幼体のキュリアが打ち込んだ毒による物だという。

 一応、中間宿主が人間で、最終宿主であるメル・ゼナと接触する事で既存の姿となり、より大きなモンスターに噛み付き始める――――――と考えれば辻褄は合うが、そうなると何故にメル・ゼナの身体がキュリアの毒で満たされていたのかが気になる。

 寄生生物にとって最終宿主は繁殖と生活の土台で、基本的に害を為す事は有り得ない。死んだらお互いにそれまでだからだ(中間宿主は単なる成長の糧なので遠慮なく殺すのが普通)。どうやって最終宿主と接触するのかも不明であり、分からない事ばかりである。

 ただ、解毒の方法が分かったのは僥倖だった。おかげでキュリアの毒に倒れたフィオレーネの目を覚ます事が出来るからな。顔色も良くなったし、数日中には蘇生するだろう。

 ……誤診で火葬され掛けたと分かったら、ヤバいんじゃないのか、オレ?

 ともかく、知恵を貸してくれたタドリ氏と、材料を集めてくれたザギたちには感謝してもし切れない。貧乏くじを引いちまったジェイには、後で何か奢ってやろう。流石に可哀想だからなぁ……。

 

「フゥ……」

 

 本当に溜息しか出ない。

 あのフィオレーネがぶっ倒れた時はマジで焦ったが、タドリ氏から明かされた疫病の真実と、仮死状態の(・・・・・)フィオレーネに(・・・・・・・)何が起こっていたか(・・・・・・・・・)を知った時は、驚き過ぎて血の気が引いたよ。

 あの毒は感染者を死に至らしめる物ではなく、実は「活き締め」にする為の物だったのだ。

 難しい事は省くが、ようするに“鮮度を保った極上の餌”を捕食者に提供し、“乗り換える”事を目的とした毒だったのである。

 つまり、フィオレーネは幼体が亜成体へと花開く為の供物にされたのだ。

 事実、彼女の体内にはキュリアの幼体と思われる微生物が居たし、彼らにとって毒は薬なのか、物凄い勢いで成長していた。解毒薬が間に合わなければ、フィオレーネの内臓は食い尽くされていただろう。

 これにより、成体のキュリアは人間や小型モンスターなどの“食われる側”の存在に卵を産み付け、毒で活き締めにして大型モンスターに捕食させる事で体内へ侵入し亜成体へと至り、その後に何らかの手段でメル・ゼナ……というか古龍に接触して最終宿主とする、というライフサイクルを送っている事が分かった。

 不謹慎ではあるが、身体を張ってキュリアの生態を解明して見せたフィオレーネには頭が上がらない。

 だが、やはりキュリアと古龍の接触手段が謎のままである。

 そもそも、小型モンスターを大型モンスターが捕食するとも限らないし、むしろ腐肉食(スカベンジャー)や他の小型モンスターに食い散らかされる可能性が高い事を考えると、割とリスキーな繁殖方法でもある。数撃ちゃ当たる理論なのか、それらに食われても問題ないのか。

 そうでないとしたら、せめて大型モンスターを誘因する“何か”が必要だと思うのだが……。

 

「………………」

 

 そんな事をポツポツと考えていたオレの目に、赫いナニカが映った。それはフィオレーネが、メル・ゼナの猛攻に晒された村の子供から貰った、感謝の花束(3本)だ。とても蠱惑的な、甘ったるい匂いがする。嗅いでいるだけで酔ってきそうである。

 

「………………!」

 

 その時、オレの脳裏に嫌な予感が走る。

 

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 

「――――――って、マジかよ!? 嘘だろ、おい!?」

 

 そして、それは現実の物となった。




◆バハリ

 王国調査拠点「エルガド」の天才学者にして、稀代の変人。竜人族でもあり、その長い寿命を研究に充てている。その情熱は人の話を全く聞かない程に強く、情報の新鮮さを大切にしている為、危険地帯に自ら赴きピンチに陥るという、傍迷惑な事を割と何度もやらかしている。その手前勝手で自由奔放な性格から、生真面目なフィオレーネには苦手に思われているようで、叱られたり罵倒されたりする姿がよく見受けられる。とは言え、本気で嫌い合っている訳ではなく、“仲良く喧嘩する”程度の物と思われる。事実、彼を信頼しているような台詞がチラホラと、フィオレーネの会話から聞ける。
 ちなみに、こんな性格ながら食事と睡眠を大切にしているようで、あらゆる意味でマイペースな人物と言える。
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