モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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ギャロップ立花さん好きヤワー。


閑話:ひとり者の不幸

「お早うございます、ガレアスさん!」

 

 今日も今日とて、元気溌剌に挨拶をしてくるチッチェ姫。

 ここ最近は色々と立て込んでいて、塞ぎ込んだり、憔悴している事が多かったものの、フィオレーネが助かる目途が立ったおかげか、昨日辺りからは笑顔が戻り始めている。

 彼女はこのエルガドにとっては、木漏れ日のような存在。光り輝く太陽の如く燃え滾るザギ殿とは違い、ほんのりと人々を照らし、暖かな気持ちにさせてくれる人である。是非とも何時も笑顔でいて欲しい。

 ……やぁ、お早う諸君。私がガレアスだ。役職は提督。このエルガドで陣頭指揮を執る立場にある。

 まぁ、ぶっちゃけ面倒臭いんだけどねぇ。細かい事が割と気になるせいで、他の同期よりも適性があっただけで。

 アルローとかに任せてたら、調査拠点じゃなくて海賊の根城にされそうだからな。お前が若い頃にドヤ顔で「どうだスゲェだろ!」とか言いながら【鮮斧シルドラード】を構えた姿、俺は未だに忘れていないからな。完全にただのヴァイキングだったぞ、貴様。

 

「お早う、チッチェ姫」

 

 とりあえず、俺も挨拶を返しておく。アルローには「お前さんは固いなぁ」とよく言われるが、単に親父の教育のせいで表情筋が固定されてるだけだからね。嫌な物は嫌だし、ムカつけば怒るよ、人間だもの。ただキャラクターイメージってのは大事だから、蔑ろにも出来んし、悩ましい所ではある。

 ま、皆の癒しであるチッチェ姫に怒りの矛先を向けるなんて出来ない――――――と言いたい所だが、前回のクエスト時には思いっ切り苦言を呈しちゃったけどね。あれはキツかったなぁ。

 だって、考えてもみなよ。こんな飴ちゃんあげて頭を撫でたくなる女の子に、「お前は立場もあるし、どうせ役に立たんから引っ込んでろ」なんて言える?

 ……言っちゃったんだよなぁ。大分ガックリ来ましたよ。あの後、自室に帰って独りでしょげてたもん。俺には彼女が親戚の孫にしか思えんのよー。

 しかし、立場があるのは事実なので、しっかりと告げた。甘やかすのは良く無いし、それが癖になって現場にどんどん行かれても困るからな。居る筈の無い狩場で事故死させちゃいましたとか女王陛下に報告した日には、即刻首が飛ぶ。おそらく連帯責任で部下も何人か処刑されるだろう。ルーチカをダシにはしたが、あれは半ば以上本気の発言である。

 だからこそ、クッソ辛いんよー。誰か助けて。

 

「ところで、少し相談があるんですが!」

 

 おーっと、嫌な予感。絶対に無理難題を突き付けて来るぞ、その眩しい笑顔で。姫知っているか、提督は貴女より立場低い。

 

「……どうなされたのかな?」

 

 つーか、チッチェ姫がどうしてもと言うから、こんな上から目線な口調で話しているけど、これ女王陛下に伝わってないよね?

 頼むよ、オボロさん。俺より護衛役であるアンタの言う事の方が信用されるだろうからさ。絶対に……絶対に言うなよ、「ガレアス提督ってチッチェ姫を親戚の孫みたいに扱ってるんだよねぇ~」とか!

 ――――――焦るな、落ち着け、王国騎士は焦らない。慌てず騒がず、落ち着いて皿を数えろ。1、2、3、4……1枚足りない!

 女将さん、すいませーん、アルローがまた1枚皿を割りましたー。バイト代から引いといて下さい。

 

「実は“あの村”を視察したいのですが」

 

 あの村――――――つまり、メル・ゼナに滅ぼされ掛けた、あの寒村か。

 

「まさか、炊き出しに参加するつもりかね?」

「はい! この前のクエストでよく分かりましたが、わたしに狩場は早過ぎます! だから、せめて現場の裏方として役に立ちたいのです!」

 

 いや、狩場に行くのは早いも遅いも無いし、貴女は受付嬢だからね?

 

「もちろん、受付嬢としての仕事もします! それくらい何とでもなります!」

「うーむ……」

 

 まぁ、この子なら出来そうなんだよなぁ。

 あんまり無碍にするのも心苦しいし、昼間の炊き出し限定で参加させるくらいは認めるべきか?

 

「――――――では、1日1回だけなら良しとしよう。それ以上は確実に拠点にも現場にも迷惑が掛かるだろうから、絶対に守るように」

「分かりました!」

 

 ……こんなんだからアルローに「善いお爺ちゃんやってんな」とか言われるんだよ!

 とは言え、認めてしまった物は仕方ない。狩場に行く訳でも無いし、この程度で彼女の笑顔が保たれるのなら、別に良っかー。

 だが、護衛も無しに行かせるのは流石にリスキーだから、暇してるアルローにでも頼むか。ザギ殿は拠点メンバー並みに忙しいし、未だにチッチェ姫を留めておけなかった事を怒ってるもんなぁ……。

 あーあ、早く引退してガーデニングとかしたい。

 

 ――――――“深淵の悪魔”を、確実に滅ぼしてからな。

 

「……という事で頼むぞアルロー」

「まーたそうやって人を扱き使う」

「どうせ暇だろ?」

「失礼にも程があるだろ。まぁ、今日は特に予定は無いけどよ……」

 

 うむうむ、流石は同期のライバル。頼りにしてるよー。

 

「そんじゃあ、夕方頃には帰って来るからよ。ちゃーんとお姫さんを連れてな」

「ああ、頼む。報酬は【エルガド式海鮮尽くし】で」

「へいへい、楽しみにしてるぜー」

 

 そんなこんなでアルローにチッチェ姫を託し、俺は執務に戻る。後で夕飯の下拵えしとかんとなー。とりあえず、ザザミのしゃぶしゃぶとヨロイイシダイの刺身は外せないとして、偶にはカジキマグロの炙り焼きとかも……。

 

「――――――提督! ガレアス提督! ザギは居ませんか!? というか、チッチェ姫は!?」

 

 すると、最近引き籠って徹夜ばかりのバハリが、慌てた様子で調査指揮所に飛び込んで来た。その普段の彼らしからぬ姿に、薬草を生食していたタドリ氏も「カンコーン★!」と驚いている。

 

「どうした、バハリよ。チッチェ姫なら、朝早くにあの村へ炊き出しの手伝いに向かったが?」

「くっ……今すぐ呼び戻して――――――いや、自分で行った方が早いか! ただ、せめてザギさんには来て欲しい!」

「だから、何がどうしてそうなったのだ、バハリよ。1人で焦っていても、どうにもならんぞ。先ずは理由を述べてみよ。話はそれからだ」

「……は、はい! 実は――――――」

 

 そして、一先ず落ち着いたバハリが語り出した内容は、まさしく驚愕の事実であり、

 

 

 

「ガレアスさん……わたしたちは、人間は、存在してはいけないんでしょうか? 生きたいと思うのは間違ってるんでしょうか? 何で……どうして……うぁあああああああああああっ!」

 

 案の定、明け方に再会したチッチェ姫は、クシャクシャに歪んだ顔で号泣する事となった。

 

 ……本当に、辛い。




◆ガレアス提督

 ご存知、調査拠点エルガドの陣頭指揮官たる提督閣下。
 常に威厳に満ちた態度で、物事を冷静に見定めており、その統率能力の高さから、騎士団のみならず、王国全体から絶大な信頼を寄せられている。新米騎士ジェイの憧れの人でもある。
 過去にガイアデルムとメル・ゼナの縄張り争いにより故郷(現在の城塞高地)を滅ぼされており、その実体験によって“深淵の悪魔”はお伽話ではなく実在すると確信し、立場を利用して着々と決戦兵器を建造していた。それがあの色々ヤバ目な大型船である。
 ちなみに、今作では中身は普通のおっさんで、立場上威厳を出しているだけだったりする。ただし、ガイアデルムへの報復も忘れていない。
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