モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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段々と不穏な空気が……。


閑話:プロメテウス

 いよぉ、オレだ、アルローだ。調査拠点エルガドで教官をさせて貰っている、しがないおっさんだよ。

 いやー、それにしてもアレだな……オレ、ガレアスにパシられ過ぎじゃね?

 新人時代は大体囮にされてたし、現役時代は現場に駆り出されてばっかだったし、引退後は新人教育を押し付けられたし、今日はお姫様の子守りだしよ。あいつ、昔からそういう所あるよなぁ。

 まぁ、オレは考えるより先に手が出るタイプだし、適材適所なんだろうけど。もしもオレが提督にやってたら、騎士団じゃなくて海賊団になりそうだもんな。伊達に子供の頃の夢が「海賊王」だった訳じゃねぇよ。

 だから、今日は――――――否、今日も大人しく従ってやるさ。暇だったのは事実だしな。

 ところでお姫様よぉ、

 

「その恰好はどうなんだよ?」

「えっ、駄目ですか? ルーチカには“大変よくお似合いです”って言われたんですが」

「……あいつの言う事を1から10まで真に受けない方が良いと思うぞ?」

 

 少なくとも、猫耳ミニスカメイド服は炊き出しをする恰好ではない。

 つーか、こんな格好で被災地に赴いたら、馬鹿にしに来たって怒られそうだぜ。

 

「とりあえず、着替えて来なさい。ちゃんとした服が船室にあるから」

「はーい」

 

 ……何か姪っ子を相手にしているような気分になるよなぁ、あの子は。あんまりガレアスの事を馬鹿に出来ない気がして来た。

 

「さて、連中の飯の前に、自分の腹ごしらえでもするか」

 

 チッチェ姫がお着替えタイム中なので、オレは自分の飯を用意する事にする。主食はカムラ米を使えばいいとして、おかずは――――――今から釣り上げるのよぉ!

 という事で、オレは野太い釣り竿を海に垂らした。エルガドから王国領土までの海路は少々時間が掛かる。折角ご馳走が眼下を泳いでいるんだから、食わない道理はない。

 

「オラァッ!」

 

 オレは釣りキチアルローだぁ!

 そんなこんなで、釣り続ける事10分。

 

「……よしよし」

 

 中々の釣果だ。これなら豪勢な朝飯になるな。流石に船上で焼くのもアレだから、今回は刺身にするか。

 

「わぁ、凄いですね、アルローさん!」

「お、ちゃんと着替えてきたようだな」

 

 やっぱり給仕(メイド)服は黒のロングスカートに白いエプロンだよな。この恰好なら汚れてもそこまで問題無いし、このまま食事にするか。

 

「美味しいですね!」

「おにぎりは数が限られてるから、おかずで腹を膨らませてくれ」

「……いや、というか、正直おかずだけでお腹いっぱいになりそうですけど?」

「そうか? ……いやー、まぁそうか」

 

 ならず者の胃袋と一緒にしちゃいかんよな。もごもぐもぐ、ガツガツガツ、むっしゃっむっしゃ。

 

「フゥ、食った食った……」

「これなら炊き出しもバッチリですね!」

「そうだな」

 

 炊き出しに限らず、雑用は意外と体力仕事だからな。中腰になりがちだし。頼むから腰を痛めないでくれよ……って、これはオレにも言える事か。気を付けよう。

 さーて、何だかんだでそろそろ港だな。ひもじい思いをしているガキ共もわんさかいるだろうし、腹一杯食わせてやるか。そんで皆笑ってバイバイして、明日を夢見て寝るとしよう。何事も無く終わるのが1番だぜ。

 

 ――――――この時までは、そう思っていたんだがね。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「はいはい、こちらに並んで下さいねー!」

 

 着いて早々に炊き出しですよ!

 ……皆さん、こんにちは、チッチェです!

 色んな人に無理を言って、被災地の村まで支援活動にやって来ました!

 いやぁ、普段は事務仕事ばかりしている分、こうして肉体労働で汗を流すのは心地良いですね。アルロー教官も楽しそうです。彼は案外、子供が好きですからね。ガレアス提督が言ってましたけど、年を取ると子供を可愛がりたくなるんですって。あの笑顔を見ていると、そんな気もしています。

 

「おねえちゃん、ごはんちょうだい」

「あ、ハイ! 今分けますねー」

 

 おっと、ボサッとしている場合じゃ無いですね。こんな痩せた子も居るんだから、元気なわたしはガンガン働きましょう。

 というか、おやおや、この子は――――――、

 

「あなた、あの時フィオレーネに花束をくれた子ですね?」

「うん。わたし、カルア」

「カルアちゃんですか! 良い名前ですね!」

「うん。おとうさんとおかあさんがつけてくれたのー」

「そうなんですねー」

 

 当たり前ですけど、今の彼女にとっては、最早それは当然ではなくなったのです。何せこの子の両親は、メル・ゼナ襲撃時に死んでいるのですから……。

 

「おねえちゃん、あそぼー」

 

 と、ご飯を食べ終えたカルアちゃんが、わたしを遊びに誘ってくれています。

 

「えっと……」

 

 どうしましょう。一応、炊き出しは終わりましたが、この後は瓦礫の片付けが――――――、

 

「ああ、いいいい。流石に力仕事までお姫様には任せられねぇよ。つーか無理だろ。オレたちの事はいいから、その子と遊んでやりな」

「……ありがとうございます!」

 

 うん、許可を貰えたんだから、良いですよね!

 正直、土木作業で役に立てるのか怪しかったですし、同い年くらいの子と遊ぶなんて、今までした事がないから、ちょっと楽しみです!

 

「こっちこっちー」

「あ、待って下さーい!」

 

 ヒラヒラと手の鳴る方へ招くカルアちゃんの後を、わたしは追いかけていきます。スタコラサッサ~♪

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「……やれやれ。やっぱり、何だかんだ言っても、まだまだ子供だねぇ」

「そうッスねー。そんなチッチェ姫も可愛いッス!」

「お前、聞きようによっては犯罪だからな、それ?」

 

 とっとこ走って行くチッチェ姫に現を抜かすガトリンに苦言を呈しつつ、土木作業に戻るオレことアルロー。どっこらよっこい瓦礫をどかしてるけど、一向に終わらねぇなぁ。

 メル・ゼナめ、派手に暴れやがって。壊すのは一瞬でも、直すのは一苦労なんだぞ。それなのに、こうも徹底的に破壊されちゃ、復興もクソもねぇよ。“二度とこの地を踏ませない”とでも言うつもりか。流石は王域三公の頂点にして王者様だよ。

 ……最悪、全員で疎開して貰うしかねぇかもな、クソッタレが。

 

「おーい、アルローさんよーい!」「アルローさん!」

「あん?」

 

 おいおい、どうしてここにバハリが居るんだよ。それもザギまで引き連れて。

 

「何だ、どうしたお前ら?」

「いや、ちょっとした問題が起きてね……」「というか、チッチェ姫は何処です? 一緒じゃないんですか?」

「おい、2人で喋るな。オレは聖人君主様じゃねぇんだよ。バラバラに言われても聞き取れないから、1人ずつ言え」

 

 年寄りの聴力に期待するんじゃありません。

 

「……えっと、じゃあ先ずオレからで。実はフィオレーネが倒れた原因が分かりましてね」

 

 そんな訳で、先にバハリが話し始めたのだが、

 

「あ~ん? そりゃお前、メル・ゼナに毒を打ち込まれたからだろ?」

 

 まるで意味が分からんぞ?

 

「いえ、あの毒は獲物を保存する為の物です。食い扶持が居なければ、本来は潜伏したままです」

「つーとアレか? キュリアの子供が近くにいたって事か?」

 

 確か、新しく来たタドリがそんな事を言ってたからな。アレは卵を産み付ける為の土壌を豊かにする肥料なのだと。

 

「ご明察です。話が早くて助かりますね。……では、一体何時、何処で卵に接触したと思います?」

「………………」

 

 そう言われると、何処で植え付けられたんだ?

 仮にメル・ゼナの1撃を貰った時だとしても、あんなに間を置くのは変な話だしな。

 

「――――――実はね、徹夜明けの早朝に、偶々フィオレーネの持っていた“花束”を見ていたんですよ」

「あのちょっと甘怠い匂いの花か」

「はい。そんで、見ながら考えて、思った訳ですよ。“この花、全然枯れねぇな”って。……で、それに気付いた瞬間、何が起こったと思います?」

「何だよ、勿体付けるなよ。オレはそう言うの苦手だって――――――」

「花に襲われたんですよ。正確には、花びらに擬態していた(・・・・・・・・・・)キュリアの亜成体にね(・・・・・・・・・・)。あの赫い花は苗床であり、獲物に贈られる毒の花(ポリプ)だったって訳ですよ」

「………………!」

 

 おいおい、それってマズくないか!?

 幸い前回の襲撃で焼き払われたのか、それらしい花は何処にも咲いてなかったが、正体がキュリアの繁殖形態なのだとしたら、さっさと摘み取らないと、今度こそ村という村が全滅するぞ!

 

「ええ、ですから、大急ぎで飛んで来た訳です。それで、チッチェ姫は何処に?」

「さっき、カルアって子と遊びに行ったよ。……しゃあねぇ、連れ戻すか」「そうッス!」「お前は働け」「そんなぁ……」

「それが良いですね。その後、あの花が無いか徹底的に調べて、刈り取るべきだと思います」

「よし、そうと決まれば――――――」

「ちょっと待った」

 

 すると、黙って話を聞いていたザギが、何時もとは比べ物にならないくらい、重く低い声で待ったを掛ける。

 

「何だってんだよ、ザギ?」

「チッチェ姫は俺に任せて、他の皆には村を“包囲”して貰えないか?」

「あ? どういうこった?」

「……これは、新大陸の友人から貰った環境生物でね。名を“導蟲”という」

 

 さらに、環境生物用の籠の中の、緑色に発光する不思議な蟲を見せて来た。

 

「こいつは特定の臭いや物質に反応して群がる性質を持っていて、新大陸では文字通り道標として利用しているらしい」

「それが何だってんだ?」

「そして、こいつには俺が……いや、カムラの里が(・・・・・・)最も警戒するモンスター(・・・・・・・・・・・)の臭いを覚えさせている」

「それはつまり、そいつが近くに居るって事か?」

「いや、近くじゃない。ここに居る(・・・・・)。だから、気付かれない内に(・・・・・・・・)逃げ道を塞いで欲しい(・・・・・・・・・・)。奴らは狡猾で残忍だから、手段は選んでいられないんだ。という事で、アルロー教官、耳を貸してくれ」

「お、おう……」

 

 な、何だ……何が始まるってんだ!?

 

 

 

「この村は諦めろ。もう手遅れだ(・・・・・・)。だが、このまま放置しては王国が危うい。だから―――――」

 

 

 

 そして、ザギから耳打ちされた内容は、とても信じ難い物の数々だった。

 嗚呼、やっぱりガレアスの頼みなんて、安請け合いするんじゃなったな……。




◆アルロー教官

 声からして強そうな、筋肉モリモリマッチョマンの教官。見た目こそ厳ついが面倒見は良く、騎士たちからの人気は高い。ガレアス提督がカリスマなら、彼は父性と言った所だろうか。そのガレアス提督とは同郷かつ幼馴染で、昔からの腐れ縁である。性格は正反対だが、昔馴染みだからか、意外とウマは合うらしい。中身の問題かもしれないが。
 ちなみに、得意武器はガンランスで、装備もスキルもガチガチのタンク使用。しかもルーチカと違って手助けもちゃんとしてくれるし、ウツシと違って変にミスって叫喚したりもしない、教官の鑑と言える人物だ。
 今作ではゲーム本編以上に使い走りにされている模様。しかも、今回は人生最大の貧乏くじを引いてしまった……。
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