モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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微笑は無イ。


ユメノバクダン

 所変わって、溶岩洞。

 

「頼むぞ、ベクター!」『ヨカラヌコトヲハジメヨウカーッ!』

 

 とりあえず、ベクターを飛ばして、敵情を見ておく。

 

「何々……エリア12に希少種のリオ夫婦が居て、エリア4ではイージャンがヴェノブロスの群れと家族ごっこ、あのマガイマガドはエリア5にてお昼寝中と。……中々にカオスだな」

「溶岩洞じゃ日常茶飯事だよ。一々驚く事じゃ……ふぁ~あ」

 

 俺の素直な感想に、エンムがふぁーっと欠伸をしながら物申した。前回会った時から思っていたが、顔色が常に悪いし、結構低血圧だったりするんだろうか。だからって狩猟中に気を抜くなと、俺の方が物申したいけど。

 まぁいい。俺が観たいのは、こいつの実力だ。私生活や人間性に興味は無い。どうせ変態だろうし。

 

「何か失礼な事を考えていそうだね」

「事実を述べたまでだ」

 

 チッ、勘の鋭い奴め。

 ちなみに、俺はガルクのナッシュに跨っているが、エンムはバギィの「エンプーサ」に騎乗している。ギリシャ神話の夢魔の名を付けるとは洒落てるな。どう見ても体格的に雄っぽいけど。それともデカいだけの雌なんだろうか?

 いや、そんな事はどうでも宜しい。それよりも、どう調査を進めるかである。

 

「……ヤツカダキの原種も亜種も見当たらないようだが?」

 

 ベクターの情報によれば、今の所はヤツカダキ2種の姿は確認できないらしい。何処かに潜んでいるのだろう。

 

「基本的に奥まった所に居るからね。出て来るのは狩りをする時くらいだよ。そもそも溶岩洞は元々ヤツカダキの生息域じゃなかったからね。百竜夜行の影響で移動してきた一部の個体が居座って、そのまま定着したのさ」

「そうなのか」

「そして、亜種に関しては過去に「ロックラック」や「火の国」周辺で数回、「ドヴァン火山」で1度目撃された態度の珍しい奴でね。本来は溶岩洞処か現大陸出身なのかも妖しい、完全な外来種だよ。故に資料もかなり少ないから、気を付けてねぇ?」

「了解した」

 

 なるほど、ハンターとしての基礎はしっかりと出来ているようだな。情報の有無は勝率、引いては生存率の上昇に繋がる。くれぐれも油断せずに行こうか。

 それにしても、ヤツカダキ亜種か……PVと数少ないフィオレーネwikiによれば、灯腹に爆発性の高いガスを溜め込み、爪の火花を利用して起爆してくるらしい。幼体は「ハゼヒバキ」と別称され、原種と同じく親と連携して襲い掛かってくるという。こっちも爆発するんだろうなぁ、名前的に。

 しかも、今はゲーム的に訪れようのない「ロックラック」や「火の国」出身という、非常に珍しい存在なのだとか。それはあの煉獄で生活出来るだけの実力がある事を意味しており、おそらく苦戦は免れまい。

 一応、装飾品で火耐性は上げて来たが、爆破耐性は付いてないし、何処まで通用するか……。

 

『キチキチキチキチ……』

「……おっと、現れたようだよ」

 

 と、溶岩洞の化け物たちに出遭わぬようエリア1→エリア2と迂回した末に辿り着いたエリア9にて、ヤツカダキを発見した。多量のツケヒバキを連れ歩いている所を見るに、餌を求めて巣穴から出て来たのだろう。

 だが、亜種の姿は無い。俺たちの目的は亜種なので、原種に用は無いのだが――――――、

 

『キシャアアアッ!』

 

 すると、エリア7の方から、巨大な鋏角種が現れた。純白の甲殻を赤黒い糸の無垢で覆った、あの姿。間違いない。ティザー映像でも見た、ヤツカダキ亜種だ。ゾロゾロと脇を固めるのはハゼヒバキだろう。

 

『キキィィィッ!』『キカカカカッ!』

「縄張り争いか……」

 

 さらに、何とそのまま原種と戦い始めてしまった。察するに、流れ者である亜種が、原種から棲み処を奪い取ろうとしているのだと思われる。

 ……こんな化け物が縄張りから溢れるような事が火の国で起きている、という事なのか?

 

「さて、どうしたのもかねぇ、筆頭騎士様?」

「呼び捨てで構わん。お前に様付けされるとか、気持ち悪い」

「酷い言い草。まぁ良いさ。では、フィオレーネ。王国筆頭騎士として、この事態をどう見て、何をするのかな?」

 

 エンムが気怠そうに尋ねて来るが、答えは決まっている。

 

「亜種にはご退陣願おうか!」

「了解したよ。それじゃあ、一狩り行きますかぁ」

『キシャアアアッ!?』

 

 そして、俺たちの外来種退治が始まった。

 

「それよっと!」

 

 エンムが武器を抜刀する。彼の武器は【グレイトアズール改】。予想通りのドスバギィランスである。他にも【眠狗銃槍ララバイト改】【雪族の剣斧【露臥】改】【ドローズヴェロース改】【レムオルニスナイフ改】と言った、ドスバギィ系統のMR武器を取り揃えているようだが、今回は一番使い慣れている得物を担いで来たらしい。ガードを固めて隙を突き眠らせる、下弦の壱らしい戦法だ。

 

『ゴバァアアアッ!』

 

 ヤツカダキ亜種が闖入者(エンム)に火炎を吐く。

 

「効かないねぇ!」

 

 しかし、通じない。鉄壁のガードを貫けないようである。ガード性能とガード強化を積んでいるのだろう。ついでに火耐性も上げているのかもしれない。バギィ一式は火に対して滅茶苦茶に弱いからな。装備を潤沢に用意でき、何時でも付け替えが可能なゲームと違い、手に入る物資が限られる現実では、己の弱点を補うのは当然の事だ。

 

「そい!」

 

 さらに、「デュエルヴァイン」で注目を自分に集中させ、離れられないようにした。ランスは距離を取られると詰めるのが面倒な武器種なので、これにより射程圏内で存分に戦う事が出来る。

 

『ガァッ!』

「フフン!」

 

 その上、前脚の薙ぎ払いを綺麗にジャストガードして、十字払いを決めた。中々に戦い慣れている。次いで放たれた灯腹突進もキッチリガード。連続突きからの薙ぎ払いで大ダメージを与えた。

 凄いな。ここに至るまで、敵の攻撃を全く通していない。反撃も的確に入れている。ハゼヒバキが横槍を入れようとしているが、エンプーサが上手く往なしている為、まるで食らう気配がなかった。これならタンク役を任せても大丈夫だろう。

 

「よし、ならば私は……原種を洗脳-ブレインコントロール!」

『キュカァッ!?』

 

 俺も良い所を見せないとなぁ!

 操竜してよ役目でしょ、って奴である。片手剣は操竜に持ち込み易いからね。

 

「おらぁ! 糸に巻かれて死ぬんだよぉ!」『スパイダァ-ッ!』

『ギカカキキキッ!?』

 

 ヤツカダキの技は隙が大きいが、この糸吐きはそれなりに出が早く、牽制に向いている。これでチマチマダメージを稼いでから強攻撃を叩き込み、大技に繋げるのが理想的だ。

 

「おお、ナイス横槍」

 

 横槍言うなや。

 

「食らえ、火炎放射!」『ボォオオオッ!』

『グガッ!』

 

 よし、往復火炎放射でダウンを取った。後は圧し掛かりを連発してからの……大技!

 

「薙ぎ払えッ!」『ゴガァアアアアアッ!』

 

 どうよ、この見事な操竜捌き。伊達にライズで鍛えてないのよん。それじゃあバイバイ、ヤツカダキ!

 

「フフフ、凄いね。ならば俺も……お眠りぃ~♪」

『クカッ……ZZZzzz』

 

 おお、ダウンした隙に昏睡させたか。やるじゃない。

 

「よいしょっと」

 

 そして、当たり前のように大タル爆弾Gを置くエンム。お前も爆弾魔か。俺も置くけど。睡眠爆破とは分かってるねぇ、君ィ~♪

 

「起爆するかい?」

「そこは譲ってやろう」

「そう。ならば、遠慮なく……お早う~♪」

 

 

 ――――――ゴバァアアアアアアンッ!

 

 

「威力ぅっ!」

 

 こいつ、ボマーを限界まで積んでやがるな。あと、おそらくだが、威力的に跳び竹串の「バクレツキレもち」も食べている。こっちまで吹っ飛ぶかと思ったぞ。

 つーか、「お早う」って。ハンターになって色々とぶっ飛んだな、おい。

 

『グキキキ……!』

「おっと、やらせんよ」

『クキャァッ!?』

「ついでにこれもね」

『グッ……ZZZzzz』

 

 さらに、起きた所に俺のシビレ罠が発動。しかも、エンム特製の昏睡玉が炸裂。ヤツカダキ亜種は再び夢の中へ。

 

「次は私だ!」

 

 

 ――――――ドゴォオオオオオンッ!

 

 

 で、この爆発力である。操竜ダメージも入ってるし、体力は半分切ったんじゃないかねぇ?

 

『ギキキキ……!』

 

 おや、エリア移動か。何処へ行こうと言うのかね?

 

「追い掛けるぞ」「了解だよ~♪」

 

 という事で追撃開始。逃がさないぞー。

 

「……あ?」

 

 だが、エリア7、エリア8と疾走したヤツカダキ亜種は、古龍の骸に程近い位置にある、モンスターの抜け道へ逃げ込んでしまった。

 

「ありゃありゃ。どうするね、フィオレーネ?」

「フム……」

 

 ゲームでは追走不可能だったが、これは現実だ。

 

「進もう。ベクターの報告では、何処に出る気配も無いようだし、分かれ道があるのかもしれん」

「うん、そう言うと思った。前に拾った古い手記にも、そんな感じの事が書いてあったしねぇ~」

 

 危険は大きいが、このまま見す見す逃がす気も無い。地の果てまで追い掛けて、確実にぶち殺してやろう。

 

「よし、行くぞ!」『シャーク!』『………………』

「頼むよ、エンプーサ」『バギィッ!』

 

 こうして俺たちは、ある意味で前人未到の横穴へと足を踏み入れた。

 

「――――――何か、魔法の国に繋がっていそうな場所だな」

 

 そこは、まさに摩訶不思議な空間だった。

 初めこそ普通の石壁だったが、やがて一面が色とりどりの宝石で覆われた煌びやかな物に変わり、地面には淡く輝く鉱石の結晶が雑草のように生え、天井からは虹色の鍾乳石が垂れている。何か耳をすませばに出てきそう。

 そして、割と長い距離を駆け抜けた末に辿り着いたのは、

 

「何だ、これは?」

「遺跡、かなぁ?」

 

 見た事もない、ご立派な地底遺跡だった。




◆鍾乳岩窟

 溶岩洞のエリア8から通じる「なぞのばしょ」。壁面が七色の宝石で構成され、床には淡い光を放つ鉱石の結晶が生え、天井からはラメが入った鍾乳石が垂れる、美しい回廊。
 その先には、誰が築いた物かも分からない、摩訶不思議な地底遺跡が鎮座している。
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