「う~む……」
1個の卵を前に、唸る俺。
やぁ、お早う諸君。謎めいた地底遺跡で太古の火竜:シェルレウスを狩猟して、無事にエルガドへ帰還した府王国筆頭騎士、フィオレーネさんだよ。
……で、この卵はシェルレウスが遺した物であり、他にも4個の合計5個あるのだが、絶滅種の発見と新マップ解放の功績として、その内の1つを授与されたのだ。
だが、貰っておいてなんだが、どうしろってんだよ、こんな物。戦友のエンムは「いらな~い♪」とキッパリ断りやがったし。やっぱり火はダメなのか?
かと言って、俺自身も大分持て余している。オトモは足りているし、何時孵化するかも分からない代物の世話をしろと言われても……。
「という事で、誕生日プレゼントです、姫様」
「ええっ!?」
という事で、丁度良く誕生日を迎えたチッチェ姫に、シェルレウスの卵をプレゼントした。凄い顔してますね、チッチェ姫。
「えっ、いや、あの……何故に?」
「いや、卵の世話とか面倒なので」
「雑な理由!」
「あと、世話するなら「フワフワクイナ」とかの方が良いです」
「恰好良さより可愛さが優先なんですね、分かります(怒)!」
ええ、フィオレーネさんは可愛い物が大好きなんですよ。立場と己のプライド故に公言したがらないけど。
だけど、俺も可愛い物は好きだし、何ならプーギーとかフェニーとかグークとか飼ってみたい所存である。そこら辺はガツガツ行きますよ。今の俺(とフィオレーネさん)に必要なのは、仕事の疲れを癒すアニマルセラピーなのさ。オトモバリアンたちも可愛いけど、もふもふは多ければ多い程良い。
何時か、全てのペットに囲まれて眠るのが、夢なんだぁ~♪
「というか、お母様から直々に授与されたのに要らないって……」
「いや~、まぁ、申し訳ないとは思いますけど、私じゃ持て余すと思うんですよね。本当に申し訳ないですけども!」
「よっぽど要らないんですね……」
「――――――危うく殺され掛けた相手を可愛がれると思います?」
「それを言われると弱いですが」
「じゃあ、よろしくお願いしますね! 私は港の受け入れに行かなければならないので!」
「あっ、ちょっと!?」
後ろでチッチェ姫が「今日のフィオレーネは強引です!」とか言ってるけど、無視だ無視。何せ今日は、
――――――クォォォ~ンンン!
おっと、噂をすれば、海の底から響き渡るような、不思議な音色の汽笛が聞こえてくる。俺は急いで船着き場へ急いだ。辿り着いてみれば、そこには緑と黄色の波打つラインが描かれた交易船が。
「とうっ!」
さらに、舳先から颯爽と舞い降りて来る、ディグニ装備の女商人。フィオレーネさんと良く似た顔立ちだが、生真面目で凛とした表情が多い彼女と違い、威風堂々とした雰囲気を持っている。
「相変わらず躍動的だな、ロンディーネ」
「おおっ、姉上! 今日も今日とて疲れた顔をしているな!」
「黙れ、自称:交易商」
「何を言う! 何処からどう見ても完璧な商人ではないか!」
「……そっちも相変わらずだな、うん」
そう、最強の王国騎士にしてフィオレーネさんの実妹、ロンディーネがやって来たのだ。
……えっ、王国騎士筆頭なのに何で最強なのが妹なのかって?
いや、力では彼女の方が上なんだよ、実は。ただし陣頭指揮には全然向いておらず、次いで実力のあるフィオレーネさんっが
まぁ、見ての通り嘘や誤魔化しが全く出来ない、人の好い奴なのさ。この有様で「完璧な変装だ!」とか言っちゃう辺り、お察しである。商人が何で脚甲だの王国騎士の
しかし、こんな変な奴でも、唯一無二の肉親である事に変わりはない。意外と恥ずかしがり屋で、自分を抑えがちなフィオレーネさんの表情を崩してくれるという意味でも、ロンディーネの存在が如何に大きいかが分かるだろう。
ついでに言えば、彼女の人の好さが、カムラの里との本格的な協力体制を築いたのだから、馬鹿に出来る物ではない。何だかんだで人間は信頼関係が一番重要だからな。
何にしても、ロンディーネは俺にとっても可愛い妹だ。前世では1人っ子だったから、余計にそう思う。今日エルガドに寄港すると聞いて、ついウキウキしちゃったよ。
「ここがエルガドかぁ!」
『何か、思ってたよりボロいニャ~』
『ぐぇ~ん』
と、ロンディーネに続き、ザギと同い年くらいの女性が、オトモアイルーとヴェノブロスの幼体を伴って下船してきた。白髪金眼、背負う「冥笛エンフォーラル」……なるほど、
「メラル!」
「お、ザギか。相変わらずゴツい装備着てんなぁ」
早速、猛き焔ことザギが挨拶する。
そう、この女性はカムラの里が誇る「第二の猛き焔」、メラルだ。狩猟笛の使い手であり、かの百竜夜行の元凶たる雷神龍「百竜ノ淵源ナルハタタヒメ」を、ザギと共に討伐した伝説的なハンターである。
ま、今はロンディーネと世界を巡る交易の旅人なのだが。
一応、名目は船の護衛役だけど、正直ロンディーネ1人で事足りているので、実際は彼女への借金返済の為だったりする。それで良いのか、第二の猛き焔。
あと、何でメイドXシリーズを装備しているのか。カリピストなら、もっと別な防具があっただろうに。装飾品や護石で補ってるのか?
ともかく、今日はフィオレーネさんとロンディーネ、ザギとメラルが再会する、記念すべき日となった訳だ。いやぁ、嬉しいねぇ。
『ぐぇ~ん?』
おや、ヴェノブロス(「リース」というらしい)が俺を見上げてるぞ?
「お手」
『ぐぇ』
「おかわり」
『ぐぇん』
「ブレス」
『ぐぇー☆!』
「ぎぃやぁあああああぉっ!?」
「……何してんですか、姉上」
「いや、つい……」
こ、好奇心は人を殺す――――――って、やっとる場合か!
「そう言えば、今回は何を持って来たんだ?」
「何時もの物に加えて、掘り出し物も幾つか。……それに“とびっきりの物”も持ってきたよ」
“とびっきりの物”か。つまりは“厄介事”だな。聞きたいような、聞きたくないような……。
「まぁ、それは後でするとして、今日は姉上が喜びそうな物を持ってきたぞ!」
まぁ、再会早々に話す事じゃないしね。それで、一体何をプレゼンしてくれるのかな?
「中継地や新大陸へ渡った際に手に入れた、ペットたちだ!」
「おお!」
何とタイムリーな。流石は我が妹よ!
愛しの「プーギー」に「フェニー」、それにあれは「グーク」か。環境生物は……おいおい、フワフワクイナまでいるよ。これは買いだなッ!
「さぁ、商売を始めよう! メラル、何時もの奴を頼むぞ!」
「了解です、ロンディーネさん! は~い、寄ってらっしゃい見てらっしゃ~い♪ 交易のお時間だよ~ん♪」
『おいで下さいニャ~♪』『ぐぇぇ~ん♪』
そして、笛の音と共に交易が本格的に始まった。……エンフォーラルを客寄せに使うなよ。
◆ロンディーネ
カムラの里に訪れし謎多き(笑)交易商。その正体は最強の王国騎士にして、フィオレーネの実妹。どう見てもバレバレだし、何なら皆にもバッチリ露見してるけど、気にしてはいけない。ただし、毎回律儀に交易品を持って来るし、何より本人が商魂に目覚め始めているので、これはこれで悪くないのかも。
実直で凛としている姉と違い、威風堂々かつ目立ちたがりな一面がある。カメラを向けた時の反応が顕著。「これで良いかな!?」じゃないんだわ。
得意武器はスラッシュアックスで、次点が太刀。ライズ時代は太刀使いだと勘違いしていた人も多い筈。だって「アオアシラを一太刀で仕留めた」って言ったじゃん……。
ちなみに、この世界の彼女は本格的に交易商として世界を旅しており、カムラの里とエルガドの中継役は、特命騎士たるセルバジーナとラパーチェが担っている。旅の相棒は「第二の猛き焔」ことメラル。色々と謎めいた人外的な存在である彼女を受け入れている辺り、懐の大きさは大海原な模様。