「未知の樹海」。
名前通り未知なる樹海で、末端の一部が「水没林」や「原生林」として狩場に設定されている以外、全くと言って良い程に手付かずのフィールドであり、全貌は定かではない。その広さ故に多種多様なモンスターが棲息し、時には古龍さえ出現するという。
また、何時誰が建てたのかも分からない遺跡の残骸が散在しており、踏破不可能に近い広大さとも相俟って、謎が謎を呼ぶ狩猟場となっている。
そんな未開の地に、俺たちは向かっている。
……やぁ、久しいな諸君。俺だ、ゆるふわ大好きフィオレーネさんだ。
今回は未知の樹海を調査する為、ジャンボ村へ訪れている。同行者はザギ、エンム、タドリ氏、メラル、それからロンディーネの5名である。俺たちが現地調査をして、タドリ氏が究明する感じだ。頭も腕も良いエンムは便利屋のような役割となるだろう。
調べる内容としては、キュリアの動向と発生の原因である。少なくとも、樹海の何処かにあるであろう“花畑”は確実に排除しなければならない。開花を許せば、キュリアの大量発生に繋がるからな。
「……ちなみに、キュリアの花ってどういう形なんだ?」
しかし、俺はその花の姿形をまだ知らない。チッチェ姫に聞いても答えてくれないし、ガレアス提督たちも口を噤んでいる。何でだろう?
「さぁねぇ? 俺も又聞きしただけだから、よく分からないな。ただ、毒々しいくらいに真っ赤な花らしいよ」
「そうか……」
良かったー、仲間外れがもう1人居て。これで俺だけ知らなかったら、思わず泣いちゃう所だったよ。心の中でだけど。
「ちなみに、君はジャンボ村に留守番してろって、ガレアス提督が伝えるように言ってたよ」
「えっ、何で?」
「知らないよ。……まぁ、村の護衛をしろって事じゃない? とりあえず、タドリ氏と仲良くやってて頂戴な」
「………………」
えー、何それ、やな感じぃー。
「……いってらっしゃーい」
「俺に八つ当たりされてもねぇ? まぁまぁ、暇を持て余さない程度には、成果を上げて戻って来るよ。それじゃあねぇ~♪」
「留守を頼みますよ、姉上!」
「「いってきまーす」」
だが、文句を言っても仕方ないし、ニヤ付くエンムたちを見送るしかなかった。ま、エンムの事だから、あんな調子でも有言実行してくれるだろう。
――――――そう、逆に考えるんだ、タドリ氏と仲良くなっちゃえばいいさ、と。
よくよく考えれば、客人であるタドリ氏とロクに話していない。せっかく目の前にCV社長が居るんだから、この機会に色々と聞いてみよう。人が好い性格のようだし、酒の肴に話を振れば、ポロっと秘密を零してくれるかもしれない。この人、PVで見る限りでも重要人物っぽいしな。
「不束者ですが、宜しくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ。……お互い暇を持て余さないよう、手を尽くしましょう」
うんうん、好い人やな。
「ちなみに、お昼はどうします?」
「そうですねぇ……薬草でも食べますか?」
「……生で?」
「はい」
いや、生ならビールの方がマシだわ。不味い飯を嬉々として勧めるとか、ヨーダかお前は。人は良いけど、竜人族でもある、という事だろう。バハリといいタドリ氏といい、そういう星の下に生まれる運命なのかね。前々からバハリが彼に何やら世話を焼いていたが、こういう事か。
ちなみに、俺は発泡酒が大嫌いである。あの苦みが駄目なのよ。
どちらかと言うと、苺酒とかの果実酒やサワー系が好きだ。生前は“酒の趣味が乙女チック”と揶揄されていたが、今はフィオレーネだから問題あるまい。この人がエールだのビールだのを一気飲みする姿なんて想像付かないし……。
「――――――折角だから、ジャンボ村の酒場で食べましょう。住民と仲良くなる、良い機会だと思いますよ」
「それもそうですね。それでは、参りましょうか」
……よし、これでちゃんとした料理を食べられるな!
◆◆◆◆◆◆
こんにちは、タドリです。
元は「ツキトの都」にて「ミカド」に仕える家臣の1人でしたが、故郷の崩壊と共に放浪の身となり、各地を転々としながら薬師として働いてきました。訪れた災厄を前に何も出来なかった、誰も助ける事の叶わなかった、当時の自分を戒める為――――――と、己に言い聞かせ、現実から目を背け、逃げて、逃げて、逃げ延びて、今日まで生きてきたのです。姫様を託され、見事に彼女の笑顔を育ませた、我が友に比べて、何と小さい事か。
……まぁ、今は心友からの言伝で、少しは折り合いが付きましたが。
そんな事より、今は昼食です。折角フィオレーネ殿から誘いを受けたのだから、しっかりと答えるのが礼儀でしょう。
しかし、辺境の村とは思えぬ程に賑やかですね。今まで色々な街を巡り、酒場にも立ち寄った事もありますが、ここの活気は都市に勝るとも劣りません。看板娘さんも元気で良いですね。……眼の下に隈が寄っているように見えますが、空元気じゃないですよね?
「さて、何を頼みましょうか、タドリ殿」
フィオレーネ殿が、メニュー表を差し出しながら言います。
「そうですね……では、この「サシミ定食」にしますか」
こう見えて、結構魚が好きなんですよ。特に「トロサシミウオ」のお刺身は至高の一品です。ココット村の村長さんに勧められて食べましたが、未だに味を忘れられませんね。
――――――えっ、普段は道草(生)を食ってる癖に、料理の味を語るなって?
それはそれ、これはこれです。普段は面倒だから端折っているだけなのですよ。食べる時は食べます。
「なら、私は「おススメ★ジャンボ盛り」にしますかね。すいませーん、注文いいですか?」
「はーい! 只今向かいまーす!」
おお、見掛けによらず食べますね、フィオレーネ殿。ま、ルーチカ殿と同じく、あまり指摘しない方が良いのでしょうが。
「お待ちどうさまでーす!」
「「おお……!」」
そんなこんなで待つ事暫し、料理が運ばれてきました。
私のサシミ定食は、想像通りの見た目。トロトロに霜降りの乗ったお刺身が洒落たお皿に整然と並べられ、木のお椀一杯に盛り付けられたご飯がホカホカと湯気を上げ、海老と蟹を出汁にした海鮮スープが香ばしい匂いを漂わせています。
一方のフィオレーネ殿が注文したジャンボ盛りは――――――何と言うか、凄いです。とにかくデカい、説明不要。それ、本当に食べ切れるんですか?
と、ともかく、頂きましょう。
「うん……」
チャッカツオの醤油に軽く浸した、トロサシミウオの刺し身……実にご飯に合う。口の中で身が蕩け、白米と絡み合い、絶妙な味わいを手供してくれます。思わず次が欲しくなりますね。
ですが、ここで掻っ込んで勿体ない。次はスープを頂きましょう。
「はぁ……」
海の恵みが、胃袋に染み渡りますねぇ。ユクモ村やカムラの里と交易をしているだけあって、上質な味噌を使っています。故郷の物とはまた違いますが、これはこれで心を和ませてくれますね。とても温まります。
「もぐもぐもぐ……ごっきゅん。旨い!」
……リスみたいに食べますね、フィオレーネ殿。普段との差が凄まじいですが、これはこれで良いのかもしれませんねぇ?
というか、もう半分平らげていますよ。勢いが凄い……。
「……タドリ殿は食べ方も上品ですね」
「ええ、過去の嗜みです」
「というと、何処かの国に仕えていたのですか?」
「はい。今はもう、ありませんが……」
「あっ……すいません、不躾な事を……」
「いえいえ、別に隠している訳ではありませんから、お気になさらず」
「では、どんどん聞かせて下さい!」
「意外とグイグイ来ますね」
――――――中々に面白い人ですね、この人も。
何時もの言動から生真面目で融通が利かない方かと思いましたが、妹君からペットを大量に購入したりと案外とユーモアもあるようですし、やはり面と向かって話してみないと分からない事もありますね。
その後、私たちは食後の甘味も楽しみつつ、会話に花を咲かせたのでした。
◆ジャンボ村
「モンスターハンター2」の拠点である、若き竜人族(後の村長)の開拓者が興した村。ドンドルマより遥か東の辺境、テロス密林に程近い場所に存在する。村長の意向により、ハンターを中心として村造りが行われている。その性質上、“第2のドンドルマになるのではないか”と言われているが、残念ながらこの世界線では3番目である。
ちなみに、ユクモ村やカムラの里とも交流があり、村唯一の酒場でも頼めば和食を頂ける。
最近、謎の赫い羽虫ことキュリアが出現するようになり、その調査としてエルガドから騎士たちが派遣された。果たして、原因究明は成るか……?