モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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まだまだ続くよトーマス!


閑話:断食芸人

「デ、デカい……!」

 

 ナニコレ、おっきい(全長約25メートル)♪

 ……って、ふざけてる場合じゃないな。こいつはフィオレーネやザギが取り逃した、強力かつ狡猾な個体である。オロミドロやガランゴルムを手玉に取り、ハンターの操竜攻撃にすら対処出来る知能は伊達じゃない。油断せずに行こう。

 

『………………』

「「ん……?」」

 

 しかし、歴戦のアンジャナフは、こちらが武器を構えているにも関わらず、咆哮すらせずに沈黙し、

 

『グルフゥ……ッ!』

 

 何と即座に踵を返して「エリア11」の方へ引っ込んでいくではないか。

 

「我々など、相手をする価値もないとでも言うつもりかね!?」

「うーん……」

 

 いや、何か相手をするのが面倒だから逃げ出したようにも見えるけどな。やっぱり、あのアンジャナフ、かなりの慎重派だね。

 

「どうする、追い掛ける?」

「もちろんだ! あそこまであから様に避けられては、こちらも虫の居所が悪いしな!」

「血気盛んだねぇ……」

 

 これだから職業:ハンターって奴は。俺もだけど。

 

「それに、どちらにしても「未知の樹海」を調査せねばならない。現状、行方不明の少年も見付かっていないし、このまま「水没林」ルートで進行しよう」

「了解」

 

 「水没林」から「未知の樹海」に入るには、奥地である「エリア12」か「エリア13」の隠し通路から向かわねばならない。ここで言う“隠し”とは“モンスターが使う獣道”を意味している。危険過ぎるから普段は使われていないというだけの話だ。途中に「秘境」もある為、ようは実力に見合った者のみが使える「裏道」である。

 

「……速いな。ガルクの脚でも追い付けないぞ」『アフッ!』

「エンプーサも無理って言ってるね。凄いな」『バギィン!』

 

 ロンディーネのガルク――――――「ロビスオーメン」は俊足な事で有名だ。そんな彼が追い付けないとなると、相当な速足なのだろう。歩幅の違いを考慮しても、狼を撒けるというのは、本当に凄い。これも歴戦の経験が成せる倆なのか、それともキュリアが関係しているのか。

 その答えは、おそらく、この先に待ち受けている。そんな予感がするのである。

 

「貴殿の嫌な予感は、良く当たると噂されているから、あまり嬉しくは無いな」

 

 悪かったな。つーか、誰だ、そんな噂流してるの。睡眠薬処方してやらんぞ。

 

「森が深まってきたな」

 

 隠し通路を進み続ける事暫く、植生が変わってきた。木々の密度や高さが増し、土壌が痩せ始めている。熱帯雨林に差し掛かった証拠だ。こういう土地は落ち葉の分解が早過ぎる上に下草も伸び難いので、何かの拍子に樹木が大量に失われると簡単に砂漠化してしまう、割と不安定な環境だったりする。その為、生物相も複雑ながらも入れ替わりが激しいのが特徴である。

 

「……これは遺品も遺骨も、見付からないかもね」

 

 それはつまり、遺体が残り難いという事。衣類でさえ細切れになってしまうような場所だ。出来て装備の一部を偶然拾えるかどうか、という所だろう。

 

「仕方ない。そちらはついでにして、キュリアの調査に専念しよう。ともかく、現状で1番可能性のあるアンジャナフの後を追う事だ」

「そうだね」

 

 そのアンジャナフの痕跡さえ、環境生物に消され兼ねない。そうなると、今度は俺たちが遭難する破目になる。ここはそういう土地である。その上、植生が濃過ぎてフクズクの眼が機能しない。頼りになるのは、導蟲だけだ。慎重に行こう。

 

「ん……?」

「どうした、エンム?」

「あれ、何だろう?」

 

 俺たちの進む先に、ポツリと現れる別の痕跡。かなり強力な毒液と、

 

「――――――血の痕だ」

 

 人間が垂らしたと思われる、変色した血液。普通なら消えているだろうが、強過ぎる毒液に阻まれて、微生物が手出し出来なかったに違いない。出血量からして、そこまでの怪我では無いようだが……場所が問題だよね。

 

「どうしようか?」

「……せめて、遺品を回収しよう。幸い、アンジャナフが通り過ぎた道のようだし」

「分かった」

 

 少しだけ探してみれば、割と直ぐに見付かった。レウス防具の欠片である。

 

「先を急ごう」

 

 これ以上の人探しは無意味だろう。防具が欠けるレベルで争ったって事は、遅かれ早かれ致命傷を負っている筈だ。死人に口は無い。

 

「……待て」

 

 そうして進み続ける事、半刻。ロンディーネが待ったを掛けた。何事かと思って見れば、

 

「何だありゃ……?」

 

 そこには中々に衝撃的な光景が広がっていた。

 

『グルルルル……』

 

 先ずはお目当てのアンジャナフ。何時の間に捕まえたのか、ゲリョスを咥えている。

 肉食竜が獲物を巣まで運ぶ例は結構多く、そこまでおかしくはないのだが――――――かのアンジャナフが今からやろうとしている事が問題である。

 

「あいつ、キュリアを栽培している……!」

 

 そう、何とこのアンジャナフ、運んだ獲物にキュリアの花を植え付けているのだ。それも1体や2体ではない。数十体レベルで苗床を用意している。

 

「ゲリョス、ババコンガ、イャンクック、フルフル……それに、ジンオウガやリオレウスだと!?」

 

 しかも、中型モンスター処か大型の牙竜種や飛竜種まで狩っていた。ジンオウガならギリギリ分かるが、リオレウスまで斃すなんて。アンジャナフと言えば、飛竜種に殊更弱いという種族的な特徴を持っているのだが、あの個体には当て嵌まらないのだろう。

 

「奴がさっさと逃げ出した理由が分かったな」

 

 ロンディーネの言う通りである。

 奴がどういうつもりでキュリアを栽培しているのかは分からないが、ハンターを目にもくれない訳は分かった。水没林に出向いていた理由も。量だけでなく質にも拘っているのだ。

 

「これは、見過ごせないね」

「当然だ。これは何れ大陸中の脅威となるぞ」

 

 この不届き者を見過ごす訳にはいかない。さっきは見逃されたが、そんなの知った事か。幾ら強敵とは言え、麻薬を栽培する犯罪者みたいな輩は、世の為人の為、何より俺の平穏の為に、駆除させて貰おう。

 

「行くぞ!」『ワフゥン!』

「汚物は消毒しないとね!」『バギャス!』

『――――――バヴォァアアアアアアッ!』

 

 こうして、俺たちはアンジャナフとの不消化だった殺仕合を再開するのだった。




◆ゲリョス

 奇妙でファンキーな鶏冠を持つ、大型の鳥竜種。別名は「毒怪鳥」。
 同骨格のイャンクックと似通った動きをするが、こちらは火炎液の代わりに毒液を吐き散らかす。体内に「狂走液」と呼ばれるカンフル剤を持っており、その効能によりイャンクックを遥かに超える運動性を発揮する。
 その一方で「死んだ振り」や「盗み」、鶏冠と嘴を打ち付けて閃光を放つ「目潰し」など、トリッキーというか小賢しい真似をして来るのも特徴であり、「教官」と呼ばれ慕われるイャンクックと違い、ハンターからはかなり嫌われている。それでも好き者が居るのも世の常。
 ちなみに、絶縁質な皮膚が災いして、ネルスキュラのコートにされがちである。合掌。
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