モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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VSアンジャナフ、決着。


閑話:あきらめろ

『グヴォオオオオオッ!』

「うぉっ!?」「危ない!」

 

 早速一発かましてくるアンジャナフ。積み上げていた死体の山を薙ぎ払い、礫として飛ばしてきたのだ。

 

『ゴヴァアアアアアッ!』

「龍属性ブレス!?」「キュリアの影響か!?」

 

 さらに、本来なら火炎を吐いてくる筈の所を、何と赤黒い龍属性ブレスを放ってきた。その様は、まるでかの恐暴竜「イビルジョー」である。

 まぁ、同じ獣竜種だから、さもありなんって感じだけどね。

 とは言え、アンジャナフが龍属性を扱うなど、信じ難い状況だ。

 基本的に龍属性は古龍種が扱う、謎のエネルギーである。一般的なモンスターで扱えるのは、先のイビルジョーに加えてジンオウガやオドガロンの亜種、マガイマガドの特殊個体など、極一部しか居ない。それだけ特別で、よく分からないエネルギーなのだ。

 一応、それらのモンスターは、「龍殺しの実」や「蝕龍蟲」と言った龍属性を吸収する動植物を、体内ないし体外に蓄える事で活用している事は判明している。目の前のアンジャナフも、その系統だろう。

 では、その触媒になっているのが何なのかと言えば――――――おそらくだが、キュリアが関係していると思われる。キュリアの出す毒素が、実は龍属性を帯びているのではないか、という推測である。龍属性は赫、もしくは赤黒い色をしているので、あながち間違っていないと思うんだよね。

 もちろん、バルファルクの龍属性が「龍気」に変異しているように、キュリア自身の体質により通常の物と異なる物に変化しているのかもしれない。むしろ、その可能性の方が高いだろう。

 ……ま、結局は奴を斃してみないと、分からないって事さ。

 

「せいっ!」

 

 とりあえず、デュエルヴァインで距離を保てるようにして、シールドタックルで接近し、ガスガスと突いてやる。通常のアンジャナフなら噛み付くか尻尾を振り回してくるかだが、果たしてどう出る?

 

『グルルル……!』

 

 バックステップした!?

 こいつ本当に逃げ腰だな。見た目は歴戦の猛者って感じなのに……。

 だが、断る。デュエルヴァインが繋がっている以上、距離は取れな――――――、

 

「ガードしろっ!」

「………………!」

『ガヴォオオッ!』

 

 あ、危ねぇ!

 この野郎、下がると見せ掛けて、引き寄せてやがった。もう少しで大口を叩き付けられる所だったよ。マジで助かったよ、ロンディーネ。

 こりゃあ、デュエルヴァインを使うのは危険だな。まさか、ここまで鉄蟲糸技の特性を理解しているとは、流石に予想外だった。下手な技を使うと、それを利用して大技をぶち込まれるかもしれない。ガード重視で、攻撃はロンディーネに任せよう。

 

「……って事で頑張れ!」

「まったく、調子が良いな!」

 

 そうは言いつつも、きちんと己の役割を果たしてくれる君は素敵だよ(笑)。

 

「てぇい!」

 

 ロンディーネは一喝と共に、「桜花鉄蟲気刃斬」で練気を溜めながらアンジャナフの後ろに回り込み、二連斬りを決め、特殊納刀をしつつ反撃を見切って、赫刀化した状態で兜割りを決める。その間、俺は盾で防ぎつつ脚をチクチクしていた。獣竜種は先ず脚のダメージでダウンを取らないとね。

 しかし、中々眠らないな、こいつ。結構突いてる筈なんだけど。

 

『グヴゥ……ZZZzzz』

 

 あっ、やっと寝た。よしよし、このまま睡眠爆破で――――――、

 

「罠だ!」

「ウソダドンドコドーン!?」

『バゴルァッ!』

 

 狸寝入りとかマジかぁ!?

 納刀してたから、全く対応出来ずに噛み付かれてしまった。ヤバいヤバいヤバい、食われるぅうううっ!

 

「くっ! 在庫処分だ!」

『グヴォッ!?』

 

 助かったけどUNKはキツいって!

 

「大丈夫か?」

「……臭い以外は」

 

 ほら、アンジャナフもペッペッてしてるよ。こりゃあ、ババコンガのUNKを素材にしてるな。どうりでとんでもなく臭い訳だ。マジ臭い。鼻がもげそう。

 もちろん、俺以上に鼻が利くアンジャナフは堪った物ではなく、未だにのた打ち回っている。良い弱点を見付けたな。

 よーし、ドンドンUNKを投げるぞ!

 童心に帰るつもりで、泥んこ遊びだぁ!

 

「「ボラボラボラボラボラボラァッ!」」

『ハァァヴォッ! ゲホォォオオォッ!』

 

 うむうむ、苦しんでる苦しんでる。今の内にダメージを稼ぐぜ。

 

「……これ、こちちも辛いのだが?」

「我慢するしかないねェ」

 

 ……ただし、俺たちにも多大なダメージが入るけど。

 だが、背に腹は代えられない。この小癪なアンジャナフを相手取るのに、真面な遣り方じゃあ、たぶん勝てないからね。何だかんだで不意を突かれて、どちらかが大怪我をしていた事だろう。それくらいの脅威を、こいつは持っている。噛み付かれて分かった。殆どイビルジョーだよ、このアンジャナフ。

 

「――――――よし、捕獲だ!」

「任された!」

 

 という事で、落とし穴を設置。アンジャナフを奈落の底に叩き落す。

 

「よし、捕獲用麻酔玉を……って、効かない!?」

「何だと!?」

『ギャヴォオオオオッ!』

 

 しかし、何故か捕獲用麻酔玉が効かず、驚いている隙にアンジャナフは脱出してしまった。

 

「こうなったら、昏睡玉で……」

「いや、止めを刺す!」

『フン!』

「「眩しっ!?」」

 

 その上、こちらが動こうとした瞬間、近くの閃光羽虫を意図的に嚙み潰し、目を晦ませてきやがった。ハンターかお前は!

 

『バッホッホッホッ!』

 

 そして、俺たちの視力が回復する頃には、アンジャナフは遥か遠くへ逃げ果せていたのだった。本当に慎重と言うか、臆病な奴である。

 

「どうするよ?」

「仕方ない。これ以上の深追いはこちらが危険だ。とりあえず、この死体の山を見分して一時帰還しよう」

「そうだね」

 

 正直、もう疲れました。ヘトヘトでベトベトでクサクサだよ……。

 こうして、俺たちは遂にアンジャナフの狩猟を成し遂げられないまま、ジャンボ村へ戻る破目になったのであった。

 ザギたちの方は、何か掴めたのかねぇ?




◆超歴戦のアンジャナフ

 謎多きアンジャナフの特殊個体。フィオレーネたちが砂原で出遭った「小賢しい奴」と同一個体。通常状態から火を噴ける上に、怒り状態になると龍属性ブレスを吐いてくるようになる。ハンターの技を理解し逆用する程に頭が良く、環境生物を使ったりキュリアの花を栽培したりと、その器用さに暇がない。
 出身地はヴェルド周辺に広がる「深黒林」。周りを飛竜種が蔓延るヒンメルン山脈で囲われており、その包囲網を唯一突破し脱出に成功した、選ばれし個体である。

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