モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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ゴア・マガラ強過ギィーっ!


遠方から来た友

「うーん……」

 

 王国騎士の朝は早い。特に騎士団筆頭かつエルガドの実質No.2であるフィオレーネの起床は殊更で、基本的に誰よりも早く起き、皆が目覚める頃には身支度を整えているのが常だ。夜型の俺としては割と辛いが、彼女のイメージを崩す訳にもいかないし、何より仕事量が馬鹿みたいに多いので、嫌でも早起きせざるを得ないのである。

 

「やぁ、フィオレーネくん! 今日も良い朝だね!」

 

 だが、最近は2番手に甘んじる事も多々ある。何故なら、ウツシ教官の方が早起きだからだ。俺が朝シャワーを終えて、身成もバッチリ整えて自室を出てると、大抵はウツシ教官に挨拶をされる。竜人族の研究者であるバハリから「質の良い食事と睡眠こそが良い仕事の秘訣だぜ?」と窘められる俺(というかフィオレーネ)から見ても、彼の起床時間は早過ぎる気がする。何時寝てるんだろう、この人?

 まぁ、それはそれとして、

 

「そうだな。然しながら、貴殿よりも朝日を1番に拝めたら、もっと良い朝なのだがな」

「う~ん、クールだがステキな罵倒だ! ミノト嬢と同じ物を感じさせてくれるねッ!」

 

 ……嫌なルーチンだなぁ、これ。

 さて、カムラの里より舞い戻って約2週間。向こうでは時差ボケに悩まされたが、徐々に回復しつつある。クエストにも精が出て来たし、仕事捌きも順調だ。これで大穴やキュリアについての調査が進んでいれば文句も無いのだが。

 マジで何なんだろうね、キュリアって。

 とりあえず、メル・ゼナの放つ吸血性の寄生生物だって事は分かるんだけど、ガレアス提督曰く「50年前の大穴が開いた際、メル・ゼナはキュリアを従えていなかった」らしいし、大穴との関連も不明である。他生物と共生する古龍として大海龍「ナバルデウス」や屍套龍「ヴァルハザク」などが知られているが、ガレアス提督の言葉通りならば、メル・ゼナは彼らと違い、かなり短期的にキュリアと共生関係を結んだ事になる。

 これが一体何を意味するのかは不明だが、俺たちに出来る事は限られている。

 即ち、広い視野を以て物事を見定め、地道に調査を重ねつつ、来る脅威に備えるという、当たり前の事だけだ。そもそも俺は戦闘要員だから、詳しい調査はバハリたちの仕事なのよね。それは俺の管轄外だ、って奴である。結局は総括して報告しなきゃいけないから、俺の仕事でもあるんだけど……。

 

「おはよう、フィオレーネさん」

 

 おっと、猛き焔のお目覚めか。こいつもこいつで早起きだよな。あんだけ身体を張ってるんだから、もう少し休んでても良いのよ?

 

「……おはよう。今日もコンディションは最高のようだな」

「何とかは風邪引かないのさ」

 

 えっ、それ自分で言っちゃうの?

 

「あ、おはようございます、フィオレーネさん!」「おはようございます……」「ウム、良い朝だな」

 

 続いてジェイ、ルーチカ、ガレアス提督と、エルガド全体が徐々に活性化していき、

 

「はわわわ、ちょっと寝坊しちゃいました!」

 

 最後にチッチェ姫が登場して、今日という1日が始まる。この子、ちょこっと朝に弱いんだよね。そこがまた良い。アメちゃんあげたくなる。

 さーて、本日のクエストはどんなモンだかねー?

 

「た、大変だぁ!」「そうッス、マジで大変なんッス!」

 

 と、泊まり込みで「城塞高地」へ調査に赴いていた騎士団の調査隊が、寄港と同時に血相を変えて飛び降りて来た。危ないから止めなさい。

 

「……とりあえず落ち着け。報告は要点を纏めてからにしろ」

「あ、はい、すみません、提督」

 

 で、一瞬で黙らされる調査隊の皆さん。先程のてんてこ舞いが噓のようだ。

 まぁ、こんな覇気を纏ったイケオヤジから諭されたら、そりゃあ黙るしかないよね。それで、一体どうしたん?

 

「城塞高地で、ガランゴルムとアンジャナフが激しい縄張り争いを繰り広げています! 周囲の生物もざわついてますし、何時再び縄張りの変容が起きるとも分かりません! 至急、この2体を狩猟すべきだと判断し、戦力の要請に参りました!」

 

 おおっ、ガランゴルムか。

 「王域三公」にも数えられる牙獣種の大型モンスターで、苔生した鎧を着こんだゴリラのような姿をしている。

 植物の成長を促す物質が含まれる体液(体肥液というらしい)を生成する能力が有り、自らの縄張り(テリトリー)内で草木を育て土壌を耕す、本来なら非常に大人しいモンスターである。

 しかし、縄張りを荒らす者に対しては別で、前述の体肥液で腕に土砂を纏わり付かせる事により、右手に溶岩、左手に苔を蒸着して、火と水の2属性の力を振るい暴れ回るという、割かし二面性の強いモンスターだ。

 対するアンジャナフは、ピンクの地肌に黒い羽毛を持つ大型肉食恐竜のような姿の獣竜種で、「森の暴れん坊」呼ばわりされる程の荒くれ者であり、手前勝手に決めた広大な縄張りを大威張りしながらのし歩くという、ジャイアニズムの塊のようなモンスターである。武器は自慢の馬鹿力と口から吐く爆炎で、余分な熱は普段は折り畳んでいるトサカ状の大鼻骨と背びれにより行う。

 今回の場合、外部から進出して来たアンジャナフがガランゴルムの縄張りを侵し、そのまま大喧嘩に発展した、という感じか。相変わらず迷惑な奴だ。バゼルギウス程じゃないけど。

 

「……頼まれてくれるか?」

「「もちろんです!」」

 

 そういう事になった。

 さーて、記憶でしか知らない新フィールド、どんなワクワクが待っているのかなー?

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 時を重ね、今となっては判然とせぬ、この地の利は

 攻めるものにとっての利となるものか

 あるいは、攻められるものにとっての利となるものか

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 「城塞高地」。攻防自在、乱戦必至の城塞跡。

 ほんの数十年前までは平和で長閑な城塞都市だったのだが、突如流行した疫病とモンスターの暴走、舞い降りたメル・ゼナにより、一夜にして滅ぼされてしまったらしい。今では王域三公が自らの定めた領域に君臨し、そのお零れに与ろうと魑魅魍魎が跋扈する、魔境と化している。

 ちなみに、城塞高地の近くで大穴が開いた際、メル・ゼナとは別の“地鳴りのような唸り声”が聞こえたらしく、これをお伽話に出て来る「深淵の悪魔」ではないかと当時の生存者たちは語るが、殆どの人々は真面に取り合わなかった。聞き間違えか、恐怖による幻聴であろうと。事実、フィオレーネさんも心の底からは信じてはいない。

 だが、異世界転移憑依者である俺は別だ。

 だって、こんなのフラグでしかないじゃん。ジンオウガやマガイマガドの時もそうだったけど、彼らはあくまで被害者や便乗者であり、元凶は別に居た。今回もまたそうだろう。

 あと、これはメタ的な意見だけど、たぶんメル・ゼナってラスボスじゃないよね。パッケージモンスターだし。精々「宿敵(ライバル)」が良い所だろうか。

 おそらく、爵銀龍以外の……それこそ「深淵の悪魔」に該当するナニカが居て、大穴も実はそいつが原因じゃないのかと、最近思い始めている次第。

 とは言え、今はそんな事よりガランゴルムとアンジャナフである。あの馬鹿力野郎共が目一杯暴れられては、またしてもスタンピードが起きてしまう。ただでさえビシュテンゴ亜種の大騒動が起きたばかりなんだから、少しは静かにしてろ。

 ――――――そう意気込んで、城塞高地まで足を運んだのだが、

 

「……どっちも居ないぞ?」

「そうだな……」

 

 しかし、待てど探せど、ガランゴルムもアンジャナフも見付からなかった。

 

『ハヴォオオオオン!』

 

 代わりに何故かバゼルギウスに襲撃された。何でやねん。

 

「「いや、失せろや」」

『ヒィイイィイイン!?』

 

 ただ、まだまだ年若い個体だったのか、ちょっと突いてやればあっさりと撤退した。マジで何しに来たんだあいつは。

 だが、これは困った事になったぞ。どちらも居ないという事は、共倒れになったか、決着が付かず離散してしまった可能性が高い。それはそれで厄介な話だ。

 

「ともかく、1度撤退しよう。このまま夜になれば、ルナガロンやメル・ゼナの襲撃に遭う」

 

 流石に何の準備も無く、残りの王域三公を相手にするのは無謀である。ここは一旦退く方が良いだろう。何て実りの無いクエストなんだ……。

 と、その時。

 

『おやおやおや、そこに居るのは、ザギかぬー?』

 

 ソウソウ草の中から、見知らぬメラルーがひょっこりと顔を出した。一丁前にデスギア装備に身を包み、壊れた髑髏の仮面から片目だけを覗かせている。

 

「クスネじゃないか」

「……知り合いか?」

「ああ、腐れ縁だよ」

 

 そう言えば、前に会話でチラッと名前が出たような気がするな。クスネって、こいつの事だったのか。

 

「世界を股に掛ける大泥棒にして、「命をくすね取る死神」の異名で畏れられる、有名なニャンター様さ」

 

 何それ怖い。

 ……ああ、いやでも何か、記憶の片隅には在るぞ。名前しか知らないけど、凄腕で金にがめついニャンターが居るって噂話が。

 うーん、やっぱり怖いだけなんですけど。

 しかし、世界を股に掛けると言うからには、見識も相当に高いのだろう。ここは何かしらの賄賂を贈ってでも、情報収集に充てたい。

 

「とりあえず、最近集めたマスターランクの素材を好きなだけくれてやるよ。どうせ、俺には必要無いからな」

 

 大した太っ腹ですね、ザギさんや。

 

『……まぁ、それで手を打ってやっても良いぬー。それで、何を知りたいぬー?』

「アンジャナフ……いや、ここらを縄張りにしていた、ガランゴルムの行方を知りたい」

『ああ、そいつなら水没林の方へ向かって行ったぬー。何か様子が変だったし、追うなら相応の準備をした方が良いぬー』

「了解した。後でエルガドに来てくれ。そこで報酬を払う」

『へいへい、分かったぬー』

 

 トントン拍子で話が進むな。流石は顔見知り。俺だけなら、こうは行かなかっただろうなぁ。

 

「ともかく、エルガドに帰ろう。話はそれからだ」

「分かった」『アタイも行くぬー』

 

 そして、情報を纏め、準備を進める為にも、俺たちはエルガドへ向けて、踵を返すのであった。




◆クスネ

 ユクモ村出身のメラルーであり、自称「世界を股に掛ける大泥棒」。
 普段はやる気の欠片も無い言動が目立つが、戦闘となると一変、悪魔もドン引きするような残虐ファイトを繰り広げる。その実力は単騎で古龍すら返り討ちにする程で、その界隈では「命をくすね取る死神」として有名である。
 また、生粋のライダーでもあり、未発見のクルルヤック亜種と、ガーグァの超進化態を使役している。
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