無垢なるモノ、ただ欲望に従い佇む無垢
一見において、無垢としか捉えず
その欲望を見落とす事あれば
無垢なる力、無垢なる怒りに見まみえる事となろう
より強き力、力の赴くままに増す怒り
触れてしまえば、命を賭すほどの
思い知るには、手遅れの
その欲望に障る事があってはならない……
◆◆◆◆◆◆
「水没林」。
元々は完全に水没した「沼」と言うべき有様の土地だったが、気候の変化や地殻変動により水が引き、昨今は陸地の方が多くなった、かなり名前負けしているフィールドである。
ただし、陸が増えたと言っても、岩場以外は絡まり合った木の根に泥が固着しただけの“見掛け倒し”な足場なので歩き難く、鬱蒼とした木々のせいで視界も悪い。
当然、生息しているのもロアルドロスやタマミツネなど、水辺のモンスターが多く、必然的に水属性やられに為り易くなる。そうなると体力がガンガン削られるので、ウチケシの実で早急に回復したいところ。
逆に言えば、モンスターを操竜で水属性やられにし易いという事でもあるので、上手く利用すれば狩りも捗るだろう。環境生物も有用な物が揃っており、選り取り見取りである。
つまり、頭を使えという事だ。特に片手剣は道具の出し入れが得意な武器である為、積極的にアイテムを使って行きたい。
さて、そんな水没林に俺たちはやって来た訳だが、
「あれが、えーっと……ドボルゴリラだっけ?」
「エリア10」の崖に囲まれた窪地にて、ガランゴルムを発見したザギが、ポツリと呟いた。
「“ガランゴルム”な?」
確かにドボルベルクにゴリラを付け足したような姿だけれども。
ちなみに、公式設定によると、モチーフは“フランケンシュタインの怪物”らしい。個人的にはミイラ男かジキルとハイドかと思ったけど。他にもゴーレムの要素が入っているかもしれないな。
何れにしろ、見た目は苔生した甲殻を纏った馬鹿デカいゴリラなので、威圧感が半端じゃない。同じゴリラ系統のラージャンと比べても、一回りは大きいだろう。その見た目に違わず凄まじい怪力を誇り、力任せの暴力や岩投げアタックをかまして来る。
さらに、興奮状態になると、体肥液という分泌物で土砂や苔を腕に付着させ、火と水の2属性を纏った拳で攻撃を仕掛けてくる為、「剛纏獣」という別名を持つ。PVで見る限りでは、拳を叩き付ける勢いで属性攻撃を繰り出すようだ。
だが、モンハンの常であるが、形態変化で増えた武器や装甲は、破壊されると特殊な怯みを発生させるもの。こいつもその法則に違わず、纏った部分を破壊すると「大ダウン」を引き起こし、その間は攻撃をし放題になる。是非とも狙って行こう。
「しかし、本当に居るとはな」
「え、信用してなかったの?」
「彼女とは、初対面だからな」
そもそも、あんな胡散臭い奴を真っ向から信じろっていう方が無理でしょ。
しかし、クスネの情報が正しかったのも事実。ガランゴルムは水没林に居たし、しかも大社跡に迷い込んだダイミョウザザミの物と同じような傷を負っている。あの噛み痕からして、キュリアの攻撃を受けた物と見て間違いない。
……王域三公って、明確な上下関係というか、強弱がはっきりしてるよね。
ガランゴルムはルナガロンより弱いし、ルナガロンはメル・ゼナに勝ち目が無い。ある意味順当な力関係と言えるが、MHXの「四天王」みたいなノリで考えていた身としては、結構意外だったな。
まぁ良い。我々騎士やハンターの仕事は、モンスターの狩猟。深く考えるのは、バハリたちに任せると決めている。
俺たちは、机上の空論ではなく、実体験を以て敵を知るのである。
さぁ、狩りを始めよう!
「行くぞ!」「ああ!」『行くミャー!』『ガウルン!』『アォーン!』
俺が率先して前に出て、ザギとオトモたちが続く形で、ガランゴルムに挑み掛かる。
『ゴリリリリリリリッ!』
お前、その鳴き方は無いやろ。
だが、咆哮は効かん。ザギはバクステで、俺は滅・昇竜撃でそれぞれ無効化する。
『ゴリラァッ!』
「ピカリ玉ぁ!」
『モンキィッ!?』
そして、ピョーンと跳ねて身体ごと拳を叩きつけようとするガランゴルムに、俺の閃光玉が炸裂。空中から叩き落す。ついでに雷毛コロガシをぶつけてスタンを取り易くしておく。
「オラオラオラオラァッ!」
さらに、ザギのジャストラッシュが決まり、毒・麻痺・爆破の3属性状態異常を食らわせた。気絶状態だからやりたい放題である。
「罠発動」『サルルルルル……!』
それから、シビレ罠で拘束。2人で仲良く大タル爆弾Gを置いて、
「「風車!」」
『ゴリリアントォァッ!?』
風車で起爆。大ダメージを与えた。今回、装飾品で「ボマー」を積んで来たからな。余裕の爆発だ、火力が違いますよ。
『おニャン子ぉー!』『ガルルガァッ!』『グルルルルッ!』
『サルゥ……ZZZzzz』
しかも、オトモが全員睡眠武器を背負っているので、ガランゴルムはあっという間に睡眠状態に。何とも穏やかな寝顔を晒した。写真を撮っておこう。
それでは落とし穴と大タル爆弾Gの第2波――――――と行きたい所だが、その前に。
「ゴックゴック、カーリカーリ」
俺は徐に懐から「鬼人薬」と「硬化薬」のグレートを取り出して飲み干し、次いで「怪力の種」と「硬化の種」をカリカリと食べた。
「おお……!?」
それだけで、ザギもステータスが強化された。
どうよ、これが「広域化」って奴だ。どういう原理かは知らないが、俺が使ったアイテムの効果を味方に付与する事が出来るスキルである。
フィオレーネさんは騎士という立場上、「王国軽装騎士」シリーズしか装着しておらず、俺もその意思を尊重しているので、防具の強化をする以外は、全て装飾品や護石で補っている。連日連夜、クエストで得た素材をマカ壺に突っ込み、一喜一憂していたのが懐かしい……。
おかげで、今の俺は広域化をフルMAXで発動出来る。切れ味や攻撃力もそこそこは補えてるし、アイテムもきっちり揃えてるから、サポートはバッチリだな。攻め手はザギに任せて、俺は補助に徹しよう。
もちろん、ケースバイケースで攻めたりもするが。ピンチは誰かにアピール出来る、良いチャンスなのよん。
さぁ、準備は整った。
「「滅・昇竜撃!」」
今度は滅・昇竜撃で起爆して、起き様に落とし穴に嵌めて、着地と同時にジャストラッシュ。顔面と腕を完全に部位破壊した。ザギの奴、「破壊王」と「KO術」をフルで積んでやがるな。良いセンスしてるぅ~♪
『ゴラァアアアアアアアォッ!』
おっと、怒ったか。そりゃそうよね。地面をボッコンバッカンぶん殴って、右腕に溶岩を、左腕に水苔を纏い、ついでに顔面も火と水でお化粧した。
こう見ると、確かにフランケンシュタインというか、怪物そのものだな。
『ホバァアアアアッ!』
「「うぉおおおっ!?」」
と、早速ガランゴルムが怒り状態の技を使用した。即ち、右腕の爆炎でブーストして、右腕の瀑轟拳で殴り掛かって来たのだ。ガンランスかよ!
まぁ、しっかり避けるけどね。片手剣は機動力が違うのである。
『ドボルゴリラァッ!』
しかし、躱されたと見るや否や、ガランゴルムが爆炎と瀑水をばら撒きながら、ナックルウォーキングで突進して来た。いや、危ない危ない危ない!
『ホゴァアアアアッ!』
「「ホォワァッツ!?」」
そして、擦れ違った瞬間にクルっと振り向き、遥か上空に大ジャンプ。纏った溶岩と水苔を化学反応させ、エリアの半分を吹っ飛ばす程の水蒸気爆発を起こした。
あ、危ねぇ、ステータス上げて無かったら乙ってたな。
だが、大技の後は隙が生まれるってなぁ!
「「気焔万丈ぉぁっ!」」
『オサールサンダヨォ!?』
自ら引き起こした爆発により怯んでいたガランゴルムを罠に嵌め、最後の爆弾と盾コンで弱らせてから捕獲用麻酔玉で眠らせ、クエストを終わらせた。
まぁ、本来のこいつは大人しく、土壌を豊かにする森の賢者様だから、調査の後は故郷に還してやろう。
さーて、捕獲の成功を調査隊の皆に報せて、
――――――ォオオオオオオオッ!
『ゴリァッ!?』『キキキキキキッ!』
しかし、突如として地鳴りが響いたかと思うと、とんでもない数のキュリアが現れ群がり、止める間もなくガランゴルムをミイラにしてしまった。
「何て事だ……」
これもメル・ゼナの仕業なのか、それとも……?
◆ガランゴルム
「王域三公」に数えられる巨大な牙獣種。別名は「剛纏獣」で、異名は「無垢なる巨影」。
身体から「体肥液」という植物や微生物の成長を促す分泌物を生成する能力があり、それにより自らの縄張りの土壌を育てる習性がある。見た目こそ厳ついが、森の賢者とでも言うべき聡明さと穏やかさを持った種族で、基本的に土地を荒らさなければ大抵の場合は威嚇で追い払う。
しかし、一度怒ると体肥液で土砂や苔を腕に固着させ、右腕に溶岩、左腕に水苔を纏い、火と水の2属性を用いた、苛烈な攻撃を仕掛けて来る。その様は、まるでガンランスである。
ちなみに、同じ城塞高地に棲息する「オルギィ」という小型モンスターに、結構な頻度でちょっかいを掛けられるらしく、その度にボッコンバッカン大騒ぎしている姿を目撃されている。何か和む。