モンスターハンター:サンライズ・ブレイカー   作:ディヴァ子

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オロミドロ亜種、原種よりはマシになってまスネ。


アンジャナフの赫い石

『ぴゅっぴゅい!』

「何、バハリが?」

 

 やる事が無くなってしまい、仕方なくエルガドへ戻ろうとした俺たちだったが、そこへまたしても危急の連絡が入る。何でも、逃げたアンジャナフの方を追っていたバハリたちが、砂原でオロミドロに襲われて立ち往生してしまっているらしい。

 

「……行くしかないか」

「そうだな」

 

 うーん、真っ直ぐ帰ろうかと思っていただけに、気乗りしないなぁ。ベクターも良かれと思って伝えに来たんだろうけど、正直もうご馳走様なんだけど。

 だが、耳に入れてしまった物は仕方ない。我慢して寄り道しよう。……寄り道というより、若干遠回りだけどな!

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 「砂原」。

 砂漠のど真ん中にある、岩に囲まれ砂の海が広がる高台の箱庭。

 言うなれば、大きな岩山の皿に砂を振り掛けたような土地なので、名前とは裏腹に砂場は無いに等しく、逆に高低差の激しい穴だらけな岩場ばかりが目立つフィールドである。水没林といい密林といい、思ったよりも「ん?」という場所が多いのは何故なのか。

 ただし、砂漠地帯である事に変わりは無く、主に乾燥した気候に適応した動植物が生息し、点在する数少ない水場の近くで細々と暮らしている。

 ちなみに、砂原を含む砂漠地帯に出現するモンスターは、火より水に弱い奴が多い。水分を食べ物のみで補う種族が大半だからだ。

 例外なのは土砂竜「ボルボロス」か、狩猟対象である泥翁竜「オロミドロ」ぐらいであろう。どちらも泥を身に纏う点が共通しており、強い光や熱を遮断する事で、猛暑の砂漠に適応しているのである。

 まぁ、オロミドロに関しては分泌物により自ら泥濘地を形成出来るので、正確には“一定以上の暑さと多少の水分”さえあれば、何処でも棲息は可能なのだが。事実、砂原だけでなく、水没林や大社跡にも出現している。

 しかし、陸生が強いからか、海竜種の癖に大きな河や海には居ない。その点は同じ海竜種のタマミツネとよく似ている。あっちは湿度が高い環境を好むようだけど。

 

「久々に見たな、こいつ」

「そうなのか?」

「ああ。……あんまり戦いたくない相手だからな」

 

 そんなオロミドロが、「エリア5」の水場で泥遊びしている。

 海竜種らしい長大で細身な体躯を持ち、全身が焦げ茶色の甲殻で覆われている。全体的な形態は近縁種たるタマミツネをベースとしており、赤い龍の髭が生えた狸面に、黄ばんだボロ雑巾のような尻尾が特徴だ。尻尾からは岩をも溶かす溶解液を分泌し、まるで古龍の如く自由自在に泥沼を生み出す事が出来る。

 そして、この“自らのホームグランドを生み出す”能力が、剣士を中心とする近接武器のハンターから嫌われる最大の理由となっている。足を取られる上に、オロミドロ自体が泥の津波を引き起こして、中々近付かせてくれないからだ。その上、肉質が硬くパワーもある為、上手く懐に潜り込んでからも大変だというのだから、尚更だろう。

 ……俺たち、2人とも片手剣ですやん。

 

「これは、一先ず操竜でダウンを取るべきか?」

「そうだね。手頃な奴はっと……」

 

 一瞬にして真面にやり合う気を失ったので、先ずは操竜アタックをかます事にした。ダウンが取れるし、上手く行けば部位破壊も出来るからな。

 さーて、手頃な乗り物(モンスター)は――――――、

 

『ガヴォオオオオン!』

 

 と、その時。

 

『ゴヴァアアアアッ!』『オドロロロロッ!?』

 

 何処からともなく傷だらけのアンジャナフが現れて、オロミドロに襲い掛かった。もしかしてこいつ、ガランゴルムと縄張り争いした個体か?

 だが、丁度良い。このまま縄張り争いに発展すれば、どちらかは操竜待機状態に持ち込める。そのまま乗りこなしてくれるわ!

 

『オドロロロロロッ!』

 

 先ずはオロミドロの反撃。首筋に噛み付いて来たアンジャナフを尻尾で殴り飛ばし、泥の津波を放つ。

 

『ヴォオオオオンッ!』

 

 しかし、このアンジャナフは戦闘の筋が良いのか、獣竜種とは思えない華麗な着地と同時に泥の津波を跳んで躱して、一気に距離を詰めた。

 さらに、そのまま噛み付いたりはせず、一旦泥塗れの岩を飛ばして、オロミドロを水属性やられにして肉質を軟化させてから、頭突きと尻尾で滅多打ちにする。

 

『ガヴォラァアアッ!』『オドォロァッ!?』

 

 そして、鼻骨と背びれを展開、満を持して爆炎ブレスを解禁し、水やられで弱った甲殻を火炙りにした。

 ここまでアンジャナフが食らった攻撃は、尻尾の1発のみ。それ以外は悉く避け、手堅い小技からの強力な大技で一気に瀕死寸前まで追い込んでいる。“森の暴れん坊”とは思えない、クレバーな戦い方である。流石は王域三公たるガランゴルムとも一戦交えただけはあるな。

 だけど、操竜したいのは君じゃないのよ。

 

「仕方ない。爺の力、お借りします!」

『オドロォーン!?』

 

 しゃーなしだな。とりあえず、一旦オロミドロに乗らせて貰おう。直ぐ乗り換えるけど。オラッ、体当たりを食らえ!

 

『ガオン!』

「嘘ォッ!?」

 

 まさかの避けられた!?

 クソッ、ならば壁ドンしてからもう1度……も躱されたぁ!

 何だコイツ、過去にカムラのハンターとやり合った事でもあるのか!?

 ビックリするぐらい操竜お断りされるんですけど!

 

「バルスッ!」

『グヴォッ!?』

 

 よし、ザギの閃光玉で目が眩んだな。これで避けられまい。食らえ!

 

「ジャナフの力、お借りします!」『グルルルヴゥ……!』

 

 思いっきり不服そうですね、アンジャナフさんや。そりゃそうか。

 だが、そんなの知った事じゃあないなぁ。利用出来る物は全て使えって、何処かの団長さんが言ってた気がするからね。提督もよく言うし、イケおやじの共通認識なのかもしれない。

 

「食らうが良い!」『ガヴォオオオッ!』

『オゴガガガガ……!?』

 

 容赦のないカムラ文化アタックがオロミドロを襲う。

 しかも、ちゃっかりザギがシビレ罠で拘束していたので、全く避けられず、完全にボコられるだけのオロミドロ。ちょっと可哀想になって来たが、バハリなんぞにちょっかいを掛けるお前も悪い。災難だと諦めな。

 

『バヴォオオオオオッ!』

『ゴァアアアアアアッ!?』

 

 最後にアンジャナフの大技が炸裂し、

 

「ほい」『……ェハン!』

 

 さらに、ザギの落とし穴と捕獲用麻酔玉が決まり、オロミドロは俺たちの手に落ちた。素材をちょろっと貰って、バハリたちを救出したら、直ぐに逃がしてやるけどね。錬金材料とボーナスが欲しいのよん♪

 

『グルルルル……!』

 

 それにしても、馬鹿みたいに強かったな、このアンジャナフ。マスターランクの中でも上位に位置する歴戦の個体なのだろうか。正直、ガランゴルムの3倍くらい強かった気がする。

 

『……ペッ!』

 

 暫し恨みがましく俺たちを睨んでいたアンジャナフだったが、口から結石のような物を吐き付けてると、プンスカコンスカしながら、何処かへと立ち去って行った。良かったー、戦いにならなくて。あんなのと1戦交えるなんて、今のモチベーションじゃ無理よ。

 

「何なんだ、これ?」

「さぁな。……宝玉とは違うようだが」

 

 というか、この石は何だろう?

 宝玉のような丸みも輝きも無いが、常に妖しく明滅しており、まるで脈打つような振動を放つ、赫い結晶の欠片。漏れ出る毒々しいオーラは、憎悪がそのまま形を成したかのようだ。

 

「おーやおーや、それはそれは! ちょーいと見せて貰おうかぁ!」

「「あっ!」」

 

 すると、何時の間にか褐色肌でレゲエな感じの竜人族の男が、その結晶をパッと奪い取り、これでもかと観察し始める。

 

「この人は?」

「……こいつが、件の研究員、バハリだ」

 

 そう、この人の話を聞かなそうな奴が、研究員のバハリである。

 救出に来た相手に礼もせず、勝手に戦利品を奪い取って研究に没頭する、この馬鹿野郎が、我がエルガドの誇る天才科学者、バハリなのだ。

 

「死ね」

 

 なので、俺は遠慮容赦なく剣を振り下ろした。

 

「危なっ!?」

 

 違う、惜しかったんだ。腐っても竜人族、身体能力の高さは研究職でも違わず、か。

 

「いきなり酷いんじゃない、フィオレーネ? 仕事のストレスをオレで発散しようとするなよ。ちゃんと寝て食べないから、そういう事になるんだ」

「黙れ糞野郎」

 

 何コイツ、今すぐ処刑したいんですけど。

 

「……まぁまぁ、落ち着いて。目的は果たしたんだから、また何かある前にエルガドに戻ろう。正直、俺も疲れたしな」

「チッ……」

 

 仕方ない。疲れてるのは事実だし、ここはザギの言葉に従おう。

 だが、この時、俺は知らなかった。

 

 ――――――エルガドに帰った後も、休む間も無く厄介事が起きる事になろうとは。




◆オロミドロ

 泥濘地に住まう、大型の海竜種モンスター。別名は「泥翁竜」で、異名は「泥土の隠者」。
 泡狐竜「タマミツネ」の近縁種であり、淡い狐のような向こうに対して、こちらは泥臭い狸爺みたいな顔をしている。全身が泥色の硬い甲殻で覆われ、鼻先から赤い龍の髭を生やし、顎の下や尻尾の先に黄ばんだボロ雑巾を思わせる鰭がある。
 尻尾の鰭から溶解液を分泌し、周囲の岩や土砂を溶かして自由自在に泥沼を形成する能力があり、泥を隆起させたり津波として放ったりと、実にイライラする搦め手を駆使して来る。
 ちなみに、本来は人里離れた秘境に棲む種族である為、ゲーム本編のようにしょっ中狩られるような状況は、異常事態と言える。
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