殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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ヒーローを憎む女

私は学校が終わってから寮の自分の部屋に戻ると鞄を適当に放り投げてベッドに上向きに寝っ転がる。

 

「はぁ……雄英体育祭か……」

 

『どうした?自信がないのか?』

 

「当たり前よ。他の科目なら何とかなるけど、まともにヒーロー基礎学の授業を受けていない私は圧倒的に不利よ」

 

『果たしてそうかな?』

 

アーサーのその言葉に私は首を傾げると私の意識を保ったまま、身体を動かし始めた。

 

『お前の戦い方は俺の戦い方だ。お前には俺の動きが身体に刻まれている筈だ。それを上手く出して戦えば良い』

 

アーサーはそう言って今度は活用個性でナイフを出して握った。

 

「ちょっと!」

 

『良いか?しっかり、馴染ませる様に覚えていけ。前に試験の為に教えた様なもんじゃない。先ず、しっかりと握って』

 

「声を張り上げてどう……した?」

 

私が無理矢理、アーサーの一方的なイメージトレーニングを受けさせられている時に緋色が私の部屋の扉を開けてきた。

 

そう言えば扉の鍵を掛けてなかったわね……

 

「何してるんだ?」

 

「そ、それは……少し、イメージトレーニングしてた」

 

「ふーん。やるならちゃんと外でやるべきだぞ。他の部屋の皆に迷惑を掛けるからね」

 

私は緋色に注意されて恥ずかしさで少し落ち込むとそこに更に力斗君と志奈さんがやって来た。

 

「どうした?ジルが何かしてんのか?」

 

「お兄ちゃん!女の子の部屋を勝手に覗いちゃ駄目よ!」

 

「そうだそ。デリカシーが無さすぎるにも程があるね」

 

「心配しただけなのに何で俺、こんなに責めなれなきゃいけないんだ……?」

 

哀れ、力斗君……心配してくれたのに私の部屋を覗いただけで二人に滅茶苦茶、怒られてる。

 

『当たり前だ。お前が着替えとか、見られたくない物があったらどうする?そんな時に覗かれるのは嫌だろ?』

 

「(別に構わないわよ)」

 

『おいおい、もう少し男に警戒心を持てよ。お前は整った顔立ちなんだからな』

 

そう言われても私の顔なんてハーフだと言う以外では普通だと思うのだけど……そんな事を考えても始まらない。

 

取り敢えず、緋色達が私の部屋に来た理由を聞かないと。

 

「それで……今日は?」

 

「そうだった。うっかり目的を忘れそうになったよ。君が寮に入ったって二人から聞いたから一度、顔を合わせておこうと思ってね。……大変だったね」

 

「うん。心配掛けてごめんね」

 

「いや、僕も寧ろ押し掛ける様に来てすまないと思ってる。あと……道春先生の事はもう心配しなくても大丈夫だ……僕の家族と暫く暮らす事になったからね……」

 

小声で発せられた緋色のその言葉を聞いて私は道春さんが無事だと分かって安堵していると二人が首を傾げて見ているのに気付いて軽く咳払いして誤魔化した。

 

「皆、ありがとう。あ、そうだ。良かったら珈琲か紅茶を飲んで行く?」

 

「あぁ……すまない。僕は少し顔を出しに来たけでね。迎えを待たせてしまっているんだ」

 

「迎え?」

 

「うん。僕の家族の迎えさ」

 

迎えね……そう言えば緋色ってどんな交通手段で通っているのか聞いた事が無かったわね。

 

「俺達も駄目だ。体育祭に向けて練習するって約束しちまってな」

 

「うん。何だか皆、燃えてるみたいだから」

 

「燃えてる?」

 

「お前が休んでいる間にA組の奴等の所に行ってな。俺達も含めて集まったんだが……クソ、思い出しただけで苛つく!」

 

「え?……何で?」

 

「爆豪って人にザコとかモブとか言われて……」

 

あぁ……彼奴か……力斗君が怒ったり、志奈さんが落ち込むのも分かるわ。

 

「ごめんなさい。最初からあんな奴だから……今度会ったら頭をどついてやるわ」

 

「い、いえ!そこまでしなくても!」

 

「おう!思いっきりやれ!」

 

「お兄ちゃん!」

 

私は勝己の所業に怒りを抱きながら二人と他の科の人達に申し訳なく思ってしまう。

 

彼らだって、もしかしたら少し結果が違えば私達と同じクラスになっていた筈だから……馬鹿にするのは間違ってる。

 

でも……少し前に会った勝己は少し、変わったと思ったけど……やっぱり気のせいだったみたいね。

 

『気のせいかどうかはお前の解釈しだいだがな』

 

「(解釈ね……)」

 

確かにその場にいなかった私が勝己が一方的に悪いとは思わない……とは、言えないけど今の彼は何処か大人しい。

 

判断が着かないのに一方的に怒るのも間違ってるの思えば一度、勝己にその事で問い質してからどついても遅くない。

 

「それじゃまた、明日会おうジル」

 

「俺達もそろそろ行くぞ」

 

「またね。ジルさん」

 

「えぇ。またね」

 

私は軽く手を振りながら見送ると私はウカウカしていられないと思い部屋に戻ると雄英指定とは別の自前のジャージを手にした。

 

『やる気か?』

 

「うん。負けてられないわ。付き合って貰うからね。アーサー」

 

『良いぜ。俺の技をヒーローの技に変えられるのなら変えてみせな』

 

私はそれを聞き、自前のジャージに着替えると部屋の扉をしっかりと鍵を掛けたのを確認した後、外に訓練に向かった。

________

______

___

 

私は今、郊外でアーサー主導の訓練を行っていた。

 

本当なら校内が良かったんだけだ……部活をやっている人もいるから邪魔にならない様にする為にも外に出るしかなかった。

 

一様、門限まで自由に出て良い様になっているけど門限に遅れたらしこたま怒られるのは目に見えるから時間も気にしないと。

 

私は軽いジョギングをして身体を慣らしておこうとしていたら目の前に人が現れた。

 

ジャケットに、キャスケット帽をかぶりショルダーバッグをかけたジャーナリスト然とした出で立ち。

 

そう言った格好の女性が前で止まっていて私は単なる通行人にしてはおかしいと感じて止まって警戒する。

 

「(アーサー)」

 

『怪しいよな。お前を見つめて立ってやがる。まだ明るいとはいえ一様、夕方だ。それに雄英の辺りは見た所、一通りも少ない。気を付けろよ』

 

私は警戒を更に強めた時、女性から切り出してきた。

 

「すみません。警戒されているみたいですが私は怪しい者ではありません」

 

「……だったら何者なの?」

 

「はい。私、こう言う者です」

 

女性はそう言って私に近づくと名刺を取り出してわたしてきた。

 

何の個性を持っているのか分からない以上は迂闊に触りたくないけど私は警戒しつつ受け取る。

 

「社会報書新聞社、広瀬綾乃?」

 

「はい。私はその名刺の通り、新聞記者をしています。要件は他でもありません。是非、取材がしたいのです」

 

この記者さん、綾乃さんは私に取材の為に現れたみたいだけど……

 

「どうしてこんな時間に?それも人通りと無いこの場所で?」

 

「取材許可の申請は出したのですが断られましてね。仕方なく雄英体育祭もありますし、校内もクラブ活動をしている以上は外に出るだろうと待っていました。後は偶然ですね。雄英付近はヒーロー事務所はありますが巡回もそうありません。何しろヒーローの巣窟が山の天辺辺りにありますからね」

 

綾乃さんはそう言ってクスクスと笑う中、それでも私としてはまだ警戒が解けない。

 

何しろ。

 

「私でないと駄目なのですか?他の皆がいた筈です。体育祭の事なら皆の方が分かっている筈です」

 

「それはそうですよね。貴方は暫くの間、不幸な事件に巻き込まれてしまい、休んでいた。あれは大きなニュースにもなりましたよ。何しろこの御時世で銃を使った殺人でしかも住宅街だったのですから。それなのに犯人たるヴィランを"誰も見ていない"……おかしな事件ですよね」

 

綾乃さんは何が言いたいのか分からないけど……その話は私の怒りに触れるって分かって言っているなら怒っても良いかしら。

 

私は殴りたいと言う衝動を抑えながら冷静を装う。

 

「何が言いたいのですか?」

 

「……そうですね。その時の事件。話して貰っても?」

 

言いたい事は分かった。

 

つまり、こいつは一大イベントである雄英体育祭なんて興味はない。

 

私の……思い出すだけでも悲しくて、怒りが汲み上げてきそうなあの事件を喋らせたいだけだと。

 

「話すつもりはありません。私はトレーニングがありますので」

 

「悔しくないんですか?ヒーロー達が怠慢のせいで、貴方の母親の仇がのうのうと塀の外で生きているのに」

 

「ヒーロー達はちゃんと捜査してくれています」

 

「捕まる所か証拠一つ、挙げられていないのに?貴方もお人好しですね。……無能共をわざわざ庇うなんて馬鹿みたいです」

 

綾乃さんはそう言うと営業スマイルを崩して無表情で私を見てくる。

 

その表情に私はこれが彼女の本性なのだと思った。

 

「サッサとヒーロー達のヘマを喋れば同情してくれそうか人達なんて沢山いるでしょうに」

 

「同情なんて欲しくない。貴方はさっきから何なのですか?ヒーローを嫌っているみたいですが?」

 

「えぇ、大嫌いですよ。……綺麗事しか並べないヒーローなんて全員、溝に棄てられて消え失せれば良いのに」

 

綾乃さんはそう吐き捨てる姿に単なるアンチヒーローを掲げる人じゃないと思えた。

 

これは単に嫌いではなく、何処か……憎しみを抱いている……そんな気がする。

 

『お前も気付いたか。あの綾乃って言う女。ヒーローをにくんでいるな』

 

「(そうね。私を挑発してヒーローの失態話を聞き出そうとしてくる辺り、手段は選ばないタイプなんでしょうね。厄介だわ)」

 

私は綾乃さんは厄介な記者だと決めると綾乃さんは腕時計を見て、溜め息をついた。

 

「時間切れです。あまり長時間、話し込んでいると私、不審者だと思われてしまいますから帰りますね」

 

「御勝手にどうぞ。離れられて精々します」

 

「よく言う小娘ですね。まぁ、別に構いません。貴方に体する評価としては……よく出来たヒーローの卵ですかね?あのカルト教団での活躍は聞き及んでいますよ。収賄を聞き出した事とか」

 

「ッ!?待ちなさい!その話は公安から極秘として扱う様に言われた事件の筈よ!幾ら目立っていたとしても何でそれを!」

 

あの事件は後日、公安の職員からヒーローの汚職事件としては大きすぎるとして極秘として扱う様にと言われた筈。

 

目立っていたとは言え、理由は明確じゃないのにどうしてそれを知っているのかと問い詰めると綾乃さんはクスクスと笑うだけだった。

 

「それは企業秘密です。まぁ、記事には出来ませんね。命が幾つあっても足りなくなりますから。それではまた……体育祭でお会いしましょう。ジルさん」

 

綾乃さんはそう言って立ち去ってしまい、残された私は異様な雰囲気を纏う彼女に不気味さを感じてしまい、今回は早めに寮へ帰った。

 

~別視点side~

 

フレイムヒーロー、エンデヴァーは自身の事務所の窓の外を見つめていた。

 

夜の空から降る冷たい雨。

 

その光景にエンデヴァーは過去に起きた出来事を思い出していた。

 

「助けてよ……何で……誰も助けてくれないのよ……こんな社会なんか……ヒーローなんか……消えれば良い……!!」

 

過去に夜の雨の中で出会った一人の高校生の少女。

 

彼女は……泣いていた。

 

社会への……ヒーローへの……自身を苦しめる全てに呪詛を唱える様に叫びながら泣き続けていた。

 

エンデヴァーはこの時、非番でヒーローのコスチュームではなく、私服であり、偶然立ち寄った道に崩れ落ちる様に座り込んでいた彼女を見つけたのだ。

 

悲しみ、失望、怒り、憎しみと各々を宿したあの時に見せた瞳は今でもエンデヴァーを忘れさせないのだ。

 

"忘れるな"と常に付きまとっている。

 

自分の家庭でもバラバラであるのに心の中で少女のあの瞳の色が消えない日々にエンデヴァーははっきり言えば参っていた。

 

少女と出会ってから身元の特定やそして関わった事件を詳しく調べあげ、そして強盗のヴィランとグルだった挙げ句、少女を拉致し、少女の尊厳を奪う様な乱暴を働いた腐敗したヒーローを見つけ出し、証拠を手に問い詰めた。

 

そのヒーローは平和過ぎる社会への鬱憤を晴らす為にヴィランの犯罪に目を瞑り、少女が好みだったから共に襲い、そして訴えられても良い様に根回しや証拠の隠滅をしていたとエンデヴァーに怯えながらベラベラと吐いた。

 

主犯のヴィランは何ヵ月も経った後の事件の為に既に逃亡して行方を眩ましてしまい探し出せず、エンデヴァーはこんな奴が同じヒーローをしていると思うと怒りを抱き、過剰に攻撃してしまうも捕縛し、事件は主犯は行方知らずと言う納得のいかない形で幕を下ろした。

 

エンデヴァーは自分らしくもないが少女の元に謝罪しに行く。

 

その少女はあの時の夜に会ったのがエンデヴァーとは気付いておらず、エンデヴァーを見るや憎悪の表情を見せ、構わず謝罪するも少女の瞳から憎しみの炎は消える事はなかった。

 

エンデヴァーは夜の雨を見るとあの時の少女と事件を思い出し、ヒーローとは、No.1とは何かと問われている感覚を覚えるのだ。

 

本来、今いるNo.2はある意味ではジャスティスに譲られた地位でもあった。

 

ジャスティスは結婚もしていない若い頃から悪を断罪する事を常としたヒーローで悪を許さず、汚い手段を使ってでも捕縛すると言う強い意思を見せ、市民からの信頼が厚いヒーローだったが数年前に議員の汚職を暴こうとして逆に嵌められ、ヒーローとしての信頼を無くし、トップヒーローから転落し、忘れ去られたのだ。

 

失意の内に一時期、日本から去り、遠いイギリスのロンドンへ旅立ち、エンデヴァーは繰り上げのランクアップと勢いあってNo.2へと上りつめたがもし、議員の不正をジャスティスが暴ききっていたらエンデヴァーはNo.3に留まっていたかもしれない。

 

「……ふん。くだらん」

 

エンデヴァーは考えるのは止めだとばかりにそう吐き捨てると仕事へと戻った。

 

調査報告書や警察に提出する書類などが机にあるがその中に強盗を起こしたヴィランとグルであったヒーローが起こした事件の捜査資料も置かれていた。

 

エンデヴァーは未だに諦めていなかった。

 

その事件の片割れのヴィランには"時効"までまだ数日の猶予があり、それまでエンデヴァーは諦めるつもりはないのだから。

 

~side終了~

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