殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
レクリエーションも終わって体育祭はいよいよ終盤。
一対一のガチバトルつまり、模擬戦と言う事になる。
この種目は訓練を受けているヒーロー科の皆が圧倒的に有利だけどね心操君って人は大丈夫なのかな?
相手は出久君。
デメリットがかなり大きい個性だけどまともに攻撃されたら確実に場外に追い出されるのは目に見えている。
『相手の心配よりも自分の心配をしな。お前の相手は確か……』
「(芦戸さんよ。酸の個性はかなり厄介だわ)」
「よろしくねジル。手加減はしないよ」
「うん。此方こそよろしく。芦戸さん」
芦戸さんと軽いやり取りをすると観戦が響くと同時に私はステージを見れば初戦の試合の組み合わせである出久君と心操君の対決を見る。
《色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!》
山田先生のその言葉に歓声は更に大きく響く中、ステージが完成すると出久君と心操君の二人が入場した。
「大丈夫かな……?」
「だ、大丈夫だよ!デク君ならきっと勝つよ!」
「確かに心操君がどうやって勝ち上がったのか分からないが実力と言うなら緑谷君が上回っている筈だ」
「いや、そうじゃなくて。聞いちゃったから……」
「「え?」」
麗日さんと飯田君が言いたい事は分かるけど……私は緋色から昼休みの時にこっそり呼び出されて聞いてしまった。
「心操の個性は洗脳。自らの問いかけに反応した奴を操る個性だ。対策は簡単だ。単に返答しなければ彼は無力だ。口を閉じておく事だ」
「洗脳……!?いや、駄目じゃない緋色!今は体育祭の真っ最中なのよ!他人の弱点を教えるなんて!」
「彼に勝たれるのは僕には……僕達には都合が悪いんだ……勝手で悪いんだけど心操には負けて欲しいんだ。心配しなくても彼の評価は落ちやしないさ。ただ……これ以上に評価が上がってヒーローになる可能性を少しでも潰しておきたいんだ」
「緋色……?」
あの時、私が見た緋色は何処か怖かった。
同じ学校に通う友人の雰囲気ではなく、まるで暗い闇に蔓延る存在……そう、まるで。
ヴィランだった
出久君も緋色から個性を教えられたのかな……もしかしてこの種目に出る全員に?
私は拭えない不安を余所に進んでいく。
《一回戦!!成績の割に何だその顔!ヒーロー科、緑谷出久!!対、ごめんまだ目立つ活躍無し!普通科、心操人使!!》
周りからの歓声が響く中、私は不安な面持ちで二人を見守る中、山田先生がルール説明を一通りした後。
《レディィィィィイSTART!!》
山田先生からの開始の合図が叫ばれた。
試合が始まってから二人の状況は……。
「出久君……!」
『やられたか』
《オイオイどうした!大事な初戦だ盛り上げてくれよ!?緑谷開始早々、機能停止!?》
出久君は心操君に何を言われたのか動かなくなってしまい、このままだと緋色の言っていた通り、操られて場外負けにされてしまう。
『成る程な。これは怖い。とんでもない初見殺しだな。俺でも知らないで迂闊に答えたりしたら負けるな』
「(出久君……貴方が簡単に負けるとは思えないけどこれは流石に)」
私は心操君の個性によって操られてしまった出久君はそのまま後ろの場外へ歩き出した。
『成す術無しか……彼奴にしたらよく頑張ったと言った所だったな』
「(彼は負けないわよ。そうよね出久君)」
『だけどあれをどうすんだよ?他人の手を借りないと目が覚めない筈だ。だが、これは個人戦。チーム戦でないなら心操の方が一歩勝っただけだ』
アーサーから既に負け判定を貰ってしまっている出久君だけど彼なら必ず戦況を打開する。
私はそう信じながら見守る中、突然、出久君の周りに強烈な風圧が起きた。
「……やった!」
『おい、あの土壇場でか?』
《これは……緑谷!!止まったああ!!?》
目覚めて良かったけど……何て無茶をするの全く!
それしかなくても指を負傷させるなんて……もう。
『何て奴だ……これはお前がナイフを突き立てる気を出して負傷させても止まりやしないぞ。神経死んでるのか?』
「(少なくとも神経は死んでなさそうよ。痛そうにしてるから)」
指を負傷させる無茶で状況は打開した出久君はそのまま心操君に向かって行き、心操君も口を開かせる為に何度も挑発してるのか何度も喋っている。
『形勢逆転か。こうなったら能力で勝る出久に心操が勝てる見込みはない。しっかし、心操と心操だ。心の底から本気でヒーローになりたいのなら一辺倒で戦うんじゃねぇよ』
「(無茶よアーサー。出久君はあれでも体術は得意なのよ。投げ飛ばされて終わりよ)」
『それでもだ。自分の力が通じないなら最後の最後まで力を出しきって自分の出せる別の手を使うべきだ。ヒーローは一芸だけじゃ勤まらないって教えられただろ?』
アーサーのその言葉に私は納得して視線を戻した時、出久君が心操君を掴んで殴られても、逆に押し出されそうになっても、諦めずに勢いよく投げ飛ばして場外を取った。
「心操君、場外!!緑谷君、二回戦進出!!」
香山先生からのそう判定の結果を受け、観客達からの歓声が嵐の様に沸き上がった。
「(出久君が勝てたのは良かったけど……心操君の事を思うと残念に思うわね)」
『そうだな。俺にすら背筋を凍らせた様な個性だ。ヴィランになっても不自由しなさそうだがそれでもヒーローを目指した彼奴の事を考えれば勿体ないな。まぁ、その言葉を言いたいのは俺達だけでもなさそうだがな』
アーサーのその言葉に私はヒーロー達のいる観客席を見てみれば心操君の事を称賛するヒーロー達でいっぱいでヒーロー科でない事を惜しまれていた。
『彼奴は必ず登ってくる。追い付かれても追い抜かれるなよ?』
「(言われなくても)」
私はそう言って頷くと二人の健闘を称えながら徐々に迫る自分の戦いをどう切り抜けるのか考えないとならなくなった。
誰も侮れないし、負けるかもしれない。
でも、誰にも譲れない。
私だって、ヒーローになりたいから。