殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
出久君対心操君の試合が出久君の勝利で終わってからB組の塩崎さんと上鳴君の試合だけど……
《瞬殺!!あえてもう一度言おう!瞬・殺!!!》
それはもう綺麗な瞬殺だった。
あえて言うなら上鳴君が技を使い過ぎて阿保になるとそのまま塩崎さんの茨の拘束を受けてしまった。
「(これは……なんて言えば……?)」
『言ってやるな。言ってやらない事も優しさだぞ』
「(そうね。と言うか出久君。観察するのは良いけどブツブツうるさいから止めてくれないかな?)」
『いや、それは口に出せよ』
あまりの早い決着に私は唖然としてからの出久君の悪癖に呆れつつ二人の退場を見守り終えると次の試合、飯田君とサポート科で出久君と同じチームだった発目さんの対決だった。
発明さんはサポートアイテムをフル装備しているのは当然だけど飯田君……貴方までフル装備なのはなんで!?
暫くして結局の所、飯田君は発目さんから切り出された対等な勝負と言う言葉に言いくるめられたみたい。
だって……
「もう言うなら残す事はありません!!」
「騙したなあぁぁぁッ!!!」
試合は発目さんが適当に飯田君から逃げつつ自分の作品のサポートアイテムを紹介してから場外負け、もはやコントとしか思えない二人のやり取りを始めたらのを見たらそうとしか思えないもの。
「飯田君の真面目だからね……」
『やれやれ。真面目なのは良いが少しは人を疑う事も覚えろと言ってやりたいな。良い様に宣伝の手伝いをさせやれやがって』
アーサーは飯田君に厳しく言いつつも何処か懐かしそうな笑みを浮かべる姿に私は首を傾げているとアーサーは私を見た。
『ジル。お前もだ。真面目なのは結構。人を疑わず、信じるのも結構。だが、時に人を疑う事を忘れるんじゃないぞ?飯田のは良い方だったが……騙された挙げ句に最悪、守るべき誰かを死なせてしまうかもしれないからな』
アーサーはそう言って一瞬だけ悲しげな表情を見せた後、また会場の方へ視線を向け直した。
もしかしてアーサーは過去に。
「霧先さん。次は霧先さんと芦戸さんの出番だと思うけど?」
「え?あ、本当だ……考え事をしてて気付かなかった……私、もう行くね」
「頑張ってね!」
私は麗日さんと出久君に見送られながら控え室に急いで走る中、アーサーが呆れた表情をしてきた。
『おいおい、しっかりしろよ。芦戸は控え室に行ってたぞ』
「(それ早く言ってよ!言ってくれたら早く行ったのに!)」
『言った……筈だ』
「(言ってないに等しい言葉よそれ!?)」
私はアーサーに文句とツッコミを入れながら何とか控え室に着いた……と言っても誰かさんのせいで殆どゆっくり出来ないけどね。
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控え室についてすぐに出番の時間になり、私は会場の出入口へと来た。
『芦戸への対策はあるのか?』
「ハッキリ言えば無い。無いけど……身体能力は此方が上。後は力と技術の勝負になるかな」
『芦戸はどちらかと言えば力でのパワープレイなんてしないだろう。だとすればトリッキーな技の使い手になるだろうな』
「そうよね。彼女の酸は強い。此方はナイフを無限に出せると言っても過言じゃないけど何度も溶かされて防がれるのはね」
アーサーと一通り話した私は芦戸さんの厄介な個性に溜め息をつきながら外へと歩み出してステージに上がると歓声が私と向こうから来た芦戸さんを出迎えた。
《華麗な瞬殺劇の次を飾る対決だ!!美しい姿に写るは鋭い刃!?霧先ジル!対するは元気ハツラツなピンクガール!芦戸三奈!!》
山田先生からの紹介が行われると更に大きな歓声が響く。
「負けないよ!霧先さん!!」
気合い十分とばかりに芦戸さんが身構えている中、私はアーサーに一つ釘を刺しておかないといけない。
「手を出さないでよ。アーサー」
『勿論。こんな所で出る俺じゃない』
《レディィィィィイSTART!!》
釘を刺し終えると同時に山田先生からの開始の合図が響くと芦戸さんが先手必勝とばかりに私の周りを酸である程度の足場が残りつつ囲む形で展開した。
《先に動いたのは芦戸!いきなり霧先の周りを酸で囲んだぞ!?》
「成る程ね。賢い戦法だわ」
芦戸さんの個性は酸。
酸は調整でき、自分自身へのダメージもほぼ皆無だからこそ出来る戦術。
この周囲に酸を展開した目的は私の行動を制限する為の物であるのは間違いない。
私が酸で手をこまねく中で芦戸さんはダメージが微小と言う点を上手く活用して攻めるつもりね。
「でも、私のナイフは飛び道具でもあるのよ!」
私がナイフを出して芦戸さんに投擲すると芦戸さんは酸を出して盾の様に展開してナイフを防いで溶かしてしまった。
「霧先さんの戦い方はもう知ってるからね!近寄らせず、投げつけてくるナイフに気を付けて戦えば良いんだって気付いたんだ!」
「……これは」
『打つ手なしか?』
「(まぁ、一見すれば……)」
私は芦戸さんが気付いてしまった攻略法に頭を悩ませてしまう中、山田先生の実況は響き続ける。
《うおぉと!霧先!芦戸の酸に手も足も出ないのか!ナイフを一本投げただけで止まってるぞ!?》
私が動かくなった事に山田先生は指摘してくるけど今はそれ所じゃない。
足場は完全に無くなった訳じゃない。
いくら個性でも液体を正確にバラ撒くと言うのは難しい。
それが幸いしたけど足場を使ってその後の事を考えるとなると……
「どうかな?これなら幾ら霧先さんでも動けないよね?」
「そうね。でも、足場があるわよ?」
「そうだけどバランスを崩したら大変だよ?弱く調整してるけど酸だから火傷しちゃうよ?」
「バランスを崩さなきゃ問題にならないわよ」
私はそう言って近くの足場に飛んで見せると芦戸さんが軽く震えた様に見えた。
「(彼女もしかして?)」
『ビビってるのはあっちかもな。お前が転けて酸で火傷しないか不安なんだろう。自分の扱っている個性が何れだけ危険なのか分かってないとしない反応だ。ハッキリ言えば相手に酸を当てる覚悟が出来てないんだろう。誰かを傷付ける行為。これはヴィランだけの事じゃない。ヒーローにだって戦いと言う概念があるなら怪我させる事は避けられない事だって教えてやりな』
「(分かったわよ)」
アーサーの推測を聞いた私は足場を軽く飛び越えながら芦戸さんに近づいていく。
「え、ちょっと!?」
「芦戸さん。これじゃあ私は止められないわよ?貴方の自慢の個性を使いなさい」
「いや、それじゃ溶けちゃうよ!」
芦戸さんが戸惑う中、私はナイフを芦戸さんに向けた。
「覚悟を決めなさい。ヒーローだって相手を傷つけないと止めれない時だってある。確かに相手によっては怪我なんてさせたくない人だっているかもしれない。でも、ヒーローになりたいなら相手を傷つける覚悟を持ちなさい。私は覚悟をとうの昔に決めたわ。貴方も決めなさい」
私はそう言って芦戸さんにナイフを向け続けるけど、芦戸さんはまだ何処か吹っ切れていない。
私は痺れを切らして酸の水溜まりにそのまま踏み込んだ。
「熱ッ!?」
「ちょっと何してるの!?」
芦戸さんが慌てて私を酸の水溜まりから引っ張り出そうとした所で私は芦戸さんの腕を掴んで押さえ込んだ。
「戦闘中よ芦戸さん。心配してくれるのは良いけどね」
「い、いや!それよりも霧先さん!」
「こうなった以上は私は最後まで戦うわよ?……すっごく熱いから行動は早めにね」
私は足が焼ける感覚を覚える中、芦戸さんは暫く迷いを見せた後、大きく叫んだ。
「あぁ、もう!私の敗けだよ!!降参!!」
「芦戸さん!降参!!霧先さん二回戦進出!!」
私はそれを聞くとすぐにステージから飛び出ると転がる。
「熱い熱い!やっぱりやるんじゃなかった!」
「き、霧先さん!?」
「ちょっと!?大丈夫!?」
足が酸に焼けて熱くて転がる私を心配して近寄る芦戸さんと香山先生に私は冷や汗と涙を流しながら視線を向けた。
「ご、ごめんなさい……少し痩せ我慢してた……」
「痩せ我慢!?我慢するくらいならやっちゃ駄目じゃん!?」
「と、取り敢えずリカバリーガールの所へ運ぶわよ!」
私はそう言われて担架型のロボットに運ばれる形で退場を余儀なくされてしまった。
因みに足の火傷は後遺症も無い所か痕すら残らずに済み、リカバリーガールから軽い火傷だった良かったんだとたっぷりとお説教を貰ってしまい。
「次、あんな無茶をしたら知らないよ」
と最後に釘を刺される形で取り敢えずお説教は終わった。