殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
私はオールマイトの授業を終えてコスチュームから制服に着替え直して教室に戻ると皆が私の所に集まり出した。
「あ、霧先!」
「訓練お疲れ様!今日は参考になったよ!」
「えぇ、お疲れ様」
私の所に集まった皆は私とあまり接点がない人達ばかりで少し動揺する中、皆は自己紹介を始めた。
「俺ぁ切島鋭児郎!俺達、訓練の反省会をしようと思ってたんだ!一緒にどうだ?」
「私、芦戸三奈!」
「蛙吸梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「改めて俺、砂藤!お前と組めて良かったぜ!」
「ウチは耳郎響音。アンタにはやられたわ」
「俺は上鳴電気!傷の事は治して貰ったから気にしなくて良いで」
「私は霧先ジル。皆、これからよろしくね」
入学してからあまり接点は皆と無かったけど仲良くなれそうだと私は思う中、勝己が自分の鞄を持って教室から出ていこうとしていた。
「待って勝己」
私は勝己に声を掛けると振り返ったがいつものイライラした顔をしておらず罵倒もない。
やはりあの訓練で勝己は何処か落ち込んでいるのだと分かった。
「ねぇ、勝己。皆が反省会しようって誘ってるんだけど」
「……やらねぇ。俺は帰る」
「え…ちょっと!勝己!」
勝己は短く応えてそのまま呼び掛けにも聞かずに教室から出ていった。
私や皆はその姿を黙って見送った後、私はやっぱり勝己の事をほっとくのは出来ない。
「……ごめん。私も帰るわ。出久君にも伝えてくれる?」
「そ、そうか。なら、伝えておこう」
飯田君がそう言ってくれると私は鞄を手に急いで勝己を追い掛けた。
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私は急いで勝己を追い掛けて走る中、勝己は校門を通ろうとしている所だった。
「勝己!」
「んだよ……しつけぇぞ」
「……少し、話さない?」
私はそう言って静かに見つめ、勝己は鋭い視線を返してくるがやがて諦めたのか溜め息をついた私の方を見た。
「勝己。貴方、訓練の事を引き摺ってるの?」
「それがどうした?そんな事を言う為に来たのかよ?」
「違うわよ。貴方は訓練の後から……貴方らしくない。いつものテンションは何処やったの?高笑いして、口悪く言う貴方は何処?」
私の言う事に勝己は私を強く睨み付けるがそんなのは慣れっこだ。
私は勝己に詰め寄ると話を続ける。
「私はね……貴方が嫌いだけど貴方は強い人だと思ってる。性格が悪くて傲慢だけど貴方が弱々しくなる姿なんて見たくないわ」
私がそう言うと勝己は無言のままで何も言わない中、後ろから誰かが走ってくる気配を感じて私は振り返るとそこにはボロボロになった出久君がいた。
「かっちゃん!!!」
「あぁ?ちッ…今度はテメェかよ」
勝己は鬱陶しいとばかりにそう言う中、出久君は暫くうつ向いた後、私に視線を向けた。
「ごめんジル。僕とかっちゃんだけで話して良いかな?」
「……良いの?」
「うん……どうしても……かっちゃんに言わなきゃいけない事があるんだ……」
出久君はそう言うと私に頭を下げてきた。
その姿に私は溜め息をつくと出久君の近くに行き、頭を上げさせる。
「分かったわよ。私はもう帰るから後は二人で話なさい。勝己も良いわね?」
私は勝己にそう言うと何も言わず無言で見てくるからそれを了承と受け取って私は心配だけど二人を置いて帰宅する事を撰んだ。
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私は二人を置いての帰り道、駅へと歩く中で二人の事が何処かで引っ掛かりながら黙々と帰宅する。
『おいおい、そんなに思い詰めるなら無理矢理にでも残れば良かっただろ?』
「(そんなの出来ないわよ。出久君が自分から勝己と話すなんて驚いたけど彼からの頼みだし無下にしたくない)」
『だとしても勝己だぞ?怪我人の出久に対して手を出さない保証は無いぞ?』
「(そこまで馬鹿ではないと思うわよ。たぶん……)」
私はアーサーのせいで心配になる中、路地の前を横切ろうとした時。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「なに!?」
路地に響く様に聞こえた悲鳴に私は驚き、路地を見るが薄暗くてよく見えなかった。
私は何があったのか路地に近づこうとした時、身体が途中で止まった。
『止せ、ジル。お前が行ってどうするつもりだ?』
「何って……誰かが襲われてるかもしれない!確かめないと!!」
『無理だ。あの悲鳴が聞こえたのは一度きりだ。……もう死んでる。それにもし、見に行ったとしてヴィランに鉢合わせたら?被害者の近くに行ってその姿を見られたら?お前はどうするつもりだ?』
「分かってる!分かってるから……もし、何かあれば引き返して警察かヒーローに通報する」
『……俺は知らないからな』
私はそれを聞くと身体の自由が戻ったのを確認すると薄暗い路地へと足を踏み入れた。
路地の中もやはり暗く、よく見えない中で私は悲鳴が発せられた場所へとやっとの思いで来ると暗闇の中だが、むせ返る様な鉄に似た匂いが酷く立ち込め、更に地面には水溜まりの様な液体が広がっていた。
……血だ。
血溜まりが地面に広がっていてそれが匂いの原因だった。
そして、その血溜まりを辿って見れば人らしき影が転がっており、それが死体だと嫌でも理解出来た。
「これは……うぐッ!?」
『吐くな馬鹿。此処は事件現場だぞ』
「……分かってる。やっぱりこれは」
『死体だ。この血溜まりなら刃物か何かを使ったんだろうな。地面に這った後や手に汚れの類いは無い……一撃だ』
「……とにかく、警察に!」
「そこで何してやがる!!」
私はその声に視線を向けるとそこには茶髪が似合う青年で、前に開けた目立たない様な色のロングコートやブーツと言った服装だ。
驚いている私に青年は早足に歩いてくると私に詰め寄った。
「テメェ……まさか巷で騒がせてやがる連続強盗殺人犯のヴィランか?」
「ち、違います!私は悲鳴が聞こえたから……」
「悲鳴が聞こえたら普通は通報するだろうが。この場にいて連続強盗殺人犯じゃなければなんだって言うんだ?」
どうやら青年はヒーローなのか私を事件の犯人なのかと疑っているらしく怪しい奴を見る目で睨んでくる。
このままでは私は事件の容疑者として連行され運が悪ければそのまま逮捕になる。
個性についてもマズイ所もあり、あの被害者は明らかに刃物で切り裂かれて死んでおり、私の個性ならそれが可能と言う事で余計に疑われてしまう。
私は何とか弁明しようとした矢先、そこへ今度は緑のショートヘアの女性が現れた。
「何かあったのジャッジ?……死んでるの?」
「レディ・クイック。見ての通り事件だ。こいつが例の事件の犯人か別件か分からねぇが一様は容疑者だ。俺がこいつを見張る。お前は死体を調べてくれ」
ジャッジと呼ばれた青年に指示されたレディ・クイックは死体の状況を調べ始めた。
『だから言ったんだ。どうする?逃げるか?』
「(ヒーロー相手に?無理でしょう……それに逃げたら自白した様なもの。しかも顔もバッチリ見られてるのよ)」
『確かにな。だが、すぐにお前は疑いから晴れるぜ』
「(え…?)」
「ジャッジ。その子は違うわ。派手に切られてる……もし、彼女が犯人なら返り血が着いてるわ。そして死体はまだ暖かい……私達はすぐに来たから着替える余裕も無かった筈よ」
レディ・クイックの言葉を聞いたジャッジは外れかとばかりに舌打ちした後、私に視線を向けた。
「……疑って済まなかった。状況が状況だったからな」
「いえ……分かってくれたなら良いです」
「貴方、雄英のヒーロー科の子ね。駄目よ。いくらヒーローを志望していても学ばない内に危険な事に踏み込んではね」
「すみません……」
調べ終わったのかレディ・クイックの注意を受けて私は少し落ち込んでしまう。
「仕方ねぇ……下手人のヴィランに逃げられたなら此処で時間を潰しちまった以上はもう追えねぇ。お前。名前は?何年だ?学校名は良い。嫌ってくらい知ってるからな。また雄英に事情聴取に行くから教えろ」
「霧先ジルです。1年です」
「霧先?お前……まさかミストヒーローのジャスティスの娘か?」
「父さんをご存知で?」
「ご存知と言うよりも……私達の上司ね。私達はジャスティスのサイドキック。この人はジャッジ。私はレディー・クイックよ」
「え?父さんの……サイドキック?」
私はまさかこんな所で父さんのサイドキックと会うなんて思わなかった。
『へぇ、お前の親父さんはサイドキックを雇ってたんだな?』
「(まぁ、余裕が無い訳じゃないから。サイドキックを雇ってるって聞いた事があるけど誰かは知らなかった)」
「今はそんな事は良いだろう。それよりも警察と近隣のヒーローを呼べ。調査して下手人を探すぞ」
「分かってるわよ。ジル。怖いけど貴方はもう暫く此処にいて。今は送ってあげたいけど二人しかいないから」
「はい。ご迷惑をお掛けします」
私は迷惑を掛けたのは事実である為、謝罪した後、殺された被害者を見つめる。
何故……どうして……殺されなければならなかったのか……
どんな理由があったのか分からない……でも……殺人は許されるものではない。
私は……何もしなくても……良いのかしら……