殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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教会への調査

私はフォールン・救火の率いるアズエル教会を調査する為に人目を避けつつ教団員を追い、その教会があるとされる位置まで来るとそこには何の変哲も無さそうな大きめな礼拝堂が一つだけあった。

 

「(此処がアズエル教会?)」

 

『そうらしいな。どうする?一度入ってみるか?』

 

「(殺人鬼の私達が?)」

 

『別に顔バレまでしてないんだ。さっき入っていった信者らしい奴がいたが奴等の服装を見た限り、どんなご身分でも歓迎らしい。だったら堂々と入らせて貰おうぜ』

 

「(……まぁ、それもそうね)」

 

私はアーサーに賛同し、教会へ近づくとドアノブに手を伸ばして扉を開けた。

 

中には信者らしき人々がおり、静かに座っており何かを待っている素振りだ。

 

私は取り敢えず席を探して歩いていると視線に笑顔で手招きしている丸眼鏡の少し質素な服装をした女性がいた。

 

隣が空いているのが分かり、綺麗な人なのにもう少し着飾らないのかななんて思いながら私は遠慮なく座らせて貰った。

 

「ありがとうございます。助かりました」

 

「良いのよ。貴方、若いわね。学校は良いのかしら?」

 

「はい。もう……行く事はありませんので」

 

「……訳ありなのね」

 

女性は悲しげな表情を見せるけど私は特に何も思わなかった。

 

私に雄英を去った事には後悔は無い……あるのは復讐だ。

 

警察やヒーローでは裁けない悪を見つけ出し、罪を暴き、自らの手で裁く。

 

その先の目的である母さんの仇を取る為に。

 

その為なら……誰にも迷惑を掛ける必要が無くなるなら……辞めたって良い、行方を眩ませたって良いから。

 

「えぇ……そんな感じです。貴方は?この時間です。仕事をしていてもおかしくなさそうですが?」

 

「……私は……帰る場所を失くしたの……」

 

「帰る場所を?」

 

「そうよ……帰る場所……待っていてくれる人……その全てを……私の夫はどうしようもない人だった……でも、彼にも良い所があるって知っていたから……私はずっと一緒にいたかった……なのにあの人は私が肺を患ったばかりに……罪を犯して……殺されて……」

 

「(それって……)」

 

『成る程な。彼奴の妻か。こいつは』

 

私は過去に殺した連続強盗殺人犯のヴィランを思い出した。

 

彼は妻がいると聞いてたけどまさか、こんな所で会う事になるなんて……帰る場所が失くなったと言うのは恐らく、文字通りか周りの人からの嫌がらせか。

 

何れにしても私のせいね。

 

「そうですか……辛い思いをしましたでしょう。私も大切な人が殺されまして」

 

「貴方も?」

 

「そうです。母さんが……殺されました。犯人は誰かは分かりません。私は……犯人が憎いです。殺したくて堪りません。貴方はヴィランとは言え、貴方の大切な夫を殺した相手を恨んでますか?」

 

「……そうね。恨みが無い訳じゃないわ。でも、私は復讐を望まないわ。あの人が私の人生を壊したかもしれない。でもね……それでも病院で入院していた私に欠かさずにお見舞いに来てくれていたあの人は……どんなに他人に悪く言われても私にとっては優しい人だった。そんな彼が私が復讐をしたなんて知ったら悲しんでしまうわ」

 

綺麗事に聞こえる……でも、憎まない気持ち……それはどんなものかしらね。

 

とても重いものでしょうね……なら、もし貴方がその仇を目の当たりにしたら……恨まないといえるのかしら?

 

まぁ、言うつもりも無いけどね。

 

「そうですか……貴方は強い人ですね」

 

「そんな事はないわ。現に私は此処に来たから」

 

「それってどういう意味で?」

 

私はその言葉に疑問を持ち、聞いたが奥からフォールン・救火が現れ、女性は人差し指を立てて静かにと言う仕草を取った。

 

「皆様。お待たせしました。これより祈りの時間とさせて頂きます」

 

「(祈りの時間?……普通ね)」

 

私は宗教でもよくある様な事に首を傾げているとフォールン・救火は続ける。

 

「この祈りの時間によって今回の救済される方が決まり、その方は現世の枷から解放され、神聖な炎によって救われるでしょう」

 

「(救済される方?現世の枷?それに神聖な炎?……何だろう……急に胡散臭くなってきたわね)」

 

『新興宗教なんてそんなものだ。具体的に何されるか言ってないな……奴等の言う救済とは何か……気になるよな?』

 

アーサーの言葉に私は軽く頷くと聖歌が流れ、信者達は一斉に下を向いて目を閉じ、両手を合わせると祈りを捧げ始めた。

 

私もそれに習いつつ薄目を開けて周りの様子を伺うと聖歌はフォールンが聖歌を歌っており、その声は天にも届きそうな程の歌声だ。

 

だが、周りの教団員達は祈っていない。

 

寧ろ、何か……選別してる様子だ。

 

うつ向きながらで尚且つ薄目で見てるからよく見えないけど教団員は祈りを捧げていた男の人に話し掛けると連れて行き、奥にある重厚な扉を開けてそのまま中に入ってしまうと再び閉じられてしまった。

 

『怪しい扉だなジル。何でこの状況で連れていったのやら』

 

「(分からない。けど……この教団はおかしい)」

 

私はアズエル教会が何かおかしいと確信した時、聖歌は終わり、信徒達は祈りを止めて頭を上げ始めており、私もそれに合わせる。

 

「皆様。今回の救済すべき方が決まりました。かの方は救済の炎に当てられ、浄化され、天に召されるでしょう。選ばれなかった方々は気を落とさないで下さい。貴方方も必ず……救われますから」

 

フォールン・救火はそう言って天使の様に微笑むと他の信者達はありがたい物でも見た様に歓喜している。

 

隣にいる女性も同じで笑顔で祈る手を止めない……言わば狂信者とでも言うべき姿だった。

 

「(さて……取り敢えず内部事情は知れた。次の目的は……)」

 

『あの扉の奥に何があるかだ。……まさか、麻薬を扱ってないだろうな?』

 

「(神の家なのに?)」

 

『神の家だからって犯罪が無い訳ではないからな。ほら、気を見て此処から出るぞ』

 

私はアーサーの助言に従い信徒達が礼拝堂から立ち去り始めたのを見計らって私も外に出ようとしたけど誰かに肩を掴まれた。

 

「お待ち下さい。綺麗な紅い瞳の方」

 

『逃げそこねるなよ?』

 

「(分かってる)」

 

私は一呼吸すると反転して笑顔でそこにいるであろうフォールン・救火の方へ振り向いた。

 

「何でしょうか?」

 

「貴方は……初めての方ですね?」

 

「そうですが分かるのですか?」

 

「はい。信徒の方々のお顔を私は覚えているので貴方を見た時に初めての方だとお見受けしました」

 

フォールン・救火は笑顔でそう言ってくるけど私は内心、ヒヤッとした。

 

流石に初めて来た人なんて言ってもすぐに分かる者ではないと思う。

 

「それでご用件は?」

 

「……貴方は……此処へ何をしに参られましたか?」

 

「……参られましたかと言われても此処に興味があったので」

 

「それは随分昔に聞かせて貰った言い訳ですね。……アーサー・ヒューイットさん」

 

「ッ!?。……誰の事を言ってますか?」

 

まさかアーサーの名前を言ってくるなんて……でも、何でアーサーの事を知ってるの?

 

『……ジル。少し身体を貸せ』

 

「(どうするの?)」

 

『俺の予想通りなら……知り合いだ』

 

私はどうせ言っても聞かないと分かっているので素直にアーサーに身体を貸すとアーサーはニヤリと笑って見せ、フォールン・救火を見つめる。

 

「まさか……お前とまた会う事になるとはな……ザフカ・エル・ビナー」

 

「やはり貴方でしたか。大変お久し振りですね。だいたい……100年程ですか?」

 

「そんなもんだろうな」

 

嘘……アーサーは19世紀の殺人鬼。

 

当然、アーサーの知り合いなんて尽く死んでる筈……なのに此処にいるフォールン・救火もといザフカ・エル・ビナーはアーサーの知り合いとして此処にいる。

 

「今度は何をするつもりだ?麻薬か?遺体強奪か?」

 

「いいえ……そんな物では人は救えないともう分かっています。人を救う方法……それは私の手で救済する事です」

 

「……テメェ……あの時に言っていた救いとやらをやるつもりか……!!」

 

『救い?』

 

「(過去にこいつは医療用麻薬を使って洗脳し、金を巻き上げる広告塔の様な奴だった。俺はその裏で操っていた奴は殺したが証拠隠滅のつもりなのか火事を起こされて……麻薬に犯された信徒達は自ら炎に飛び込んで死んだ。その時にこいつは狂って自らの手で救いを与える……つまり、殺せば良かったと言ったんだ)」

 

『……それは……とても深い考えね……悪い意味で』

 

私は目の前の天使と思えた人物が悪魔の様な考えを持っている事に寒気を感じるとフォールン・救火の笑顔はまるで悪魔の様な物だった。

 

「人には寿命があります。いずれ来る死には抗えない。そこに貴賤はありません。ならば……社会の差別に苦しみ、治せない病で苦しみ、居場所を失って孤独に、全てに絶望した方々に救済し、痛みも病も差別すら無い楽園へと導くのです」

 

「あの時の男は?どうするつもりだ?救済の炎……まさか」

 

「救済の炎。それは火で身体を焼いて……楽園に導くのです」

 

フォールン・救火のその言葉に私はアーサーから無理矢理に主導権を奪い返すとその首にナイフの刃を突き付けた。

 

だが、フォールン・救火は笑っている……まるで殺されないとばかりの余裕だ。

 

「無駄ですよ。私が死んでも私を継ぐものが行います。そして周りをよく確認しましたか?此処はヒーロー事務所が建ち並ぶ中心地……騒ぎを起こし、私を殺せば貴殿方は終わりです。私を訴えてもこの地域のヒーロー達とは良い関係を得させて頂いています。そう……例え証拠はあっても私は捕まえられません。どちらを取ってもです」

 

フォールン・救火はそう言ってのけ、私はその言葉に怒りを抱いた。

 

状況が悪いなら仕方ない……機会をまた伺って計画を建てて殺せば良い。

 

でも……ヒーローと癒着しているなんて思わなかった!

 

人殺しを容認する新興宗教と腐敗したヒーロー達……最悪で卑劣な関係を持つこいつらはとても許せない!

 

『落ち着け。慌てる事はない』

 

「(でも!!)」

 

『俺は諦めたなんて言ってないぞ?策を練り直せば良い……そうだろ?ほら、変われ』

 

アーサーはそう言って私からまた主導権を取るとナイフを下げ、また笑みを浮かべた。

 

「アーサーさん。私は昔も今も変わりませんよ。死がもたらすのは……救いだと言う事を」

 

「……なら、俺が否定してやるよ。それが俺の役目だ。待っていろよザフカ……必ずお前を地獄に送り返してやる」

 

「それは楽しみですね。またのご来訪を……お待ちしておりますよ」

 

フォールン・救火はそう言って出口は彼方だとばかりに手を礼拝堂の扉に向け、アーサーは扉に向かって真っ直ぐと歩いていく。

 

その時のアーサーの表情はとても……悲しげだった。

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