殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
私は昨日、しっかりと身体を休ませてフォールン・救火そしてアズエル教会の教団員達を始末するべく私は今まで以上に警戒しながら街の路地を歩きながらイヤフォンを耳に着けてラジオを聞いていた。
《続いてニュースです。昨日、遂にあの
流れるラジオのニュースから私の事がしっかりと伝えられる中、私はラジオを切ってイヤフォンを外すとアズエル教会の礼拝堂の前に立った。
「さぁ、"仕事"の時間よ。アーサー」
『張り切って行こうかジル!』
私はアズエル教会の悪事を暴くべく礼拝堂の扉を開け放つとそこにはアズエル教会に集められた信者達と教団員、そしてフォールン・救火がそこにいた。
「じ、
「いやあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「ふ、フォールン・救火様!!」
信者達は私を恐れてフォールン・救火の後ろへと行き、フォールン・救火は信者達を庇う様に前に立つと教団員達は何処から出したらのか一部、武器を持つ者もいる。
「フォールン・救火!来てあげたわよ。覚悟は良いかしら?」
私はそう言って礼拝堂の扉を後ろ手で扉を閉めると鍵を掛けた。
この礼拝堂は恐らくは防音性があり、もう祈りの時間とやらは始まってだけど全く歌声は聞こえなかった。
つまり、閉じてしまえばもう外には聞こえない。
一部、悲鳴を挙げられたけど外は私とヒーロー達の混乱のせいで人が戻りきっていない。
つまり、通報される心配すらないので安心して殺せる。
「これはこれは。やはり来ましたか。今はどちらでしょうか?」
「今はジルよ。フォールン・救火。お前は罪を犯した。それが何か……分かるかしら?」
「あっはっは!突然、何を言い出すかと思えば私が罪を犯したと?」
「嘘を言うな殺人鬼め!!」
「フォールン・救火様が罪を犯したなど戯れ言を!!」
「恥を知れ!!」
当然の様にフォールン・救火は否定し、信者達は出鱈目だとばかりに私に罵倒してくる。
これは……かなりの重症ね。
『ふん。信じるのも良いがな……ジル。現実を信者共に見せつけてやれ』
「フォールン・救火!お前が幾ら誤魔化しても罪は暴かれるのよ!これを見なさい!!」
私はフォールン・救火や教団員、信者達に見せつける様にある物を見せつけた。
そのある物は個性届の書類だった。
その個性届の登録者は……フォールン・救火の物だ。
顔写真付きでご丁寧にレッサーパンダの事務所の金庫に厳重に保管されていたのを見つけだした。
フォールン・救火の個性……それは。
「魅力の歌声。お前の歌声によって人々を魅力し、洗脳していく個性。効果は小さなものだけど何日も聞き続ければもはや疑う事を知らない人形に成り果てる。ただし!それは真実が知られないまでの間だけ……そうでしょう?」
「……まさかそれを見つけるとは思いませんでしたね」
「おかしいと思ったわ。ヒーローを後ろ楯にしていたとは言え、何処から賄賂に使う大金を得ていたのか……つまり、他に後ろ楯がいて後ろ楯と言ったヒーローの三人はブラフ。厄介な存在になりつつあったから私に始末させようとしたのね?」
「えぇ、そうです!あと一人だったのですがその最後を始末し損ねるとは思いませんでした。そして、その個性届も見つけるのも。予想外でしたよ!」
フォールン・救火はそう言って高笑いする。
その顔は天使の顔ではない……それは悪魔、堕天使の笑顔だった。
「ふ、フォールン・救火様……?」
「そ、そんなの嘘ですよね?」
「ワシらは貴方様が救済の炎を受けきれて死ねば幸福になれると聞いていたのです!そうでしょう!?」
「えぇ、そうです!真実はどうあれ!幸福になり、あらゆる苦しみから解放されますよ」
「それは違う!!お前の行った洗脳で信者達にそうすれば幸せになれると言い、死に追いやろうとしているだけだ!信者の皆は本当に死にたいのかしら?自分の胸に聞きなさい!宗教ではなく、己自身の心の声に!!」
私の訴えに信者達は迷う者、現実を受け入れられない者、フォールン・救火に疑いの目を向ける者と分かれる。
「……俺、確か単に差別反対の団体だって聞いて此処に来たんだった……」
「わ、私は無個性だからと虐められて……だけど死のうなんて考えてない!!」
「俺はこんな姿でも受け入れてくれるって聞いたから入ったんだが……死ぬつもりは全く無かった」
信者達は己が本当に死にたかったのかと考え、そして得られた答えが死ぬつもりは無かったと言う事実だった。
信者達は自分が何故、そんな事を考えていたのかと混乱し、恐怖し、フォールン・救火を睨み付けた。
「フォールン・救火!俺達を騙していたのか!!」
「私は貴方の親切な言葉や優しい歌声を信じていたのに!!」
「あんまりです……あんまりです!!うぅ……!」
「それじゃあ、俺達より前の奴は……」
「こ、殺されたって事か……!?」
信者達は怒り、嘆き、絶望する状況となり、私はフォールン・救火に詰め寄ろうとすると教団員達がフォールン・救火を庇おうと前に出て来たけどまだ殺るつもりはない。
「分かったでしょ?……貴方達の慕ってたフォールン・救火は……偽物の救い手よ」
「そんな事はありません!!」
その声は礼拝堂に響き、私は視線を向けるとそこには前に会った女性だった。
「私は……死にたかった!夫を喪って!行く場所も無くて!犯罪者の身内だからと疎まれ、虐げられて!……もう……生きる事に疲れていた時にフォールン・救火様が私に此処に留まって良いと。私に死こそ救いだと教えてくれたの。……だから、フォールン・救火様を悪く言わないで!!」
「貴方……洗脳を受けてないの?」
「私は……死こそが救いだと信じています。それを信者達に隠し、執り行っていた事は事実。ですがそれは少しでも死の恐怖を無くす為、少しでも楽にしてあげたかっただけ。私は隠した事は事実でも……騙してはいません」
「死ぬつもりは無かった人達がいるのに言うのか!!」
私はそれを指摘しても悪魔の様な笑みは消えない。
『こいつは振り切っている。何を言っても無意味だ。それを気付け、ジル』
アーサーのその言葉に私は自分が何処か、フォールン・救火を説得して罪を償わせようとしていた事に気付き、私はフォールン・救火を殺す為にナイフを手にした。
「フォールン・救火!!お前の言いたい事は分かった……でも、認められない。例え人を救う為とは言え、そのつもりは無かった人達を害する行為は悪であり、罪!!貴方は私が……裁く」
「そうですか。なら……仕方ありませんね」
フォールン・救火がそう言った時、何だろう……焦げ臭い匂いが礼拝堂内に立ち込めた。
まさか……!?
「礼拝堂に火を点けたのか!!」
「あっははは!!さぁ、皆様!!私と共に救済を受けましょう!!あーはっはっは!!!」
フォールン・救火が狂った様に高笑いし始め、私はナイフを片手に躍り出ると教団員達を素早く仕留めると私はフォールン・救火の首にナイフを深く突き立てた。
「がはぁッ!?」
「終わりよ……これ以上は死なせない。私が必ず彼らを助ける」
私はそう告げるとフォールン・救火は虚ろな目をする中、私に微笑みを見せた。
悪魔でも堕天使でもない……天使そのものの微笑みだった。
私はナイフを引き抜くとフォールン・救火は倒れそうになると私はそれを受け止め、静かに寝かせた。
火は油でも仕込んでいたのか礼拝堂の全体をすぐに覆ってしまう中、出入り口の扉はまだ、何とか突破出来そうだ。
「……全員、聞け!今から此処から抜け出させてあげる!死にたくない人達はすぐに動きなさい!!」
「……行くぞ!死にたくはないからな!!」
「そうよ!私達は生きるの!!」
「差別や虐めなんかに負けない!!私達はどんなに辛くても生きていく!」
「異形系で力のある奴は扉をぶち破ってくれ!まだ間に合う!!」
「おうよ!!」
信者達は生きる事に意味を見いだすと一斉に動き出し、異形系の男が勢いよく扉に突進するとぶち破った。
そこから信者達は逃げだす中、一人だけ放心して動かないあの時の女性がいた。
「……行かないの?」
「……そうね……私はもう疲れたの……皆の様に強くはないわ……」
「生きていれば必ず良い事はあるわ!貴方は此処にいる時、信者達に何かされたの?恐らくは何もされていないでしょ?」
「皆は優しかった……ヴィランの妻の私にとても親切で……境遇を悲しんでくれて……でも……フォールン・救火様も同じだった……私の相談を心身に聞いてくれて……この教会の真の目的を話された時も引き返す事も言ってくれたの……」
『彼奴が?』
「引き返す道を?」
私は死こそ救いだと言っていたフォールン・救火がまさかそう言うとは思わなかった。
「フォールン・救火様は過去に自身の過ちで多くの人々を死なせたと話してくれたの……その罪を……報いを受け入れる為に……一度決めた道を誤れないと……その行いによって地獄からの亡者の使いが来ても静かに受け入れると……言っていたわ……ふふ、今思えば地獄からの使いは貴方の事なのね」
「……もう一度、言う。逃げないのね?」
「えぇ……知っていで皆に教えなかったのは私も同罪。罪を……受け入れるわ」
女性はそう言って優しい微笑みを見せると自分の鞄から何かを取り出した。
「これを。フォールン・救火様が貴方にと」
「……これは?」
「貴方なら……きっと、分かると……このアズエル教会を設立した真の黒幕。その人物に行き着ける為の物だと」
私が渡されたのは何かの書類で所々読んでもおかしな所は無い……よく調べないといけないわね。
「分かった。もう……言わないわよ」
「えぇ……ありがとう。それと夫の事は……もう、恨んでないからね」
「……知ってたなら……もう少し、早く言って欲しかった……ごめんなさい……貴方の大切な夫を殺した事を……」
私はそれだけを告げると礼拝堂から脱出する。
その際に死んだ筈のフォールン・救火の歌声が聞こえた様な気がした。
それは美しく、心を落ち着かせ、そして悲しいものだった。
私は礼拝堂から抜け出すと出入り口は火災で崩れ落ち、もう立ち入れなくなる。
信者達は無事、一人だけ残った彼女を除いて全員、脱出するとお互い身を寄せ会いながら泣いていた。
自分達を助けてくれると思っていた者からの裏切りとも取れる行為……だけど、それでも信者の事を思っていたフォールン・救火に怒りを覚えても恨む事が出来ない。
そんな感情が入り乱れる中で彼らは生きようと言う強い意思を見せていた。
私はそれを見届けるとヒーローや警察が集まりだす前にその場から立ち去る為に歩き、路地へと入った。
路地を歩く中、雨が降ってきて私はずぶ濡れながらも歩き続けた。
雨のせい目の前の光景がボヤけてしまい、何度も目を拭いてもその光景はボヤけたままだった。
……アーサーもこんな感じだったのだと思いながらやるせない気持ちの中、私は路地の奥へと進んだ。