殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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【第二話】潜む社会の深淵【END】

私はアズエル教会の周辺から大きく離れた位置にある複雑に入り組んだ路地の道の先にある古いビルへと足を運んだ。

 

仕事に行く前に緋色から鍵を渡されて

 

「まだ落ち着ける場所が無いならここの住所の物件を使ってくれ。それとスマフォもな。少し、色々としてるから万が一、その場に捨てても使っても身元バレはしないから安心してくれ」

 

と、言われてスマフォも私は持っている。

 

連絡先には緋色やあの二人の舎弟、外堂先生の物がある。

 

本当に問題は無いのか分からないけど緋色のあの顔は何かしらの細工をしているからこそ見せたと思えば持っておいて損は無いと考えて私は古いビルに入った。

 

コツコツと無機質な音が鳴り響く中、私はビルの部屋の一つへと辿り着くと鍵を取り出して鍵穴に差すと回した。

 

鍵が開いたのを確認すると私はドアノブを手にし、回すと扉を上げて入った。

 

扉を開けた先には丁寧に清掃されているのか埃が無く、真新しい家具が置かれた事務所の光景がそこにあった。

 

私はその光景を静かに見ているとスマフォの電話が鳴り、私は相手は緋色だと確認し、電話に出た。

 

「私だけど?」

 

《ジル。僕が渡した鍵の場所まで行けたかい?》

 

「えぇ、行けたわ」

 

《そうか。そこは君の物だ。好きに使ってくれ》

 

「ありがとう緋色。それにしても此処まで色々して良いの?貴方にも立場があるのに?」

 

《確かにそうだけどその周辺は僕の管轄の縄張りだからね。獅子皇会全体の利益に関わったり、お父様が何か言わない限りは大丈夫だ。何かあったらまた連絡してくれ。それじゃあ、また》

 

緋色はそう言って電話を切ると私はスマフォをしまって近くにあるソファーに腰掛けると女性に渡された書類に目を通した。

 

何処からどう見ても普通に見える書類……だけどよく見れば不自然な文字が幾つもある。

 

「暗号かしら……?」

 

『それは厄介だな。暗号にも種類があるし、解き方も違う。どう解くつもりだ?』

 

「それが分かれば苦労はしないわよ……換字式かしら?なら、一部なら」

 

私はそう言って別の紙に読み取れた内容を書いていく。

 

"資金提供" "死体の始末" "病院" "復原" "送る" "売り払う" "欲強議員"

 

解けた暗号の一部だけ読めるけど正確な内容は分からない……でも、死体の始末に何かしら嫌な物が絡んでると言うのはよく分かる。

 

そして……欲強議員。

 

確か救済支援会と慈善事業を共同で運営している活動家で知られていて支持もある。

 

最近だとオールマイトとの握手の写真が乗った新聞が出回ったりしてたわね。

 

『この議員さんが何か関わってるのか?』

 

「そうとしか言えない……ただ、確証も無く襲うのは駄目。もっと決定的な何かがほしい……」

 

私は書類に載る暗号を更に読み解こうと私はある一部に注目する。 

 

それは多岐に渡って暗号の中に頻出する単語があった。

 

それを私は組み上げると出来た物は。

 

「グリーン……メイスン?」

 

『グリーン・メイスンだと!?』

 

「知ってるの?」

 

私はグリーン・メイスンと言う単語に反応したアーサーの方を見るとその顔は……怒りの表情になっていた。

 

『壊滅させたと思っていたが……しつこい奴等だ』

 

「アーサー。……教えて。グリーン・メイスンって何なの?」

 

『……グリーン・メイスン。ロンドンに蔓延った秘密結社だ。目的は不老不死を成立させて楽園を実現させようだとか抜かした奴等だ。その為に他者の事なんてお構い無し、邪魔なら消し、弱者を虐げ、危うくなれば事件を揉み消す。俺の母さんは奴等の警告で殺され、父さんは間接的に奴等のせいで死に、そして……ローリィを殺した』

 

「緋色に反応してたって事はそのローリィに似てたの?」

 

『そんな感じだ。奴等はゴッドスピード・ユニオン・ファミリーと言うロンドンを牛耳っていたマフィアを傘下にしようとしたが断られた事で壊滅させた。それだけでは飽きたらずマフィアの関係者なら全員を攻撃した。そして……ローリィも執拗に狙われて……俺は……守れなかった』

 

アーサーは拳を強く握りしめ、怒りと悲しみ、憎しみの感情を出しながら語り続ける。

 

『だから奴等に復讐した!!母さんと父さんを奪うに飽きたらずローリィの全てを奪い、ローリィの命すら奪い去っておきながら法で裁かれない奴等が!!まやかしなんかの為に人の大切な物を平然と奪うそんな奴等が!!』

 

「アーサー……」

 

『ジル。もし、奴等がまだ存続していて尚且つ日本に潜伏しているなら……必ず見つけ出せ。奴等は生かしておく事は絶対に許されない。絶対にな……』

 

アーサーはそう言って憎しみを宿した目で私に言うと嫌な事を思い出したとばかりに何も喋らなくなった。

 

アーサーは大切な物を奪われた……私もそう。

 

憎しみは憎しみでしか返らないなんて言うけどなら、その憎しみはどうするのか?

 

復讐はしてはならないならどうすれば良いのか?

 

……簡単だ。

 

法で裁けない奴等は生かしておく価値は無く、復讐は正当な行為であり、憎しみは憎しみでしか返らないと言うが例外だってある。

 

大切な誰かを守る為、誰かの大切な何かを守る為、私は躊躇を捨てなくちゃいけない。

 

「アーサー。分かってる……私は法で裁けない悪は絶対に許さない。そのグリーン・メイスンと言う組織が存在するなら……私は刃を向ける」

 

『……その意気だジル。だが、油断するな。グリーン・メイスンは単なるヴィランの秘密組織じゃない。一般の市民に紛れて暗躍する組織だ。油断すればお前は背後から攻撃されるか関係者が狙われると思え』

 

アーサーのその忠告に私は頷くと暗く、深い社会の深淵に紛れ込む悪を必ず見つけ出すと誓った。

 

~別視点side~

 

その頃、とある場所にある施設に揃い緑頭巾とローブ、何の特徴も無い白い仮面を身に付けた者達が集まっていた。

 

まるで個人の個性そのものを消し、複製品の様な格好をする者達は一堂に会した事で話し合いが始まった。

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の亡霊とやらが……アズエル教会を潰したそうだ」

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)……嫌な名前だ。我々の崇高な計画の全てを潰した」

 

「今回は……その子孫だとか。忌々しい……だから早めに消すべきだったのです。過去と同じ様に壊滅などさせられるなどあってはならない」

 

「ふん。切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)。霧先ジルは我々には気付いていない。それに社会そのものも。今は捨て置いても良いだろう」

 

「その油断が我々がロンドンの支配を永遠に遠ざけられた理由だぞ!幸いにも一部の者達は海外いたからこそ切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)に追われなかったが今、この日本にいるのだぞ!!」

 

緑頭巾の者達は議論を交わす中、彼らに近付く者達が現れた。

 

仮面で顔を隠し、長い銀髪を前に垂らした緑のローブを纏った女性と思われる人物だ。

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)など捨て置きなさい」

 

「し、しかし……よろしいので?」

 

「奴の怒りを買ったからこそ我々は滅ぼされた。ならば、今すぐ始末する為に怒りを買うよりも今は捨て置いて力を付け、基盤を固め、もはや抵抗すらままならぬ状況に追い込む方か良いでしょう」

 

仮面の人物はそう言うと緑頭巾の者達は次々に賛同の意思を示すと静かになった。

 

「さぁ、皆さん。楽園の実現の為に。我々の理想の為に。よりいっそう邁進しましょう。このヒーロー飽和社会。腐敗したヒーローを取り込むなど簡単です。そうした者達には金を掴ませなさい。応じないなら力で黙らせなさい。アズエル教会の件は残念でした……我々の取引相手であるかの御方も残念でならないと仰せです。まぁ、これは別の施設から調達出来るので良しとしましょう。我々は政治の中核に入り込みました。次の方針は……警察機構の掌握です。ヒーローよりも警察機構の方が権限は高い。ならば、警察機構を抑えてしまえば……ヒーローを抑えつけれる日も近いでしょう」

 

「ですが、問題が……平和の象徴であるオールマイトがおります」

 

「それなら及びません。かの御方からこう聞かされました。……オールマイトは全盛期から衰え、弱っていると」

 

仮面の人物からのその言葉に緑頭巾の者達は歓喜の声を挙げた。

 

オールマイトはどのヴィランであってもかなりの驚異であり、一度でも組織の前に現れればそれは終演を意味する。

 

故にオールマイトが弱っていると言うのはかなりの吉報なのだ。

 

「計画を進め、企業と医療技術に投資し、不老不死へ至る道を探りましょう。個性と呼ばれる祝福があるのですからね。可能性としては数多くある個性の中にはそう言った物もあるでしょう……故に目を光らせ続けなさい。全ては楽園の実現の為に。我々の理想の実現の為に」

 

仮面の人物はそう言って笑ったのだった。

 

その頃、ジャスティスは一人、項垂れていた。

 

まさか、ジルが逃走してからすぐにアズエル教会を襲撃するとは予想外で礼状が取れた日にアズエル教会で火事が起きたと聞いてエンデヴァー達と来てみれば手が付けられない位に燃えていたのだ。

 

そこにはアズエル教会の信者達と鎮火を消防と共にしていたバックドラフトとそのサイドキック達がいた。

 

「全然消えねぇッ!油でも使ってんのこれ!?」

 

と言うバックドラフトの怒号が飛んだりする中、数時間掛けてやっと鎮火したのだ。

 

中は無論、悲惨だった。

 

焼けた人間の匂いが立ち込める中、ジャスティス達は警察と共に立ち入ると数人の死体と寄り添う様に死んでいる二人の死体があった。

 

焼けた死体は一人を除いてナイフで切られた様な跡があり、切り裂きジャックの仕業と断定されたが火事の一件までは分からなかった。

 

何しろ現代社会で火なんて料理やその他の娯楽用品以外で態々、使わない。

 

アズエル教は何かしら火に関する儀式を行っていたと言われて要るが信者達は口をつぐんでしまっており、真相が聞き出せない状態になってしまった。

 

しかし、信者達は口々に言うのだ。

 

"切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)"に救われたのだと。

 

その証言が何処から漏れたのかマスコミは挙って切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の真実などと言う記事やニュースを流し始めた。

 

曰く、悪を許さぬ無法者(アウトロー)

 

曰く、弱き善人を助け、法で裁けぬ悪人を裁く殺人鬼。

 

曰く、現代社会の闇を切り裂くヴィジランテ。

 

曰く、ヒーロー殺しの対たるヴィラン殺し。

 

曰く、社会の闇を暴くダークヒーロー、切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)

 

等と脚色も加えて広く報道してしまい市民の者達は皆、半信半疑ではあるが切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)は凶悪なヴィランではなく、義賊的なヴィジランテと言う認識が強くなりつつあった。

 

多くの疚しい何かを抱えていない者達は安心し、疚しい何かを抱える者達は震えあがる。

 

社会は今、たった一人の殺人鬼によって揺れ動いているのだ。

 

ジャスティスは深い溜め息を吐く中、そこへ一人の人物がやって来た。

 

「すみません。ミストヒーローのジャスティスこと霧先 真さんですか?」

 

「ん?俺だが……あんたは誰だ?」

 

そこにいたのはジャケットに、キャスケット帽を被りショルダーバッグをかけたジャーナリスト然とした出で立ちの黒髪の女性がそこにいた。

 

「私はこう言う者でして」

 

女性は名刺を差し出すとジャスティスはそれを受け取り確認する。

 

「社会報書新聞。広瀬 綾乃?」

 

「はい。貴方様に話題の切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)|の亡霊について御聞きしたくて参りました。取材許可も取れてるので後は貴方様から許可さえ得られたら取材出来るのですが……?」

 

綾乃の申し訳程度にそう言うとジャスティスとしては取材やらマスコミに追い掛けられるのはうんざりしていたが数多くのマスコミの中でかなり礼儀正しく更に外堀を埋めて対策してくる彼女にジャスティスは負けた。

 

「ふーん……まぁ、良いか。何を取材したいんだ?」

 

「ありがとうございます!単刀直入に言いますが切り裂きジャックこと霧先ジルさんとは親子であるそうですがそこに何か御気持ちはありますか?」

 

「結構攻めるな~おい。気持ちなんてもんはな……残念としか言えないな」

 

「残念とは?」

 

「俺は彼奴には正義とは何か?正しい事と間違った事とは何か?と教えてきたつもりだった。彼奴は俺の教えを受け入れていたと思っていた……と言うか彼女自身の形になってたな。軽く教えただけなのに。なのに彼女は社会の過ちを自らの手を汚す事で無理矢理に変えようとしている」

 

「となると……その正義が暴走したと?」

 

「正義の在り方は人、各々だ。金の為やら名誉の為やらでも人を守る。それも一つの正義だが……その為に不正をする馬鹿もいる。彼奴は……それが許せなかったのかもな。それにオリヴィアの事も……」

 

「その時の事はお悔やみ申し上げます」

 

綾乃の言葉にジャスティスは軽く笑うと綾乃はメモを終えると次の質問をする。

 

「実の娘さんである切り裂きジャックを捕まえる意思はありますか?」

 

「あるに決まってるだろ?彼奴を間違った正義を止めなくてはいけない。毒を以て毒を制してはならない……過去に組んだ事がある警官にそう教えられた事がある。彼奴がどんだけ正しくても決して殺しはしてはならない。殺人はどんなに見栄えの良い大義を掲げても悪であるのは間違いないからな」

 

「なるほど……ありがとうございました。もしかしたら度々、取材させて貰うかもしれませんのでどうか御贔屓に」

 

「待ちな」

 

綾乃はそうそうに立ち去ろうとする所呼び止められるとジャスティスから何かを投げられ、綾乃はそれを空中で受け取ると営業スマイルを消した。

 

投げられたのはプロペラが付いたカメラが取り付けられた小型のロボットだった。

 

「そう言った小型の機械の使用はサポートアイテムの不正使用になるかもしれないぞ。止めといた方が良い。お前だろ?信者達の証言をばら蒔いたのは?……次は見逃さねぇぞ」

 

「……肝に銘じます。ですが、私は他の記者(馬鹿)達とは違いますので……失礼しますね」

 

綾乃はそう言って再び営業スマイルに戻るとそそくさと立ち去って行き、ジャスティスは厄介な奴に目を付けられたかもしれないと思い、また溜め息を吐いた。

 

その一方、綾乃はロボットの事を見破られた事に戸惑いつつもニヤリと笑う。

 

「まぁ良いや。次は……霧先ジルさんに取材でもしましょうか。探し出すのは面倒だけど」

 

綾乃はそう呟きながらその場から立ち去って行った。

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