殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
私は名刺の連絡先を使って綾乃を指定の場所に呼び出して接触する事に決めた。
緋色が人払いをしてくれてる為か夜間ではあるけど人の気配が無く、二人で話すのには丁度良い空間が出来上がっていた。
私は指定場所で待っているとそこへ綾乃が現れた。
「来ましたよ。貴方様が私を呼んだと言う事は受け入れてくれるのかそれとも……口封じかのどちらかですか?」
「しないわよ。……貴方の協力を受け入れるわ。貴方の事を知り次第だけどね」
「あぁ!ありがとうございます!」
物凄く狂気に満ちた顔で感謝の言葉を言われても怖い。
早めに用件を終わらせてしまいたいから本題を切り出そう。
「それで?どんな協力の仕方なの?」
「幅広い情報の提供。そして、私の個性です」
「貴方の個性?」
「私の個性は転移。私が認識し、記憶している場所に人や物を送り込んだり、呼び込んだり出来ます。自分は転移出来ませんがやろうと思えば雄英の校内のど真ん中に転移させれます。ただ、記憶していればの話ですが」
「へぇ……ヒーローを目指そうとは思わなかったの?」
「私はヒーローになるよりもヒーローの活躍する所が好きでした。あの時の事さえ無ければ……今はヒーローなんて嫌いですね」
綾乃はそう言って無表情になり、表情の温度差が激しすぎないかと思いながら彼女の有益性はかなりの物だ。
情報と言っても何処までか分からないけど記者としての顔を持つ彼女なら顔が広く、有益な情報を沢山持っていてもおかしくない。
でも、もしかしら取り入る為の嘘かもしれない。
信用するかしないかは先ずは試してみる事から始めないと。
「なら、欲強議員について何か知ってるかしら?」
「あの強欲な議員さんの事ですか?」
きょとんとした顔で聞いてくる綾乃に私は知ってるんだと思っていると綾乃は手帳を取り出してパラパラとページを捲ってから説明してきた。
「欲強議員は一見、慈善事業を衣緑氏と共同運営してる弱者に優しく、社会に多大に貢献する議員ですが……黒い噂も絶えない人ですね。何でも欲強議員のゴシップを狙った記者がいて尾行している時に怪しげな人と会っていたと言っていたんです。まぁ、それがその人を見た最後の日なのでよく分かりませんが……何か犯罪組織に関わっているのではと噂されてます」
「それが何で強欲な議員になるのよ?」
「それが……いたんですよ。執念深く探っていた記者が。それも生きて。その人が言うには欲強議員が誰かは分からない人と料亭に入った所を部屋を割り出して中を覗き見たそうです。そして欲強議員がお金を受け取っていたと」
「へぇ……議員が賄賂ね。何の為の賄賂かしらね?」
「そこまでは分かりません。それで探りを入れていた人はすぐに警察に駆け込んで証拠に取って来た写真も見せて訴えたそうですが……証拠を取られたまま有耶無耶にされたそうです。無論、抗議したそうでしたが無駄だったそうで……その人は無念のまま今度は会社にも手が回されて辞めさせれて田舎に引っ込んでしまったそうです」
汚職疑惑のある欲強議員。
でも、単なる汚職政治家ではない……何か後ろ楯のある議員なのは間違いない。
でないと人が忽然と消えたり、証拠を揉み消したり、会社に手が回されて辞めさせられたりなんて普通はあり得ない。
はっきり言って、黒に近くなった。
あの暗号文が正しければ後ろ楯は……グリーン・メイスンの可能性がある。
それの話が本当なら。
彼女の話は確かに信憑性はあるけど裏付けが無い。
「あ、これ。その人の住所と電話番号です」
「え?持ってたの?」
「私を舐めないで下さい。それ位の裏付けもします。記者は常に事件の匂いを嗅ぎ付けるのが得意ですからね。それに……もし、議員とヒーローが関わっていたら……奴等の化けの皮を剥がすのが楽しみになるじゃないですか」
綾乃はそう言って歪んだ笑みを浮かべてるけど本当にヒーローに対する怨みが強い。
綾乃自身が関わった悲惨な事件の事を考えるとそうなるのは無理はないけどやはり、何処か歪みきってると言うのが一目瞭然だった。
『意外と実は綾乃とその議員は関係あったりしてな』
「(どういう事?)」
『簡単だ。こいつが事件に巻き込まれたのは高校二年だろ?今の見た目で何れだけ歳を取ってるか分かるか?どうみても二十代後半だ。その議員さんが出てきた時期は?』
「(本格的に出てきて動いたのはだいたい二年前かしら?選挙活動で手を振ったり、握手したりし、演説してた。でも、政治家としてはそれなりに古株みたいね)」
『そうだろ?結構な年月は経ってるしそれなりに歳だ。そのヴィランと議員の年齢は近くないか?それに……ヒーローの方は捕まったらしいが……肝心の相方は何処に行った?この数年間の間にな』
「(……まさかよね?)」
『証拠は無いがな。だがまぁ、調べ尽くしてやろうぜ。もしかしたら遠回しに知らせてるのかもな。こいつの人生を滅茶苦茶にした腐敗ヒーローの相方のヴィランは……欲強議員だったてな』
アーサーはニヤリと笑いながら言うと綾乃は微笑みながら結果を待っている。
私は思考を巡らした後、私は溜め息をついた後、私の結論を綾乃に伝える。
「分かった。貴方は私の味方と思っておくわ」
「ありがとうございます!」
「……今夜は喋りすぎた。今回は此処までにしましょう。また聞きたい事や力を貸して欲しい事があれば知らせるし、貴方からも有益な情報があったら教えて」
「えぇ、喜んで……ジャック様」
本当に慣れないわね……フォールン・救火はよくこの視線や笑みに平気でいられたわね……そういえばあの人も狂人に近い人だったわね。
私はその場を後にするとスマフォを取り出して緋色に連絡する。
「終わったわ。人払いはもうしなくても良い」
《そうか。なら、僕達も撤収するよ。そろそろヒーロー達の巡回もありそうだかね。迎えはいるかい?》
「大丈夫。一人でも帰れる。それに……調べたい事が増えたからもう少し外にいるわ」
《そうか。無理はしないでくれ。それじゃあ、また》
緋色はそう言って電話を切ると私もスマフォをしまうと夜の街に紛れていく。
淡々と路地を歩く中、雨が降り始めた。
~別視点side~
フレイムヒーロー、エンデヴァーは自身の事務所の窓の外を見つめていた。
夜の空から降る冷たい雨。
その光景にエンデヴァーは過去に起きた出来事を思い出していた。
「助けてよ……何で……誰も助けてくれないのよ……こんな社会なんか……ヒーローなんか……消えれば良い……!!」
過去に夜の雨の中で出会った一人の高校生の少女。
彼女は……泣いていた。
社会への……ヒーローへの……自身を苦しめる全てに呪詛を唱える様に叫びながら泣き続けていた。
エンデヴァーはこの時、非番でヒーローのコスチュームではなく、私服であり、偶然立ち寄った道に崩れ落ちる様に座り込んでいた彼女を見つけたのだ。
悲しみ、失望、怒り、憎しみと各々を宿したあの時に見せた瞳は今でもエンデヴァーを忘れさせないのだ。
"忘れるな"と常に付きまとっている。
自分の家庭でもバラバラであるのに心の中で少女のあの瞳の色が消えない日々にエンデヴァーははっきり言えば参っていた。
少女と出会ってから身元の特定やそして関わった事件を詳しく調べあげ、そして強盗のヴィランとグルだった挙げ句、少女を拉致し、少女の尊厳を奪う様な乱暴を働いた腐敗したヒーローを見つけ出し、証拠を手に問い詰めた。
そのヒーローは平和過ぎる社会への鬱憤を晴らす為にヴィランの犯罪に目を瞑り、少女が好みだったから共に襲い、そして訴えられても良い様に根回しや証拠の隠滅をしていたとエンデヴァーに怯えながらベラベラと吐いた。
主犯のヴィランは何ヵ月も経った後の事件の為に既に逃亡して行方を眩ましてしまい探し出せず、エンデヴァーはこんな奴が同じヒーローをしていると思うと怒りを抱き、過剰に攻撃してしまうも捕縛し、事件は主犯は行方知らずと言う納得のいかない形で幕を下ろした。
エンデヴァーは自分らしくもないが少女の元に謝罪しに行く。
その少女はあの時の夜に会ったのがエンデヴァーとは気付いておらず、エンデヴァーを見るや憎悪の表情を見せ、構わず謝罪するも少女の瞳から憎しみの炎は消える事はなかった。
エンデヴァーは夜の雨を見るとあの時の少女と事件を思い出し、ヒーローとは、No.1とは何かと問われている感覚を覚えるのだ。
本来、今いるNo.2はある意味ではジャスティスに譲られた地位でもあった。
ジャスティスは結婚もしていない若い頃から悪を断罪する事を常としたヒーローで悪を許さず、汚い手段を使ってでも捕縛すると言う強い意思を見せ、市民からの信頼が厚いヒーローだったが数年前に議員の汚職を暴こうとして逆に嵌められ、ヒーローとしての信頼を無くし、トップヒーローから転落し、忘れ去られたのだ。
失意の内に一時期、日本から去り、遠いイギリスのロンドンへ旅立ち、エンデヴァーは繰り上げのランクアップと勢いあってNo.2へと上りつめたがもし、議員の不正をジャスティスが暴ききっていたらエンデヴァーはNo.3に留まっていたかもしれない。
「……ふん。くだらん」
エンデヴァーは考えるのは止めだとばかりにそう吐き捨てると仕事へと戻った。
調査報告書や警察に提出する書類などが机にあるがその中に強盗を起こしたヴィランとグルであったヒーローが起こした事件の捜査資料も置かれていた。
エンデヴァーは未だに諦めていなかった。
その事件の片割れのヴィランには"時効"までまだ数日の猶予があり、それまでエンデヴァーは諦めるつもりはないのだから。
~side終了~