殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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雄英体育祭 ~後編~

~別視点side~

 

綾乃とエンデヴァーの予想だにしない鉢合わせにどちらも無言の中、静まり返るその場から切り抜けるべく切り出したのは綾乃だった。

 

「本当に久しぶりですね~。No.2はお忙しそうですが……誰かのスカウトとかですか?」

 

「息子を見に来ただけだ」

 

「あらそうですか?私は途中までしか見てなくて……とても優秀な息子さんなんですね~。……家庭環境は最悪なのに」

 

綾乃の営業スマイルでのその言葉にエンデヴァーは小さな反応を見せ、綾乃はそれを見逃さなかった。

 

「何をしたら長男を死なせたり、奥さんを精神病院に送ったり、次男と三男に嫌われるのやら……娘さんの頑張りにくらいは答えたらどうですか?」

 

「何処で知ったのかは分からないが……これは俺と家族の問題だ。お前には関係ない」

 

「そうですか……まぁ、そうですよね。私には関係ありません。私は記者ですし、貴方はNo.1になる為なら家族の犠牲もやむを得ないなんて考える……ゲスなヒーローですもんね?」

 

綾乃はそう言って無表情でエンデヴァーに視線を向けるとエンデヴァーは冷や汗をかかされる。

 

綾乃の瞳は輝きが無く、どんよりと濁った様な暗い瞳にエンデヴァーは見えてしまった。

 

「私は常にヒーローの動向を見ています。例え、プライベートな家庭でも私生活でも。ヒーローの化けの皮を剥がしたいので。まぁ、行動に移しても上層部から圧力を掛けられたりして駄目なんですがね」

 

綾乃はそう言い終わると再び営業スマイルに戻るとエンデヴァーは一体、どうやってそう言った情報を握ってきているのかと疑問に駆られ、聞き出そうとした所で後ろから足音が聞こえた。

 

「喧嘩はそれくらいにしておけ。御二人さん」

 

「ジャスティス」

 

「あら~。お久しぶりですね。今度もまた取材してもよろしいですか?」

 

「お断りかな。今は忙しいたらありゃしなくてな」

 

ジャスティスはそう言うと二人の近くへと歩いてきた。

 

「喧嘩は終わりだ。お互いこんな不毛な事をして特にもならないだろ?解散だ解散」

 

「ジャスティス。今、貴様に構っている暇は」

 

「奴を捕まえるんだろ?我慢しろ」

 

ジャスティスはエンデヴァーの耳元でそう言うとエンデヴァーは綾乃に問い質したい事があるが本来の目的を見失えないと考え黙り込む。

 

「よし。エンデヴァーは退いた。お前は?」

 

「……私も止めておきます。知り合いがお腹を空かせているかも知れないので」

 

「なら決定だ。じゃあな、綾乃。暇が出来たら取材に付き合ってやるよ」

 

ジャスティスの言葉を聞き、綾乃は一礼してからその場を去っていく。

 

その姿を見届けたジャスティスは溜め息をついて壁にもたれる。

 

「驚かすなよエンデヴァー。彼奴は奴と関わりのある被害者だろ?」

 

「偶然鉢合わせただけだ。他意はない」

 

「まぁ、そうだろうな。コスチュームを着たお前は間違っても私情なんかで動く奴じゃない。だが、綾乃だけは気を付けろ。勘も良いだけじゃなくて手広い情報網も構築してる奴だ。俺達の目的に気付いて行動を起こすなんてしたら……」

 

「奴の件だけは悟らせなかった。話は終わりだ」

 

エンデヴァーはそう言うとその場から去っていき、ジャスティスはその後ろ姿を見つめるだけだった。

 

~side終了~

 

私は観客席で待ち惚けを食らっている中、綾乃はたこ焼きや焼きそばを抱えて戻ってきた。

 

その顔は笑顔だが何処か浮かない雰囲気を纏っている。

 

「何かあった?」

 

「……いいえ。昔の知り合いと会って話し込んでいただけです。そんな事より!色々と買って来ましたよ。早く食べましょう」

 

綾乃はそう言って持ってきた昼食の一部を渡してくると美味しそうに食事を始める。

 

私も焼きそばを一口食べるとソースとかが上手く効いててとても美味しい。

 

たこ焼きも上手く焼かれて尚且つ無駄なく丸められている……大食堂のサービス精神もある雄英は本当に美味しい物が多いわね。

 

『確かに旨い料理が多いな。まぁ、人にやる気を出させるには胃袋から掴んだ方が早いからだろうと言う事かもしれないがな』

 

何でも良い。

 

どんな考えが雄英にあるかは置いといて兎に角、食事を楽しんでおきたい。

________

_____

___

 

昼休憩が終わり、昼食を取りに行っていた人達が続々と戻って来ると最初の様な賑わいにすぐに戻った。

 

《最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん?アリャ?》

 

《なーにやってんだ……?》

 

プレゼントマイクとイレイザーベッドの二人の言いたい事はとても分かるわ……本当に……チアリーダーの格好なんて着て何してんの皆?

 

《どーしたA組!!?》

 

私は何でまたチアリーダーの服装なんてしてるのか分からないけど……A組女子を唆したのが峰田君と上鳴君だって分かるわ。

 

何しろサムズアップする二人の姿をたしかに見たからね。

 

『つまりアレか?お前が彼処に残ってたらお前も……』

 

「(着ないわよ!)」

 

「白咲さん。良ければ後で用意をしますよ。と言うより見たいです」

 

「着ないって!……て、緋色!?(物凄く悪い顔してる!?終わったら後で着せようなんて考えてないわよね!?)」

 

何なのよ……綾乃も緋色も……私が着ても似合わないでしょうに。

 

私は少し不機嫌になると綾乃は苦笑いを見せる中、普通科も入ってきて……あら、やる気無いわね。

 

《進出4チーム!総勢41名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!》

 

プレゼントマイクの発表した最終種目はトーナメント形式の単純な試合だった。

 

試合と言っても戦闘に適した個性なら有利だけど戦闘に不向きでも上手く立ち回ればそう言った個性相手でも勝つ事も不可能ではない。

 

イレイザーヘッドがその例になる。

 

個性の抹消は一見便利だけどそれは個性を消すだけで異形系の個性は消せないと言った短所もある。

 

消すだけでは戦闘は勝てない。

 

だからイレイザーベッドの戦闘は捕縛布と格闘を掛け合わせたスタイルの戦闘方法を確立し、個性の弱点を補っている。

 

"ヒーローは一芸だけじゃ務まらん"

 

その言葉が今、この場で試される種目になるわよ皆。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!」

 

「あの……!すみません」

 

対戦相手はくじ引きで決める様でくじ引きの箱を手にしたミッドナイトがそう説明した時に尾白君が急に手を挙げた。

 

「俺、辞退します」

 

その声は周りが静かだったからよく聞こえた。

 

突然の辞退に周りは騒ぐ中、私は尻白君が心操君達と組んでた時に何処かおかしかった事を思い出して何処か気にする所があったのだと分かった。

 

「僕も同様の理由から棄権したい!実力如何以前に……何もしていない者が上がるのはこの体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」

 

そして更にそこでB組の庄田君も棄権を宣言、二人の空席が空いた時、緋色も手を挙げた。

 

「なら、僕もだ。僕は……実はヒーローになるつもりはないんだ。偶然が重なって此処まで来てしまったがやる気の無いのにこれ以上、上がっても本気でヒーローを志す者に対する侮辱になってしまう。だから本当に志のある人達の為に私は棄権させて欲しい。青田には本当に申し訳ないと思うが……」

 

緋色は正直に話し、棄権を宣言すると三人の空席が空いた事になる。

 

《何か妙な事になってるが……》

 

《此処は主審ミッドナイトの采配がどうなるか……》

 

私は三人の棄権宣言をミッドナイトが受託するのか注目する。

 

「そう言う青臭い話はさぁ……好み!!!庄田、尾白、神速の棄権を認めます!」

 

「好みで決めちゃった……」

 

「まぁ、ミッドナイトはそう言うのが好きなヒーローですからね~。見た目は凄いのに」

 

私はちょっと呆れつつもランキング的には繰り上がりは5位の拳藤さんのチームだけど……

 

「そう言う話で来るなら……ほぼ動けなかった私らよりアレだよな?な?馴れ合いとかじゃなくさ。フツーに」

 

「お……おめェらァ!!!」

 

どうやら拳藤さん達は上位を最後までキープしていた鉄哲君達に譲るそうで鉄哲君は感激している。

 

「いや、俺は良い」

 

「俺もだ。確かにキープしてたけどそれは鉄哲と塩崎が踏ん張ってくれたからだ。なら、俺達も譲る」

 

「なら誰が繰り上るんだよ?また下に行くのか?」

 

「だったら拳拳が行きなよ」

 

「私が!?言ったじゃんほぼ動けなかったって!」

 

「それでも5位に持ち込めたんだよ。チームを代表して行ってきなよ」

 

「……分かったよ。行くからには負けないからな」

 

こうして鉄哲と塩崎、拳藤が繰り上がった。

 

B組も中々に良いクラスだと言うのが分かり、A組にも負けない力強さがあった事に納得出来る一面だ。

 

「という訳で鉄哲と塩崎そして拳藤が繰り上がって16名!!組はこうなりました!」

 

ミッドナイトがそう言った時、トーナメントの組み合わせが映像に表示された。

 

出久君は心操君と当たったのか……しかも勝っても轟君とぶつかる可能性もある組み合わせとなるも厄日なのかもしれないわね。

 

麗日さん……もっと運が悪いわね……初戦から勝己とぶつかったなんて。

 

「本当……楽しみね」

 

逆境を吹き飛ばしてこそ"Plus Ultra(プルス ウルトラ)"と呼べるの。

 

楽しみにしてるわ……最後の"お楽しみ"もあるんだから。

_______

____

__

 

大田転がしや借り物競争等のレクリエーションを終え、セメントスが闘技場の様な舞台を造り上げるとプレゼントマイクの実況が再び始まった。

 

《サンキューセメントス!ヘイガズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局、これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくてもそんな場面ばっかりだ!分かるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!》

 

周りからの歓声がスタジアムを包む中、遂に一回戦が羽島ろうとしていた。

 

泣いても笑ってもこれが体育祭最後の種目。

 

此処まで来たなら皆が目指すのは優勝でしょうね。

 

《一回戦!!成績の割に何だその顔!ヒーロー科、緑谷出久!!対、ごめん!まだ目立つ活躍無し!普通科、心操人使!!》

 

プレゼントマイクの紹介に合わせる様に出てきて舞台に上がった二人は対峙した。

 

《ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは参ったとか言わせても勝ちのガチンコだ!!ケガ上等!!此方は我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳論理は一旦捨て置け!!だがまぁ勿論。命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローはヴィランを"捕まえる為"に拳を振るうのだ!》

 

プレゼントマイクのその言葉に私は笑ってしまった。

 

間違ってはいない……捕まえる為に武力を使わざるえないのならそうするしかない……でも、それで解決出来なければどうするのか?

 

拳を振るえない状況だったら?

 

ヒーローに求められるのは武力だけじゃない。

 

それをヒーロー科と他の科の人達は……分かるのかしら?

 

きっと、この一戦はそれが問われる……そんな気がする。

 

《レディィィィィイSTART(スタート)!!》

 

プレゼントマイクの試合開始宣言と同時に何を言われたのか出久君が怒りながら心操君の元へ駆け出そうとすると急に止まってしまった。

 

「何が起きてるのですか?」

 

「……分からないけど心操君の個性に引っ掛かったのね。催眠な洗脳の類いの個性かしら?」

 

『出久の奴は怒っていた。何かを言われてな……発動条件としては奴の返事に答えたらか、感情の変化によってなのか……厄介な奴だ。知らない奴からしたら堪ったもんじゃないな』

 

私は心操君の個性について憶測を立てている中、出久君は固まったまま動けない。

 

でも、あの温厚な出久君を怒らせるなんて単に挑発したんじゃないわね……相手の性格を見抜き、どんな事を言えば確実に怒るのか……それをしっかりと見て、そして判断する能力はかなり高い。

 

心操君の個性を諸に受けた出久君はそのまま場外に出る様に指示されたのかゆっくりと場外へと歩き出した。

 

さぁ、どうする出久君?

 

単純な武力では解決出来ない搦手を扱う相手にどう巻き返すか……それを問われてるわよ。

 

場外の近くまで歩いてきてしまった出久君は……もしかしたら負けるのかもしれない……と思ってたけど急に出久君が少し個性を使って指を一本だけ失う代わりに踏み留まった。

 

心操君も驚いてるし、私も驚いた。

 

何で彼は此処まで予想外の事が出来るのかしら?

 

出久君が振り返って心操君へ向かって行き、心操君はもう一度挑戦して個性を使おうとするけどもうそれは出久君には通じない。

 

そのまま出久君に掴まれると心操君は顔を殴って離れさせ様としても出久君は離れないまま押し出そうとし、心操君は顔を掴んで抵抗した時、出久君はそのまま背負い投げを決めて心操君の足を場外に出した。

 

「心操君、場外!!緑谷君二回戦進出!!」

 

ミッドナイトのその判定に会場は歓声の声を挙げた。

 

負けた心操君は暫くして戻って行く中、普通科の面々から出迎えられていた。

 

その中には緋色や志奈、力斗もおり、最終種目まで登り詰めた心操君を褒めていた。

 

それだけじゃなく、スカウト目的で訪れていたヒーロー達にも一目置かれ、ヒーロー科でない事を非常に惜しまれていた。

 

『力だけが勝ち方じゃない。自分が劣っていると認め、搦手を使って勝つ意思を持つ。心操はそれを体現した惜しい奴だって事だ』

 

「(えぇ、そうね。もしかしたら彼の様な偏見を持たれる個性の人達の希望になっていたかもしれないわ。とても惜しいわね)」

 

私は彼が劣った面がある中でヒーロー科の皆を相手に登り抜きながら負けてしまった事に惜しいと思いながら拍手する。

 

その後、轟君が瀬呂君を大きすぎる氷で圧倒、瀬呂君を同情してドンマイコールが流れた中で轟君が二回戦に進出した。

 

その姿は何処か暗いけどね。

 

次の試合も瞬殺だった。

 

上鳴君と塩崎さんの試合だったけど……茨に拘束されて阿保顔を去らしながらプレゼントマイクに敢えて瞬殺だと言われる上鳴君だった。

 

その次の試合は……と言うよりも飯田君とサポート科で出久君と組んでた発目さんだけど……飯田君は真面目さを利用してサポートアイテムフル装備にさせられるとテレビショッピング的な紹介を発目さんはして言い切った後、そのまま自ら場外負けした。

 

飯田君は試合には勝ったが勝負には負けてしまった……単に真面目過ぎるが故に。

 

その後も拳藤さんと芦戸さんの試合や八百万さんと常闇君の試合そして、個性被り同士の切島君と鉄哲君の個性を使ったうえで殴り合いの戦いになった後で共倒れして引き分け、簡単な勝負で勝敗を決める事になった。

 

そして、最も不穏な組み合わせである勝己と麗日さんの試合だ。

 

《中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねぇ!ヒーロー科、爆豪勝己!!対……俺こっちを応援したい!!ヒーロー科、麗日お茶子!》

 

プレゼントマイクの紹介が終えると二人は対峙しする中、試合開始の合図を叫ばれると先手を打ったのは麗日さんだった。

 

麗日さんは個性で浮かせようと詰め寄るけど勝己はそれを迎撃し、爆破を麗日さんに使った。

 

大きな爆発と煙が立ち込める中、勝己はそれで終わらずトドメを刺そうとしたけどそこにあったのは麗日さんが着ていたジャージの上で麗日さんは勝己の後ろに回り込んで個性を使おうとしたけど、勝己はそれを見越した様に地面を沿う様に爆破させた。

 

「(やっぱり戦闘のセンスは勝己が上みたいね)」

 

『そうだろうな。才能と戦闘の経験が彼奴を強くしている。だが、麗日も負けていない。分かってるだろ?弱いなら弱い奴なりに搦手を使うんだって事をな』

 

アーサーの言っている事に私は二人の周りを見て見れば瓦礫が広がりつつある。

 

他の皆は気付いていないけどその状況は麗日さんが戦うにはもってこいの環境になりつつある。

 

食い付く麗日さんに勝己はなぶってる様に見えるけど実態としては麗日さんを油断していないからこそ迂闊な一手は打たない。

 

周りからブーイングが起こっても冷静さが欠けないのはやはり戦闘面での圧倒的な才能があるからこそね。

 

対してる麗日さんの眼は……全く諦めてない。

 

これは手強い相手ね。

 

いつの間にか麗日さんは武器を手にしていたのだからね。

 

麗日が両手の指を合わせると地面に落ちていた瓦礫の破片を浮かせると流星群の様に一斉に勝己に落とした。

 

……でも、勝己はそれを一撃で爆破し、無傷で正面突破した。

 

それを見た麗日さんは一瞬だけ絶望の表情を見せたけどそれでも食い付き、勝己もそれに答える様に向かって行こうとしたけど……麗日さんはもう限界を迎えていた。

 

そのまま倒れてしまってミッドナイトの行動不能の判定を受け、麗日さんは負けて勝己が二回戦へと勝ち進めた。

 

「頑張ったわね。麗日さん」

 

「……白咲さん。やはり貴方には後悔があるのですか?」

 

「後悔?」

 

「自主退学した事を。彼等との学びを捨てた事を」

 

「……確かに後悔はある。もしも……この手を染めなかったら……でも、私の手は汚れたし、ヒーローにはなれない。でも、私は今さら止めるつもりはないからね。綾乃」

 

私はそれだけを言うと綾乃も笑って見せた後、切島君と鉄哲君の決着は腕相撲で行われ、数分にも及ぶ腕相撲の結果、切島が勝ち進んだ。

 

その後、二人はお互いに熱い握手を交わした。

 

小休憩の終え、最初の二回戦は出久君と轟君の二人が戦う。

 

ある意味では因縁の対決……でも、私はそれを見届けられない。

 

"仕事"の用意をそろそろしないといけないから……

 

「綾乃。私の服と……"武器"はあるわね?」

 

「勿論です。これが全てです」

 

綾乃はそう言って私に荷物の入った鞄を渡してきた。

 

手元には無かった筈の物……恐らく個性で持ち込んだのだと推測出来た。

 

「色々と準備があるからね……試合を見たかったな……」

 

「私が録画しておきますから安心して下さい。貴方は……本当の目的の為に行動して下さいね」

 

「分かってるわ。この場で私がやると決めたのは……皆にちゃんとお別れを言う為でもあるもの。議員が出てきたら指定の場所まで来てね」

 

私はそう言って荷物を手にし、その場を去った。

 

本当に……この目でちゃんと見たかったわね……

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