殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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私は気が付くと暗闇と霧が広がる古い街並みの中に立っていた。

 

その街は何処か不気味だがそれでも見た事がある街並み……夏休みに母の実家に帰省した時によく見たロンドンの街並みにとてもよく似ていた……いや、ロンドンその物だ。

 

「此所は……まさか……ロンドン?」

 

私は何でロンドンの街のど真ん中にいるのか分からず混乱していると遠くから金属と金属がぶつかる音が響いていた。

 

私はその音に向かって歩き出す。

 

一歩、また一歩と歩き、音の発信源の近くまで辿り着くとそこでは金髪を束ねた何処か母に似ていた女性がトンファー型の警棒でナイフを振るうアーサーと戦っていた。

 

警棒とナイフ。

 

用途は違う二つの武器が火花を散らしながらぶつかり合い、相手を下すべく振るわれる。

 

女性とアーサー、まるで陰陽の様な二人の戦いは苛烈を極めた。

 

「シャーロット!!!」

 

「アァァーサァァーッ!!!」

 

二人は互いに吠え、ナイフと警棒を同時に振るった。

 

私は二人の決着を見る前に意識が薄れていき、そのまま意識を再び失った。

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私はまた気が付くとそこは知らない天井で尚且つベッドに寝かされていた。

 

周りの状況を見ればそこが病院だと言うのは分かり、あのヴィランの攻撃で死ぬ事はなくのんびり眠っていたと言う事が分かった。

 

「ジル?」

 

私は呼ばれた方を見るとそこには私と同じ髪色だけどあの夢に出てきた女性によく似た人が……いや、間違いなく母さんだ。

 

「母……さん……?」

 

「ジル!良かった!ヴィランに向かって駆け出して殺され掛けたって聞いて!それで!」

 

母さんはワンワンと泣きながら私を抱き締めてくるが苦しいからもう止めて欲しい。

 

『やれやれ。お前が此所に運び込まれると同時に駆け込んで来てたからな。気丈に振る舞っていたがお前が起きて安心してんだろ』

 

「(アーサー?……ッ!?アーサー!まさかヴィランを殺してないわよね!)」

 

『殺してねぇよ。まぁ、殺し損ねたのは確かだがな』

 

アーサーの言動に私は頭が痛くなると同時にまた意識が飛びそうなった。

 

人前でアーサーが暴走したなんて事実を突きつけられたら嫌でも気を失いそうになる。

 

「か、母さん……私……」

 

「分かってる。分かってるから……大丈夫。厳重注意を受けたけど正当防衛である事が認められたから」

 

母さんのその言葉に私は安心して一息をついていると騒ぎを聞いてやってきた老紳士風の医者やら看護師やらと集まってきた。

 

中には何か服を着た動物みたいなのが混じってるのだけど誰が入れたのかな。

 

「ジル君。やっと目が覚めたんだね。体調の変化はないかね?気分は?」

 

「いえ、特には……」

 

どうしよう……はっきり言えばあの動物が気になるんだけど。

 

何なの?

 

何で誰もツッコまないの?

 

「いやはや大した物だ。細い身体ではあるがなかなかの身体能力と精神力だ。君の活躍は聞いているよ。何でもヴィラン相手に立ち回ったとか?」

 

医者はニコやかに笑いながら言ってくる中、私は苦笑いしているとアーサーは黙って医者の方を見ている。 

 

「(どうしたの?)」

 

『いや……俺の知り合いに似ててな……まぁ、気のせいだろう。俺は医者なんて聞くと胡散臭くて堪らなくなるんだ』

 

アーサーはそう言って興味を無くしたのか医者から視線を外す中、医者の元にあの動物が近づいた。

 

「申し訳ないないが外堂先生。そろそろ良いかな?」

 

「おぉ、すまない!それではまた検診に来るから大人しくベッドにいてくれよ」

 

外堂と呼ばれた医者はそう言って看護師達と共に出ていくと残されたのは私とアーサー、母さんと動物。

 

かなり変な組み合わせだけど良いのこれ?

 

「えーと……母さん。この生き物は?」

 

「こら!失礼ですよ!」

 

「いやいや良いよ。では改めて……ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は……雄英高校の校長さ!!」

 

「そ、そうですか……」

 

私は取り敢えず人である事は分かったが何でヒーロー志望校として有名な雄英高校の校長が来たのか分からなかった。

 

「それで何故、雄英の校長先生が此所に?」

 

「単刀直入に言うとね。雄英のヒーロー科に受験してみないかと誘いに来たんだ」

 

「わ、私が?何で?」

 

訳が分からない。

 

私は確かに一度はヒーローと言う存在には憧れていた時期があった。

 

だが、自分の個性とアーサーの件がある。

 

それらの事を踏まえ、人の迷惑になるかもしれないし、そんな状態でヒーローになりたいとは思わず……。人の助けとなる仕事を選ぶとしたら探偵になりたいと思っていた。

 

探偵なら小説の様な名探偵の様に危険な事件に巻き込まれる訳ではないし色々な人の助けになれる。

 

その事を考えてたらアーサーに『良いんじゃないか?』なんて言われたのは意外だったけど。

 

「君の個性や人格の事はご両親から聞かされてるよ。でもそれ以上に君が高潔である事もよく聞いている。だから、君がもう1つの人格に負けない様にする為にも、ヒーローに相応しいその高潔な考えを個性1つのせいで失わない為にもね」

 

「でも……私の個性は……」

 

私の個性である切り裂き魔はナイフを生み出す個性。

 

あまりにヒーローに相応しくないこの個性は本当にヒーローとして扱えるのかすら分からない。

 

下手をすれば人を殺す……或いはアーサーが凶器として使う個性として人を殺すかもしれない。

 

「個性の扱い方は君次第さ!人を殺すか、殺さないかじゃない。人の為に振るえる刃、守るべき者達の為に振るう刃なんだ」

 

「人の為に振るえる刃、守るべき者達の為に振るう刃……」

 

根津校長の言葉を聞いて私の個性が人を殺すからと忌避していた私は別の扱い方の解釈など考えた事はなかった。

 

 

【私の個性はナイフを生み出す、ナイフは人を殺す武器】

 

 

私は常にその考えが張り付いて人生を過ごして来ていたがもう1つの扱い方を思い付く。

 

 

【私の個性はナイフを生み出す、ナイフは護身用であり人を守る為の道具】

 

 

考え方を変えれば扱い方も変えられる。

 

だが、アーサー自身の考えそのものは変えられない。

 

「(アーサー。貴方はどうしたいの?)」

 

『あぁ?そんなのお前が決めろ。それとも俺に身体を譲っちまう気か?』

 

「(そうじゃない!そうじゃないけど……貴方は悪と見なした人を殺そうとする。もし、ヒーローになればヴィランと関わる事も多くなる。だから……)」

 

『俺は無理矢理にお前から身体を奪おうとは思わねぇよ。お前が選ぶ道、次第では殺人鬼としてのあり方を教えてやるけどな』

 

アーサーはそう言って不適に笑い、私は不愉快だと不機嫌な表情をしてしまい二人に不安にさせてしまっている事に気付いてすぐに表情を戻す。

 

「大丈夫かい?君のもう1つの人格が何か言ってきたのかい?」

 

「いいえ、大丈夫です。自分で決めろと言われただけです」

 

「そうかい。雄英の受験は強制はしない。ただ、言える事はもう1つの人格の言う通り、君が選ぶべきだ」

 

「ジル。貴方なら大丈夫。ジルがどんな道を選んでも私は味方になるから」

 

二人の言葉に私は今まで忌避していた個性に向き合うべきなのかもしれないと思えた。

 

個性が何だ?アーサーが何だ?

 

私は私の道を進みたい!誰かを助けられるヒーローになりたい!

 

「こんな私で良いんですか?」

 

「勿論さ!ただ、受験だからもしかしたら落ちるかもしれない」

 

「落とされたのなら私はそこまでだっただけです。ですがそれでもやってみたい。私に少しでも人の助けになれるヒーローになれるなら」

 

「これで決まりだね!君の受験を楽しみにしてるよ!」

 

私はそれを聞いて頷く。

 

私は今まで避けてきた物と向き合う為に雄英の受験する事を決め、受験に向けての準備に入る用意をしないと思ったが1つ忘れていた。

 

「私……入院してたんだ……」

 

「問題が無かったから早くて明日か遅くて明後日には退院らしいわ」

 

「大丈夫!筆記試験もあるから此所で勉強すれば良いさ!」

 

やる前からいきなり転んだ事態に私は少し不安になったのは言うまでもない。

 

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