殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
私は足を蹴り、オーバーホールの前に躍り出るとナイフで先ず、腕を狙った。
奴の個性は何なのか分からないけど兎に角、腕を落とせば勝てると言う勘が働いて私はその勘に従ってナイフを振るったけどオーバーホールはそれを避けて私に触れようとした。
私はとても嫌な予感を感じて後ろに後退しながらナイフを投擲するとオーバーホールは投擲されたナイフを掴めば刃から崩れ落ちてしまった。
「あれがオーバーホールの個性……」
「気を付けろ!オーバーホールの個性は崩壊と修復が出来るオーバーホールと言う個性だ!触れられたら終わりだぞ!!」
「名前の通りって事ね」
諢にオーバーホールの個性を教えて貰うと私は接近戦は不利と考える。
けど、それだと私が攻撃しにくいし、何よりも周りの刺の事を考えれば中距離での戦いもオーバーホールは可能だと考えれば打てる手は限られてしまう。
『焦るなジル。動きを読み、躱せ。殺意を読み、防げ。教えたろ?基本を忘れるな。どんな相手でも必ずナイフの刃を突き付けれる隙がある。狙い続けろ。相手の急所をな』
「分かってるわよ……アーサー」
私は駆け出してオーバーホールに突進する様に向かっていく。
「そんな闇雲に行ったら!!」
「血迷ったか」
焦る先輩を他所にオーバーホールは大した事はなかったとばかりに突っ込む私に向かって刺の床を出して向かわせてくる。
茨の様な刺が襲って来るけど私は僅かなすき間を潜って突破するとオーバーホールは今度は波の様に床を崩壊させて修復させると押し潰そうと狙う。
でも、それでも私は軽く避けて間近まで迫れば流石に焦りを見せていた。
「英雄症候群の小娘が!!」
オーバーホールはそう言って近くの変化した床を触ると私との間に壁を作って私からの攻撃を防げば横から発砲音を聞き、私は僅かに身体を動かして銃弾を避けるとナイフを投擲、不意を突いて発砲してきた白フードの首に刺した。
「がぁッ……!すいやせん……廻……」
白フードはそう言って息絶えると私は冷たくオーバーホールを見つめる。
「これで五分ね。オーバーホール」
「まだだ……まだ終わっていない。一人死んだだけだ」
「その一人が死んで貴方は大きく追い詰められた。誰も味方はいない。誰も貴方を助けない。助けるとしてもそれは責務を果たす為に来たヒーローだけ。結局、捕まるか死ぬかの二択。つまり、詰みよ」
私はそう言うけどオーバーホールは執念染みた何かで敗けは認めないとばかりに私を睨んでくる。
「どんな理由でも一度外道になれば報われないの。それは私もふくめて。たった今、私は大切な人を亡くした。次は貴方よオーバーホール……お前の大切なものを壊されるか……死ね」
「煩い黙れ!!」
オーバーホールはそう言って床を両手で触れれば変形した床が私を襲う。
刺で刺そうとするけど私はそれを避け続けて次の刺を見極め、勢いよく飛び出した刺を踏み台して飛び上がると天井を蹴って、オーバーホールに上空から急接近する。
「死ねぇッ!!」
「死ぬのは貴方よ」
私はオーバーホールの振るわれた手をギリギリ避けてすれ違い様に頸動脈を切り裂き、まだ動いている所をナイフで両腕を切断、脇腹と胸に二ヶ所素早く突き刺した。
「があぁッ……!あが……!!」
「凄い執念ね……まだ死なない。だったら特別に生きている内に言ってあげる。……地獄に堕ちろ。それが私からお前に与える罰よ。緋色の無念を胸に死んでいきなさい」
オーバーホールは私に対する憎しみを宿した眼で睨みながらそのまま崩れ落ちていくと倒れ伏し、死んだ。
私は返り血を浴びて身体中、真っ赤なってしまった中、ナイフに付いた血糊を払うと先輩に視線を向けた。
「終わったわ。これで死穢八斎會も存続出来ない」
「……どうして殺したんだ?」
「報いを受けさせる為よ。たしかに牢獄にぶち込んでも報いになる。でも、もしかしたらまた出てくるかもしれない。そうなったら保護された後に平穏に生きてた壊理ちゃんがまた非道な実験に付き合わされるかもしれない。……殺して止めるしかないのよ。救い様が無い悪は殺して止めるしかないのよ」
「そんな事は決して無い!!」
「なら、オーバーホールは反省する意思を見せてたって言うの?」
私のその問いに先輩は何も答えなかった。
オーバーホールは反省するつもりもなく、寧ろ逃れようと必死だった。
法から逃げて、壊理を苦しめて、怪しげな実験で作り上げた弾を売り捌く。
そんなの最悪ね……
それにしてもあの二人には悪い事をしたわね……獲物を横取りしちゃったし。
「……先輩。私の役目は終わったわ。壊理と……緋色の事を任せても良い?」
私は此処から立ち去る決意を決めた時、大きな爆発と煙と共に歪な壁に穴が空いた。
「やっと出久達が来たのかしら?」
『……いや、違う。気配の中に殺意が混じってやがる。明らかに別だ』
「君達の知り合いかい……?」
「先輩も気付いた?」
「サーとも他の人達とも違う。初めての……ましてや殺意のある気配をしている知り合いは今の所、君だけだ」
先輩はそう言って身構える中、その穴から数人の人影が入って来るのを見た私は眼を見開いた。
「何あれ……?」
その影の正体は緑衣のフードと特徴の無い白い仮面を着けた人達だった。
その人達の手には拳銃なんて眼じゃない威力を持つ小銃を手にし、私達に構えている。
「ご苦労でした。
『グリーン・メイスン!?』
「(え?あれが?)」
『薄気味悪い仮面に趣味の悪い服装……間違いない。まさか奴等の正装のままで来るとは思わなかったがな』
私はいきなり現れて小銃を構えてきたグリーン・メイスンを睨む中、先輩が反応を見せた。
「君達は誰だ!!」
「知る必要はありません。どちらにせよ……貴方方は此処で死ぬのです。さぁ、全てを諦めてその手の中に包んでいる少女と個性消失弾を渡しなさい。そうすれば楽に殺してあげましょう」
「死ぬだと?ふざけるな!!急に現れたと思えば好き勝手言いやがって!!」
諢がそう怒りを見せれば全く怖くないとばかりにグリーン・メイスンの一人が笑った。
「はっはは!どちらにしても個性があってもこの距離からの銃撃は避けられませんよ。貴方方の中で銃弾の効かない厄介者はそこにいるミリオただ一人……別に避けても構いませんよミリオ。その少女を……壊理を見殺しにして逃げると言うならね」
「くッ……俺が透過を使えば壊理に当てるつもりか!」
「別に死んでも構いませんからね……さて、どうしますか?」
グリーン・メイスンの連中は勝ち誇った様子で銃口を向けてくる中、私は単身なら兎も角、先輩達がいては下手に戦えなかった。
「(何か良い手は……!)」
私は賭けに出るべきかと考えた矢先、突然、室内なのに霧が立ち込めてグリーン・メイスンの一人が殴られて倒れた。
「手掛かり探しに来たら……まさかのご本人様が来やがったな」
「取り敢えず捕縛か?」
「そうだぜ。絶対に逃がすなよ」
「言われなくてもやるよ」
その声が聞こえると霧で見えない中、大きな音が何度も響きながらグリーン・メイスン達が倒される影がチラホラと見えて私は唖然としていると霧が晴れるとそこには。
「父さん……」
「あぁ……久しぶりだな……取り敢えず元気か?」
「うん……あまり……」
「……そうか……亡くしたんだな……」
父さんは緋色の亡骸を見てそう呟いた時、グリーン・メイスンの一人が突然立ち上がると拳銃を向けてきた。
「また邪魔をするか!ジャスティス!!」
グリーン・メイスンはそう言って拳銃を撃とうとしたけど逆に何処からか撃たれた弾で拳銃がバラバラになる形で落ち、その隙を突いて父さんがグリーン・メイスンの顎を蹴りあげて気絶させた。
「たく……助かったぜ。ナガン」
「もう少し気を付けな。霧化すれば効かないけど意識してないと霧化出来ないって忘れてただろ?」
現れたのは変形した右腕を戻すタルタロスに収監されていた筈のレディ・ナガンがそこにいた。
一度入ると出られない牢獄から一体どうやって出てきたのよ……
「すまんすまん。さて、取り敢えずそこにいる……ミリオか?まぁ、兎に角、応援を呼べ。ナイトアイでも誰でも良い。あと獅子皇会のお前。そこを動くな。寧ろ、殆ど制圧されてるから無駄な抵抗なんてしない方が良い。ジル。お前は……無駄だと思うが逃げるなよ?逃げても捕まえてやる」
「捕まるのは嫌ね。……でも、これは私の不利かしら……」
私の天敵的な存在である父さんと遠距離戦が得意なレディ・ナガン。
戦うも逃げるも厳しい二人に私はマズイと思っていた時、再び銃声が鳴った。
「また!?」
「おい!今度は何処から撃たれた!?」
「私はまだ何もしてないわよ!?」
「私じゃないに決まってるだろ!!」
私達は伏せながら誰が何処から撃ったのか探っていてフラりと身体を崩す父さんの姿を見た。
「父さん!?」
「来るな!!撃たれたのは腕だが傷は大した事じゃない。くそ……個性が出ねぇ……!」
「個性消失弾か……!?」
諢の言葉を聞いた私はオーバーホールの方を見ると死体が少し動かされた様な痕跡があった。
「そんな話は聞いていたが……俺が貰うとはな」
「良いから伏せとけ!あんたが狙われてるんだよ!!」
レディ・ナガンはそう言って父さんの頭を掴んで無理矢理に伏せさせると辺りを見渡した。
私も見渡すけど何処から撃ったのか分からない……私は見えない狙撃主に苛立ちを覚えていると周りが突然、煙に包まれた。
「今度は何だ!!」
父さんがそう叫んだと言う事は父さんの個性ではないのがハッキリ分かった。
私は何処から撃たれるのか分からない中、誰かに腕を引っ張られた。
「ジャック様!」
「綾乃?」
「ご無事で何よりです。さぁ、行きましょう」
「でも……緋色が……それに父さんも……」
「緋色さんは死にました。ジャスティスはプロのヒーローで間違っても死にません。……今は退くべきです」
綾乃の言葉に私は頷くと一緒に走った。
緋色を失って、目の前で父さんが傷つけられた……救えなかった苦しみを抱えながら私は只、走った。
~別視点side~
ジル達が逃げ去った後、ジャスティスは撃たれた腕を押さえながら逃げ去ったジルを他所にオーバーホールの死体を見た。
「……ミリオ。話に聞いていたが個性を消失させるんだよな?その弾ってのは?」
「そうです……ですがまだ希望があります!もしかしたら未完成の弾を撃たれた可能性も!!」
「そうだと良いがな……オーバーホールが漁られていたって事は完成品は奪われた可能性がある。どちらにしても最悪だ」
ジャスティスの言葉にミリオをうつ向くとジャスティスは笑って見せた。
「心配すんな。完成品を撃たれたって可能性があるだけだ。それによくやった。お前はヒーローとしてそいつを守り通したんだ。誇れよ」
「ですが……!」
「止められなかったのは仕方ない。ヒーローだって人だ。失敗もする。救けられない時もある。だがな、ミリオ。これだけは言う。……失敗をしてしまっても次に行かせる様に胸に留めておけ。もう失敗はしない、必ず救ける。その為にな」
ジャスティスはそう言ってミリオの頭を撫でていた時、歪な壁が破壊されて突入してきたのは出久達、ヒーローだった。
サー・ナイトアイは周りの現状を見てジルの未来通りになった事を知り、顔をしかめ、相澤は主犯であるオーバーホールとクロノシスタスの死亡を確認して拳を握りしめ、出久は……。
「神速……さん……」
友人の死を目の当たりにして立ち尽くした。
「お前はお嬢の友人か?」
「……はい」
「そうか……気に病むなよヒーロー……それがお嬢からの伝言もとい遺言だ。こうなる事になっても極道である以上は後ろ暗い事もしてきた。死ぬならそれが報いなのだと言っていた」
「そんな……報いだなんて……!」
「俺達は極道。どうやっても表社会の様に明るい道は進めない……裏社会に生きる奴は何かしらの罪を犯す。お嬢もその一人だった。だが、とても優しい方だった。俺達みたいなはぐれ者を拾っては家族だと言ってくれるお嬢は死んだ。お嬢が報いを受けたって言うなら俺は何で受けなかったんだ……!」
諢はそう言って死んだ緋色を抱き締めながら泣き始める中、出久は何も言えなかった。
結局の所、ジルへの返答も混乱によって言えずじまいで後味が悪る過ぎる結末だった。
「何故、此処に貴様がいる?」
「……答えないと駄目か?」
「駄目だ。捜査関係者でもない貴様が此処にいるのは不自然だ。それに誰だこの緑衣の連中は?服役していたレディ・ナガンが何故?何を探っていた?」
「残念だが共有出来ないんだよ。文句があるなら公安のババァに言いな」
ジャスティスはそう言ってサー・ナイトアイの追及を躱すと撃たれた腕を掴まれた。
「今回の事でもはぐらかすつもりか?お前は個性消失弾を撃たれた。未完成か完成品か……どちらか分からない。なのに無力化されているお前はそれでも何かを隠して捜査するつもりか?」
「ナイトアイ。……大切な奴がいるなら俺達の探る件に関わるな。失うぞ」
ジャスティスのその言葉にミリオ達を思い返し、サー・ナイトアイは手を放してしまうとジャスティスは笑っているが何処か悲しげな雰囲気を出していた。
「オリヴィアが殺されたのも俺の捜査を止めさせる為の脅しに過ぎない。連中はそう言う奴だ。本人は狙わず、大切な者を狙う……生半可なヴィランよりも卑劣な連中だ。そんな奴等の相手は大切な者が無いに等しい俺とナガンで十分だよ。聴取が必要なら連絡してくれ。あと、そいつらはすぐに釈放されちまうが捕まえとけ。行くぞナガン」
「……無茶だけはさせない。それだけは約束するよ」
レディ・ナガンはそう言ってジャスティスと共に立ち去り、サー・ナイトアイは社会に蠢く何かが闇にいる事を知るも深追いも出来ずに終わった。
~side終了~