殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

68 / 109
【第四章】復讐を終えて【END】

私はレディ・クイックを殺してその場で佇んだ……憎い相手を殺したのに全く心が晴れない……やり場の無い虚しさと悲しさが残った……

 

「アーサー……私……やったよね……?」

 

『そうだ。復讐を終えた。どうだ?満足か?』

 

「……分からない。復讐は終わったのに……何でか心が晴れない……寧ろ……虚しくて仕方ない……」

 

『だから言ったろ?復讐はスッキリするもんじゃない。寧ろ虚しく、悲しくなるのさ』  

 

アーサーのその言葉に私は此処まで来る為に多くの悪を殺してきた。

 

でも、悪と言っても私の復讐には関係の無い者ばかりで殺した者の中には誰かの大切な人がいたりした。

 

それだけじゃない……私に味方をしてくれた緋色は死んで、父さんも死んだ。

 

私が殺人鬼にさえならなかったら……もしかしたら生きていたかもしれない……

 

「アーサー……私……自首をするって言ったら」

 

私が自首を仄めかす発言をした時、アーサーが左腕だけを動かしてナイフを手にすると私の首に刃を突きつけた。

 

『面白くないな……そんな冗談はな』

 

そう言うけど眼が笑っていないアーサーに初めてナイフを突き付けられて私が混乱しているとアーサーは鋭い視線を向け続ける。

 

『お前は法に縛られない無法者(アウトロー)として法から逃れる悪を殺した。犯罪の無い誰もが幸せな世界の為にな。なのにいざ、自分の復讐を終えたら一気に後悔して自首して逃げ様なんてな』

 

「そう言うけど……追跡されない様に証拠を消したり、ヒーローから逃亡するのも逃げじゃないの?」

 

『お前は悪だ。いつかは裁かれる時が来る……だが、お前は捕まれない。何故なら全ての犠牲を無駄にしない為にも。目的や理想を果たす為にも。捕まって水の泡にする訳にはいかないだろ?』

 

アーサーの言う事も確か……悪人だけど今での犠牲を無駄にしてしまうは抵抗がある……犯罪の無い誰もが幸せな世界の実現の為にも……

 

『俺は逃げたりした。嘘もつく。だが、無駄な殺しはしなかった。だが、お前は恥知らずにもしてきた責任を捨て去って自首して逃げ去ろうとした。もし、まだ自首をしたいなんて言うなら……霧先ジル。ここで死ね。同じ身体のよしみだ。地獄まで付き合うぜ。だが、まだ仕事が残ってる』

 

「仕事……」

 

『グリーン・メイスン。奴等が残っているし、殆どの事件の首謀者だ。奴等さえいなけりゃ生きてた奴や不幸にならなかった奴もいただろう。それにレディ・クイック。奴はグリーン・メイスンに属していた。奴を唆して悪の道に進ませたのが奴等なら……必然的に仇討ちはまだ終わっていない』

 

仇討ちは終わっていない……確かにグリーン・メイスンはまだ存在している。

 

奴等を潰さないで捕まるなんて出来ない。

 

私は拳を握り締めて決意を固めた。

 

「アーサー。もう少しだけ……付き合ってくれる?」

 

『喜んで。グリーン・メイスンを根絶出来るなら尚更な』

 

私達はグリーン・メイスンを潰す決意を固めた……のは良かったけど忘れてた事がある。

 

「……背中とか痛いから先に治療に行きましょう」

 

『やれやれ。撃たれた傷や殴られてた事も忘れてたなんてな。サッサと診療所に行け』

 

診療所までの道のりは綾乃がもういないので歩くしかないけど考えても始まらないから暗闇の中を歩いて行った。

 

~別視点side~

 

ジルの仇討ちから数日が経ち、レディ・クイックこと速撃 打美の死亡が確認され、ジャスティス事務所の全滅が確認される事となった。

 

滞る対応策、ヒーローの大幅な減少、治安の悪化、切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の支持者達、そして……

 

《今日の昼頃、ヴィジランテのチームであるロックアウトが強盗団を拘束する活躍を見せました。ロックアウトはヒーロー減少問題に伴い、尚且つ頼りにならないヒーローを見かねて立ち上がったヴィジランテの三人組のチームでヒーローが去った地区に現れては瞬く間にヴィランを拘束する活躍を見せています。彼らは報酬を求めず治安維持のみに貢献する姿から本物のヒーローだと称賛を集めている模様です》

 

そのニュースが連日に流れヒーローへの信頼が揺らぎ続ける中、引退したオールマイトやNo.1へと繰り上がったエンデヴァーと言ったトップヒーロー達が公安の会長に呼び出されていた。

 

「よく来てくれました皆さん」

 

「御託は良い。何故、引退したオールマイトをも呼んだのか理由を答えて貰おうか?」

 

エンデヴァーがそう言って話をする様に促すとオールマイト達も真剣な面持ちで会長を見ていた。

 

「本題に入らせて貰います。理由としては他に信用出来るヒーローがいなかったらから」

 

「おいおい、そりゃねぇだろ?確かに不正疑惑やら不祥事が幾つも挙げられたけどよう。何も信用してない風に言ってやるなよ」

 

ミルコが反発し、他のヒーロー達も同意したり、声に出さなくてもミルコに同意する素振りを見せる者もいた。

 

「残念ながら本当に信用が出来ないのです。貴方達も既に把握している通り……警察での不審な動き、そして犯罪の活発化、過去の欲欲議員の汚職、八斎會と獅子皇会の抗争……全て繋がっています」

 

「繋がっている!?どういう事ですか!?」

 

オールマイトは関係無さそうな事件が全て繋がっていると聞いて驚愕すると会長は告げた。

 

「グリーン・メイスン。それが裏で糸を引いていた存在です。彼等は並大抵のヴィラン組織ましてやヴィラン連合よりも遥かに厄介であり、露骨な秘密結社です」

 

「ヴィラン連合よりも?」

 

「グリーン・メイスンは聞いた事がある……19世紀ロンドンで話されていた秘密結社で、緑頭巾のグリーン・メイスンが言う事を聞かない悪い子供を攫いに来るぞ。と言う御伽話的な存在だ」

 

「はぁ?何だよ……御伽話かよ」

 

ベストジーニストの説明にミルコは呆気に取られて呆れる中、会長は続ける。

 

「もし……グリーン・メイスンが実在していたら……と言えばどう思いますか?」

 

「実在するのか?御伽話なのだろ?」

 

「敢えて御伽話として広め自分達の存在を隠していた……そう言う事だろ?」

 

「大まかな推察としては其方が正しいでしょう。正確な事は昔の話である以上は掴め切れませんが」

 

「と言う事は今までの警察による理由不明な釈放は!?」

 

「グリーン・メイスンが警察内部に手を伸ばしきったと言う事になります。そして議員もいた事から政府にもいる可能性があり、そんな状態であるならヒーローの中にも……だからこそ信頼出来ると思える貴方達を呼びました」

 

オールマイト達は予想だにしなかった案件に声も出せないでいると会長は纏められた多くの報告書を取り出した。

 

「これは全てジャスティスが調べ挙げたもの。公安の中にはジャスティスを危険視し、監視している者もいましたがそんな状態でもグリーン・メイスンを追ってくれたのですが……残念ながら刺客に……」

 

「ジャスティスを殺したのがそのグリーン・メイスンの刺客なのか……!」

 

エンデヴァーは怒りの炎を見せ、オールマイトや他のヒーロー達も怒りの表情を見せていた。

 

忘れ去られていたトップヒーローではあるが誰よりも正義感あるヒーローであるのは他のヒーロー達は忘れなかった。

 

そんなジャスティスが殺された……しかも前に妻であるオリヴィアも殺されている。

 

残されたのは殺人鬼である一人娘のジルだけ。

 

いくら殺人鬼でも彼女から両親を奪った連中をオールマイト達は許さない気持ちだった。

 

「この事は私や一部の者しか知り得ません。公安にも奴等の影がいてもおかしくない状況です。我々はグリーン・メイスンは捨て置けない危険な組織とし、全力で対応する必要があります。皆様、どうか……我々に力を貸してください」

 

会長がそう言って頭を下げる姿にヒーロー達の答えは決まっていた。  

 

グリーン・メイスンを捕まえる。

 

ジャスティスがやり残した事を終わらせる為に元No.1とトップヒーロー達はグリーン・メイスンへの対決姿勢を強めた。

 

その頃、綾乃は元インゲニウムである天晴の元へと訪れて日の差し込める公園を車椅子を押して散歩していた。

 

あれから足を悪くした天晴に綾乃は仕事で世話になった事もあり引きこもりがちになった天晴を散歩と言う名目で外に連れ出していた。

 

だが、今日は何処か天晴はぎこちなかった。

 

「今日も良い天気ですね」

 

「そうだな……うん……」

 

「どうしました?何だかぎこちないですけど?」

 

「いや!た、大した事じゃないんだ!」

 

「ハッキリ言ってくれます?」

 

綾乃の追及に天晴は何処か顔を赤くし、緊張した面持ちで綾乃の方へ身体を向けると綾乃の両手を手に取る。

 

「広瀬さんいえ、綾乃……俺とずっと側にいてくれないか?」

 

「え……?」

 

綾乃は予想外の言葉固まる中、天晴は必死に綾乃に伝える。

 

「君がヒーロー嫌いなのは重々承知している!しかし、それでも君と過ごす日々を繰り返す内に想いが止められないんだ!!……俺の足は動かないから苦労を掛けるかもしれないが……」

 

「で、ですが……」

 

「必ず幸せにする……どうか俺と……結婚してくれ」

 

天晴のプロポーズに綾乃は思考を止めて固まるがジルが涙を流している姿を記憶に過った。

 

自分だけが幸せになっても良いのか?

 

綾乃は迷う中、どう返答するべきか分からない。

 

~side終了~

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。