殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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無慈悲な刃

~別視点side~

 

ジェントルは人の無い路地をひたすら走っていた。

 

ナイフが刺さった辺りから血が垂れるラブラバを抱えてジルの追跡を振り切ってすぐにでも病院に駆け込もうと必死だった。

 

「ジェントル……」

 

「大丈夫だラブラバだ!!傷は幸い着込んでいたから浅く済んでいる!必ず助かる!病院に行くまでの辛抱だ!!」

 

「ごめんなさい……私が……足を引っ張って……」

 

「謝らなければならないのは私だ……私が本人からのコメントではないと言って実行に移そうとした事が間違いだった……本当にすまない……!」

 

ジェントルは必死に走りながらラブラバに謝り、路地の真ん中辺りまで来た時、上から気配を感じたジェントルは咄嗟に避けるとジェントルがいた位置にジルがナイフを片手に飛び降りて突き立てようとしてきたのだ。

 

「経験もあるわね……面倒だわ」

 

「まだ追って!……血を追って来たのか!?」

 

「駄目よねぇ……逃げるなら痕跡を消してからにしないと……危ない殺人鬼に追い付かれるわよ?」

 

ジェントルは急激な寒気を覚えて形振り構わずに駆け出し、ジルはゆっくりと追い掛ける。

 

「逃がさないわよ?」

 

その声を聞いたジェントルは全力を掛けて逃走する。

 

「(どうにかして撒かねば!しかし……!)」

 

ジェントルが視線を向けるのはポタポタと地面に落ちるラブラバが流す血。

 

その跡がハッキリと残っており、ジェントルはこれではまた追い付かれ、先回りされる事を危惧した。

 

「ジェントルお願い……私を置いて逃げて……」

 

「何を言っている!!私は絶対に見捨てたりしない!!私は義賊と名乗る以上は最も信頼している君を見捨てれば私は生涯、後悔する!!何があっても見捨てるつもりはない!!絶対にだ!!!」

 

「ジェントル……!」 

 

「お喋りしてる余裕ある?」

 

ジェントルが角の近くを通ろうとした時、角の死角からナイフの刃が飛び出し、ジェントルは辛うじて避けたが頬に掠り傷を負った。

 

「本当に経験と言うのは面倒ね……分かってるアーサー。遊びも此処までにしないとね」  

 

「(誰と話して……?いや、それよりも逃げねば!)」

 

「逃がさない」

 

その声をジェントルが聞いた時、ジェントルは足に激痛を覚えて転びそうになった。

 

「ッ!?ナイフが……!」 

 

ジェントルの足にはナイフが刺さっており、ジルから投擲された物と判断できた。

 

ジェントルが個性を使おうにもラブラバを抱えている為に使えず、防戦一方、逃げの一手しか打てない中、ジェントルは足を引き摺りながらも懸命に逃げる。

 

「どうする……!どうすれば彼女から逃げきれる……!いや、せめてラブラバだけでも……!!」

 

ジェントルは必死に頭を動かして自分達を付け狙う殺人鬼を撒くか考えていた時、視線の中に病院が目に入る。

 

ジェントルはジルが来る前に急いで病院の方へ行き、中に入った。

 

~side終了~

 

私は逃げたジェントル達を血の跡を辿りながら追い続けていた。

 

でも、道中から血の跡が消えつつあり、このままでは見失う可能性があった。

  

「アーサーならどうしてた?」

 

『そうだな……奴等は怪我をしていた。お前を撒いたと思っているなら近くの病院にいるんじゃないのか?』

 

「それもそうね。あ、いた」

 

私が見つけたのはジェントルが病院から急いで出てくる姿。

 

足は引き摺ってて何かを抱えている様子だけどマントで隠れて見えない。

 

血の跡もあるけど……それがどちらの物か分からないけど。

 

「一先ずは追える」

 

私は追跡を再開、ジェントルを徐々に人気の無い工場跡地に追い込み漁の要領で追い詰めて建物内に入った所で残っていたもう片方の足にナイフを投擲して歩けなくした。

 

それでもジェントルは這いずってでも逃げようとする所を私は踏みつけて止めた。

 

「終わりよジェントル・クリミナル。貴方の相方共々、始末してあげるわ」

 

「くッ……それはどうかな……」

 

「……そのマントの内側を見せなさい」

 

私がそう促すけどジェントルは強く抱き抱えて答えない。

 

私は仕方なくジェントルを蹴りあげてマントを広げるとそこには一塊の布だけだった。

 

「やられた……!」

 

『単純な囮だな。恐らくあの病院に預けてそのまま囮として逃げてたんだろう。完全にやられたな』

 

アーサーに笑われる中、私はジェントルを睨み付けながらナイフを突き付ける。

 

「ラブラバは?」

 

「信頼出来る友人に任せたよ……友人はヒーローだ……もはや君の手は届かない……そして……」

 

ジェントルのその言葉が終わると同時にパトカーのサイレンと声が響いた。

 

「切り裂きジャックはこの辺りにいる筈だ!探せ!!」

 

私はこの時、追い詰められたのはジェントルではなく、私の方だと気付くとジェントルは力無く笑う。

 

「ヒーロー達は君の為にわざわざ対刃用のサポートアイテムを装備して来ているらしい……そして単独ではなく集団で取り囲み、包囲を縮めつつある……もはや私も君も終わりだ……君が今まで翻弄してきたヒーロー達に捕まりたまえ……!!」

 

「自分を釣り餌にするなんてね……度胸は認めるわ。けどね」

 

私は這いずって逃げるジェントルの背中に思いっきりナイフを突き立てた。

 

血が多く流れる中、ジェントルの眼はまだ諦めていない。

 

「そんなに大事なの?ラブラバって人」

 

「私の……初めてのファンだ……会いたいが為に住所を割って来たのは正直、恐怖したが……だが……それでも共に編集と企画を行う中で……孤独な闇の中で私に光を与えてくれた……誰もが私を嘲り、忘れていく中で彼女だけが私を見てくれたのだ……彼女に手を出す事だけは許さん!!狙うなら私を……!」

 

ジェントルは痛みの襲われたのか汗をかいて力をもはや出せないでいる。

 

「……分かった。ラブラバは貴方の想いに免じて見逃してあげる。その代わりに……貴方の命を貰う。それで良い?」

 

「あぁ……彼女に危害を加えないのなら……それで良い……」

 

ジェントルはそう言って目を瞑った所で私はナイフを振り上げた。

 

~別視点side~  

 

ジェントルは目を瞑った所で昔の記憶を思い出していた。

 

「夢はヒーローになって教科書に載るくらいの偉大な男になる事です」

 

そう……ジェントルもかつて目指したヒーロー……歴史に名を残した偉人の様に教科書に載る様な偉大な男になりたいと願ったが……取り返しのつかない過ちで家族にすら見放された。

 

それからフリーターになり、転々とする日々の中、ヒーローとして独立した同級生の竹下を見掛けて躍進する姿に歓喜して声を掛けたが。

 

「誰でしたっ……け?」

 

忘れられていた……自分の事など眼中に無いと言われた気分だった。

 

ジェントルは絶望し、まともに話さないまま竹下から逃げる様に帰宅した。

 

悔しかった……何か別の方法でも良いから名を挙げる為の手段をと手を出したのが自身が企画した動画を投稿する事だった。

 

最初は苦手なハイテクを試行錯誤の中で動画投稿するも伸び悩む中、住所を割ってやって来たラブラバとの出会いで動画は伸び、何処か暗い毎日だった日々が明るい光の日差しのある毎日に変わった。

 

破滅し、人生の奈落に落ち、絶望にいたジェントルをラブラバが引っ張り上げたのだ。

 

「(せめて彼女に礼を言いたい……あと、竹下君とちゃんと話さないと……迷惑を掛けた母さんと父さんに……許されなくてもちゃんと謝罪したい……あぁ……思えば……未練が多いな……)」

 

ジェントルがそう思い、涙を流した時……無慈悲な刃が振り下ろされた。

 

~side終了~

 

私はナイフを引き抜くと血に濡れた刃はポタポタと血の雫を落とした。

 

ジェントルの死体を私は冷たく見つめる中、私の背後から足音が聞こえて振り向き様にナイフを構えた。

 

そこには竹をモチーフにした様な三十代くらいのヒーローがそこにいた。

 

「飛田……!」

 

「知り合い?残念だけど仕事は終わったわ。もう……息なんて無い」

 

「貴様!!」

 

ヒーローは怒りの表情を見せながら私の元に近寄ろうとした所で私は飛び退く様に離れると刃の血糊を払ってからナイフをしまう。

 

「相手にしてる暇は無い。さようなら」

 

「待て!くそ……クソオォォォッ!!!

 

私は悔しがるヒーローを余所にその場を立ち去った。

 

これから私はラブラバとあのヒーローに憎まれる事になる……私はその事実を胸に次の獲物を定める

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