殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
私は目の前の光景が信じられずにいた。
死んだ筈の母さんが不適な笑みを浮かべている姿に生きていたのか、或いは夢なのか分からない。
「あっははは!!そうですよ!貴方のお母様です!!」
『違う!!お前の母親は死んだ!!あれは死体を乗っ取りやがったんだ!!』
「そんなのあり得ないわよ!!幾ら個性が中心の社会でも死体を乗っ取るなんて無理よ!!」
そうだとしてもどうしてグリーン・メイスンなんかに死体が渡ってるのよ!
父さんは何も言わなかったと言う事は葬儀は済ませてある筈……なのに何で!!
「オールフォーワンには感謝しかありませんね。火葬場で遺体を振り替えて我々の元に送ってくれましたからね」
「オールフォーワン……!」
奴がグリーン・メイスンと関わっているのは分かってた……まさか母さんの死体を送るなんて!!
やっぱり殺してしまって良かったわ……胸糞が悪いにも程がある!!
私は母さんの身体を好き勝手に使う衣緑を睨み付けながらナイフを向けるけど衣緑は余裕の笑みを浮かべるばかりだ。
「そう言えば……何故、私がこの身体を手に入れて扱えるかお分かりですか?」
「そんなの個性か何かでしょ?」
「そう……普通ならそう考えるでしょう。しかし、私は無個性!何の変哲も無い単なる人間に過ぎません」
「は?何を入ってるのよ……?」
「ハッキリと言えば私は他の手段で尚且つ個性に頼らずにこの身体を得ました。そう……我々は過去にも成功例を得ています」
『予想はしていたがやはり……!』
「(何なの?どんな方法なのよ……?答えてよアーサー!!)」
私は何だか嫌な予感を抱く中、衣緑は答えた。
「臓器移植は御存知で?それを受けた人間が嗜好や性格が変わる話です。それはまさにオカルトと言うべき分野。しかし!確かに存在する病例であり、不老不死に至る為の手段の一つとして研究も行われていました。過去には我が祖であるグレイグ・ウァジェトは貴方方の初代たる
私はその話をもう聞きたくなかった……あまりにもおぞましく、本当に人のやる事なのかと疑ってしまう……そんな感情に駆られる中、衣緑は言った。
「そう!この身体は貴方の母親と私の心臓を入れ換える事で人格の転移現象を利用して得たものなのです!!ハッキリ言えばこれは応急処置も良い所……心臓を無理矢理に移植した事で私はあまり激しく動けない身になりましたがこの身体は素晴らしい!!流石は先祖に二代目の血を引くだけはあります!!ですが本当は……貴方の身体が欲しかったのですよ?準備さえ整えば私は何のデメリットも無く身体を奪う手段。不老不死への道を切り開く為の方法を確立させていればね!!」
衣緑はそう言って高笑いし、私は母さんの身体がこんな奴なんかの為に利用され続ける事に怒りに満ちていき、私は飛び出した。
『待て!!』
アーサーの制止で無理矢理に身体を止められてしまった。
「止めないでよ!!あんな奴に母さんの身体を使わせるなんて真っ平よ!!」
『今、殺すのは無理だ!!悔しいが奴の方がお前よりも上だ……此処は一度退け!!』
「くッ……!」
確かに形はどうあれ衣緑の方が私よりも強い……でも、目の前に元凶がいて母さんの身体を使ってる……此処で止めてやりたい……でも、一度退くべきでもある……私は……!
「……分かった。退くわ」
落ち着かないと……此処で怒りに任せて突っ込んでも彼奴にやられて今度は私が身体を奪われるなんて言うおぞましい所業を受ける事になる。
此処は一度退いて体制を整えないと。
「おや?逃げるおつもりですか?情けないですね」
「逃げも戦略の一つよ。勝てないなら一度退く事も考えるわ。でも、忘れないで貰うわよ。私は絶対に貴方を殺すから」
「ふん。減らず口を」
「何とでも……言ってなさい!!」
私は話終えると同時にナイフを投擲するけど衣緑はそれを余裕そうに軽く避けると仕返しとばかりにナイフを投擲され、私はそれを咄嗟に避けたけど右の頬に掠めて血を流した。
「まぁ、良いです。今回だけは見逃してあげましょう。しかし、その傷を常に見て思い出す事ですね。貴方では……私には勝てないと言う事を!!」
衣緑はそう言って高笑いし、私は屈辱に濡れながらその場から去ろうとした。
「忘れてました。少し待ちなさい」
「何よ……?」
「貴方の主治医に私がよろしくと伝えておきなさい。意味は……分かりますか?」
衣緑はそう言って不適な笑みを浮かべる姿とその言葉に私はとても嫌な予感がした。
私の主治医?
まさか……そんな……絶対にあり得ない!
「外堂先生に何をしたの……!?」
「はて?何もしていませんよ?ですが彼は中々に協力的でした。私の心臓と……貴方の母親の心臓を入れ換える移植手術に手を貸したのは他ならぬ彼ですしね。対価は少し高かったですがね」
外堂先生がグリーン・メイスン……?
いや、もしかしたら奴の嘘かもしれない……焦っては駄目……
「信じられないのなら本人から聞きなさい。ほら……出口は彼方ですよ?」
「……言われなくても」
私は罠だと信じたいけど……でも、私はどうしても外堂先生の事を疑ってしまう。
何で……どうして疑ってるの?
私はその疑問と屈辱を抱きながらその場を後にした。