殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー    作:謎多き殺人鬼

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暗雲

私はまた夢を見ているのか何処か古い様式の家……と言うより、事務所の様な所にいた。

 

私は辺りを見回す……必要もなく、近くにアーサーに似た人と古い警官の制服を着た何処か母さんによく似ている婦警、シャーロットがいた。

 

だとするとアーサーに似た人はアーサー本人なのかもしれないと思っていると二人は何か話している様で私は会話を聞く。

 

「警察の仕事って、それは少し違うんじゃないですか?そもそもロンドン市警の成り立ちは自警団が元になっている筈です。悪を捕まえると言うより、市民の生活と安全を守る為の組織のだった筈でしょう?」

 

話しの途中だったから何でそんな事を聞いてるのか分からないけどアーサーの言う通り、ロンドン市警は自警団が元になって設立された組織。

 

そう……ヒーローと同じ自警団から始まった。

 

現代のロンドン市警とヒーローは同じ成り立ちだから特に仲が悪い訳ではなく、寧ろ積極的に協力し合ってる所がある。

 

警察の組織力と訓練されたヒーロー。

 

組み合わさればより、治安維持に力を入られた事で世界各国ではそれに合わせた法案が検討されていると聞いた事もある。

 

「それは……すみません。言い方が悪かったですね。仰る通り、ロンドン市警の役目は市民を守る為です」

 

シャーロットはそう言って殊勝な顔でアーサーを見据えた。

 

あの真面目な姿勢……シャーロットって意外と飯田君と似てる様な気がする。

 

「だから私達は拳銃を携帯しません。市民を守る為の組織として、威嚇や殺傷の道具や、過剰な武力は持たない。と言う考えであるからです。私はその責務に誇りを持っています。なので……先程語った心構えは、そんな自分の信条なんです」

 

「何だってそこまで警察の仕事に入れ込むんですか?僕だって曲がりなにりも警察官を目指した身の上です。市警の責務や誇りについては理解しているつもりですよ」

 

アーサーって警察官を志していたんだ。

 

でも、それなら何で探偵なんてやってるのか?

 

アーサーとは長い付き合いだけどやはり、謎が多すぎる自称、ご先祖様だ。

 

「ですが、意気込みだけでそこまでやるのは難しい。こう言ってはなんですが、貴方を突き動かすのは、別の原動力がある気がするんです」

 

「それは……探偵としての疑問でしょうか?」

 

「前に貴方も僕の母について尋ねたでしょう?あれと似た様なものです」

 

アーサーのその言葉にシャーロットは何を語れば良いのかと言う様な表情を見せる。

 

「そうですね……原動力と呼べるものかは分かりませんが……」

 

シャーロットはそう言いながら軽く服の袖を掴り、逡巡する。

 

暫くしてからシャーロットは真剣な眼差しで語り始めた。

 

「私には、両親の記憶がありません。物心ついた時には既に孤児院にいました。孤児院にいた私達は、幼い頃、自分達にはどうして両親がいないのかずっと不思議に思っていました。それである日、育ててくれた院長先生に疑問をぶつけてみたのです。先生は仰いました。皆、希望を求め深い闇の中を漂っているのです。貴方達の両親は、漂い、疲れ、貴方達を一時此処に預けているのですと」

 

私はシャーロットが孤児だとは知らなかった。

 

何せ、当時の子供にすら重労働を課す様な厳しい時代で警官になるなど何れ程の苦労を伴うか……想像がつかない。

 

それに漂い、疲れ、貴方達を一時預けている……その言葉の意味は捨てられた、両親は死んだのどちらとも取れる遠回しの言葉なのだと察してしまった。

 

「それを聞いて、私、誓ったんです。私が"その闇を照らす光になろう"って」

 

闇を照らす光。

 

私はシャーロットのその言葉を聞いた私は何処か彼女が眩しく思えた。

 

闇であるアーサーとは対の光であるシャーロット。

 

何時かは対立する二人だけど、どちらにも譲れない正義があると言うのは心の葛藤の中に私には分かる。

 

私は……自分の信じるものを貫けるのかしら……

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私は次に目を覚ますとそこは知らない天井……と言うより一度は知ってる天井だった。

 

「気がついたか?」

 

私はその声を聞いて視線を向けるとそこには。

 

「父さん……?」

 

出張で暫くは帰らない筈の父さんがそこにいた。

 

「たく……オリヴィアから事件に巻き込まれたなんて連絡があって急いで帰ってみれば雄英のUSJが襲撃された挙げ句、お前が気を失ったなんて聞いてそこからまた大急ぎで来たんだぞ?しかも血塗れだった……後で返り血だって聞かされて安堵もした。心配したんだぞ?あと、次いでだがイレイザーヘッドは重症だが命には別状は無し、他の生徒も一人、除けば大した怪我は無い」

 

私はそれを聞いてとても安心した。

 

何しろ腕や目を潰される姿を見せられたら不安と恐怖を覚えたりする。

 

一人除けば大した怪我は無い。

 

その意味はやはり……出久君の事でしょうね。

 

私は安心すると同時に今度は父さんを心配させた事の罪悪感が沸き上がってきた。

 

「ごめんなさい……本当にごッ!?」

 

私が謝ろうとした時、父さんが私の両方の頬をつねってきた。

 

「本当に反省してんのか?どうだ?この口は嘘ついてねぇか?」

 

いひゃい!!いひゃいからやへて!!(痛い!!痛いから止めて!!)

 

頬をつねられて上手く話せず涙目で父さんに懇願するけど父さん……貴方、絶対に面白がってるわよね?

 

顔が笑ってるもの。

 

後で母さんに言ってやると決めた私は父さんのからかいに付き合わされる中、そこへ今度は緋色が来た。

 

「失礼しま……す。うん。どうやら僕はお邪魔な様だね」

 

いふからたふけてよ!!(良いから助けてよ!!)

 

何を思ったのか緋色が何処か行こうとしているのを私は何とか食い止めるとやっと、父さんが止めてくれてそのまま緋色が同席する形になった。

 

「いやぁ、悪いな。緋色ちゃんだっけ?ジルと仲良くしてくれてありがとうな」

 

「いえ、此方こそ。僕の方こそ騒ぎの時に助けられましたので」

 

「確かUSJ襲撃の前にマスコミが入り込んだ事件だったな?たく……いくら報道の自由だとか何とか振りかざしていても不法侵入、しかも警備の厳しい雄英に侵入したらどうなるのか分かってるだろうにな。全く……!」

 

父さんはカンカンになりながらそう言ってもし、何かあったら殴り込みを仕掛けてそうだなと私は呑気に考えていた。

 

「保健室で騒ぐんじゃないよ!その子はまだ病み上がりなんだ!あんまり無理させるんじゃないよ!全く……何時まで経っても騒がしい男だねぇ……真は」

 

「おいおい、此方も不安だったんだぜ?リカバリーの婆さん」

 

会話に割って入る様にやって来たのは雄英の看護教論であるリカバリーガールだった。

 

雄英の看護教論だけでなく、各病院への慰問も行うから顔が広いヒーローでもあるけど父さんも父さんで顔が広いわね。

 

「それとこれとは別だよ。さて、ジル」

 

「あ、はい!」

 

「普通に話せて体調が悪くなさそうだね。それだけ元気なら大丈夫だよ。暫く此処で休んだら帰って家でゆっくり休みなさい」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「本当にありがとうな。リカバリーの婆さん」

 

「良いよ。それより真。仕事も良いけどちゃんと家族の事も見るんだね。さもないと」

 

「分かってる!分かってるよ……たく」

 

父さんはリカバリーガールからのお説教は聞きたくないとばかりにそう言うとリカバリーガールは溜め息を吐いた。

 

「俺だって家族サービスくらいはしたいさ。ただ……まぁ、忙しくてな。だが、暫くは家族一緒だ」

 

「え?それって暫くは出張は無いの?」

 

「あぁ、そうだ。この辺りで暫く仕事だ。わざわざ遠くに行かなくて済むぞぉ!」

 

父さんはそう言って高笑いしてリカバリーガールに煩いと頭をどつかれる姿を見ながら暫くは久しぶりの家族団欒が出来ると思うと嬉しく思えた。

 

「君のお父さんは毎回の様に出張に行くのかい?」

 

「うん。何の仕事か分からないけどヒーロー関連なのは確かなのよ。だから殆ど父さんと過ごした事はないわ。でも、父さんは私にとっては誇りなの。誰かの為に戦う父さんの背中を……み、見てないけど……それでも私には憧れの様なものなの」

 

私はそう緋色に言うと襲撃された時の不安は消えていて父さんと母さんと三人で暫く過ごせると思うと胸が高まった。

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私はリカバリーガールにお礼を言った後、緋色とも別れて父さんと一緒に帰宅した。

 

一緒に電車に乗って、歩いたりして家の近くまでやって来た。

 

「オリヴィアも晩飯を用意してくれてるし早く帰ろうぜ」

 

「父さん。慌てなくても家も母さんも消えないわよ」

 

私は父さんと軽い会話をしながら家の玄関まで来ると父さんが鍵を差し込んだ時、笑顔から険しい顔になった。

 

「どうしたの父さん?」

 

「……空いてやがる」

 

「え?」

 

父さんのその一言を私はすぐに理解出来ないでいると父さんはそのまま玄関を開けて入って行き、私も続くと普段なら絶対にしない筈の匂い……それは襲撃の時に私が戦って浴びたものだ。

 

「血の……匂い……!?」

 

強烈な鉄臭い匂いが奥から漂う中、父さんは靴を履いたまま家の中に駆け込んだ。

 

「オリヴィア!しっかりしろオリヴィア!!」

 

「母さん……!母さん!!」

 

私は父さんのその声にまさかと思いながら父さんを追って中に入り、リビングへ行くとそこには。

 

「母……さん……?」

 

そこには……血塗れで銃で撃たれた様な傷を負って倒れている母さんを父さんが必死に呼び掛ける姿だった。

 

「嘘……嘘よ……嫌……!」

 

これが現実な訳がない!

 

きっと……きっとまだ夢を見ているのよ……そうよ!

 

きっと夢から覚めれば母さんがいて、笑っていてくれてる筈なのよ……その筈なのよ……!

 

『ジル。酷な事だがな……もう死んでいる。オリヴィアは……お前の母さんは……』

 

「お願い……言わないで……!」

 

私が心の底から懇願する中、アーサーは非情な現実を私に突きつけた。

 

『死んだんだよ。もう……現実を見ろ。』

 

その言葉を聞いた時、私は悲鳴を挙げて泣き叫んだ。

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