殺人ヒーロー ジャック・ザ・リッパー 作:謎多き殺人鬼
火事が発生してから収まるまでに3時間後、消火に駆けつけたヒーローと消防の活躍もあって何とか周辺に広がる前に鎮火したしたがアズエル教会の礼拝堂は見る影もなく、焦げ付き、何が礼拝堂にあったのかすら分からなくなっていた。
あの扉の先と勿論、火事で崩れてしまい、真相は闇の中へと消えてしまった。
「(終わってしまったわね……)」
『そうだな。後はジャスティスのおっさん達の仕事だ。所でジル。何をポケットにしまっている?』
「え?」
『さっきまで入ってなかったろ?探ってみろ』
アーサーに言われて私はポケットを軽く叩きながら調べると確かに入れた覚えが無い何かの感触があった。
私はポケットに手を入れて取り出してみるとそれはポケットに入る様に上手く畳まれた書類らしき物だった。
「これって……?」
『分からないがフォールン・救火……ザフカの奴が入れたんだろう。お前に何をして欲しいのか知らないが取り敢えず隠して持っとけ』
アーサーに言われて私は良いのかと疑問に思いつつも書類を隠すと父さんとエンデヴァー、大門刑事は中で険しい表情で火災の発生源であるあの扉を見ていた。
「(燃えちゃったから証拠どころか何があったのか分からないでしょうね……)」
『だが、フォールン・救火達は汚職の件で逮捕は免れないだろう。それに生き残った信者達。彼奴らは徐々に正気を取り戻して証言をするとなると間違いなく牢獄行きだ』
「(もっと他に方法はあったのかな……そう……例えば……)」
彼らを殺して止めるとか……
「(私は何を考えてるの……!?)」
私は一瞬だけとは言え、殺人を考えた事に寒気を覚えて誤魔化す様に首を横に振った。
『結局、後悔か?』
「(違うわよ……私は考えを変えるつもりはない。何があってもよ)」
『ふん、頑固者め。まぁ、良い。好きに進めば良いさ。同じ身体のよしみだ。付き合うぜ』
アーサーはそう言う中、私は自分の選択は間違っていない……そう強く思いながら私は決して、殺人と言う手段で止める行為はしないと強く誓った。
~別視点side~
礼拝堂火災事件から一日が経ち、警察署では大門刑事を中心とした警察によってフォールン・救火の取り調べが行われていた。
アズエル教会の悪行の事はフォールン・救火が一つ々丁寧な説明のうえで自供され、全貌は明らかになりつつあったが……
「後ろ楯はいたのか?いたとしたらどんな奴だ?個人ではなく、組織なのか?」
「黙秘いたします」
「黙秘は結構だ。だが、単なるカルト教団が単身でヒーロー達を懐柔し、今まで犯行を長く明らかにさせなかったのは後ろ楯がいるからだ。そうなんだろう?楽になる為にも話した方が懸命だと思うがね」
「黙秘いたします。お話は致しません」
フォールン・救火は後ろ楯がいた可能性のある話になると頑なに黙秘を貫いてしまっていた。
その行動は後ろ楯がいた事を示唆するものだが、決定的な証拠は無く、他の団員も黙秘してしまい、まともな証言も得られない事で取り調べは難航してしまった。
その様子をマジックミラー越しに見ていたジャスティスとエンデヴァーそして、警部の塚内がいた。
「お話した通り、フォールン・救火はあの様に黙秘を続けています。どうですか?あの礼拝堂で何か掴んだとかは?」
「いや……残念だが全部燃えちまった。奴等が彼処で何かしていたのは間違いないが全部、燃やされちまったら何にも出来ない」
「ふん、最初からさっさと捜査していれば良かったものを。そうすれば証拠の一つくらいは挙げられていた筈だ」
「……いや、無駄だ。彼処まで黙秘をしていると言う事は証拠事態、既に揉み消している可能性がある。相当に用心深い……が、予想外の事が起きた」
「例の個性届けですか?」
塚内がそう言うとジャスティスは頷いた。
「おかしいだろ?何で一個人でしかないヒーローが役所管理の個性届けを持ってんだ?脅しの為か或いは……」
「仕組まれた物と言うのか?」
「いずれにしてもフォールン・救火は終わりだ。だが、黙秘されてる内は深く食い込めない。新しい情報を待つしかない」
ジャスティスは国によって守られた権利の厄介せいに頭を悩ませながら頭をかくとジャスティスは過去の出来事を思い出した。
「貴様の敗けだ。ジャスティス!」
その言葉と共に高笑いが響く。
ジャスティスを失脚に追い込み、今も尚、のうのうと生きているヴィランに繋がるかもしれない唯一の容疑者。
だが、何故か話す事は無かった。
「時間は無駄に出来ない。俺は別方向から攻めてみる」
ジャスティスはそう言って部屋から出て行こうとすると、塚内に呼び止められた。
「ジャスティス。……今度は焦るな。必ず、間に合う」
「分かってるよ。焦ってまた、罠に掛からない様にするさ」
ジャスティスはそれだけを言うと今度こそ出ていった。
長年の因縁を終わらせる為にもジャスティスは今度こそ勝つと誓い、フォールン・救火以外の手掛かりを求めて街へと繰り出した。
~side終了~
アズエル教会の事件は終息してから二日後、私は寮へ必要な私物を持ち込んで整理を済ませ終えていた。
「やっと終わったわね……」
『随分と時間が掛かったな。もう夕方だぞ?』
私が整えた部屋は少しアンティークにしたごく普通の学生の部屋と言った感じかしら?
勉強机に大きめの壁掛けボード、ベッド、本棚、チェスト。
あっても不思議じゃない物を用意している。
「仕方ないじゃない。この寮で生活するんだから日用品も入れておかないと。それに……これもね」
私は徐に壁掛けボードを裏返すと発砲や射殺事件に関する新聞の切り抜きやその周辺の地図を張っていた。
「私は……諦めないから」
『それにしても多いな……この日本は銃刀法なんてものがある筈だろ?』
「うん。超常黎明期なんてなってから法が形骸化してしまって治安が大きく悪化してから銃や違法な薬物が出回ってしまったせいよ。対策はされ直してるけど……個性の影響とあって、どうしても通られる事がよくあるそうよ」
『過度な力、手に余る様な力なんて持つもんじゃないな。それなら俺のいた時代のロンドンの法がマシだな』
アーサーにそう言われると今の時代のおかしな所に私は項垂れるしかなかった。
ヒーローが活躍するのは良い。
皆の希望であり、人としての模範となるのなら尚更。
でも、アズエル教会に癒着していたヒーローの様に名声や富なんかの為に罪を犯す恥さらしのヒーローもいる。
いや、法を犯さないだけで今のヒーローは名声、富を求めるヒーローの方が多い様な気がする。
それだけじゃない。
個性があるか無いかで虐げられるか決められ、個性があっても弱い、強すぎる、あまりに変化しすぎた異形と言った様な条件があればそれも差別の対象。
どの条件に当てはまらなくても個性がヴィランみたいであっても白い目で見られてしまう。
「本当に個性なんて必要だったの……?」
個性を使用しての犯罪、個性の有方で決まる立場と未来、嘆いていても、訴えても変わらない社会。
個性至上主義とも取れるこの醜い現実に私は本当にヒーローとして自分の正義を貫けるのか不安だった。
『おいおい今更、殺人鬼になりたいのか?』
「違うわよ。……不安なだけ。でも、やれるだけやってみる。誰も虐げられない、誰かを助けられるヒーローになりたいから」
私は改めて心から殺人と言う非道な手段に頼らない誰かを必ず助けるヒーローになり、母さんの仇のヴィランを追い詰めて必ず法の報いを受けさせると強く誓った。