こちらの短編の続きになりますhttps://syosetu.org/novel/282474/
本作はpixivでも掲載されています
ある日の夜。それは空に浮かぶ星々が綺麗に見える夜だった。
静かな波打ちの音が響く海辺、傍の砂浜には三人の足跡が続いていた。
「メリッサ。歩くの、大丈夫か?」
「うん。まだ回復したばかりだけど、私は平気。心配してくれてありがとう、カロッサ」
二人分の小さい足跡の先には、緑髪をした可愛らしい、互いにそっくりな双子の少年と少女が仲睦まじそうに歩いていた。そしてもう一人、大きな足跡の先には双子の少し傍を歩く、長い髪を束ねた白髪の、優しげな糸目の男が二人を見守っていた。
「カロッサの言う通り、あまり無理はしなくても構わないよ。何しろ君は治療を受けて回復してからまだ間もない。メリッサは気にせずゆっくり、自分のペースで歩けばいい。休みたいならいつでも問題ないのだから」
男の言葉に、双子の片割れの少女は微笑んでこたえた。
「ドクターさんも、気にかけてくれて嬉しいです。だけどこうして、夜の海辺を散歩したかったのは私ですから。
むしろ二人とも付き合ってくれて、お礼を言うのは私の方です」
「どうって事はない。メリッサがしたい事を叶えられるなら、それが一番だ。もちろんカロッサも、私と同じ思いのはずだとも」
男──ドクターはそれを聞いて、まるで自分の事のように嬉しそうな様子を見せた。
ドクターは双子──カロッサとメリッサの親と言うわけではない。彼は今いる海辺のすぐ傍にある、診療所の医者として働く男だ。
しかし、今でこそ医者をしているが昔はとある組織で人体実験に関わっていた。二人はその被験者であり、組織に利用された果てに一度命を失いかけもした。……が。
「ふふふっ! 空気が涼しくて、海や砂浜、夜空もこんなに良い景色で。気に入りました。
カロッサと一緒に、平和にこうしていられるの……何だかとても嬉しくて」
砂浜の上を、海や夜空を眺めながらスキップしながら幸せそうなメリッサ。
「俺もだ、メリッサ!」
カロッサもまた、同じように笑って彼女と一緒になって砂浜を駆ける。ドクターは二人の後ろをゆっくり歩きながらついて行く。
彼はかつて人体実験の被害にした二人を救うために、失われかけた命を助け、引き取って育てていた。おかげで……今はこうして、笑って普通の生活を送れている。
ドクターもその様子に、感心しながらも満足げに呟く。
「もうあんなに動けるとは。だが、元気であることが何よりだ」
そう見守っていると、メリッサは途中でスキップをやめて、数歩歩いた後で立ち止まって振り返る。
「やっぱり、ちょっと疲れちゃったかも。カロッサ、それにドクターさんも、良ければ一緒に一休み……しませんか?」
それでもやはり疲れはあったようで、彼女は二人にそう話す。
カロッサ、ドクターの答えはもちろん──決まっていた。
三人は一緒に、砂浜に座ってゆっくりと過ごす。
「うん、こうして座って、静かなに眺めるのもいいですね。
……波の音も、よく聞こえる感じがしますし」
「この辺りは気持ちも落ち着く、安らかになれる場所でもある。だから私も近くに診療所を立てたのだが、メリッサも気に入ってくれたのなら嬉しい」
「はい。とっても、好きな場所です。……私にとっても」
メリッサはドクターにそう返すと、隣に座っているカロッサに手を伸ばす。
「メリッサ?」
「カロッサ、手を繋いで一緒に眺めよう? 大切な人と、そうして過ごしたいって思うから」
見つめて返事を待つ彼女。カロッサは少し照れくさそうにしながらも、その手を握る。
「……うん、分かった」
そうしてカロッサとメリッサ、二人は手を繋いで海と夜空を眺める。夜の中の綺麗な景色を眺めながら、横目で互いを見つめ合って。
静かなひと時。それは互いの心を満たし合う、大切な思い出となるひと時でもあったのだから。