黄金の樹年代記~ある家に伝わる家系史あるいは妄想に満ちた偽史 作:フォン・セテム
90年戦争末期の軍人テオドール・フォン・シュヴァンガウ大将に関する史料は極端に少ない。
後述するゴールデンバウム家のプロキオン星系への移住の際に失われたともシリウス戦役以降の戦火にて失われたとも言われ詳細は不明である。
地球統一政府軍の史料もシリウス戦役における黒旗軍(BFF)による地球攻略戦の戦火により失われているためテオドール・フォン・シュヴァンガウ将軍に関する軍務資料も今となってはうかがいしれない。
ゴールデンバウム朝銀河帝国開闢後のリヒャルト1世帝の地球発掘事業においても、これといった史料は発掘されなかったとの発表であった。
新帝国開闢後、学芸省による旧王朝に残された史料、旧フェザーン自治領、旧自由惑星同盟並びに同盟領内に残っていた旧銀河連邦のロスト・コロニー由来の史料などへの学術調査においても同将軍の足跡を記した文書などは発見されなかった。
同将軍について解っていることは、以下の3項目だけである。
①北米教団国家群との戦いにおいて北米大陸東岸地域に強襲上陸し電撃的に教団国家群を攻略し北米大陸解放に多大な貢献をした。
②戦後の一時期高潔な英雄としてもてはやされ称揚されていた。
③大将昇進の際に一族の姓をフォン・シュヴァンガウからフォン・ゴールデンバウムと改名した。
以上である。
ゴールデンバウム家にとっても非常に重要な人物である同将軍に関する情報が以上の3項目のみというのは極めて奇妙な事であろう。
この件は様々な憶測を生んでいる。いわく地球統一政府に対してクーデターを起こそうとして潰されたとも、フォン・シュヴァンガウ家の出自にからみ敵対していた政治勢力により歴史的に抹殺されたとも。奇妙なことにゴールデンバウム本家にも史料が少ないことから、同将軍のなにがしかの醜聞により一族により意図的に情報を操作された結果とも言われているが学問的には結論が出ていない。
いずれにしても、ゴールデンバウム家に伝えられていた同将軍の事跡は武勲を挙げた高潔な英雄的軍人で、フォン・ゴールデンバウムと改名したという事実のみである。
ちなみに一般的な旧王朝の帝国臣民の了解ではゴールデンバウム家は西暦時代から特に改名することなくゴールデンバウム家であったと思われていた。
以上の同将軍に関する情報の少なさは後述するシリウス戦役時のゴールデンバウム家の低迷の主要な原因ではないかと推測している。
(ラーテナウ学芸尚書による注釈
この章は発表直後に特に批判された部分だった。憶測や推測に走りすぎて学問的正確さが無いと。)