黄金の樹年代記~ある家に伝わる家系史あるいは妄想に満ちた偽史 作:フォン・セテム
地球統一政府による膨張主義はシリウスの隆盛と言う齟齬が生じた。
資源の枯渇した地球本星は金融資本などにより植民惑星を支配するも地球統一政府の強権的支配はシリウスを始めとする植民惑星の反乱という形につながり大規模な戦乱を再び引き起こす。
地球統一政府の隆盛とともに功績のあったゴールデンバウム家はこの時期人材を欠いていた。シリウス戦役中参加したゴールデンバウム家の軍人はカール・フォン・ゴールデンバウムで最終階級はシリウス戦役終戦時に地球統一政府宇宙軍中尉であり軍の中枢にはいなかった。
シリウス戦役時、地球統一政府軍中尉のカール・フォン・ゴールデンバウムは黒旗軍との戦闘の後麾下の部隊とともに降伏したという。当時西暦時代以来の軍人一族ゴールデンバウム家のことは忘れらており後述のごとくプロキオン星系出身の徴用兵の部隊と誤認され許されている。カール自身軍才に恵まれず平凡な軍官僚として任官していたが折からの戦乱に部隊指揮を任され一族の拠るプロキオン星系に駐留していたところ黒旗軍先鋒部隊と交戦するも降伏したと伝えられている。
シリウス率いる植民惑星連合軍司令官ジョリオ・フランクールと黒旗軍による地球攻略戦は苛烈を極めた。
ヴェガ星域会戦に勝利し地球本星を包囲した黒旗軍は持久戦により地球人を餓死寸前に追い込む。地球統一政府より和平の申し出があったがフランクール司令官は「滅亡するか、滅亡させられるかを選べ」と冷然と言い放った。
その後の全面攻撃で主要な拠点を徹底的に破壊し、降下した地上軍部隊による掃討戦と称した極めて大規模な報復的虐殺が行われた。シリウス戦役初戦の地球統一政府軍の先制攻撃により勃発した有名なラグラン市を含むシリウス主星ロンドリーナへの地球統一政府軍の無差別虐殺・略奪と比較しおよそ100倍の規模での凄惨な報復により地球人口の90億人もの犠牲者が出たという。それはフランクール個人の報復の感情~恋人を地球統一政府軍兵士に凌辱され、その後自殺してしまった~が侵攻軍に伝播し増幅し、地球人の徹底的な民族浄化という人類史上でも屈指の苛烈な残虐行為へとつながっていった。
黒旗軍の戦犯追求を逃れ運良く許されたカール・フォン・ゴールデンバウムは一族の本拠プロキオン星系にて隠遁したそうだ。
シリウスは地球を打倒し人類社会の支配者になったが、指導者カール・パルムグレンの病没後、経済政策をめぐりウィンスロウ・ケネス・タウンゼント首相とジョリオ・フランクール国防相が激しく対立、黒旗軍の軍事力を元にフランクール国防相はクーデターを計画するも先手を打ったタウンゼント首相により謀殺される。タウンゼント首相は戦役時地球統一政府軍への辛辣な謀略で恐れられたチャオ・ユイルンも暗殺し絶対的な権力を得た。が、タウンゼント首相も反対者のテロにより死亡しラグラン・グループと呼ばれたシリウス戦役を指導したグループは死に絶えシリウスの覇権は潰え、黒旗軍残党をはじめとする軍閥とかつての植民星系軍らによる1世紀近く続いた戦国時代「銀河統一戦争」と呼ばれる新たな戦乱に突入する。
件の新たな戦乱においてもゴールデンバウム家は軍人として働くが一族の衰退の影響で高級軍人ではなく地味な軍官僚として尉官階級を輩出するのみにとどまった。