夏の幻。勘違い。夢。まやかし。あやかし。
きっとどこかに、あなたもどこかに。
※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。
※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※さらに、こちらのお話はフィクションですプッチン。似たような人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。
『B線上の喫茶店』
「はー…休みかあ」
日曜日。久しぶりの丸一日の休み。家にいても特にすることもないので、ふらふらと駅前を歩いていたところ。家にいると、嫁と子どもにどやされるんだよなあ。真夏にふらふら歩くには、少し日差しが強すぎる。日陰の道を選び、奥まった道を進む。途中、野良猫が何度か横切り、それを撫でてやったりもした。
そろそろ喉も乾いてきた頃か、と自分ののどの渇きを感じた時だった。喫茶『B』と書かれた看板と、かまたまうどんあります、のポスター。喫茶店が目の前にあったのだ。先ほどまでこんな喫茶店はなかったような気もするが…。
まあ、いいか。丁度いい、と喫茶店のドアを開ける。
カランカラン。
「お、いらっしゃい!初めてのお客さんかな?」
店のカウンター越しから青い着ぐるみが声をかけてきた。なんだあの物体は。恐竜のような、とかげ…のような…。でも大きさは人間と同じそれ。どう考えても普通じゃない。おかしい…と考えたけれど、それよりも好奇心のほうが勝ち、カウンターの椅子に腰かけた。店内は少し変な音楽がかかっていて、スペースも十分ある。何人かのお客さんもあちこち座っているようで、そこそこの賑わいを見せていた。
「はい、メニュー表。好きなものを頼んでね」
マスターらしき青い物体は、メニュー表を渡してからのそのそとまたカウンターの奥へと入ってく。その丸い姿は着ぐるみのようでもあり、でも…どこか親近感も沸いた。メニュー表には、コーヒーやら紅茶やらがずらりと並んでいる。その中にかまたまうどんの文字にはおすすめ!とシールが貼られていた。お昼ごはんには少し早いけれど、まあいいか。ポスターにも書いてあったしな。それに、俺もかまたまうどんは好きだ。
「かまたまうどん、一つ。それから…ほうじ茶を、アイスで」
「えっ!かまたまうどんを頼んでくれるなんて嬉しいよ~!
俺、かまたまうどん大好きなんだよね~」
マスターは俺の頼んだメニューを作りながら、俺に話しかけている。まあ、確かにおいしいよな。でも、結婚してからはあんまり作らなくなったけど。独身の時にはよく作っていたっけな。しみじみ思っていたら、カウンターの端にある小さなテレビからニュースが流れてきた。
『…ニュースです。先日、火星のアソビ大全の大会が行われましたが公式ヨットマーズ戦にて、バビロン選手がマーズなのにヨットとして申請していたことが発覚致しました。バビロン選手は、これは不正ではない、と主張しており…』
「あちゃ~、不正不正と騒がれていたけどとうとうやっちゃったかあ」
マスターがうどんを茹でながら呟く。バビロン選手…?知らない選手だ。というか、ヨットマーズってなんだ…?普通のサイコロを使ったヨットなら知っているが、ヨットマーズは知らないな…。
「とうとう犯罪者になっちゃったか。うーんまあ、そのうちやるとは思ってたけどね」
「知り合いなんですか?」
「別の世界線の俺だよ、ははは」
別の世界線?マスターは、未知の生物すぎて表情が読めない。
冗談なのだろう。
「はい、出来たよ。かまたまうどんとほうじ茶」
目の前に置かれたかまたまうどんは天かすとねぎ、明太子が乗っていて、たまごも半熟でおいしそうだ。ほうじ茶も冷えていて、水滴が垂れるのに夏を感じる。
「うわ、おいしそう!俺、かまたまうどんって大好きなんだよね~」
思わず、大きな独り言。だめだなあ、年を取ると。
ついつい、独り言が大きくなってちゃって。
しかし、
「知ってるよ」
とカウンター越しのマスターが俺をまっすぐ見ながら言った。
なんだ?なんでこの生物は俺のことを知ってるんだろう。マスターの黒い目に俺が映っていて、怪訝そうな顔をしている。
「あ!そろそろ12時だね!nicotubeをつけてもいいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
先ほどまでニュースが映っていたモニターがさっと切り替わり、子供がよく使っているnicotubeの画面になる。特に操作をしていていないマスターだが、勝手に画面は切り替わってあるゲーム配信にたどり着いた。
『はーい、こんにちはー!今日もお昼の生放送やってくよ~!』
やたらと聞き覚えのある声だった。うどんを食べる手が止まっていたので、再び箸を進めながら誰の声だろう、と疑問に思う。子供がよく見てる配信者かな?
「…この配信者知ってる?果物ババロアっていってね。果物アップルっていう配信者とコンビも組んでるんだって」
『あ!そういえば今日のお昼もかまたまうどんを食べたんだよ!ここ一週間くらいずっとうどん!ほら、俺、かまたまうどん大好きなんだよね~』
「この配信者もうどんが好きなんだ」
単なる偶然だろうか。かまたまうどんといい、モンハンといい。…モンハンのゲームなら俺もずっとやっている。結婚してから、新作のモンハンには触れていないけど、今では配信に使われるコンテンツになったのか。
「なんか、この配信者の…声…すごく聞いたことがあるなあ」
「彼もまた、別の世界線の俺だからね」
「…?」
確かにこの配信者の声はマスターの声に似ている。そうか、マスターと同じ声か。兄弟か何かなのか?…いやでも、マスター…こんなに青い怪獣だしな…。カウンター越しのマスターをみる。おそらく笑っているのだろう。口角がややあがっている。…ややだけど。
「この配信者の俺はデッドバイペイペイギリシャってゲームにハマった世界線の俺だけど、モンスターハンターってゲームにハマった世界線の俺もいるんだよ」
デッドバイペイペイギリシャ…?そんなゲーム知らないけど…。同じようなゲームならデッドバイデイライトとかじゃないの?疑問が顔に出ていたのだろう。マスターはまた俺の顔を見てハハハと笑った。
「そもそも君の世界にはそんなゲームも生まれてないかもね。そうそう、さっきニュースに出てたのはヨットが大好きすぎてヨット選手になった世界線の俺。ちなみに俺は、俺が人間じゃなかった世界線の俺だよ」
本気で言っているのか、この青い怪獣は。もうかまたまうどんは食べ終えていて、あとはほうじ茶が目の前にあるだけ。青い怪獣はじーっと俺を見て、俺の後ろの席を指さした。…いや待て、指させないな。手でしめした。
「後ろの席の彼はゲームにハマらず、小説家を目指した世界線の俺」
確かに俺の後ろの席にいるやつは、コーヒーをすすりながら小説を執筆している。よほど焦っているのだろう。動きが尋常じゃない。
「それから、この喫茶店で使っている野菜は農家として大生した世界線の俺が差し入れてくれるんだよ」
どれだけ、この青い怪物は俺をからかっているんだろう。冗談は姿だけにしてほしい。
「それが本当なら、なんでこの喫茶店には別の世界線のあなたばかりが集まってるの?よくわかんないんだけど…」
ほうじ茶を飲み干し、お会計お願いしますと席を立つ。
青い怪物は「ハハハ」と大きく笑った。
「俺が人間じゃない生物なもんだから、ついね。別の世界線の俺と触れ合いたくて呼んじゃうんだよ」
別の世界線の自分なんて羨ましくて仕方ないじゃん?なんて付け足して大きく笑う怪物。なんなんだこの喫茶店。確かにうどんはおいしかったし、ほうじ茶もおいしかったけど…。
「かまたまうどん、美味しかったです」
よくわからないところにはあまり長居したくない。お金を払ってさっさと家に帰ろう。財布を取り出し、お金を払おうとした時、怪物の大きな手が俺の財布をそっと閉じた。
「どの世界線の俺も、結婚なんてしてなかったんだよね。結婚するとこういう感じになるのか。…いやあ、勉強になったな。……結婚してる世界線の俺に会ってみたかっただけなんだよ。ちょっと爆発しろ、とかそういうひがみとかでは決してないけどね!!!…だから、お金はいらない!幸せになれよ!俺!!」
「えっちょっ俺ぇ…!?」
瞬間、目の前が携帯カメラのフラッシュのように何度もパシャパシャと光った。
まぶしいと目を閉じ、…しばらくして目を開けるとそこは駅前だった。
喫茶店なんて見る影もない。ただ、茹だるような炎天下の下、俺はずっと立ちっぱなしだったらしい。汗がものすごい。…なんだ、夢だったのか。昼も過ぎたのにやけにおなかがいっぱいなのは…夏バテかなんかかな?
さて、家にでも帰って久々にモンハンでもしようかな。可愛い子どもと嫁が待ってるし、…うーんなんだか、今日は家族サービスしたい気分。夢のことも忘れ、俺は家路へと急いだのだった。
~~~Fin~~~
【人物紹介】
俺:尾藤(びとう)。可愛い嫁と息子がいる。嫁の名前は英子。息子の名前は友人(ともひと)。祖父から続いている農家を縮小して、家庭菜園をやりながら不動産関係で暮らしている。かまたまうどんが好き。
マスター:Bachelor・excited・eggs。喫茶店Bのマスター。卵を食べすぎてしまったために体が青くなってしまった世界線の彼。自分とお話がしたいし、遊びたいから喫茶店に招いては構ってもらえずにいる困ったマスター。かまたまうどんが好き。
バビロン選手:ヨットマーズが好きすぎてヨットマーズの公式プロ選手になった世界線の彼。あまりの周囲のプレッシャーから不正を行ってしまった。しっかり反省し、現在はヨットのほうで活躍する選手になり、地球アソビ大全のヨット大会で初優勝を収める。かまたまうどんが好き。
果物ババロア:相方である果物アップルとコンビでnicotubeチャンネルを開設。登録者を10万人超えており、それで生計を立てている。モンスターハンターシリーズにハマらず、デッドバイペイペイギリシャにハマった世界線の彼。かまたまうどんが好き。
モンスターハンターにハマったほうの俺:馬場(ばば)。相方の会田とコンビを組み、nicotubeでチャンネルを開設。登録者1000人に先日到達した。モンハンシリーズはどれもこれもやっているが、新作に一番ハマった世界線の彼。かまたまうどんが好き。
後ろの席の彼:ペンネーム『芭蕉』。小説家になりたい、で小説を書き、売れっ子小説家を目指している世界線の彼。彼が書いた小説は一度注目を浴び、書籍化もされた。現在は、あまり奮っておらず、頭を悩ませる日々が続いている。かまたまうどんが好き。