覇王、自由気ままに旅をする。   作:イチゴ俺

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ダイナーさん、全然出てくれなくて笑っちゃいます笑


第25話"白ひげの覚悟"

 光をも飲み込む闇が広がる。

 眼前に広がる闇に言葉に出来ない悍ましさを感じるルフィ。

 

「その闇に触れるな、ルフィ! そいつは、悪魔の実の能力を封じる!!」

「能力を封じる……?」

「おれはそれでアイツにやられた……! おれの"自然系(ロギア)"の能力を封じて、生身に戻されちまう!」

「それって覇気と違うのか?」

「あれは、そんな生易しいモンじゃねェ……! あの闇に触れられている限り、おれ達は能力自体を使えねェ!」

 

 驚愕の事実。

 ルフィはこれまでに幾度も"自然系"の悪魔の実の能力者達と戦ってきた。

 能力の相性を突くか、この戦争を通して覚えた"武装色の覇気"でしか触れる事さえ出来ない彼らを、眼前で怒り狂う男は能力そのものを封じるという。

 

 それは、自身はおろか、能力を鍛えてきた強者達にとって最悪の天敵であろう。

 ルフィは闇と覇王色の覇気を無尽蔵に放出する黒ひげを睨み付け、拳を握った。

 

「相手が何であれ、こんな所で死ぬわけにはいかねェ! 折角エースを助け出したのに、こんな所で死んじまったら、ここまで手伝ってくれた皆に合わせる顔がねェ!!」

「ルフィ……。ふっ。おれ達兄弟二人がいりゃァ、あんな奴になんて負けねェ!」

「取り敢えず、アレに触れずに戦えばいいんだな! 行ってくる!!」

「ば、馬鹿、早まるなッ」

 

 間髪入れずルフィはゼファーとの戦いの中で編み出した新たな姿に変化する。

 筋肉が膨れ上がり、武装色の覇気で強靭な鎧となる。

 全身を高速で流れる血潮が膨大なエネルギーと速度を生み出す。

 

 闘神の如き姿へと変貌したルフィは一足で加速し、黒ひげの目前まで一瞬で到達する。

 

「"ゴムゴムの"〜〜ぶへッ!!?」

「ルフィ!!!?」

「ゼハハハハ! 考えもなしに突っ込むなんざ、馬鹿かてめェ!!!」

 

 一瞬で迫ったルフィを強烈な拳で殴り飛ばす黒ひげ。

 拳に纏った闇がゴムの特性を消し去り、生身で受けた埒外の一撃でルフィは大量の鮮血を噴き出しながら地面へと突き刺さる。

 

「エースが言った通りおれの闇の力は"悪魔の力"を封殺する! 無限の引力は何もかもを無に還す!!!」

「あの馬鹿ッ」

「随分とこの戦争で成長したみてェだが、お前とは戦いの年季が違ェ! エース共々あの世へ送ってやるよ!!!」

「私を忘れるな、黒ひげ!!!」

 

 漆黒の大仏であるセンゴクが武装色と覇王色の覇気を纏った衝撃を放つ。

 膨大な闇を放ち迎撃する黒ひげだが、数多の海賊を仕留めてきた伝説の海兵の全盛期の力には敵わず、威力を削る事に成功するものの強烈な一撃を食らってしまう。

 

「痛ェ!! クソがッ!!!」

「次から次へと性懲りも無く現れやがって! 私の苛立ちも最高潮だ!!!」

「てめェは何で若返ってやがんだ!! 旧世代のジジイが、大人しく死にやがれ!!」

「おれを放置してんじゃねェよ!!!」

 

 火拳を放つエースと衝撃を放つセンゴク、闇を放つ黒ひげ。

 三者の特大の一撃が衝突し強烈な爆発と共に土煙が辺り一面に巻き上がる。

 

「くそッ、油断した! もう油断しねェ!」

 

 土煙で何も見えない中、見聞色の覇気で気配を読んだルフィは闘神の姿で黒ひげへと迫る。

 

 ゴムの弾性を落とす事と引き換えに得た強靭な膂力で空気を殴る。

 かつてルフィが戦った"殺戮兵器"の異名を持つ男の六式の技、"飛ぶ指銃"のように、拳大の空気が恐ろしい速度で黒ひげへと飛んでいく。

 

「なんだこの子供騙しはァ!!」

 

 闇を纏うまでもなく飛ぶ拳を打ち砕いた黒ひげへ、ルフィは続けて足を振り抜く。

 強靭な脚力で薙いだ瞬間、巨大な鎌鼬が発生し黒ひげへと飛ぶ。

 

「くだらねェ!!!」

 

 またしても容易く打ち砕く黒ひげ。

 黒ひげの元へと走りながら拳を放ち、足を薙ぎ払い、飛ぶ拳と"嵐脚"を打ち出すルフィ。

 規格外の成長速度で二つの一撃は一気に洗練されていき、覇気が乗る一撃へと変化していく。

 

「クソッ! なんだこの成長速度ァ!! 小賢しいッッ!!」

「ルフィばっかりに気を取られんなよ、ティーチ!!」

 

 苛立ち闇を放とうとする黒ひげへ灼熱の炎を放つエース。

 立ち昇る炎が土煙を一瞬で蒸発させ、怒りのあまり顔を真っ赤に染め上げる黒ひげが見えた。

 

「クソが! クソがァァ!!!! 許さねェぞクソ共ォォ!!! "闇穴道(ブラック・ホール)"!!!!」

 

 膨大な闇が憤怒の覇王色の覇気と共に凄まじい速度で広がっていく。

 地面を伝い広がる闇は、範囲内で戦う海兵、海賊、何もかもを飲み込んでいく。

 

「気持ち悪ィなこれ!!」

「飲み込まれたら終わりだぞ、ルフィ!!」

「分かってる!!」

 

 ルフィは武装色の覇気を高め、骨格を膨らませ、ゼファーの覇気を貫いた一撃で闇を吹き飛ばす。

 エースは武装色の覇気を纏った炎の陣を周囲に展開し、闇を焼却する。

 センゴクは覇王色の覇気を纏った強烈な一撃で闇を跡形もなく消し飛ばす。

 

 全てを消し去るべく放った一撃をも軽々と対応された黒ひげは、ますます怒りで顔を赤くする。

 引き連れてきた仲間達は範囲から離れ、それぞれが戦場各地で悪魔の実の能力者を相手に戦っているが、戦況の悪さが黒ひげの見聞色の覇気に察知された。

 

「おれの長年の計画が……! 何もかもが上手くいかねェ! 全ててめェのせいだ、麦わらァ!!!」

「知らねェよ、お前の計画なんか!!!」

「苦労して七武海になってまでインペルダウンに侵入した筈が、目当ての囚人達は誰もいねェ……! どうなってやがる!!!」

 

 怒り半分、悲しみ半分の様子で叫ぶ黒ひげ。

 全てを理解したルフィとエース、センゴク。

 

 黒ひげは戦力増強の為、己の野心の為に七武海の立場を利用しインペルダウンへと侵入して監獄の凶悪な囚人達を仲間に引き入れる計画をしていたのだろう。

 それが、ルフィが頂上戦争へと全ての囚人達を連れ出した為に、計画の全てがお釈迦になってしまったという事が黒ひげの嘆きで理解してしまった。

 

 不憫。

 

 当事者であるルフィは勿論、その行為を許す事の出来ないセンゴクでさえそう思ってしまった。

 意気揚々とインペルダウンへ踏み入れたものの、目当ての囚人達がいない状況で呆然と立ちすくむ目の前の男の姿を想像した三人は、掛ける言葉を失う。

 

「何か言えよ、麦わらァ! 長年温めてきた自慢の計画が、知らねェ間に壊されるおれの気持ちが分かんのか、オイ!!!」

「いや、知らねェよ」

 

 思わず叫んでしまう黒ひげにバッサリと切り捨てるルフィ。

 

「大体、お前がエースをやったのが悪ィんじゃねェか」

 

 正論。

 殺された白ひげ海賊団の仲間の事もあり、大きく頷いてしまうエースとあまりの正論に思わず笑ってしまうセンゴク。

 

 ど正論で返された黒ひげは怒りに震える。

 

「お前が何をしようと知らねェけど、おれはこんな所で止まれねェんだ。悪いけど、先行くぞ」

「ゼ、ゼハハハハハ!!! ここまでコケにされるのも初めてだ!! 分かった! てめェらを殺して、計画を繰り上げてやる!! 絶対ェ、許さねェぞォ!!!!」

「不憫な奴だ……」

「こんな奴におれァ負けたのか……」

 

 ルフィの言葉に怒りの限界を超えた黒ひげは闇を解放し、覇王色の覇気を放出する。

 そんな黒ひげを可哀想な目で見るセンゴクと、こんな男に自分は負けたのかとため息を吐くエース。

 

 不憫な男"黒ひげ"マーシャル・D・ティーチ、怒りのあまり我を忘れる!

 

 

□◾️□◾️□◾️□◾️□◾️□◾️

 

 

「ぬぅんッ!」

「ウォロロロロ!! 楽しいなァ!! 若ェお前とやれるたァ、夢にも思ってなかったぜ、ガープ!!!」

「ぬかせ、小僧ォ!!!」

「おれを前に余裕じゃねェか、てめェらァ!!!」

 

 覇王色の覇気を纏った強烈な金棒と覇王色の覇気を纏った拳、覇王色の覇気を纏った薙刀が触れずに衝突し、それを中心として大規模な空間の爆発が起きる。

 巻き込まれぬ様に離れた海賊、海兵達をも吹き飛ばし、カイドウが呼び寄せた雷雲すらも消滅させた。

 

 長大な青龍の姿から人型の龍に変化した"百獣のカイドウ"は、常人の身の丈以上の大きさの金棒を振り回す。

 拳を漆黒に染め上げ、規格外の覇王色の覇気を纏わせるガープ。

 巨大な薙刀に覇王色を纏わせる白ひげは、地震のエネルギーを放出し、大災害を起こす。

 

 何百と激突した化け物達の攻撃により、陸も空も海も全てが滅茶苦茶になっている。

 

「リンリンのババアも不憫だなァ。こんな最高の戦争に来ねェなんてよォ」

「馬鹿な事を言うな、カイドウ。この戦争に貴様等の出る幕はないんじゃ! 貴様も黙って新世界へ帰れ!!」

「お前こそ馬鹿な事を言うんじゃねェよ! こんな最高に面白ェ戦争は中々ねェ!! これを逃しちまったら、もうこんな最高の気分にはなれねェだろうがよォ!!!」

「だから、後はてめェらでやれって言ってんだろうが、アホンダラァ!!!」

「お前がいなくなったら楽しさ半減だろォが、ジジイ!!」

 

 最高の戦争に歓喜するカイドウと、余計な場面でやって来たカイドウに帰って欲しいガープ。

 己は新世界に帰還して、後はカイドウと海軍で続きをやって欲しい白ひげ。

 

 三者三様に考えが違う中、眼前で覇気を高める二人に我慢ならないと、飛び込むカイドウ。

 

「ウォロロロロ!!! こんな全力を出せる機会、中々ねェ!!!」

 

 尋常ならざる覇王色が炸裂し、雷の如き速さで白ひげへと迫るカイドウ。

 

「昔からてめェは喧嘩っ早ェ!! 少しは大人になりやがれ!!!」

 

 再びぶつかり合う覇王色。

 空が割れたのではないかと錯覚する程の衝撃に海が大爆発を起こす。

 

 天地海が割れたその瞬間、白ひげが胸を抑えて吐血した。

 

「ガフッ……! ぐ、ぐゥ……!!」

「白ひげ……貴様……ッ」

「……てめェでも歳には勝てねェのか、クソジジイ」

 

 かつて"海賊王"と鎬を削った伝説の大海賊。

 世界中の海賊からも海兵からも恐れられてきた男は、老いと病に体を蝕まれ、覇気を出すのもやっとの状態にいた。

 

「舐めるんじゃねェよ……! おれァ、"白ひげ"だァ!!!」

 

 白ひげが規格外の膂力で腕を振り抜く。

 グラグラの実の能力による振動が空間を捻じ曲げ、今まで以上の大規模な破壊エネルギーが島を駆け巡る。

 

 口から血を垂れ流し、心臓の痛みを押し殺し、白ひげは覇気を全力で高める。

 

「野郎共ォ!!! 残る全ての力を用いて、新世界へ帰還しろ!!! お前らとおれはここで別れる!!! 全員必ず生きて!!! 必ず新世界へ帰還しろ!!!!」

 

 広がる白ひげの覇王色の覇気。

 インペルダウンの軍艦を奪い去った"息子達"の気配を感じ、病に蝕まれた体を押して白ひげは咆哮する。

 

「息子達の命はやらねェぞ、てめェら……! せいぜい気張りやがれ、アホンダラァ!!!」

 

 "白ひげ"エドワード・ニューゲート。

 世界の中心、この世とあの世の中心とも言える地獄で彼は最期の覚悟を決める。

 

 悲鳴を上げる体に鞭を打ち、覇気を絞り出し、王たる器を顕現させる。

 

 伝説の大海賊、地獄にて家族を守る為拳を握る!

 

 

 

 

 

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