聖女と魔女と、鈍感冒険者   作:玉露33333

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聖女と鈍感冒険者

「司祭様、こんにちは」

 

「こんにちは、グレンさん。今日もいい天気ですね。ただ、いつも言っているように、私のことはカミラと呼んでくださってけっこうですよ」

 

私は教会の中で、司祭様にそう話しかけた。

ここはガイデルン王国の王都、センシム。その中でも最も大きな聖堂――メナス大聖堂。

豊穣と慈愛の女神メナスを奉じるこの聖堂で司祭を務めているのが、目の前にいる女性だ。

名をカミラ=ルシエル。

美しい金色の長い髪を背中に伸ばした、二十歳の年若い女性。

白い透き通るような肌と、彫刻のように整った顔、肢体。

美の女神を体現したような姿を持つ彼女は、同時にとても聡明で、有能だ。

弱冠二十歳で、王都最大の聖堂で司祭としての役を任じられ、日々その務めを果たしていると言えば、彼女がどれだけ有能かわかるだろう。

 

「あー、カミラさん。すいません、あまり女性に対してそのように名を呼ぶことが多くなく、つい気後れしてしまって……」

 

「ふふ、グレンさんらしいですね。冒険者の方でそのようなことをおっしゃる方は、貴方以外に見たことがありません」

 

そのようにおかしそうに口に手を当てて笑う彼女と私は、ある出来事から縁があり、それなりに親しくさせていただいている。

といっても、そこまで親密な間柄というほどでもない。

一週間に一回、土の日の午前中に礼拝に私が来るときに、このように歓談をする程度の仲だ。

彼女はとても聡明で、頭の回転も速く、話しているだけで楽しい。

最初のころはメナスの教えの話を聞いていたのだが、ここ最近はそれ以外の話もよくしている。

私は冒険者、その中でも探索者と呼ばれる、古い遺跡や未開の地の探索を主にする職業に就いているのだが、そのような冒険で得た知識や体験などを話すと、彼女は非常に興味深そうに聞いてくれるのだ。

あまり話しすぎるばかりはよくないと思うのだが、ついついこちらも話に熱が入ってしまい、話しすぎることもままあるぐらいだ。

 

私はここの宗派の女神を信奉していないため、あまり来すぎるのもよくないと思うのだが、ついつい毎週の日課のように通ってしまっている。

彼女は優しいので、実は毎週来られるのは迷惑だけど何も言えないだけなのかもしれない。

そう思い、一度、来すぎて迷惑になっている気がするので訪れる頻度を落としたことがあるのだが、二週間ぶりに教会を訪れた時、彼女にひどく心配をさせてしまった。

いわく、ただでさえ危険な冒険者の職業なのに、毎週来てくれていた方が急に来なくなって、何かあったのか心配したと。

たしかに言われてみればその通りな話で、心配をかけた彼女に申し訳なく思ったが、同時に心配される程度には迷惑がられていないようだと、安心したりもした。

心配をかけてしまった彼女にとってはひどい話かもしれないが。

 

それからは冒険や用事などで次の週に来れないときは、できるだけ彼女に伝えるようにしている。

 

「それで、来週は用事があって、教会には来れなさそうです」

 

「わかりました。また長期の冒険ですか?」

 

「いえ、来週は友人に頼まれて、買い物の付き添いで……」

 

「……ぇ」

 

「も、もしかして、それって女性の方だったりしますか? グレンさんはてっきりそういうのには疎いと思っていたのですけど、素敵な方がいらっしゃったりするんですか?」

 

一瞬彼女は口ごもった後、どこか焦ったように笑いながら問いかけてきた。

 

「いやいや、たしかに女性ではありますけど、そんな関係の人ではありませんよ。古くからの友人というか、腐れ縁というか、そんな感じの相手です」

 

私とあいつがそんな関係?

馬鹿な。

たしかにカミラさんに匹敵するような美女であることは認めるが、それでもないない。

そんなの天地がひっくり返ってもあり得ない。

カミラさんが実は私のことが好きだったとかと同程度にありえない話だ。

 

そう言って彼女の言葉を否定すると、彼女はどこか安堵したかのように答えた。

 

「あ、そうなんですね。それは失礼しました。……そうですよね、グレンさんにそのような方がいらっしゃったりはしませんよね」

 

うっ。

彼女に悪意はない。

悪意はないことはわかっているが、それでも私に彼女がいないのが当然のように語られると、さすがに少し傷ついた。

いや、彼女は事実を語っているだけだ。

私が女性に縁がなく、縁があるような見た目にも見えないというのは客観的な事実だ。

事実だが、それでもさすがに傷つくな……

やっぱりそういう風に思われてるんだ……

 

「あ……、いえ、グレンさんに男性的魅力が欠けているとかそういう意図ではなくて……」

 

「いや、大丈夫です。そのようにフォローしていただかなくても、自分の客観的な評価はわかっているつもりです」

 

「では、今日はこれで。また再来週にでもお邪魔しますね」

 

「え、あ、はい。……あなたに慈母の恵みがありますように」

 

「あなたに賢きものの導がありますように」

 

そう言って彼女に会釈し、踵を返し、教会の外に出て行く。

さて、ちょっと傷つく出来事もあったが、今日の予定はまだ終わっていない。

次は、あいつのところだな……

そう考えながら、ゆっくり歩いていく。

毎回思うけど、ここから魔導学院は遠いんだよな……

 

 

 

「あ、行っちゃった…… ああ、もう。私は何でいつもこんな風になってしまうの……」

そう言いながら、俯いて足元を見る彼女の姿になど少しも気づかずに……

 

 

 

 

「よう、シルヴィア。一週間ぶり。これが先週の成果だよ。」

 

「やぁ、グレン。久しぶり。今ちょうど休憩のためのお茶が入ったところだよ。」

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