ダンジョン十八階層リヴィラの街、その一角の酒場にて苛立った様子の女が山盛りの食事を貪り食らっていた。
「……糞がっ! あの役立たず共めっ!」
赤い髪に鋭い目、そして整った容姿、お世辞にも上品とは言えない、寧ろ下劣な男が多いこの町では余計な注目を集めるが、ジロジロと無遠慮に眺めていた男達は殺気を含んだ一睨みで退散、今は遠巻きに恐る恐る眺めるのみである。
「彼奴だ、あの化け物さえ現れなければ……」
彼女の名はレヴィス、遙か太古にダンジョン奥深くにてモンスターに敗れた精霊によって人ではなくなった存在であり、“彼女゛の空を見たいという願いを叶える為に行動していたのだが……計画の為に必要としていたクノッソスがゴモラによって壊滅、互いに利用していただけの相手ではあるが協力者の多くが手を引き、今は彼女ともう一人(此方も彼女は信用も信頼もしていないが)と共に邪魔なオラリオを崩壊させるべく動いていた。
「……先ずはこの場所から潰すとしよう。その後、様子を見に来た連中を始末する」
少し早く回収したが目標達成の為に必要な物は下層より持ち出しており、少し見て回った限りではそれ程強い者は居ないのだ、そしてこの町の重要性からして放置はされないとも。
「後はあの化け物だけだが……」
クノッソス壊滅の様子はレヴィスも見ていて、彼女を通してゴモラの姿を見た"彼女゛は告げた。
"あれは精霊でもモンスターでもない別の何か。怖い怖い゛、と。
「あの様な存在に邪魔をされてなるものか……」
レヴィスは静かに口笛を吹き鳴らし、町を取り囲む様に花型のモンスターが出現する。
「……さて、食事の続きとするか」
彼女の体は燃費が悪い。
山盛りにされたポテトフライに向き直ると町の騒ぎなど知った事かとばかりに食事に戻る彼女だが、心労も凄まじいのだろう、振動と喧噪に紛れて袋の中身が動き出し、町の方に向かって行くのに気が付かなかった……。
「あーもー! 一体何処から湧いて来たのよ!」
一方、レヴィスが見回った後から第一級冒険者の集団であるロキ・ファミリアの幹部一行がやって来て、次々に花型のモンスターを薙ぎ倒して行く。
だが、数が多いし守らなければならない足手纏いも多い。
倒しても倒しても現れる大群にティオナが不満の声を上げる中、風を纏いながら戦うアイズに忍び寄る存在が居た。
不気味な赤子のような姿の異形、それは地上へと降り立ったアイズの背後から飛びかかり……。
「アイズ!」
それに気が付いたのは周囲を気にしながら戦っていたフィンの声、顔に向かって手を伸ばしながら間近に迫った赤子をアイズは避け、そのまま花型のモンスターにぶつかると同時に寄生、周囲のモンスターを取り込みながら巨大化して行く。
「アレは……」
その姿は花型から大きく変化し、女性のような姿の下半身に花型のモンスターを根っ子のように生やした異形。
それはロキ・ファミリアが前回の遠征で遭遇した新種のモンスターの姿に似ている。
その姿を見上げたロキ・ファミリアの一同が固まらずに動こうとした瞬間、ダンジョンの外壁が外側から吹き飛んで更に未知の存在が現れた。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「何…だ、アレは……」
此処はモンスターが生まれない筈の十八階層、だがフィンが固まってしまったのはその存在が壁から生まれたのではないと長年の冒険者としての勘が告げたからだ。
「な、何なんですか、あのモンスターはっ!?」
いや、それはレフィーヤでさえも同じであった。
一番経験が浅くレベルが低い彼女でさえも一目で確信したのだ、あの巨大なモンスターは今まで戦ったモンスター、階層主を含めても一番強いのだと。
三日月状の角に太く長い尻尾、二足歩行で動く強靭そうな四肢。
オラリオから姿を消したゼウスやヘラのファミリアの残した記録を含めて一切知識に無い存在、それにアイズでさえも直ぐに行動に移れない中、真っ先に動いたのは女性型のモンスター。
「アアアアアアアアッッッ!」
辛うじて声なのだと分かる叫びと共に進路上の建物も人も一切気にせず直進する姿は敵意や凶暴さからではなく、恐怖からの焦燥や衝動的な物からに見える。
「逃げろっ!」
「押し潰されるぞ!」
悲鳴を上げつつ逃げ惑う冒険者達に対し、冷静さを取り戻したフィン達はその大きな隙を見逃しはしない。
背後からの攻撃を防ごうとする花型のモンスターを切り飛ばして本体へと攻撃を仕掛ける中、前方の巨大モンスター……ゴモラが出て来た壁が大きく崩れて向こう側が見えた。
それはゴモラの前回の侵入で壊滅し、二度目で死体蹴りをされたクノッソスの内部、瓦礫の山を無理に突き進んだ結果だ。
「何あれ、未発見のフロア!?」
「いや、違う。あれは……人工的な物だ!」
フィンが叫ぶ中、本体らしき女性の部分にアイズの一撃が入るも致命傷には至らない。
ならば更に追撃を、そう思い剣を振り被った瞬間、女性型モンスターが宙に浮いた。
「ギィ!?」
本人の意思では無いのだろう、もがこうとする様子があるが逃れられず天井近くまで浮いて行き、その余波はリヴィラの町にさえも襲い掛かる。
「うわっ!?」
「何なのっ!?」
巨体を持ち上げ拘束する程の念力、それは周囲の空気の流れにすら影響を与えて大規模な乱気流を生み出した。
流石のロキ・ファミリアの面々も耐える事しか出来ない中、ゴモラの口の中が赤く染まり、吐き出された炎が女性型モンスターを包み込んで灰に変え、天井を貫いて突き進む。
吐き出された角度が幸いしたのか上層には影響を与えずクノッソスを更に破壊して岩盤部分を削って漸く止まった。
「……フゥ」
スッキリしたのかゴモラは息を吐き出すと侵入して来た道を通って壁の向こうに消えて行った。
高熱の炎が起こした熱波はリヴィラの街に真上から襲い掛かって壊滅状態まで陥らせ、地上のヘルメス・ファミリアのホームに小火騒ぎを起こして終わったのだが……。
「あの風は……彼奴がアリアか。まさかこの様な所で発見出来るとは運が良い」
瓦礫の中から姿を見せたレヴィスはゴモラの後を追おうとしてフィン達に止められているアイズの姿を見つめ……背後から襲い掛かった。
この後はバルタン星人が現れなかった世界線とほぼ同じ、故に記載すべき事は特に無い。
「待ってくれ! あれには事情があったんだ!」
「却下。解雇は確定。従業員の不始末としてイシュタル・ファミリアに請求された代金の支払いも要求する。職務を放棄して無銭で娼婦を指名とは呆れ果てた」
翌日、大きな問題が起きた方が重要である。
屋台の前で土下座を決行するタケミカヅチと眷属達、バルタン星人にとっては謝罪には何の価値も無く、アーシアも仕事中に娼婦に会わせろと店に飛び込んだタケミカヅチにゴミを見る目を内部で送っていた。
さて、どんな解決法をすべきか ギャグかなあ? シリアスかなあ?
バルタンは分身可能だから人手は足りている 歓楽街や夜営業が嫌だっただけで