シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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ロマン

「最近物騒だなあ……」

 

 今日は私が体を使える日、バルタンの厳しいチェックを乗り越えて合格を貰えたソースをたぁっぷり掛けたお肉で豪華な朝ご飯を食べながら新聞を開くんだけれど、また血を大量に抜かれた死体が見付かったらしい。

 周りに血溜まりが無いのに死体の血液が明らかに減っているし、ガネーシャ・ファミリアの団員の皆さんが警邏をしているらしいけれど手掛かりは見付からないとか。

 

『被害者は素行の悪い下級冒険者、オラリオの主産業である魔石製品の製造には影響が無いと思われる』

 

「確かにそうなんだろうけれど、死人が出ているっていうのは。ほら、家族だっているだろうし」

 

『元より命懸けの仕事、モンスターか正体不明の犯人かどうかだ』

 

「そっか。変な新種のモンスターが街に出たばかりだし、同じ様に新種とかの可能性もあったんだ。それにタナトス様の仲間の残党だって可能性もあったよね」

 

 お父さん、お父さんが憧れていたオラリオは華やかなだけの所じゃなかったよ。

 私はバルタンが居てくれるから大丈夫、だから皆は安心して良いよ。

 

 お肉の最後の一切れを口に運んでナプキンで口元を拭う。

 

「……」

 

 パンも食べちゃったけれどソースは残っているし、ちょっと舐めちゃって良いかなあ?

 

 

『却下。行儀が悪い」

 

「何で分かったの!?」

 

『四年もの……いや、四年しか、か。価値観の変動を自覚、困惑。尚、この事は後で私が思考する。四年の付き合いによってアーシアの行動は理解している』

 

 ううっ、もうバルタンがお父さんみたいだよ……。

 

 

 ……それにしてもバルタンも変わったなあ。

 バルタンの年齢からして四年なんて私にとっての1ヶ月にも満たないのに。

 

 

 満たない、よね?

 

 

「バルタン、バルタンの年齢からして四年って私にとってどの位?」

 

『数学の課題の制作を決定。アーシアには必須と判断』

 

 しまった、藪蛇だ!

 

 

 こうして私の自由時間はお勉強で長時間潰れる事になった。

 

 

 

 

「バルタン、お父さんだけじゃなくってお母さんも兼ねてるよ」

 

『私に性別は無い。どちらかに偏る方が不自然だと主張する』

 

 

 

 

 

「よし! もう今日はゴロゴロしよう!」

 

『勉強を忘れない様に』

 

 バルタンが頭の中に声を響かせるけれど聞~こ~え~な~い~!

 

 お皿を洗ったらベッドに直行、本棚から適当に本を取ると寝転がって本を広げる。

 バルタンがジャミ……何とかさんから得た記憶を元に本にしてくれた物、私は本が好きだけれど貧乏な村だったから滅多に新しい本が手に入らなかったけれど、こうやって誰も知らないような物語を読むのは楽しい。

 

「海賊の残した宝かぁ。……ねぇ、バルタン。この家って実は隠し部屋とか無いの? 古い家だし……まあ、無いか」

 

 この家はオラリオに来て直ぐに借りた所で、儲けたお金を使って購入したけれど古い、本当に古い。

 だから安く手に入ったんだけれど、バルタンの謎の技術力で一階と二階部分は改装して貰ったけれど、百年前なのは間違い無いとか。

 

 私が今読んでいるのは宝の地図を手に入れた少年が冒険をするって話、ダンジョンに潜ったりモンスターを倒したりするお話が英雄譚としては人気なんだけれど、私はこっちの方が好きかな。

 

 ……だってバルタンのお陰で強くなったけれどモンスターは怖いもん。

 

 

 

『隠し部屋ならば賃貸契約初日に発見済みである』

 

「有るのっ!?」

 

『肯定。改築時、一階と二階部分のみで構わないと決めたのはアーシアである』

 

 そうだけど! 確かにそうだけれど!

 

 

「……ちょっと調べに行っちゃおうか」

 

『内部は空気の滞留が考えられる。開ける際には注意』

 

 

 まあ、私はそんなに期待している訳じゃなかった。

 隠し部屋とかロマンは感じるんだけれど、お話みたいに宝の地図が手に入るとは思っていなかったんだけれど……。

 

 

 

「……あった」

 

 石壁に仕込まれた隠し扉を通って階段を下った先にあったのはワインが沢山納められた石室、少しヒンヤリとしていて夏場にダラダラ過ごすのに向いてそうだし、掃除をちゃんとしたら寝室に良いかな?

 そんな部屋の奥、埃を被った金細工の小箱を開ければ紙が二枚。

 一つは……読めないけれど文字がビッシリ。

 

 

『古代ドワーフ文字である』

 

「バルタン、読めるの? だったらこっちの海図も……」

 

『この様な場合、結果よりも過程が大切だと考察。私なら解読し、マッハ2で向かい半日以内に宝の隠し場所を発見出来るだろう。既に宝が発見されている場合は除く』

 

「そっか。うん、確かにそれじゃあロマンが台無しだもん」

 

『その理論は理解した。納得は出来ていない』

 

 バルタン、相変わらずだなぁ。

 

 

 所で古代ドワーフ文字か、ワインの処分もどうにかしたい所だし、休日をあんまり無駄に潰したくないからあっちこっち行くのは嫌だから……。

 

 

 

 

 

 

「それでウチに来たって訳かい。ふーん、こりゃ上質なワインだ。年代物だし、全部買い取らせてくれるならそれなりの値を払おうじゃないか」

 

 ドワーフとワイン、この二つで思いついたのは豊穣の女主人。

 ミアさんは私が持参したワイン(運搬方法には少し叱られた。ドタドタ走って揺らしたら駄目だとか)を眺めていて、宝の地図と詳しい事が書いている方の紙は従業員のお姉さん達が覗き込んでいた。

 

 

「お宝……カジノで擦った分は取り戻せるかニャ?」

 

「そんなのよりミア母さんへの借金返済でしょ」

 

「そもそも一緒に行くと決まった訳では無いでしょうに。それでシル、宝については何と?」

 

「結局全員お宝に興味津々だニャ」

 

 何とシルさん(フレイヤ様)が古代ドワーフ文字を読めるらしく、今は解読している最中。

 最初ミアさんに"ミアさん位のお年なら読めますよね?”って聞いたら怒られちゃった。

 

 

「空より落ちてきた……えっと、赤と青の石? それを全財産と共に二つに分けてかく……隠した。財宝を欲するなら探し出せ。だが、決して……此処から先は文字が滲んでいて読めません。残念ですね」

 

 

「そっか。海図も古いし、ニョルズ様に見て貰ったら分かりそうだけれど、其処まで船を出して貰うわけにも……」

 

 

 よくよく考えたら船の調達を忘れちゃっていたし、バルタンが言っていた通りにビュンッて飛んでバッと帰ろうかと思った時、入り口の方から声が響いた。

 

 

「話は全て聞かせて貰ったぜ。その話、俺達ヘルメス・ファミリアも一枚噛ませてくれ! なぁに、先日の詫びの一環だ。俺の誠意だと思ってくれれば良い」

 

 

 

 

 

 

 

「胡散臭いので嫌です」

 

 だって凄く怪しいもの。

 

 

 

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