シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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感想、今までのは明日一気に




船旅

 波に揺られて船は行く。

 青空の下、私は甲板に上がって日光浴をしながらゆっくりと過ごし、オッタルさんは椅子に座って景色を眺め、アスフィさんはルルネさんと一緒にお宝の鑑定中。

 

 本当なら既に戻っている時間なんだけれど、どうしてゆっくりと進んでいるかというと、結局アマゾネスのお姉さん達を叩きのめすしかなかったオッタルさんが船に戻って来た時に頼まれたんだけれど……。

 

「帰りはゆっくりと戻りたい? 私は構いませんけれど、フレイヤ様の所に早く帰らなくて良いんですか?」

 

「無論一刻も早く女神の元に戻りたいのだが……今回の事をどう話すべきか整理がしたい」

 

「分かりました。じゃあ、帰りは海上に上がってゆっくりと進みますね」

 

「あの、私からもお願いが。見つけた財宝ですか幾つかを買い取らせては頂けませんか? 無論割増料金をお支払しますし、神に適正価格かの証人になっていただいても構いません」

 

『了承。但し個別販売は不許可』

 

「分かりました。全部買い取りで構わないのなら良いですよ」

 

「え? 全部……」

 

「無理ならギルドにお願いしますけれど……」

 

「……その場合、暇な神が欲しがるのだろうな。ファミリアの資金に手を着ける神は居るだろうし、フレイヤ様とて財宝として隠されていたアイテムには興味を示すだろう」

 

「……分かりました。では、帰りの時間を利用して鑑定させて貰います」

 

 オッタルさんの援護もあってアスフィさんは一括買い取りを了承してくれたし、これでバルタンが故郷に帰る日が近付いたかな?

 

 居なくなるのは寂しいけれど、故郷に帰れないのは可哀想だしお世話になっているもの。

 もっと力になれたら嬉しいんだけれど……。

 

 

『予想ではアーシアの寿命が尽きても目標金額とそれで購入する金属の必要量は揃わない。何代も宿主を変えて漸く到達可能だろう』

 

 そっか。ずっと一緒に居てくれるんだね。

 

 

 

 

「……あっ。イシュタル・ファミリアの宴のお仕事が明後日だった。何を作るのか決めておかないと」

 

『感想。あの駄神の愚行の責任を負わされるのは不条理である』

 

 ああ、嫌になっちゃうな。

 元々活動していた所に帰れば良いのに。

 

 

 

『尚、現在集まっているエネルギーだけでもこの次元から逃げ出すにはギリギリ足りるので、光の星の連中が動き出せば即座に離脱する』

 

 あっ、もう家族も居ないんだし、私も一緒に連れて行って欲しいな。

 その光の国って所のヤバーイ人の行動に巻き込まれたくないし。

 

 

 

 

 

 

 月明かりが差し込む部屋の中、歓楽街の支配者であるイシュタルは忌々しそうにバベルの最上階に存在するフレイヤの部屋を睨み付けていた。

 

「待っていろ。絶対にお前を其処から引きずり下ろしてやる。私の方が美しいのだと証明してやるからな」

 

 同じ美の女神であるにも関わらず賞賛の声が多く聞こえるのはフレイヤばかり、それがイシュタルには気に食わない。

 

 

「行くか。彼奴達も待っているだろうしな」

 

 今日はイシュタル主催の宴、眷属だけでなく歓楽街で働く大勢の者達や常連客を集めての大宴会であり、イシュタルはそれを大々的に喧伝し、オラリオに広まるようにしたのだ。

 

 特にフレイヤを出禁にしたアーシアを調理係として雇えたという事や……その切っ掛けとなったタケミカヅチが無銭で娼婦に会いに行った事もだ。

 

 

 フレイヤへの当て付けも有るのだろう、プライドからか屋台に食べに行った事のないイシュタルは特に期待もせずに会場へと向かって行く。

 

 

 部屋の中、莫大な財源を元にかき集めた調度品が月明かりを反射して光る中、一際強い光を放つのは棚の上に飾られた石であった。

 

 

「……噂には聞いていたがとんでもないな。おい、フリュネ。あの餓鬼は本当に恩恵を受けてないんだな?」

 

「んあっ? アタイも月に何度か彼奴の屋台に通っちゃいるが、どうも本当だって話だよ、イシュタル様」

 

 口の中にケバブを目一杯詰め込んだ状態で返事をする眷属の話を聞きながらイシュタルは唖然としていた。

 数百人もの大所帯となった今回の宴、下っ端の団員に給仕を任せているとはいえ、その提供される料理はたった一人の手で……正確には十人以上に増えた一人によって作られていた。

 

 

 それも途中からは煩わしいとばかりに増やした分身が宙を飛び、イシュタルの目では捉えられない動きで人の間を滑るように動き空いた皿と大盛りの皿を入れ替え、更にはソースの一滴もこぼしていない。

 身軽さが売りの第二級以上の冒険者でも同じ事が出来るかと問えばイシュタルは否と答えるだろう。

 

「所詮噂、面白おかしく誇張されていると思ってたんだがな」

 

 

 ガネーシャ主催である宴には前回は参加しておらず、今初めてアーシアの料理を口にしたイシュタルが気付けば皿の上の料理は八割が姿を消している。

 自分が夢中になって食べていたのだと理解するのに十秒以上を要する中、彼女の頭にギルドからオラリオ全体に放たれたお知らせが浮かぶ。

 

「あの餓鬼を強引に勧誘した場合、行われる報復についてギルドは一切関知しない、だったか」

 

 団員が泥棒に入ったソーマは鼻フックでホームからギルドまで連行され、強引な勧誘に走ったアポロンはボコボコにされて吊され、勝手に忍び込んだヘルメスは毛を半分剃り落とされた。

 

「……あの連中が役立たずな今、余計な火種は入れずにおくか」

 

「そうそう。さっき聞いたんだが、海賊が隠した財宝を見つけたらしいんだけれど、空から降ってきたって伝わる青い石だってさ。全部ヘルメス・ファミリアが買い取ったらしいよ」

 

「……へぇ。私が持ってる石の対になるって奴じゃないかい。……ヘルメスか」

 

 イシュタルの瞳が妖しく光り……この時点で彼女の運命は決定した、同じく歓楽街の壊滅も。

 

 結論から言うならばイシュタルはフレイヤの住む場所よりも高い場所に行く事になる。

 その場所にいられるのは僅かな時間だけ、後は落ちるところまで落ちるだけであるが、バルタン星人が居ない世界線のイシュタルよりは些かマシな終わり方……なのだろうか?

 

 

 

「って、今度は何をおっ始めてるんだ、彼奴。余興を一つ提供しろって契約だったが……演奏と歌を一人でやるのか」

 

 イシュタルが壇上に目を向ければ何処かの店からピアノを運んで来たアーシアによる歌と演奏が始まる。

 

 それはバルタン星人が地球人の宇宙飛行士から得た情報で知った偉大なる音楽家シューベルトの作品、物語形式で描かれるそれをアーシア(本物)が気に入った事もあって披露された。

 

 

 

 

「……選曲のセンスは皆無だな、彼奴。宴の席で披露する歌じゃないだろう。歌も演奏も上手なのが逆に酷い」

 

 尚、それは父の腕に抱かれた息子が最終的に息絶える物であり、魔王が彼を誘惑する様が描かれている。

 宴の席でどうなのか、それはアーシアもバルタン星人に後で意見したが理解されなかった。

 

 

『長い間歌い継がれた名曲なのだろう?』




出来ればオリジナルも読んで欲しいなぁ
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