シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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再会

 会の翌日、私は昼休憩中にやって来たフレイヤと向かい合って茶を飲んでいた。

 屋台は出禁であるが、休憩中に良い茶葉を分けてくれるというのだから話をする程度は別に良いだろう。

 

『お砂糖とミルクをたぁっぷり入れてね?』

 

 拒否、文明の未発達著しいこの星において私が感心したのは紅茶の存在であり、バルタン星に帰還する時には苗を持ち帰り、環境を適合させたプラントにて栽培する計画を立てている。

 故に紅茶の風味を台無しにするアーシアの申し出は却下、契約外の事項として受け入れない。

 

 不服の声が頭に響くが無視である。

 

「紅茶を淹れるのも上手なのね。本当に私の所で料理人にならない?」

 

 尚、この紅茶は私が淹れた。

 お供のエルフが煎れようとするも拘りがあるから拒否、完璧な温度と湯の温度と煎れる時間と待ち時間、味と香りを整える最適解を実行した物を淹れ、飲ましてやったら引き下がったのは拒否しよう。

 

 

「拒否。この身の夢は自らの腕で店を持つ事であり、今は修行中である。固定客を増やす為にも屋台の仕事は止められない」

 

 

「あらあら、そんな失敗をしちゃったのね」

 

 周りは私の分身が囲んでいるので(フレイヤ・ファミリアの団員では威嚇になって休憩後に客が来なくなるので)魅了されて立ち尽くす者はおらず、こうして話をするに見合うだけの茶葉であるので文句は無い。

 

「肯定。そして不可解。死をテーマにした悲劇は古来より好まれて来た筈。私の演奏も歌声も一切のミスが無く、腕前は認められていた。それは他の演奏でも同じ筈」

 

「他にはどんな歌を?」

 

「市場に売られていく子牛の歌を次に歌った。娼婦の中には意図せぬ形でなった者も居ると聞くからだ。最後は死んだ団員も多いだろうから……」

 

「まさかレクイエムだなんて言わないわよね?」

 

「否定。レクイエムである。何故か文句を言われた」

 

「言うわよ。普通、言うわよ?」

 

 ……度し難い。

 私は宴の席に参加した者達に適した選曲をしたというのにこの評価は如何な物なのだろうか。

 

 

「それにしても演奏も出来るし面白い物も持っているし……話を聞いていたら凄く羨ましくなったわ、オッタルが。神でもした事がない経験よ」

 

「考慮感謝する」

 

 この会話においてオッタルが経験した事に関して具体的な事は含まれてはいない。

 どこぞの胡散臭さが服を着て歩いているような信用に値しないヘルメスとは違う。

 

 

「本当にオッタルばかり狡いわね。ご飯だって普段は店で出さない物ばっかりだったんでしょう?」

 

 頬を膨らませ拗ねた様子のフレイヤに、邪魔にならない程に遠くから観察中のナミヘーヘアー四兄弟は顔を赤らめるが、肉体の年齢や実際の年齢からして不釣り合いな行為だろうに普通は呆れるのでは無いだろうか?

 

 

「今、失礼な事を考えなかったかしら?」

 

「否定」

 

「……本当みたいね」

 

 当然である、私は真実を思考しただけであり、礼儀を失ったと非難される謂われは無いのだから。

 さて、そろそろ午後の営業の時間が迫る、フレイヤには退席願おうと思った時だ、何やら胡散臭い男が手を振りながら近寄って来た。

 

 

「おーい! フレイヤ様ー! アーシアちゃー、んっ!?」

 

 すってんころりん、見事に滑って転んで空を仰ぐ。

 

 はてさて、分身の指先から一瞬だけ赤い光が迸ってヘルメスの足元が凍ったが、何用で近寄って来たのやら。

 おや、護衛連中が何時の間にか取り囲んでいるな。

 

「おおっとっ!? ちょっとイシュタル様の所に商談に行くついでに見かけたから挨拶しようとしただけさ。そんな怖い顔をしないでくれ」

 

「……そう。もう声は掛けたわね? じゃあ行きなさい。私も時間が残り少ないし、邪魔をされたくはないの」

 

「そうかい。じゃあ、俺は失礼させて貰うよ。何せアスフィの希望で大金を使ったからね。少しでも埋め合わせをしないと」

 

 相変わらず不真面目な態度のままヘルメスは去って行き、フレイヤは私に空のカップを差し出した。

 

 

「最後に一杯頂けるかしら?」

 

「もう時間が来る。飲んだら帰宅を要求する」

 

 

 最近は血を抜かれた死体の話でオラリオ住民が怯えているらしく、夜近くに来る客の数が減っている。

 豊穣の女主人も普段より客が少ない様子であったし、稼げる時間帯に稼いでおかねば。

 

 

 

 しかし、あの宇宙飛行士の知識にあった”吸血鬼”のようだな。

 興味深い。是非捕らえて実験を……いや、吸血鬼など空想上の存在か。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私は帰るけれど、もし最近話題になってる事件の真相が耳に入ったら教えてちょうだいね。ガネーシャの所の子供達が警戒にあたっているからか街中じゃ起きていないけれど……」

 

「被害者は冒険者、特に素行が悪く他の団員との交流が活発でない連中だ。モンスターの餌にでもすればダンジョン内部で死体が見付かる事も無いと推察」

 

「じゃあ、起きるとしたら次はダンジョンの中……或いは既に起きているのかしらね?」

 

 フレイヤは何やら含みを持たせる笑い方をして去ろうとするが、私は少し気になっていた事を尋ねる事にした。

 

 

 

 

「神イシュタルは何故彼処まで余裕が無いのか知っているだろうか? 余裕に振る舞っていても張り詰め、周囲を威嚇するのが伝わって来る」

 

「あら、簡単よ。品がないから私に勝てないって気が付かないだけ、それだけよ」

 

 成る程、納得した。

 服の露出度は似たような気がするが、この星の文化的な面があるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……む? 其処の冒険者、客ならば注文を先にする事を要求する」

 

 冒険者のダンジョン直後の姿は土と血と汗で汚らしい、それはテーブルを掃除すれば良いのだが、フラフラと頼りない動きで現れ椅子に倒れるように座り込んだ白髪の少年は注文をするでなく起き上がろうともしない。

 正直言って迷惑である。

 客でなければ叩き出す所だ。

 

 

 

「す、すいません。持ち帰りを注文するので少し休ませて下さい」

 

「客ならば了承しよう。酷く疲れているようだが貧血と診断」

 

 見れば僅かだが顔が青白い、血が不足している様子だ。

 血を大量に流した様子は見受けられず、体調管理も出来ないのだと推測。

 

 

 

「今日のメニューはステーキ丼である。付け合わせのオススメはほうれん草のナムルだ」

 

「じゃ、じゃあ、それを二人分、焼き方はしっかりとお願いしま…す……」

 

 困った、気絶してしまうとは……。

 

 

 

 

『あっ! ドーナツの人!』

 

 そうか。相変わらず迷惑な男である。




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