何度も命の危機に晒される様な激闘に次ぐ激闘、エネルギー補給もままならない過酷な環境下、お供の三匹も倒される事もあり、時には敵にこそ正当性がある戦いすら行う中、ダメージの蓄積やエネルギー消費の連続によって自らの命が潰えようとしているのは分かっていた。
僕はあくまでも観測員、故郷とは異なる次元の宇宙に存在する恒星に調査に来ただけで、戦いは本来の任務では無い。
だけどあの星の美しさを知った時、守りたくなった。
仮の姿で仮の名を借りて接する仲間が好きになって、彼女に恋をした。
本来の姿に与えてくれた名前に誇りさえ持ったんだ。
最後、もう遥かな星である故郷に帰らなくては死んでしまう程に衰弱した僕は彼女に正体を明かし、受け入れて貰った僕は最後の決戦に挑み、そして第二の故郷とさえ感じていた星から旅立った。
「……あの星は」
重傷と言っても過言ではない程の体に鞭を打って本来の次元の宇宙に戻った僕が故郷であるM78星雲の光の国に戻る途中、遠くで暴れる宇宙怪獣が起こした流星群を避ける為に遠回りした時、あの星を発見した。
「綺麗だ……」
人の営みを表す灯りは存在するけれど、第二の故郷に比べて文明が発達しておらず自然が多く残っている。
移動時間が伸びたから休憩の為、そんな風に言い訳しながらも本心では美しい光景を目にし、仲間との思い出に浸りたかっただけだろうね。
そして安全に着地できる場所を探そうとし、取り敢えず避けるべきと思った大都市を見て、この星の存在とは違う異質な力の反応を二つ察知して、その片方が暴れていると分かった時、僕は迷わず其奴の前に降り立った。
例え受け入れて貰えなくても。
例え同じ怪獣だと思われても。
此処で知らない振りをするのはあの仲間達との日々に背く事で、何よりも目の前で傷付く人達を見捨てる事が出来なかったんだ。
三百四十号、それが僕の任務上の名前、そして仲間が付けてくれ、僕の誇りとなっている名前は……。
ウルトラセブン
「デュワッ!」
空から降り立った光の国の住人だが、着地の時に速度を落とそうとしていたが、直前に体が硬直したのか勢いを殺せず周囲一体が揺れ動く。
あの巨大生物……そうだな、仮称を……アーシア、何かあるだろうか?
『ブヨブヨした動きだから…ブヨ…ブル? ブルトン?』
承認、あの巨大生物をブルトンと呼ぶ事に決定。
光の国の巨人……以後、光の巨人の出現にフレイヤ・ファミリアの幹部達も平静な状態では無い模様、ブルトンの出現はイシュタル・ファミリアのホームから出現(テレポート能力だろうか?)したが、空の彼方よりの出現だ。
確認されていない超大型モンスターが古代に進出し、今まで隠れ住んでいたのだろうと思われるのだろう。
「ええい! さっきから何やねん、アレは! あんなモンスター、ウチ達だって知らへん! あれだけデカいのが今まで何処に居たんや!?」
矢張り他の恒星に生命体が、それも恒星間移動が可能だとは思わないか。
ロキが叫ぶ中、ブルトンが光の巨人に向かって転がり始める。
テレポート能力は持っていないのか?
それとも何らかの理由で使えない?
現在の情報では判断材料が圧倒的に不足する中、ブルトンを正面から受け止めた光の巨人は苦しみ、膝を折る。
そのまま横に逃げれば良いものをブルトンを掴み、押しつぶされそうにながらも堪えているのは……。
「成る程な」
「何か分かったみたいやな。あのデカいのは何をやってるんや?」
「背後の者達を庇っている。見てみろ、背後を向いて逃げろと頭の動作で伝えようとしている」
「あの巨人……理性が有るんか?」
「でなくば出来まい。……同時に随分な負傷や衰弱も存在するみたいだ。さて、このままではオラリオが滅びるな」
動きを止めた今を好機と見たらしく、横合いから光の巨人ごとブルトンに攻撃が加えられるがブルトンには殆ど効果が無く、繊毛に当たった際に稀に反応を行う。
反対に巨人の方は多少なりとも効いて……おや?
「何をやっている! 少なくとも巨人が押さえていなければ先程から暴れている者が好きに暴れるだけ。逃がすべき者達を逃がす時間も稼げぬぞ!」
フレイヤ・ファミリアのエルフの叱責が飛ぶ所を見れば一時的だとしても敵ではないと思ったのだろうが……さて、動くか。
最悪、オラリオが壊滅した後はアーシアへの情報伝達を切り(一切の情報が入らないので精神的負担から普段は就寝時のみ)ダンジョンに潜る事を考えていたが、光の国の連中が来たのならばオラリオ以外に商売の拠点を移さずとも良さそうである。
そう判断するなり私は窓から飛び出し、ある程度の高さを飛ぶ事で音速飛行の余波を気にせずにブルトンへと迫った。
『バルタン、ロキ・ファミリアのホームのガラスがスタートの余波で割れちゃってる!』
大丈夫だ、揺れた時に既に割れ始めていた。
問題があるのは未発達な文明による稚拙なガラス精巧技術であり、移動中に割れたのも先述の理由に音速飛行を視認可能な者が限られる事で解決となる。
市民からの不満?
主力が緊急時に不在だったロキ・ファミリアやブルトン出現地域のイシュタル・ファミリア、現場に居合わせたのに倒せていないフレイヤ・ファミリア、それらを管理するギルドに向かうだろう。
そして……。
「私は大々的に活躍する」
「!?」
光の巨人が押し切られそうになった瞬間、私が至近距離から繊毛に白色破壊光線を浴びせた事でブルトンの動きが弱まり、何とか押し返した巨人の肩に私は降り立った。
「説明開始、不時着した外星人。寄生した肉体の持ち主とは共生関係。隙を作るので、得意技で倒せ」
この一族は耳が良い、後ろの連中には届かない小声でもこれだけ近ければ五月蝿い程だろう。
返事は聞く必要が無い、衰弱状態の此奴はそれしか選べず、あの国の住人に危ない相手を見捨てるという選択肢は恐らく存在しない……理解不能である、利が有るなら兎も角。
だから別次元のほぼ同一存在である光の星の連中と混合されるのだと光の国の住人の異常さを再認識しつつ私は赤色冷凍光線をブルトンの下部に発射、地面と体の一部を凍結させて動きを止めるが、この程度の氷ならば止められて数秒。
「デュワッ!」
だが、それで十分だ。
距離を開けようとしたのか後ろに飛んで、そのまま足をもつれさせて倒れそうになりながらも頭部の刃を投擲、フラフラの動きながらも念力で動かし繊毛を切断すればブルトンの動きが完全に止まり、後は私と分身による破壊光線の集中砲火だ。
ブルトンは爆発四散、欠片を検査用に回収したが内部がボロボロになっており、本来のスペックが発揮出来なかったと推察。
結果、ゴモラの使用をせずに済んで良かったとしよう。
「デュワッ!」
……飛び去ったか。
だが、アレでは宇宙までは到底いけないだろう。
近くの森に小型化して潜伏すると予想、分身を向かわせるとして……。
「この身の立場は一般人である。事後処理は対応に当たったファミリアとギルドの責任と主張。さらば」
明日も早い、今日は帰宅だ。
「……ふふ、ふふふふふ。良いわ、凄く良い。アーシアが異質、ベルが純粋なら、あの巨人は献身と博愛。凄く気高くって優しい色をしているわね」
そして夜遅く、分身が巨人……が擬態した人間に接触をした。
「随分とボロボロだな、光の国の者よ。この星に存在する便利な薬を持って来た」
「わざわざ助かるが……何故僕を助けるんだ? バルタン星人」
少々驚き、私の種族を当てるとは。
「取り敢えず名乗らせて貰おう。この姿の僕はモロボシ・ダン、本来の姿の名は……ウルトラセブン。地球の仲間が付けてくれた名だ。助力には感謝するが、君の目的が分からない」
「屋台をする人手が欲しい」
「……ん? もう一度言ってくれ」
聞こえなかったとは驚き。
耳が良いのでは無かったのか?