シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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筒抜け

「……これは素晴らしい。大変興味深い考察ですね。前から思っていましたが、他のバルタン星人とは違う唯一無二の存在ですね」

 

 アンタレスとやらの情報を纏めた書類と私がこの世界についての考察を纏めた物を交換して読んでいたのだが、顎に手を当てながら何やら呟いているメフィラス。

 感情の発露、鬱陶しい。

 

「……神殺しの槍か」

 

 鬱陶しいと言えばウルトラセブンもだ。

 槍を眺めて何やら俯いて考え事をしており、何を悩んでいるのかは丸分かりなのではあるが。

 

 

「どうした? ウルトラセブン。地球を守る為に数多くの侵略者を殺して来たはずだろう? 現地の怪獣も倒して来たんだ、今回も神一人とモンスターを殺して終わりだ」

 

「侵略者か被害者かの違いではあるが、諸共始末せねばこの星の住民が滅ぶ……いや、モンスターも原生生物なのを考えれば星の住民が滅ぶというのは誤った解釈か。言葉を話す個体も確認している事だ」

 

「おや、それならこの星の住民達による闘争ですね。害獣から知的生命体を保護するなら兎も角、現地での戦争にまでは関わるのは……おっと、その様に睨まないで貰いたいですね」

 

 言葉が気になったのか睨んで来るウルトラセブンだが、メフィラスはわざとらしく肩を竦めて見せるだけ。

 だが、間違った事は言ってはいない。

 だからこそメフィラスに何も言えていないのだが。

 

 

 しかしアンタレス…精霊という神の配下が封印するしか出来ず、今は神を取り込んで神造兵器という神を殺せる兵器を発動可能、時間の猶予はそれ程存在せず、あの槍が唯一アンタレスを神ごと始末可能だというのだが……。

 

 

「興味深いですね。この星の神……特殊な方法でない限り不老不死、但し関係者の認識の範囲内での認識ですが……」

 

「……メフィラス、何を企んでいる? この星に何をする気だ?」

 

「ご心配なく。星間条約に反する行為も、無為に住民を傷つける気も有りません。私を上位存在として扱えと言うのも……この星では難しいでしょうし、文化は気に入っていますので」

 

 しれっと言っているが、本当の事はどうなのやら。

 此奴はメフィラスだ、十の内0.5を半信半疑で充分だと私は認識している。

 

 

「本当に助けられないのか? 確かに僕は地球人を守る為に多くの外星人の命を奪って来た。だが、彼女とは個人として関わった。助けられるのなら助けたい」

 

「随分と甘いな。疑問、神一人とこの星の人間全員、天秤に掛けるまでもない。その様子ではこの次元のバルタン星人が私以外絶滅したであろう事を黙っているのも保身の為では無いのだろう」

 

「なっ!?」

 

「おや? 気が付いていたのですか?」

 

「肯定、恐らくはこの次元を担当する警備隊員の手による物とも推察。質問を予想し、解答。通信後、同情及び警戒の視線。全滅までとは行かなくても大勢が死亡したと推察」

 

 警戒と同情を判断材料にし、同情されるかつ私を警戒する理由にバルタン星人の大量死亡を推察、全滅はカマを掛けたが正解だったか。

 

 ウルトラセブンは見抜かれるとは思っていなかった様子、メフィラスは意外でもないが驚いた演技をしているだけ、無意味で無価値である。

 

「先に言っておく。私自身に被害の記憶が無い以上、復讐という行為には身も理も存在しない。スペシウムを身から放つ者相手に戦いを挑む気も、他の侵略者に狙われる地を支配する切迫感も無いのだから」

 

 さてと、そろそろ遠くから姿を消して近付いて来る者、ベルビウスの発明品を使っている者が声が聞こえる場所に来る頃だ。

 

 

「死ね」

 

 殺意は無いが有るように振る舞って石を投擲、周囲の気の揺れ方から空気の流れを推察し、地面の様子と合わせて盗み聞きしている不届き者の頬を掠めて背後の木にめり込ませる。

 

 

 

 

「……本当にとんでもない子だな、君は」

 

 姿を消す兜を脱いで姿を見せたのはアルテミス(中身だけ本物)。

 ヘルメスめ、自分が行かなければ大丈夫だと思ったのだろう、メフィラスも利を取るタイプであるからと油断しているのだろう。

 

 

 

「指の代わりにどれだけむしり取るべきか意見を要求」

 

「ヘルメス・ファミリアのホームの建物と土地を二束三文で買い取り、相場より高い家賃を取るのは如何ですか? 当然、売却は可能としてで」

 

「君達は本当に……はあ。まあ、復讐は無いと今は信じているよ」

 

 私達の会話を唖然とした表情で聞いているアルテミス、所詮は自分達の価値観を絶対と信じて疑わない者達だ。

 

 

 ……それはウルトラセブンも同じであるが。

 

 

 バルタン星人とは全が一である優れた種族、どれだけ欠落が起きようとも何ら問題は存在しない。

 私という一が存在するのならバルタン星人という種族には何一つ揺らぎは起きないのである。

 

 今回の場合、恐らくは何らかの理由から侵略行為を行い、反撃にあった上で性質上殲滅させられたのだろう

 計画が杜撰であり、警戒の度合いから天敵と呼べる相手に挑んでしまった結果ならば少々の欠損は仕方の無い事だ。

 怒るとすれば……その程度の事……体験の同一化能力に欠ける故の感覚であるが、それで警戒される事が腹立たしかった。

 

 

 

 

「メフィラス、何か真実かつ風評被害になる言葉は無いか?」

 

「面白そうですし、食事でもしながら考えましょう、割り勘で」

 

「ヘルメスに払わせるべきと提案。本来旅行に掛かったであろう額を支払わせるならば豊穣の女主人が推奨される。店主が随分と高価な酒を秘蔵しているらしい」

 

 

 

 

 

 

「……なあ、オリオン。あの二人って何時もあんな感じなのかい?」

 

「ノーコメントをお願い出来るかい?」

 

 

 

 

 

 この日、豊穣の女主人はかつて無い程の大盛況、ファミリアの垣根を越え、一般人も混じっての大宴会であった。

 

「し、死ぬ。この忙しさは死んじまうニャ……」

 

「大丈夫。上級冒険者はそう簡単には死ねません」

 

「しなない、じゃなくって、死ねない、なのが凄く嫌ね」

 

 反面、店員からすれば店全体でロキ・ファミリアの宴会のような事が行われているのだから阿鼻叫喚、シルなど既に魂が半分ほど抜けた顔で必死に皿洗いを行い、調理場には臨時で雇われた他店の店員の姿さえ見られる。

 

 

 

「は、ははは、一体支払いが幾らになるのやら……。ねぇ、ロイマン。支払いの割合、もう少しギルドの負担に……」

 

「なりませんな。……あっ、今ソーマの追加注文が入りましたな」

 

 そして悲壮な顔を見せているのがヘルメスとロイマン、今回の支払いを任されたヘルメス・ファミリアとギルドの長だ。

 ギルドがヘルメス・ファミリアと組んで非公式のクエストを押し付けようとしたという醜聞を盾に出されたのが今晩一晩開かれる宴の代金を支払うという事、ロイマンは当然文句を言おうとしたが頬を掠めた破壊光線に従うしかなく、ヘルメス・ファミリアとギルドで3:7の割合で支払いが確定したのだ。

 

「足りない分はあのメフィラスという男が貸すと言っていたでしょう。此処最近、カジノで大勝ちして幾つかの店を手に入れたらしいですし、利子も無いそうですが?」

 

「利子の代わりに相場の三割の報酬でクエストを受けるって契約付きだけれどね。勝手に色々やったせいでアスフィが酒に逃げちゃってるし……」

 

「所で当のアルテミス様は?」

 

「裏で野菜の皮むきとか皿洗いとかをやってるってさ……」

 

 少しでも値段を抑えようと一番安い酒をチビチビと二人が飲む中、今晩一晩は無料で飲み食い出来るとあって店内には高価な酒や料理を頼む声が響き続けていた……。

 

 

 

 

 

 

 

「ヘルメス様の馬鹿野郎ー! 毎度毎度好き勝手して、いい加減にして下さいよー! 店員さん、ソーマもう一杯……いえ、一瓶持って来て下さい!」

 

 

 

 

 

 

「それにしても妙な子が増えたなあ。ダン君の方は只の女の敵っぽいけれど、メフィラス君の方はアーシアちゃんとは違う厄介さがあるよ」

 

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