オラリオから遠く離れた大陸の果て、大樹海を越えた先に存在するエルソスの遺跡こそがアンタレスが封印されていた場所。
「ガネーシャの所に用意して貰った飛竜に乗って目指す……予定だったんだけど」
ヘルメスとしては新たな英雄の姿を見たいが故にアルテミスに協力したのだ。
アンタレスがアルテミスを取り込んだ事で神造兵器が使える故にオラリオが壊滅しかねないという事もあるが。
「置いていかれましたね」
「いやあ、まさか一瞬で消えるなんて」
道案内も兼ねて同行を申し出る筈だったのだが、飛竜を前にしてメフィラスが言ったのだ。
「いえ、私達はもっと効率の良い方法で向かいますので」
そして消えた、パッと消えた。勿論ヘルメスとアスフィを置き去りにして。
「帰ろうか。……支払いでファミリアの運営資金がカツカツだし、資金繰りをどうにか考えないと」
「ファミリアの財産殆どを抵当に入れてしまいましたからね。このままではホームまで……」
「こうなったらカジノで一発逆転を目指すぜ!」
「それで明日の夜には夜逃げですか? ……しかし、本当にどうなる事やら」
何せ相手は恩恵を受けてすらいない一般人と、正体不明の力を振るう二人。
空を見上げながらアスフィが呟く中、その頭にヘルメスの帽子が乗せられた。
「信じるしかないさ。ダン・モロボシが英雄に足る存在である事をさ」
「でも、女の敵ですよ?」
「ま、まあ、どうにかなる! ……と良いなあ」
メフィラスのテレポートによって目の前に見える場所にあるエルソスの遺跡、只今の時刻は午前十時。
アンタレスとやらは今の所自由に動ける状態ではないらしいが、力を封じた状態とはいえ神の力を取り込むには時間が掛かるのだろう。
「さて、アンタレスが本格的に動けるまで数日の猶予がある事ですし、最初に事態の説明をしておきましょうか」
「質問、虚偽は何割だ?」
「これは心外な。この星の文化が本能で暴れる怪物に滅ぼされるのは耐えられません。ちゃんと本当の事を話しますよ」
何処からかホワイトボードを取り出してウルトラセブンに説明を始めるメフィラスだが、星間侵略用生体兵器を未発達の星にバラまいてから親切顔で近付いている全権委任大使が何を言うのやら。
嘘は言わない、但し大切な事は黙っている、そんな者が……。
「先ず其処のアルテミス様は槍に残った力の残滓であり、眷属は全員アンタレスに殺されています」
「……」
「ああ、それと神が死んでも記憶や精神を引き継いだ状態で復活しますので死ぬといっても昏睡状態から目覚めるのと変わりませんね。小型のアンタレスを生み出して周囲を守らせていますが、それが何時遺跡から出て来て人々を襲う可能性だって有りますし……天秤に掛けるまでもありませんよね?」
黙り込むウルトラセブンの肩にメフィラスの手がそっと置かれる。
ふむ、確かに槍を使ってアルテミスを殺害し、一万年後に復活して貰うしかないが、光の国の住人の寿命からすれば短くはないものの大勢の命の危機と比べる程ではない。
「……何故彼がその様な事を知っているのかは知らないが本当の事だ。神にとって死は死ではない。一万年後にまた会えると良いさ」
実際、光の国の住民ならば会いに来られるしな、職務放棄やら行動からして無事に会いに来られるかどうかは別として……。
「感想、ダンに可能な方法はそれだけである」
メフィラスに視線を送ればウルトラセブンに見えない角度で人差し指を口に当て、続いて私を……アーシアを指差す。
『ねぇ、バルタン。……バルタンかメフィラス……さ…ん、なら何とか出来るの?』
四年間の付き合いからか、アーシアは確信を持って答え、私は心の中で肯定を示す。
ウルトラセブンには確かにアルテミスを殺害する以外の方法は無いが、私ならば可能である。
……メフィラスも何らかの方法が取れる可能性が有り、少なくとも私に可能な事は分かっているかこその先程の仕草だ。
『その方法を取る……訳には行かないんだよね? 恩は売れるだろうけれど……』
質問、私がアルテミスを救わない理由。
回答、私の存在が発覚する可能性が存在する。
既にアルテミスの周囲の人間は死亡しており、これから出会う相手が一万年後に出会う相手に変わるだけであり、出会いによるメリットの比較は現在は不可能。
また、ウルトラセブンは別次元の宇宙の地球にて多くの侵略者を殺害して原星住民を守って来た。
故にアルテミス殺害による心の痛みという私には理解不可能な物は受け入れるべきと判断。
『そっか。そうだよね……』
詳細は話さずともアーシアは私を信じ、理路整然と話せば納得したらしい。
……そう、このままアルテミスをウルトラセブンがアンタレス諸共殺害する事こそが最善である。
光の国ならば命を製造可能だが、それでも飴玉のように気軽に配れる物でもない。
「さて、覚悟は決まりましたか? 今まで何度も行って来た事と同じくアルテミス様をアンタレスと共に抹殺し、そのまま日常に戻りましょう」
『あの言い方だとダンさんが大量殺人鬼っぽく聞こえない?』
肯定、さてはメフィラスめ、光の星の連中と直近に何かあったな。
尚、メフィラスに無理にさん付けをする必要は皆無である
何せヘルメスの同類なのだから……。
「祝勝会は割り勘で良いですか?」
しかし……改めて接してみると腹が立つ。
『カジノのオーナーになったって言ってたよね、このワリカン星人』
破壊光線を連発、既に産み出されていたアンタレスの分身を吹き飛ばし、徐々に強くなっていても吹き飛ばし、遺跡の奥にまで来るとアルテミスを取り込んだ水晶を背中に生やしたアンタレスに出会い頭に破壊光線を放ち、後退させたが……。
「効いてはいるが、神の力で即座に復活か。……冷凍光線」
壁に突っ込んだ後も即座に動き出したアンタレス、事前情報の通りに槍を使わねば倒せぬ相手か。
神の力をこの機会に研究するのも悪くは無いが、今はさっさと終わらせる事が重要だとアンタレスを凍らせて動きを止める。
「……すまない、アルテミス!」
流石に覚悟を決めたのかウルトラセブンは槍を構えてアンタレスへと走り出し……。
『バルタン、やっちゃって!』
「了解した」
その身がアンタレスへと到達するよりも先にアーシアと分離した私が追い越し、アンタレスと同化……アーシアと違いその身を完全に乗っ取るとアルテミスを排出した。
少し強く出した為か頭から地面にぶつかって目を回しているが、まあ良いだろう。
私はアンタレスの体から脱出、私の行動に理解が追い付かぬ様子のウルトラセブンの手から槍を確保し、ハサミを突き刺して内部から破壊光線で吹き飛ばした。
「妙な勘違いをするな、アーシアが気に病む事とメフィラスの思い通りに事が進むのが気に入らなかった、それだけだ」
さて、最後の仕上げをするかとアーシアの肉体に戻る前にアルテミスへと近寄った。
「この姿で会うのは初めてだな、神アルテミス。私はバルタン星人、遙か遠い星、バルタン星からの来訪者だ」