シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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末路

 アンタレスの討伐後、私はオラリオに戻って来ていた。

 

「アーシアたん、エッグイ物手に入れたなあ」

 

 普段の業務、普段の屋台、違うのは屋台の飾り、今までは特に装飾などはしていなかったのであるが、今は目を引く飾りが一つ。

 神殺しの槍である。

 

 流石に神の客は減ると思ったのであるが、自分だけは大丈夫であると勝手に思うのが心理という物、バルタン星人には理解出来ぬ物であるが収入の減少が手痛いレベルでないのは幸いだ。

 

「正当な報酬である。オラリオの神に使う予定は今の所存在しない。それに神ロキの眷属であれば大勢を抹殺可能な魔法を使用可能である。エグいのは冒険者全員……いや、一部は多少強いだけか」

 

「今は、やろ。ウチはマジで勘弁してやー」

 

「敵対の意思が無ければ可能性は低い」

 

「てか、よくそんなもん貰えたたな、おい」

 

「交渉の末の結果である」

 

 この槍であるが、神の客が減るどころか他の客も増えている。

 逆に珍しい物を見たくて普段は利用しなかった客まで増えていて、問題は無駄に長居する客と何とか手に入れようと交渉して来る商人や、盗もうとする者さえ居たのだから面倒だった。

 

「まっ、ウチに使わんなら別に良いわ」

 

 この位の方が私にとっては都合が良いと思いつつ遠くから此方を監視するギルドの連中を横目で眺め、直ぐに視線を外す。

 

 この槍を手に入れた経緯、それは大した事ではなかったのだが……。

 

 

 

 

「成る程、他の星にも住人が居たとはな。全知の存在を名乗っていながら恥ずかしい事だ」

 

 アーシアの今後の精神状態とメフィラスの思惑を邪魔する為に正体を見せた私だが、アルテミスは勝手に感謝でもしたのか話を大人しく聞いていた。

 話が通じぬのならば首を切り落として天界に送還する……天界にて地上に降りる予定の神に話されれば面倒であり、催眠による記憶操作も天界に戻り神の力を取り戻せばどうなるか不明。

 

 つまりは私の事を知ったままで地上に居て貰わなければ……。

 

 

「バルタン星人の技術力であればこの槍を使用可能に改造可能である。監視の目を置き……もし私について話す事が有ればウラノスを殺す」

 

 神は相手の虚偽を見抜く力を持つ、故に私の言葉が真実であるか理解したのだろう。

 神妙な面持ちで静かに頷くアルテミスに気付かれぬようにミクロサイズの分身を寄生させる。

 メフィラスとウルトラセブンは気が付いている様だが何も言わなかった。

 

 

「私は其方を助ける為、アーシアの平穏を危機に晒した。恩を仇で返すのならば大勢を巻き添えにする予定である」

 

 どちらにせよ平穏が崩れるのなら、ギルドの最高責任者として責任を取って貰う、それだけである。

 

 

 

 

 

「じゃあウチは飯も食ったから酒買いに行かんとな。……ソーマのどアホめ。お陰でソーマが手に入らなくなってしまうやんけ。出回ってるのもオークションで馬鹿みたいに高価になっとるし」

 

 そう、ソーマ・ファミリアは主神ソーマが送還された事によって解散する事となった。

 それが起きたのはブルトンが歓楽街に現れた日の事、ホームの窓から落ちて送還されたらしい。

 

 

 ……尚、ブルトンの出現に少し遅れてから気が付き、驚いて窓から身を乗り出した瞬間にウルトラセブンの墜落による振動でバランスを崩して落ちたとか。

 

 この次元の地球に逃亡した怪獣を追いかけて人身事故を起こした光の国の警備隊もそうだが、傍迷惑な話である。

 別次元の同系統の存在なのだ、光の星の連中もやらかしていそうだ。

 

 

 

 

 

「しかし屋台も今日で終わりか」

 

『うーん、長かったような短かったような……バルタンはどう?』

 

「別に何も」

 

『バルタンらしいなあ……』

 

 さて、明日はウルトラセブンの定期検診の日である、面倒だ。

 他にやるべき事があるというのに……。

 

 

 

「それと例の分析結果が出る頃か」

 

 少しだけ気になっていたが、今はやるべき事が出来た。

 正直言って些事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではヘスティア様。今後とも宜しくお願いしますね」

 

「ああ、ベル君を頼むぜ、リリ君。しかーし、ベル君と仲良くし過ぎるのは禁止だからな!」

 

「はて? 同じファミリアの団員ならば仲良くするのは当然では?」

 

 ああ、何と運が良いのでしょう、今までの人生は凄く糞ですが、凄く凄く糞みたいですが。

 

 ソーマ・ファミリアの壊滅後、あの巨大モンスターによって大勢の神様が送還された影響で街に溢れた恩恵封印状態の冒険者達によって増える新規加入枠の需要、当然全員分の枠なんて有りませんし、リリもこの機会に堅気の仕事でも探そうって思っていたんですがね。

 

 ……ベル様の味が忘れられなくって、数日行く先を探し続けて困り果てた状態で(まあ、人員に余裕のある場所ばかりに向かったのですが)ベル様と再会、誘って頂きました。

 

 ソーマ様、本当に感謝していますよ? 貴方が部屋から人を遠ざけていた上にドアを閉め忘れていたお陰で偶然近くにいた私が気絶させて窓から捨てる事が出来たのですから。

 あの巨大なモンスター達にも感謝を送っておきますかね。

 

 

 

 

 

 

 

「さあさあ。行きましょうか、ベル様。幾つかホームが空いていますし、購入の頭金を稼ぎませんと」

 

「ねぇ、リリ。同じファミリアの仲間なんだし様付けをしなくても良いんじゃないのかい?」

 

「うーん、確かにそうなのでしょうが、長い間この話し方をして来ましたしお気になさらずにお願いします。別に壁を作ってる訳じゃないですよ?」

 

 眷属にさえ興味が無かったソーマ様と違って他の神様じゃ例のスキルと血を抜かれた死体の件を結び付けそうですが、ベル様の主神であるヘスティアもお人好しで助かりました。

 まあ、明らかにベル様へ恋愛感情を向けているのは困りものでしたけれど。

 そして多分通じていなくって……見ていて笑えるんですよね。

 

 

「それにしても本当に減ったよね。ホームが安く売り出されるのは助かるけれど、人の不幸に付け込むみたいで気が咎めるよ」

 

 ダンジョンへ向かう為の長い螺旋階段、普段は長い列が出来ていたのに今は人の姿も疎ら。

 あの巨大モンスターに潰されて送還された神のファミリアとか、第一級冒険者でさえ手こずるようなのが出ましたし、オラリオから出て行くのも仕方無いんですよね。

 

 中にはサポーターを見下していたのも居ると思うと……。

 

「いえいえ、中には外に逃げ出した方々も居ますし、運も実力の内ですよ、ベル様!」

 

 お人好しの仲間と主神、ベル様の血は美味しいですし、私も力が強くなって来たから足を引っ張る事も無く戦えるのが楽しくって、この高揚感はサポーターを見下していた連中の気持ちも少しは理解してやりましょう。

 

 見下していると言えば金の亡者の団長、酒を持ち逃げしようとしたのを今まで散々こき使っていた下級冒険者に囲まれて、互いに恩恵が無い以上は……ふふふ。

 

 

 

「うん! そうだね、頑張ろうか!」

 

「ええ、頑張りましょう!」

 

 さてと、今日はどの位血を貰いましょうか。

 お金を稼ぐなら血を貰いすぎても困りますし、夜中に一口だけ……スキルについては教えていますのでそれを口実にしても……。

 

 

「あっ……」

 

 今、ちょっとお腹が鳴っちゃいました。

 ベル様には聞かれてませんよね?

 

 

 

 

「えっと、シルさんに貰ったお弁当食べる?」

 

「いえ、自分の携帯食が有りますので。それと今のは聞かなかった振りをすべきですよ?」

 

 だからそのお弁当は絶対に、本当の本当に要りませんので!

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