シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

3 / 30
クノッソス、死す

 人造迷宮クノッソス、それは何代にも渡って受け継がれた狂気と妄執の結晶。

 貴重な金属と磨かれた建築技術と膨大な時間を注ぎ込まれ、内部の罠や特殊なモンスターによってロキ・ファミリアでさえも壊滅的被害を受けかねない悪夢のような存在。

 

 だが、この日は悪夢のような存在がそれ以上の悪夢に出会う日だ。

 

 ダンジョンの外壁に沿うように造られたクノッソス、そのクノッソス外壁にマッハ2の速度で巨大な存在が地中を掘り進めながら激突、衝撃で一部を崩壊させながら侵入した。

 頭部の三日月状の角、太い尻尾、やや前側に傾いた姿勢、そして全長四十メートル体重二万トンの巨体。

 名をゴモラサウルス、ゴモラと呼ばれる事になる怪獣……星間侵略用生物兵器である。

 

 協力関係にある星から得たサンプルから再生、忠実に従う洗脳と潜在能力と凶暴性を引き出したバルタン星人のペットであり、この日はダンジョンに潜って稀少金属であるオリハルコンを集めに来ていた。

 

 クノッソスの不幸は強固な作りにする為にアダマンタイトや魔法耐性を持つドロップアイテムを多く使用した事。

 其れはあくまで冒険者や通常のモンスターへの対策であり、巨大怪獣の存在等は想定されていない。

 そして、予めオリハルコンやアダマンタイトの匂いを教え込まれたゴモラはクノッソスに比べて極端に匂いが薄まるダンジョンの外壁を目当ての場所の端と判断、クノッソスの中を突き進み始めた。

 

「グゥオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 罠もモンスターもクノッソスを拠点にしている闇派閥も光の巨人を一度追い詰め、世界線によっては“怪獣の帝王”とさえ呼ばれるゴモラには通じない。

 敵対行為には敵対行為を許されているが、蚊に刺される事を人が敵対行為とは感じないのと同様にゴモラにとっては鬱陶しいだけ、身を捩って振り払うだけで退けた。

 二万トンもの体重を持つ存在に前後左右に乱暴に掘り進められ、ゴモラの通過した後を中心に崩落が始まり流れ込んだ土砂と瓦礫の撤去だけでも年単位の時間が必要となるだろう。

 

「グォ?」

 

 そして、ゴモラの鼻はオリハルコンの匂いを明確に捉えた。

 其れは通路を遮断する為の門、鍵によって発動し通路を遮断する防壁、当然ながら不壊属性を付与されているが、ゴモラは周囲の壁を抉って門を引き抜いた。

 鼻を動かせば無事な通路を通って漂うオリハルコンの匂い、踏み抜いた床の下の通路からも届き、ゴモラは目的地が相当な深さだと教えられたのを、そして純度の高い物は深い場所に多いのだとを思い出した。

 

 

「グゥオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 クノッソス中、そしてダンジョンの一部にも届く咆哮、気合いを入れたゴモラの口から放たれた炎が 遅れてやって来たモンスター達が進む通路を埋め尽くし、光の巨人でさえまともに食らえば昏倒する威力の尻尾の一撃が壁や天井を破壊しながら振り上げられ、全力で床に叩きつけられた。

 これまでの比ではない衝撃に周囲の床は完全に崩落、落下の衝撃で何階層もぶち抜き、漸く止まったと思えばゴモラは下に向かって掘り進む。

 途中途中で見つけたオリハルコンの門は渡されていた装置によって小型化したのを飲み込み、やがて最下層までたどり着くと今度は弧を描きながらオリハルコンの門を探しつつ上を目指した。

 

 

 

 この日、千年もの狂気の結晶であるクノッソスの八割が壊滅、残った場所も入り口の門を奪われるなど被害は凄まじく、バルタン星人がアーシアに言われて地上への被害を配慮したのでオラリオには僅かに振動が伝わっただけに終わった。

 

 

 

「……」

 

 尚、狂気を受け継いだ男は惨状を把握した瞬間に倒れた。

 流石にショックが大きかったらしい。

 

 

 

 

「フォフォフォフォフォフォフォ!」

 

 そして予想以上の成果を得たバルタン星人は珍しく上機嫌での大笑いであった。

 

 

 

 

 

「うーん! 体を動かすって良いなあ」

 

 どうも、アーシアです。

 今日は屋台がお休みの日、私が自由に体を使える日なの。

 まあ、普段も閉店後にはお料理のお勉強で支配権を戻して貰っているけれど、それ以外はバルタンが使っているんだもの、今日は楽しまなくっちゃ。

 

 最近は全部任せてもらえるチャーシューの仕込みは終わったし、甘いものでも食べて回ろうかな?

 甘い物は別腹、ご飯とは別に食べられちゃうの。

 

『理論を検証。結論、つまり食事を食べすぎた場合、二倍に太る計算となる』

 

 うるさいわよ、バルタン!

 

 頭の中の声に抗議してから人混みを走って抜けていると反対側から神様達がやって来たんだけれど、馬鹿みたいな話の途中で私に気付くなり顔を引き攣らせる。

 

 

「ひっ!?」

 

「げげっ!」

 

「うおっ!?」

 

 うわぁ、私って怖がられてるぅ、全部バルタンのせいね。

 

 私達パルゥムはバルタン達との融合適正が高いらしく、私の肉体の状態でバルタンの能力の一部を発揮出来るんだけれど、屋台の好評さも合わさってスカウトが多かったわ。

 

 ……幾ら強くなってもモンスターと戦うって想像しただけで体が震えるし、馴れ馴れしく近寄って来る神様には生理的嫌悪を感じていたらバルタンが手荒く追い返してくれたんだけれど次から次へとやって来て、余りにしつこい上に手荒な真似をしようとしたアポロン様みたいなのまで出ちゃったから私を連れ去りに来た団長を一撃で叩きのめした後、アポロン様を逆さ吊りにして泣くまでビンタを無表情で続けた後、一晩放置したら勧誘も減ったわ。

 ちょっと怖がられるようになっちゃったけれど。

 

 

 

『大半の冒険者は下級、つまり質の良い魔石を手に入れるのは不可能。結論、多くの神の恩恵は大した存在意味を持たず、天界での職務放棄をしただけである。神からの評価を気に病む必要は皆無』

 

 いや、私が気にしているのは……もう良いや。

 

 

「あっ! アーシアさん、久し振りですね」

 

「フレ……じゃなくってシルさん」

 

 ちょっと思い悩んでいる間に知り合いが働いている場所まで来ちゃったらしく、女神の正体を隠して働いているフレイヤ様ことシルさんに声を掛けられた。

 

 ……正直他の神様よりこの人が苦手、次点はロキ様。

 

「そうだ! 最近顔を見せてくれませんし、今夜辺り食べに来ませんか? 今日は屋台はお休みですし」

 

「あー、確かに此処のご飯は美味しいけれど来るのは久々ですね。……正直、ミアさんが少し怖くって。死んだお祖母ちゃんがあんな感じに厳しい人だったから」

 

 因みに祖父母も父母も結婚も出産も早く、生きていたとしてもミアさんより年下だ。

 ……尚、神様とは別に苦手な相手を挙げるとすれば一度求婚をほのめかして来たけれどお祖父ちゃんと大して変わらない年齢だから断った勇者(ブレイバー)と彼にお熱なアマゾネスのお姉さん、妹さんの方は好ましいと思っている。

 

 

 

 

『あの姉妹についての考察。胸部に著しい肉付きの差が見受けられる。何かしらの異常が成長時に発生したのでは無いだろうか』

 

 少し黙ってて、バルタン!

 

 

 

『アーシアの不機嫌理由を考察。結論、自分も胸部周辺の脂肪が同年代に比べやや少ない事から……』

 

 だから黙ってなさい!

 

 

 

 

 

「じゃあ、今日は予定が決まってるので明日お邪魔しますね。何時も早く売り切れるメニューですし遅くはならないと思いますので」




ゴモラってシリーズ次第で火やビーム、災害すら起こす念力も使うんだってさ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。