シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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感想前回までの後で一気に

当初は吸血植物ケロニアがリリを殺して成り代わる予定でした


理解不能

 宇宙船の修理を続けながら思考する、この星で知った“生命”や“個人”といった概念について。

 結論、種族としての存在の仕方がバルタン星人とは大きく違う、故に理解不能。

 思考に費やすエネルギーの無駄である。

 

「……むっ?」

 

 ゴモラの齎した成果は予想以上であり、同時に聞いていたダンジョンの様子とは些か違う点が見られ、何かしらオラリオや冒険者から一般人に対する情報に秘匿される物が多く存在すると推察。

 結論、アーシアのモンスターへの心理的外傷を考慮してダンジョンに向かわない私には無関係。

 また、千年以上続けられている秘匿故にアーシアにも影響が無いとして騒ぎ立てる事ではなく、様子見が推奨される。

 

 

 問題が有るとすれば……。

 

 

『どうしたの? バルタン』

 

「超小型生命体の宇宙船への侵入と脱出の痕跡を発見。データからして地球人の宇宙船の改造中に私に付着したものと推測。知的生命体の可能性は皆無として放置する」

 

 微小な反応故に気が付かなかったが、脱出は数ヶ月前に宇宙船をオラリオに持ち込んだ際と推測、現在の居場所は不明。

 

『虫でも一緒に来ちゃったのね。じゃあ安心かな? それよりも例の計画はあの神様で良いの?』

 

「質問を肯定。面談時の心理分析、周囲の反応から適正を判断。尚、取り扱う商品の下拵えはアーシアに委任する」

 

『本当に!? 私、頑張る!』

 

「仕事への努力は当然求められる物であり、宣言の必要性に疑問。歩行開始時に右足を動かすと毎回宣言するだろうか?」

 

『バルタンったら……』

 

 私への呆れを観測……理解不能。

 

 

 

 

 

「……神ヘルメスが縛られ顔の右半分の毛を全て剃られた状態で発見されたそうだ。“女の子の家に不法侵入した変態です”と書いた紙を背中に張られていたらしい」

 

「成る程。チーズバーガー完成、持ち帰りの商品は五分で完了する」

 

 本日は週の中でも最も早く売り切れるハンバーガーとフライドポテトの日、本日もオッタルはその場で食べつつ街の情報を渡して来る。

 忙しい身とすれば噂話に割く労力の節約に役立っているので助かるが、威圧感から近付くのを避ける客も出るので出禁を検討中。

 

「……それと夜中も屋台をすると聞いたが」

 

「肯定。この身は成長期故に睡眠が必要として行っていなかったが、濃縮したスープと麺と具を急速冷凍、湯煎によってラーメンを完成させる技術を考案。アルバイトの雇い入れを決めた」

 

「そうか、それは楽しみだが……イシュタルには注意しろ。ガリバー兄弟撃破の噂からお前に注目していたが、最近はどうも荒れているという情報が入った」

 

「了承。元よりこの身は歓楽街に向かう必要は皆無。忠告は聞き入れ、留意しよう。注文の品、完成した」

 

 ポテトの側に置いて匂いを移した事で通行人への宣伝効果を持つ紙袋に持ち帰りの商品を入れて渡す。

 

 

『荒れてる人にねらわれているのかぁ。ちょっと不安かな? ほら、雇ったのって……』

 

 タケミカヅチ、眷属を持つ神だが、イシュタル・ファミリアとは戦力差が大きく抗争の可能性は低いだろう。

 また、弱小故に壊滅時のオラリオへの影響の評価は極小、問題は無い。

 

『いや、そうじゃなくって……』

 

 言いよどむ理由が推察不可能、文化の違いを実感。

 

 

 

 

 この夜、他のメニューよりも早く売り切れになった屋台の後片付けを終えた私は豊穣の女主人へと向かっていた。

 他の店に比べ高額な値段が気になるが、アーシアが望むのなら肉体を間借りしている身としては従うしかない。

 バルタン星人の名を汚す事なかれ、存続の危機に瀕する等の場合を除いてバルタン星人は一方的な関係を望まないのだ。

 

 

「姿の隠匿を看破。逃走を推奨する。報復だろうか、ヘルメス・ファミリア団長アスフィ・アンドロメダ」

 

 その途中、近道として路地裏を通っていた私は足を止め、宙を舞うゴミが空気の流れが変わり不自然な動きをし、誰かが踏みしめている動きの地面の辺りに視線を送る。

 魔力の反応は無し、何らかのアイテムを使っていると考えた場合、思い浮かぶのはヘルメス・ファミリアの団長が数多くのアイテムを作れるという事。

 

 

「まさか見抜かれるとは。……お待ち下さい、敵対の意思は有りません。あの馬鹿……ヘルメス様に貴女を調べるように言われたのと、勝手に家に入り込んだ事へのお詫びをお持ちしました」

 

「了解。次に此方を影から調査している場合、眷属がダンジョンに潜ったタイミングで可能な限り惨たらしい方法で天界に送還するとの伝達を希望。これは口先の脅しではない。繰り返す、これは口先の脅しではない」

 

 そっと差し出された袋を受け取ると中には金貨や宝石、まさか見抜かれるとは思っていなかったのだろう、動揺した様子で袋を受け渡した後は再び姿を消して去って行った。

 

 

 

『ちょっと脅し過ぎじゃない?』

 

 三度目、あれは脅しではない。

 神とはあくまで商売上の付き合いのみに留めておくべきである。

 バルタン星人とこの星の住人の考え方が違うのと同様、人と神の思考回路には根本的な相違点が存在。

 共感も相互理解も不可能と判断、神にとって人は娯楽のための駒であり、それをどれだけ大切にするかの違いでしかない。

 根拠として神の力で解決される問題がされずにいる現状、特に何かをなす事無く地上にて行動する神の存在を提示しよう。

 

『うん、そうだよね。私の村を滅ぼしたラキアはアレスって神様……神の支配する国だし……。それに、オラリオの神様がアレスを送還していれば私の家族は生きていたかも知れないのに』

 

 理解が得られ結構である。

 

 

 

 

 

 

 路地裏を歩いていると目当ての場所である豊穣の女主人の裏手へと出る。

 相変わらずアルコールを摂取した状態の者達の声は騒がしいが、特に今日はロキ・ファミリアの宴の日らしく聞き慣れた声が耳に届いた。

 

 

『相変わらず騒がしいなあ。別の日にすれば良かったかも。でも、舌がミアさんの料理を求めてるし、フレイヤ様にも約束しちゃったし……』

 

 正式な契約ではなく、正確な模倣が可能な以上は手間賃を払ってまでこの店で食べる必要は無いと提案するが、この店で食べるという行為に意味があるとの返答だ。

 場の雰囲気が食事中の気分に作用するのはメフィラス星人との会食で覚えがあり、これ以上口を挟むことなく表口から入ろうとした時、駆け足で飛び出して来る者が居た。

 

『あっ! 血塗れの……』

 

 そう、アーシアのドーナツに血を飛ばして台無しにした白髪頭の少年である。

 泣きながらダンジョンの方に走って行くのを見届けた後、これ以上注意を払う意味も無いと判断、店に入ろうとした所でアイズと出会した。

 

「あっ……」

 

「道を開ける事を要求。その場所に立たれていた場合、通行の妨げとなる」

 

 何か焦った様子で立っていた彼女を退かせ、私はカウンター席に立つ。

 ベートが何やら縛られていたがファミリア内の揉め事に興味は無い。

 

「店長、本日は……」

 

『お魚とパスタが食べたい! 飲み物はオレンジジュース!』

 

「魚料理と本日のパスタ、オレンジジュースを所望する」

 

「あいよ!」

 

 何やら店員が殺気立っていて、フレイヤが宥めているが無関係だ。

 食い逃げだのと聞こえるが、あの少年が水に浮かんでいても店と彼の問題である。

 

 

「おーい。アーシアたんもこっちに混ざらん? ベートのアホを転がしておくから席空いてるで?」

 

「申し出を拒否。この身は騒がしい食事が苦手である」

 

 ロキが誘って来るもアーシアは大人数での食事を好まない。

 故に顔も向けずに断った後は料理が来るのを待っていたのだが、聞き捨てならない話が聞こえて来た。

 

 

 

「質問、ミノタウロスを逃がし、其方のアイズ・ヴァレンシュタインが白髪頭の少年を血塗れにしたというのは間違いだろうか?」

 

「いや、間違ってへんで。まあ、ポカやな。……ん? その手は何なんや?」

 

「その少年が血塗れの状態で街中を走り、食べていたドーナツを台無しにした。先程も店から飛び出して走っていた少年には報復した故に半額を其方に請求する。百ヴァリスだ」

 

「……マジかぁ」

 

 む? 何故頭を抱えている? 百ヴァリス程度が払えぬ身でもあるまいに。

 いや、納得した。

 

 

 

「あの装備からして弱小ファミリアであり、大手ファミリアの其方と積極的に揉めようとはしないと考察。ダンジョンに入る以上、死亡は自己責任である」

 

 ……何故かこの後、宴の席は少々気まずそうであったが何故だろうか?

 

 

「いや、理解した。店主、私が来る前にベート・ローガを中心とした男女間のいざこざが起きたな?」

 

 あの男がアイズを口説き、それにショックを受ける殆どの女性陣に男性陣がショックを受ける。

 男女関係のもつれは怖いと聞くが、これがそうなのだろう。

 

 

 

「アンタ、偶にばかになるねぇ。もう少し人の心を理解しな」

 

「解せぬ。他人の心を真の意味で理解するのは不可能だと反論」

 

 やはりバルタン星人とこの星の住人の精神構造は全くの別物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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