シン・バルタン星人   作:ケツアゴ

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オリジナルよろしく
漫画載せてます


ショーと契約

 ガネーシャ・ファミリア主催の怪物祭(モンスター・フィリア)は大勢の目の前でモンスターを調教する催しであり、近年開かれるようになってから大盛り上がりをしている。

 

 だが、二年前、屋台に訪れたガネーシャがバルタン星人と交わした世間話を切っ掛けに更に人気を高め、一部の店の協賛で遠隔視が可能な鏡を使っての大催し、オラリオ内外から客が集まっていた。

 

「さて、今年はどんなのを見せてくれるのやら。去年は曲芸みたいなのを見せて貰ったけれど」

 

 そんな大人気であり、観覧席は争奪戦。前売り券は完売御礼で当日券は長蛇の列の中、数日前から並ぶ程に忠実な眷属を使って当日券を手に入れた神がポップコーン(バルタン星人からレシピの有料提供)とジュースを買って悠々と開始を待っていた。

 

「ガネーシャ・ファミリアなら騒ぎになっても不安にさせない為に続けるだろうし、楽しみだな」

 

 やがて開始が告げられると共に始まったのは前座、これにはバルタン星人の放ったとある言葉が関わっている。

 

 

『従えて終わりなのに疑問を呈する。例を提示、飼い犬は従えてから芸を仕込む』

 

 それから始まったのは今からモンスターを従えるのではなく、従えたモンスターによる芸の披露。

 去年は障害物コースを用意し、騎乗した冒険者と共に二匹のモンスターが競争をし、一回目となる一昨年は手品に協力させた。

 手品の方は冒険者の練習不足かグダグダな部分も見受けられたものの忠実に従うモンスターの姿には好評が集まり、グダグダな手品を披露した冒険者はランクアップをした時に変な二つ名を貰ったのだが別の話だ。

 

 

「……成る程、今年は演奏か」

 

 最初に運ばれて来たのは台車に乗った巨大な水槽であり、中心の岩の上に設置されたハープを人魚が奏で始める。

 続いてはリザードマンとフォモールによるハンドベル、これらは上手な演奏というよりは子供の発表会程度の腕前ではあったものの、今まで従えて終わりであったモンスターに芸を仕込んだ事から今回も大いに盛り上がっている。

 尚、最後にアラクネによる琵琶の演奏だけは才能を感じるものであったとされ、それに合わせて歌う団員には少し残念な二つ名が送られる事が決定した。

 

「うーん、これは帰るのをちょっと早まったかな? でも、彼奴達が面倒だから解き放っちゃったし、どっちみち来年は観に来られないか」

 

 ポップコーン(キャラメル味)をパクパクと食べながら呟く神は本日天界に帰る予定で最後に見せ物を楽しみに来ていたのだ。

 

 彼の名はタナトス、死者の魂の管理を行う神であり、人生によって汚れた魂が転生時に綺麗になる事から大勢の死を望み、眷属には愛していた者が生まれ変わった先の近くに転生させると約束して従えていた。

 その望みの為にクノッソスに関わるファミリアとも手を結ぶも先日起きたゴモラの強襲による人造ダンジョンの破壊を機に手を引いた。

 

 秘密の入り口からの瓦礫の撤去や物資の一からの搬入はオラリオが発展し冒険者のレベルも上がって来た昨今では最早再建は不可能とし、建築に妄執を捧げる男の弟も外で悪事を働くべく主神や仲間と共にオラリオを去った。

 

「あれは外から来て、明確な意思の下で門を集めていた。作り直しても再び来たら二の舞だし……あんなのが地面を掘って自由に動くなら見たい物は沢山見れそうだしね。イシュタルもスポンサーを降りたし、残りは例の連中とエニュオの一派だけか」

 

 ポップコーンで乾いた喉をジュースで潤しているとメインである調教が始まる。

 彼の予想通りに観客の混乱を避ける為か中止になる様子が無い中、タナトスにも予想外の事態も外では起きていた。

 

 

 

 

「謎の白装束だけでなくモンスターの脱走。……関連が有りそうだな。よし! ガネーシャ・ファミリアの名に懸けて解決しろ。そして、俺が、ガネーシャだ!」

 

 

 

 

 

 場面は移り、分身五号の屋台の側、ケバブサンドの大食いで競い合っていたベートとアレンに向かって突撃する白装束達が居た。

 

 

「「邪魔だ」」

 

 勝負の真っ最中だとばかりに瞬殺、仕込んでいた爆発物のスイッチさえ入れる暇すらなく、それどころかケバブサンド片手に立ち上がる事もせずに殴打によって意識を奪われ地面に転がっている。

 

「……おい、テメェの所のイザコザか? 妙なのに巻き込みやがって」

 

「あっ? テメェ達ロキ・ファミリアこそ妙な連中に恨まれているんじゃねぇのかよ。……物騒なモンを仕込んでるな」

 

 うつ伏せに転がっている白装束の一人を足先でひっくり返したアレンは爪先で腹部を踏みつける。

 仕込んでいた爆発物を無造作に取り上げて他の白装束を調べれば同じ物を持っていた。

 

 

 

「死兵かよ。ちっ! こんな連中、俺なら兎も角雑魚には荷が重い。周りを巻き込んだらロキ・ファミリアの汚名だ。おい、勝負は次の機会に持ち越しだ!」

 

 手に持っていた食いかけのを飲み物で胃に流し込んだベートはアレンの返事も待たず、白装束達が持っていた爆発物と同じ匂いを頼りに飛び出して行き、それを見送ったバルタン星人は問い掛ける。

 

「質問。アレン、あの言動は心配なのを素直に表明出来ず、嫌われてでも言い訳をして助けようとしているのだろうか。神が言うツンデレとやらの可能性が高い」

 

「知るか」

 

「そうか」

 

「……仕方無ぇ。俺もさっさと行くから注文したのは残しとけ。……あっ?」

 

 アレンも他の場所で襲撃が起きている可能性を考えたのか立ち上がろうとして動きを止める。

 視線の先にはオッタルと共に近付いて来るフレイヤ・ファミリアの幹部の姿があった。

 

 

「おい、女神の呼び出しか? 何処に行けば良い?」

 

「いや、此処であっている」

 

 そう言うなりオッタル達はアレンの近くの席に腰を下ろし、同時に告げた。

 

「店主、ありったけ作り続けてくれ。女神の提案で幹部揃っての大食い大会の開催が決定した。多数決によりケバブサンドに決まったから手早く頼む」

 

 先日の宴でフレイヤと言外に交わした約束をバルタン星人は思い出し、白装束達もフレイヤの手の者と納得した。

 

「了解。白装束達による上級冒険者への襲撃及びモンスターの脱走によって他の屋台周辺から客が引いた。本体及び他の分身にも救援を要請しよう」

 

「そうか。割り増しで料金は払うので……」

 

 頼む、オッタルがそう言いきる前に空の上から本体を含んだ五人が現れた。

 

 

 

「……飛べたのか」

 

「質問、飛行が可能だったか。解答、この身でも音速の二倍での飛行が可能」

 

「……そうか」

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ」

 

 割増し料金で騒ぎによる赤字は免れそうだとバルタン星人が笑う中、フレイヤ・ファミリアの幹部達は考えるのを止めた。




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