超地球救済戦記!真・ダンザイオーΩ〈オメガ>~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下で無職童貞ニートの俺が全員滅ぼす!~   作:かにグラタン

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第百四話 20××年 5月5日 その4

第百四話 20××年 5月5日 その4

 

報告書

5月5日、『実験体6号』が逃亡中の『実験体9号』の捜索中に謝って敵勢力の人間を断罪刀『水無月』で殺害してしまう。

この時点で『実験体部隊』は本来予定していた『実験体6号』へ増援を送る権利が一時停止、『実験体6号』に廃棄命令が下される。

その後、『実験体6号』が逃亡中の『実験体9号』と接触、交戦。

『実験体6号』は戦闘中に両足を骨折、戦闘不能になり、『実験体9号』に断罪刀『水無月』を奪われる。

『実験体6号』の戦闘不能により、停止されていた増援要請が解除、『実験体10号』が『実験体9号』と接触するも、共に行方不明。

上層部は『実験体10号』が『実験体9号』と共に造反したと見ている。

             *

ミナヅキに勝利した私の前に大剣の断罪刀『神無月』を手に持ったカンナヅキが立ちはだかる。

「どうしたのカンナ?あなた、私を殺しに来たんじゃないの?」

「ええ、表向きはその通りよ」

「表向き?それってどういう意味?」

「私もあなたとアカリさんのいる組織に入ることにしたわ」

「はぁ?あんた、もしかして杉本にスパイ活動でも依頼されたわけ?」

「ねぇ、ナガツキ。ナガツキがもし、結婚してて、子供がいたら、ナガツキは自分の子供と夫どっちが大事かしら?」

「そりゃあ、自分の子供に決まってるじゃない」

「つまり、そういうこと。杉本さんは結局、いざとなったら私なんかより、娘のヤヨイちゃんの方が大事なのよ」

「あなた、それだけの理由で『組織』を敵に回すわけ?」

「なにも、自由が欲しかったのはあなただけじゃないってことよ。それに断罪刀『水無月』があれば、他の『実験体』なんて案外簡単に倒せると思わない?」

「確かに、断罪刀『水無月』を対人戦に使うことの恐ろしさは今日存分に思い知ったわ」

「それじゃあ、私も今日からあなたと同じ裏切り者ってことで、よろしく」

カンナが私に手を差し伸べてくる。

「とりあえず、まだ完全に信用はできないわよ...なんせあなたは杉本と距離が近かった人間なんだから」

「そうね、でも、アカリさんに会ったらわたしどういう顔をすればいいのかしら?」

「しらないわよ、そんなの。とりあえず、ようこそ『ブレイズ』へ」

私はとりあえずカンナに差し伸べられた手を握った。

            *

夕方のテレビニュースにはビルの屋上が爆破された映像が流れている。

「ヤヨイちゃん、この爆発、エリアAだって、この辺も物騒になったもんだな~」

「そ、そうですね、友助さん」

私は空になった食器を手にもって台所に移動する。

杉本さんからの情報が確かなら、テレビに映っている映像はおそらく、ナガツキちゃんとミナヅキちゃんが戦闘した際に発生した爆発だろう。

そしてそれは断罪刀で『怪異』と戦っている私たちの存在がほんの一部世間に露見したことを意味している。

『組織』は自分たちに都合のいいように情報統制を敷いているそうだけど、あれだけ大きな爆発だ、周りに住む人々の不安な気持ちを考えると胸が痛い。

「ヤヨイちゃん、どうしたんだい、暗い顔しちゃって、洗い物変わろうか?」

「いえ、大丈夫です。ただ、近所で爆発が起きたらなんだか、不安になっちゃて」

「気にしすぎだよ、テレビじゃ、ビルの機械の故障って言ってるんだから」

それは『組織』が情報統制を敷いたから、と私は言いたくても言えない。

そして、断罪刀の用いる『実験体』同士の戦闘でもし、一般人が巻き込まれ犠牲になった時、私たち『実験体』の存在を世間に対して覆い隠すことは不可能だろう。

ナガツキちゃんだけならともかく、カンナちゃんも『組織』を裏切ったとなれば、戦況は今以上に激しさを増すだろう。

それに加え、『怪異』との戦闘もあるのだ、これで不安を感じない方がおかしい。

それでも、友助さんにその不安を打ち明けられないは正直つらい。

洗い物を終えた私はソファーでテレビを見ている友助さんの正面に立つ。

「どうしたの?ヤヨイちゃん?」

「友助さん...私たち、家族ですよね?」

「そりゃあ、もちろん、血は繋がってなくても一つ屋根の下で暮らてるんだから、家族だよ」

「家族なら、その証明としてハグしてくれませんか?」

「フグ?俺はフグの調理師免許なんで持ってないよ...あは、あははは...」

「とぼけないでください!私たち、家族なんですよね?家族ならハグできますよね!」

「や、ヤヨイちゃん?急にどうしたの?ウソ!なんで泣くの?俺、なにかひどいこと言った?わかった、する、フグ、じゃなくって、ハ、ハグ!」

友助さんがソファーから立ち上がって私のことを抱きしめる。

私は友助さんの背中に手を回す。

「私、こうしてると...もうちょっと頑張れそうな気がします...」

「本当?よ、よかった、それは...」

「迷惑ですか?」

「い、いやそんなことはないけどさ、女子高生って普通、父親に対して嫌悪感を抱くもんだろ?だからちょっと珍しいっていうか、ほら、俺たち一応、血は繋がってないわけだし」

「普通じゃない女の子は嫌いですか?」

「そ、そんなことないよ!女子高生に抱き着かれてうれしくない成人男性はこの地球には存在しないと思うよ...」

「じゃあ、友助さんは今、私とハグしてて嬉しいってことですね」

「は、はい、完敗です...」

お母さんには悪いけど、今、私はとても幸せだった。

そして私の幸せをぶち壊すかのようにインターホンの音が室内に鳴り響く。

「俺、ちょっと見てくるわ」

友助さんが私から離れていく。

私は友助さんの後を追う。

友助さんが開けた玄関のドアの向こう側にはナガツキがいた。

「ナガツキちゃん、どうしたんだい、こんな時間に?」

「アカリさんから伝言を頼まれてね」

「アカリさん?ナガツキちゃん、アカリさんと知り合いなの?アカリさん、今どこにいるの?」

「こんばんわ、ヤヨイちゃん、顔、怖いよ」

私はこの時、友助さんとの幸せな時間を台無しにしたナガツキちゃんに対して、初めて殺意を抱いた。

             

次回予告 第百五話 20××年 5月6日

 

 




次回もお楽しみに

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