超地球救済戦記!真・ダンザイオーΩ〈オメガ>~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下で無職童貞ニートの俺が全員滅ぼす!~   作:かにグラタン

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第百六話 20××年 5月6日 その2

第百六話 20××年 5月6日 その2

 

バイト先で品出しをしていると、後ろから声をかけられた。

「おい!」

「はい...げっ!す、杉本さん!」

「なんだよ、その嫌そうな顔は!」

「そりゃ、人の家の玄関爆破した奴に嫌な顔するのは当然の反応だろ!」

「もういい加減、切り替えろよ、次の日に修理業者来ただろ?」

「あれ、あんたの仕業だったのか!朝八時に来たぞ!せめて十時過ぎだろ!」

「うるせぇな!こっち客だぞ!神だぞ!」

「はいはい。それより昨日、あんたの娘のナガツキちゃんが家に来たぞ」

「ナガツキは俺の娘じゃねぇよ!」

「あれ?じゃあ、この前のはいったいなんだったんだ?」

「それで、ナガツキは何をしにきたんだ?」

「それがさ、よくわかんないんだよな、アカリさんの伝言を伝えに来たらしいんだが『ブレイズ』とか『廃棄』がどうのこうのとか、挙句の果てにヤヨイちゃんがナガツキちゃんをビンタするわで大変だった」

「そうか、ナガツキはヤヨイを『ブレイズ』に勧誘しに来たのか...!」

「なぁ、そのアカリさんとナガツキちゃんが所属してる『ブレイズ』って会社、いったいどんな会社なんだ?今日の朝、ヤヨイちゃんに聞いたらさ、唇に人差し指当てられちゃってさ...えヘへ...痛っ!なんで蹴るんだよ!業務妨害だぞ!」

「うるせぇ!なんかムカついんたんだよ!」

「なんだよ、杉本さん、ヤヨイちゃんのこと好きなのか?」

「ああ、好きだよ...でもお前の想像しているような好きじゃない」

「よくわからんが、今日は買い物に来たのか?」

「んなわけねーだろ!お前、この後、ちょっと時間あるか?」

「俺、別にそういう趣味は...」

「そういう意味じゃねぇよ!ヤヨイについて話があるんだよ」

「話?そもそも杉本さんはヤヨイちゃんとどういう関係なんですか?」

「こっちはそれを説明したいから、時間をよこせと言ってるんだ」

「はぁ...まぁ、俺、一応、ヤヨイちゃんの保護者なんで、別にいいですけど」

「なんか腹立つな、お前」

「俺、なんか変なこと言いました?」

「それで、いつならいい?」

「あと十分ぐらいで、勤務終了するんで、もうちょっと待ってください」

「それじゃあ、近くに公園あるだろ?俺、あの公園のあたりに車止めてるから、そこで待ち合わせな、黒い車」

「は、はぁ...」

杉本さんが店内から出ていく。

十分後、業務を終えた俺はバイト先のスーパーの近くにある公園に向かう。

公園の近くには黒い車が停まっていた。

黒い車からクラクションが鳴る。

運転席を見ると、そこには杉本さんがいた。

運転席の窓ガラスが下に向かってスライドする。

「お仕事おつかれさん、乗れよ」

俺は車の後部座席に座る。

「悪いな、疲れてるところ、でも、もうあんまり時間がないから単刀直入に言わせてもらう、高村友助、お前はもうヤヨイと関わらないほうがいい」

「なんですか?いきなり?関わるも関わらないも、俺とヤヨイちゃんは家族なんですよ」

「友助、お前、長生きしたいか?それとも早死にしたいか?」

「そりゃあ、長生きしたいに決まってますよ」

「なら、もう、ヤヨイとは縁を切れ、そうすれば、お前は『ブレイズ』に人質として利用されずに済む、そのせいでヤヨイも傷つかずに済む」

「い、意味がさっぱりわからん」

「簡単に説明すると、俺とヤヨイはとある『組織』に所属している、その『組織』と敵対しているのが『ブレイズ』だ」

「ちょっと待ってくれ!確か、昨日のナガツキちゃんの話が本当なら『ブレイズ』にはアカリさんが所属しているはずだ、ということはアカリさんとヤヨイちゃんが敵対しているってことなのか?」

「これはおそらく、俺の予想だが、昨日、ナガツキがお前の家を訪れたのは、『ブレイズ』にヤヨイを勧誘するためだ」

「そうそう、確か、昨日そんな話をしていた」

「それが事実だとすると、アカリは自分の娘であるヤヨイと敵対することを恐れていると思われる」

「そっか、それはよかった。でも、その『組織』とか『ブレイズ』とかいうのはいったいどういう理由で敵対してるんだ?」

「簡単に言えば、戦争だ」

「戦争?もしかしてサバゲーとか?」

「違う!本物の戦争だ」

「ちょっと待ってくれよ、最近のテレビのニュースでそんな話を聞いたことは...まさか」

「気づいたようだな、昨日のニュースでビルが爆発する映像が流れただろ、あれが俺達と『ブレイズ』との戦争だ」

「でも、昨日のニュースじゃ、あの爆発はビルの機械の故障だって言ってたぞ!」

「それは俺たちがテレビ局に情報統制を敷いたからだ。もし、この国で人間同士の戦争が起きていることを各テレビ局が一斉に報道したどうなると思う?」

「そりゃあ、町中パニックになるな...」

「そうだ、パニックになった国民はなにをするかわからない、そして俺達にはそれに一々対応している時間も戦力もない」

「それで、どうして戦争してるんですか?」

「この世界には『怪異』という精神生命体がいる」

 

「『怪異』?精神生命体?それってゲームや漫画ですか?」

「違う、『怪異』は現実に存在する。『怪異』は普通の人間には目に見えない精神生命体だ。そして『怪異』は人間の心に寄生して、寄生した人間の心に不安やストレスを与える」

「不安やストレスなんて、別に、誰にでもよくあることじゃないですか?」

「だから、その誰にでもよくある不安やストレスを人々に与えているのが『怪異』なんだよ。人間が犯罪を犯したり、自殺をしたりする動機には必ず、人体に寄生した『怪異』により発生した不安やストレスが原因になっている。そして俺たちの『組織』はその『怪異』から人々を救うために存在している」

「それじゃあ、今までニュースや新聞で報じられていた殺人事件や自殺っていうのは全部『怪異』の仕業なんですか?」

「そういうことだ。『怪異』に寄生された人間よって引き起こされる悲劇は、殺人事件や自殺だけじゃない、事故や戦争も含まれる。俺たちの『組織』は人間に寄生する前の『怪異』を『断罪刀』で倒し、人知れず人々の生活を見えない不幸や悲劇から守っているのさ」

「なるほど、じゃあ、杉本さんやヤヨイちゃんはとりあえず人類の味方なんですね、それを聞いて安心しました」

「安心するのはまだ早い、さっき言った『断罪刀』はこの世界で唯一『怪異』を消滅することができる刀だ。そして全部で十二本ある『断罪刀』は誰でも使えるわけじゃない」

「なんか試験があるんですか?」

「そういうことだ、実は全人類のDNAのデータは出生時に採取され、『組織』に極秘裏に保存されているんだ。そして、その中で『断罪刀』ともっとも適合率が高いDNAデータを持つ人間だけが『断罪刀』を使える、そして俺の娘のDNAデータが3本目の断罪刀『弥生』と高い適合率を出してしまった」

「じゃあ、杉本さんの娘は今も断罪刀『弥生』で怪異と戦ってるんですか?」

「ああ、その通りだ。今では『組織』のルールで断罪刀『弥生』と同じ名前が与えられている。でも、最近、適合率の低下が理由で上層部からヤヨイに廃棄命令が下された。まぁ、色々あって、一ヶ月延長したんだがな」

「それって、まさか...そんな、うそですよね?断罪刀『弥生』と同じ名前で、ヤヨイって、じゃあ、ヤヨイちゃんはアカリさんと杉本さんの間にできた子供で、それで...もうすぐ死んじゃうんですか?」

「ああ、その通りだ」」

「昨日、確かにナガツキちゃんがヤヨイちゃんに言ってました...『ブレイズ』にヤヨイちゃんが入れば...ヤヨイちゃんは廃棄されずに済むって...そしたら、ヤヨイちゃんがナガツキちゃんをビンタして、それで...それで...」

つまり、断罪刀『弥生』との適合率が低下してしまったヤヨイちゃんはこのままだと、所属している『組織』に廃棄されてしまう、アカリさんはそれを阻止するために、きのうナガツキちゃんを使ってヤヨイちゃんを『ブレイズ』に勧誘しに来たのだ。

でも、それならどうして、アカリさんは自分の口で直接、ヤヨイちゃんに説明しに来ないのだろうか?

なぜ、自分が『組織』に廃棄される死の運命を受け入れてまで、『ブレイズ』の勧誘を断ったのだろうか?

昨日、ヤヨイちゃんはナガツキちゃんに向かって、こう言った。

『余計なお世話です、私は決めたんです、お母さんを裏切ってでも、自分の願いを叶えるって...!』

母親であるアカリさんを裏切り、自分の命を犠牲にしてまでヤヨイちゃんが叶えたい願いとはいったいどんな願いなのだろうか?

「ヤヨイちゃんが昨日言ってました、『組織』の廃棄から救おうとしてくれてるアカリさんを裏切ってでも叶えたい願いがあるって...」

「それは...俺からは何も言えん」

「杉本さんは何か知ってるんですか?」

「知ってるが言わん、ヤヨイに殺される...」

「そう...ですか...でも杉本さんはこのまま、自分の娘が...ヤヨイちゃんが廃棄されるのを黙って見ているんですか!」

「ああ、そうだよ。断罪刀に一度適合した人間は適合率の低下と共に人間の身体能力を超えた『怪物』になっちまう、だから、そうなる前に廃棄、つまり殺害する。それが俺の所属している『組織』のルールだ」

「そんなの、あんまりですよ...」

「その『組織』のやり方についていけなくなった連中が立ち上げた会社が『ブレイズ』だ。そして、自由欲しさに『組織』を裏切ったナガツキとカンナヅキも、その『ブレイズ』に所属している。そして、俺たちの『組織』で戦闘可能な状態にある、断罪刀の使い手はムツキ、ウヅキ、ハヅキ、そして適合率低下中のヤヨイの4人。一方、『ブレイズ』に所属している断罪刀の使い手はナガツキとカンナヅキ、そして『ブレイズ』は強力な力を持つ断罪刀『水無月』を所持している。そして『ブレイズ』の最終的な目的は俺とヤヨイが所属してる『組織』の壊滅だ」

「本来、『怪異』から人々を守るはずの断罪刀の使い手たちが『断罪刀』を使って互いに殺し合いを始めようとしている...そしてその間にも『怪異』による犠牲者も増える...こ、こんなの狂ってる...!」

「とにかく、ヤヨイの近くにいると、お前も断罪刀の使い手同士の戦闘に巻き込まれて巻き添えにされる可能性が高い、最悪の場合、『ブレイズ』はヤヨイと親しい、お前を人質にする可能性もある、それにヤヨイが『怪物』になればお前はヤヨイに殺されてしまうかもしれない」

「俺は...ヤヨイちゃんとは血がつながってない!でもなぁ!ヤヨイちゃんは...ヤヨイちゃんは俺の家族なんだよ!」

俺は車から出ると、ヤヨイちゃんの待つ自宅に向かって全力で走る。

「おい!友助!お前、本当にそれでいいのか?」

背後から、杉本さんの声が聞こえる。

正直、わかんねぇよ...なにが正しくて、何が間違っているのか。

俺は鍵を使って自宅のドアを外から開ける。

「た、ただいま...ヤヨイちゃん...」

「友助さん、どうしたんですか、すごい汗ですよ?」

料理中だったのか、制服の上にエプロンを着けたヤヨイちゃんが俺を心配そうな目で見つめている。

「ヤヨイちゃん、今すぐ、逃げよう」

「え?」

俺は困惑しているヤヨイちゃんを抱きしめる。

「杉本さんから話は大体聞いた、だから一緒に逃げよう」

「友助さん...?」

「こんな狂った世界から一緒に逃げよう」

俺の胸の中でヤヨイちゃんが幼児みたいに大声で泣き始める。

仮に『組織』と『ブレイス』から逃げ続けることができてもヤヨイちゃんはいずれ断罪刀との適合率の低下が原因で『怪物』になってしまう。

俺はおそらく『怪物』になったヤヨイちゃんに殺されるかもしれない。

それでも、俺はヤヨイちゃんをこの狂った世界から助けてあげたかった。

 

次回予告 第百七話 20××年 5月6日 その3




次回もお楽しみに
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