超地球救済戦記!真・ダンザイオーΩ〈オメガ>~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下で無職童貞ニートの俺が全員滅ぼす!~   作:かにグラタン

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第百八話 20××年 5月7日

第百八話 20××年 5月7日

 

報告書 5月6日

何者かの手引きにより廃棄が予定されている『実験体3号』の所在が確認できなくなる。

上層部は『実験体3号』の殺害を『実験体部隊』に要請。

『ブレイズ』に所属している『実験体9号』と『実験体10号』が『組織』の施設を襲撃。『実験体9号』と『実験体10号』の襲撃に対し、上層部は『実験体部隊』の出動を要請。

『実験体部隊』に所属する『実験体1号』、『実験体4号』、『実験体8号』が『実験体9号』と『実験体10号』と交戦するも、全員死亡する。

施設内のスタッフからも多くの死傷者が出た。

『実験体部隊』責任者の杉本は上層部の職員と生き残ったわずかなスタッフと『怪異』との戦闘で負傷した『実験体5号』と『実験体2号』を軍用車に乗せて、襲撃された『組織』の施設を放棄、別施設への移動を開始した。

              *

5月6日

俺とヤヨイちゃんは手を繋いで夜道を歩く。

別に、俺がヤヨイちゃんに手を繋いでくれを頼んだわけじゃない。

ヤヨイちゃんが勝手に握ってきたんだ。

本当ならその手を離すべきなんだろうけど、ヤヨイちゃんに残された時間のことを考えたら、その手を離すべきではない。

「『組織』からの追っ手が来ませんね」

「それって俺たちにとってはいいことなんじゃないか」

「そうなんですけど、不自然過ぎて逆に怖いです」

「きっと杉本さんがヤヨイちゃんのために、なんかしてくれたんじゃないか」

「そんなこと、あるんでしょうか?」

「あるさ、親っていうのは自分の子どものためならなんだってするさ」

「友助さん、海に着くまであと、どれくらいかかるんですか?」

「うん、俺たちの住んでいる『エリアA』は内陸部だから、このままだと明日か、明後日になっちゃうね」

「今日はどこで寝るんですか?」

「それなら心配いらないよ、もうすぐ俺の実家に着くからさ」

「友助さんの実家」

「ああ、そういえばヤヨイちゃんはまだ来たことなかったね」

「はい...お母さんに来なくていいと言われたので」

「まぁ、俺の両親とヤヨイちゃんはほとんど他人みたいなもんだからね、アカリさんなりの配慮だったんじゃないの?」

「そう...でしょうか」

俺は実家のインターホンを押す。

すぐに、ドアが開いて中から母さんが出てくる。

「と、友助!となりの女の子はもしかして新妻かい?アカリさんとは離婚したのかい?」

母さんの言葉にヤヨイちゃんの顔が真っ赤になる。

「ち、ちがうよ、母さん!この子はアカリさんの連れ子のヤヨイちゃんだよ」

「あっ、そう...あなたがヤヨイちゃんね、私は友助の母のサユリです...ヤヨイちゃんの顔、ちょっと赤いわね、もしかして体の具合でも悪いのかい?」

「ヤヨイちゃん?あ、本当だ!顔が赤い!」

「わ、私は大丈夫です!ご、ご心配なさらないでください!」

「そうかい、とにかく早く、家に入りな」

「ただいま~」

「お、おじゃまします...」

俺は廊下を進み、リビングへと移動する。

「ただいま、父さん」

「おお、友助!横にいる女の子は新妻かい?」

「違うよ、さっき母さんにも同じこと言われた」

「ははは...そうかい、それで、君は?」

「わ、私は高村アカリの娘のヤヨイです」

「ほう、君がアカリさんの連れ子の...まぁ、アカリさんに似て、ずいぶんと美人じゃないか、わしは友助の父のコウスケです」

「友助、今日は泊まってくのかい?」

「ああ、実はヤヨイちゃんと海に行く予定でね、明日の朝にはここを出てくよ」

「そうかい、私たちに会いたくて、ここにきたんじゃないのかい、さびしいね」

「いいじゃないか、サユリ、久しぶりにこうして会えたんだから、二人とも、今日はゆっくりしてきなさい」

俺とサユリちゃんはリビングにある椅子に腰を下ろす。

「友助が事前に来ることがわかってれば、おいしい料理とか準備できたのにねぇ」

「そんなに気を使わなくてもいいよ、母さん」

「それにしても物騒だな、エリアAの山奥で大爆発だなんて」

父さんがテレビニュースを見て驚いている。

「あら、この前のビルの爆発と言い、最近この辺は物騒ねぇ」

隣りの椅子に座っているヤヨイちゃんがテレビを見ている俺の手を握ってくる。

もしかすると、エリアAの山奥で大爆発を起こした施設は『組織』の施設なのかもしれない。

敵対している『ブレイズ』に襲撃されたと想定すれば、ありえないことではない。

俺はテーブルの上に置いてあったテレビリモコンを手にもってチャンネルを変える。

テレビにはバラエティー番組が映っている。

「友助、急にどうしたんだ?」

「ごめん、父さん、俺、この時間はいつもこの番組見てるんだ」

「そうかい、それなら、そうと言ってくれればいいのに...」

「そうよ友助、ちょっと感じ悪いわよ」

「あはは...いつも楽しみしてるからさ、つい口より手が先に動いちゃってね」

ヤヨイちゃんが申し訳なさそうな顔で俺を見つめてくる。

「す...すみません、私...」

「ヤヨイちゃんもこの番組好きだろ?」

「は...はい」

テーブルに母さんが作ってくれた夕食が並ぶ。

和食だった。

俺とヤヨイちゃんは夕食を摂り終えると風呂に入って寝室に敷いてあるそれぞれの布団に入る。

「ヤヨイちゃん、本当に寝る場所、俺と同じでよかったのかい?」

「はい、友助さんのお母さんとお父さんにこれ以上ご迷惑はかけられませんから...」

「そっか、でも、俺、寝相悪いからな、大丈夫かな~」

頬を赤く染めたヤヨイちゃんが俺の顔をじっと見つめてくる。

「友助さん、一つだけお願いがあります」

「なんだい?」

「あの...私の布団で一緒に...やっぱりなんでもありません、おやすみなさい」

「ふぇ?」

ヤヨイちゃんは毛布で真っ赤な顔を隠して寝てしまった。

「おやすみなさい...」

5月7日

杉本さんの運転する軍用車が『組織』の予備施設へと向かう。

軍用車には私たち『実験体』と『組織』の上層部のメンバーと、多数の負傷者が乗っている。

「まずったなコレは...」

施設の予備施設がある方向には火の手が上がっている。

「どうしたの杉本さん?」

「ああ、どうやら『ブレイズ』のやつらに先回りされたらしい」

「じゃあ、予備施設もダメってこと?」

「そうだな、今、予備施設に近づいても、全員殺されるだけだ」

「じゃあ、私たち、これからどうするの?」

「サツキ...お前はキサラギとミナヅキと一緒に予備施設に行って『ブレイズ』に投降しろ」

「そんなことできるわけないでしょ!」

「でも、投降すれば、お前たち3人だけは生き残れるかもしれない」

「それは...」

「そんなの絶対にダメです!」

ナガツキとの戦闘で両足を負傷したミナヅキが杉本さんの提案を拒否した。

「ミナヅキ...お前の場合はむしろ、このまま『組織』にいるより『ブレイズ』に投降したほうが安全なんだぞ!」

「私は投降なんて絶対しません!私は杉本さんを守る為にこれまで戦ってきたんです!」

「おい、サツキとキサラギはどうする?」

「僕は投降しようと思います...」

「ちょっとキサラギ、あなたそれ本気で言ってるの?」

「だって、僕たち『実験体』は断罪刀との適合率が下がれば、どうせ怪物になってしまうんですよ!なら、残された時間ぐらい、好きに生きてもいいじゃないですか!」

「サツキちゃんはどうするの?」

「私は...戦うわ」

「サツキさん、相手はナガツキさんとカンナヅキさんですよ!自分から死にに行くようなものです!」

「私たちは今まで、戦う力のない人々の幸せのために『断罪刀』で『怪異』と戦ってきた。それをずっと誇りに思って戦ってきた...だから私はたとえ一人でも、この軍用車にいる力のない人々のためにナガツキとカンナヅキと戦うわ」

「サツキさん...」

軍用車を運転していた杉本さんが急ブレーキをかける。

「ちっ、見つかっちまった」

軍用車の前には断罪刀『神無月』を手に持ったカンナヅキと武装した『ブレイズ』の軍人達が立っていた。

「おっはようございま~すっ!」

カンナヅキが笑いながら、朝の挨拶をしてきた。

 

次回予告 20××年 5月7日 その2

 

 




次回もお楽しみに

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