超地球救済戦記!真・ダンザイオーΩ〈オメガ>~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下で無職童貞ニートの俺が全員滅ぼす!~   作:かにグラタン

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第百十四話 20××年 報告書

第百十四話 20××年 報告書

 

「潜入捜査、お疲れさま。報告書、よくまとまっていて、上も大喜びだよ」

「はい、室長、それで...例の件に関しては...」

「ああ、もちろん、約束通り、君は明日から本部勤務だ」

「ありがとうございます」

私は部屋を出てるとそのまま、昼食を摂る為に社外に出た。

「お久しぶり、鈴木さん」

私に話しかけてきたのは、今、いちばん顔を見たくな女だった。

「ア、アカリさん!」

「ちょっと話があるんだけど、今、大丈夫?」

「は、はい...」

私はアカリさんの車の助手席に乗る。

「車の中ってことは、誰かに聞かれちゃまずい話ってことですよね?」

「もちろん、それで報告書のことなんだけど」

「はい、ちゃんと断罪刀の部分は適当に誤魔化しておきましたよ」

「どんなふうに誤魔化したの?」

「だから、断罪刀は全部回収して、第8施設に凍結しておいたって」

「そう、助かったわ。でもそれじゃあ、いずれ上にバレるんじゃないの?」

「問題ありません、凍結した断罪刀はみんなレプリカです、仮に、適合者の探索が再開されても、レプリカの断罪刀に適合できる人間なんて一人もいません」

「なるほどね」

「でも、本物の断罪刀、本当に全部、破壊しちゃってよかったんですか?」

「どういう意味?」

「だって、断罪刀がなくなったら、これから『怪異』の被害者がどんどん増えるってことですよ」

「私はそれでいいと思うわ、人間なんてみんな『怪異』に寄生されて絶滅しちゃえばいいのよ」

「それじゃあ、私、人類を絶滅させるために『組織』と『ブレイズ』の二重スパイをやらされていたようなもんです」

「いいじゃない、別に。結局、そのおかげで明日から本部勤務なんでしょう?」

「どうしてアカリさんが知ってるんですか?」

「でも、私はこれでよかったと思ってるわ、これでもう、断罪刀のせいで嫌な思いをする人間は一人も出なくなるんだから」

「でも、『怪異』を唯一倒せる断罪刀がなくなったせいで、人類は絶滅確定ですよ」

「いいじゃない、別に自然災害に巻き込まれたと思えば」

「自然災害?」

「ええ、人間も所詮は自然の一部だからね。つまり、人の過ちも、殺人も交通事故も、あらゆる犯罪も所詮、自然災害なのよ」

「なるほど、断罪刀をすべて破壊したのも、自然災害だって言いたいわけですね」

「そういうこと」

「あの、悪いんですけど...」

「はいはい、この話はもう終わり、もうあなたの前には二度と姿を現さないわ。わたしはただ、あなたの書いた報告書について色々聞きたかっただけだから」

私は何も言わずに、アカリさんの車から外に出た。

アカリさんの乗った車はそのまま、どこかへと走っていった。

『怪異』から人類を救う、唯一の兵器である『断罪刀』がこの世界から失われた今、私達人類は近い将来『怪異』に寄生された人間達による自殺や殺人などで絶滅する可能性が高い。

それでも、私は室長に提出した報告書の一部を改ざんした。

表向きには12本の断罪刀は第8施設に凍結封印されている。

しかし、実際に第8施設に凍結されている12本の断罪刀はレプリカだ。

本物の断罪刀は全て、アカリさんが回収して破壊した。

それは、人類の滅亡を意味している。

そして、私もそれに手を貸したことになる。

『組織』と『ブレイズ』、敵対する2大勢力で二重スパイをしながら、そこで見た現実を報告書にまとめて本部に送信していた私にはその義務がある。

人が人らしく生きることができる世界を守る為に、人が人でなくなってはいけないのだ。

それが、今回の潜入捜査で感じた私の感想だった。

だから、私は断罪刀の部分だけ、報告書を改ざんしたのだ。

つまり、これで私とアカリさんは人類を滅亡に陥れる恐怖の大魔王になったわけだ。

不思議と罪悪感はなかった。

 

 

 

 




次回もお楽しみに

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