超地球救済戦記!真・ダンザイオーΩ〈オメガ>~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下で無職童貞ニートの俺が全員滅ぼす!~   作:かにグラタン

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第百九十ニ話 柿原ミキエ その2

第百九十ニ話 柿原ミキエ その2 

 

依頼人・柿原ミキエの実家に入った俺たちを待っていたのは薄暗い室内と鼻孔を貫く激臭だった。

そして、一階の天井にできた黒いシミから謎の液体が床に向かって落ちてきた。

「石間さん...これって...」

「ああ、ヤバいなこれは...!」

俺たちは急いで階段を上り、2階に到着する。

2階の部屋からはテレビ番組の音声が聞こえてくる。

「この音って...」

「奈良見、とりあえずそっちより先に、あの黒いシミの確認が最優先だ」

俺は謎の液体を流しているシミがあると思われる部屋のドアを開ける。

ドアには柿原さんの父の名前である、コウジと記されていた。

そしてドアの向こうには、黒い塊があった。

黒い塊の周りを数匹のハエが飛んでいる。

となりにいた警察官が目の前の惨状に顔をしかめる。

「石間さん...これどう見てもアウトですよね」

「うるせぇ!まだコウジさんの死体だと決まったわけじゃねぇ!」

隣にいた警察官がすぐにどこかへ連絡を始める。

俺はその間にテレビの音がする部屋に向かって歩き出す。

そのドアには『ツトム』と記されてあった。

俺はドアを何度かノックする。

「おい、入るぞ!」

「入るな!」

ドアの向こうからツトムらしき人物の声が聞こえてくる。

俺はそれを無視してドアを開ける。 

部屋の中には中肉中背の中年男性が一人いた。

「お前、柿原ツトムだな?」

「だったらなんだ!てめえ、かってに人の部屋入ってきやがって、警察呼ぶぞコラ!」

「警察はもう来てんだよ!こっちは警察の許可もらってここにいるんだよ!」

「あっそォッ!」

「あっそじゃねぇんだよ!お前、あの死体、誰のだ?」

「親父だよ!」

「おまえ、ツトムさんを殺したのか!」

「ちげーよ!親父が俺を殺そうとしてきたんだ!だから返り討ちにしただけだ!正当防衛なんだよ!」

「やっぱおめぇが殺したんじゃねぇか!なんで殺したァ!」

「あのクソ親父はなぁ!働かずに親の税金で生活してる俺に『死ね』って言ったんだ!だから俺があのクソ親父を殺したんだ!」

「そんなことで殺したのか!」

「そんなこと?死ねって言ってきたのは親父のほうだ!俺に殺意を向けてきた人間を、殺意を向けられた側の俺が殺して何が悪い!」

「そりゃあ、お前働かずに一日中自分の好きなことばかりしている奴は『死ね』って言われて当然だろ!」

「うるせぇ!俺はそもそも親に俺を作って産めなんて一言も頼んじゃいねぇんだ!そのくせ、産まれてきたら働かないだけで『死ね』って言うのが親のあるべき姿なのか?それとも俺に『死ね』って言った親父に俺が殺されればお前ら満足なのか?」

「働かねぇやつはいずれ、餓死して死ぬ、だからお前は死んで当然なんだよ!だから『死ね』‼」

「ふざけんな!デエンノヴォーみてぇな国の『シィヨヴォチョー』だって働いてないんだ!それでどうして俺が働かなくちゃいけないんだ!国の『シィヨヴォチョー』と同じことして何が悪い!」

「うるせぇ!死ねぇ!」

「てめぇ‼ぶっ殺してやるゥ‼」

ツトムが工事用ヘルメットをかぶった俺の頭部を、そばにあった空のビール瓶で殴りつけてくる。

俺はその瞬間に自分の右手でフケだらけのツトムの頭部をつかむ。

「狂気には狂気をぶつけるんだよォ!」

『鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤

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脳内に俺の狂撃波動をくらったツトムが正常に戻り、気絶する。

「石間さん、今回はなかなかハードでしたねぇ」

「俺の言った通り、ヘルメットしておいて良かっただろ」

コウジさんの腐乱死体と気絶したツトムを救急隊が担架に乗せて救急車の中に入れる。

俺と助手の奈良見ルナは柿原ミキエの実家を出る。

「あのツトムって人、これからどうするんですか?」

「あいつは断罪者収容所に入れられる」

断罪者収容所とは、犯罪を犯した断罪者を収容する、断罪者専用の刑務所である。

「でも、あの人、父親を殺したんですよ、ふつうに考えて断罪者収容所ではなく、刑務所に収監されるはずでは?」

「断罪王現象で社会不適合者になった人間、つまり断罪者はこの国の法律では心神喪失状態とみなされ死刑判決を下すことはできないんだ」

「そんなことが許されていいんですか?」

「仕方がない、それがこの国のルールだ、そして正常になった柿原ツトムは一定期間の生活訓練を経て断罪者収容所から出所するだろう」

「そんなの無茶苦茶ですよ」

「俺の狂撃波動をくらって気絶したんだ、ツトムは間違いなく断罪者だよ。ミキエさんには悪いが、俺たちの仕事は断罪者を正常にして社会につなげることだ」

「じゃあ、石間さんはまたツトムに会いに行くんですか?」

「ああ。ツトムが出所したら、俺がツトムに職業の紹介や、自立して生活できるようにサポートをする」

「あんなモンスターみたいなやつの世話なんて私、絶対無理です」

「バカ野郎、お前だってリンクマスターなんだぞ、無理とか言ってんじゃねぇ!」

さて、今回の件、ミキエさんにどう説明したらいいものか。

 

次回予告  柿原ミキエ その3




次回もお楽しみに

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