なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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リアルの方でハプニングがありまして、投稿できる状態ありませんでした。遅れて申し訳ございません。


第二十一話 計画と決意なんだが

 

蛍は、ギャラルホルンと共にファデュイの工場に白昼堂々と侵入していた。

 

「くそっ!なんだコイツら…ぐわっ!」

「とにかく足止めしろ、コイツらをここから先に通すな!」

「ダメだ強すぎる!お前ら、退くぐらいなら戦って死ね!」

 

「風と共に去れ────!」

 

「黒蛇闘殺法…流水斬波ァ!」

 

「「「ぎゃあああああーーー!!!」」」

 

蛍が竜巻を起こし、ギャラルホルンが大剣から岩をも砕く水流を飛ばしファデュイ先遣隊の必死の抵抗を一瞬で崩壊させていく。

仮面の男が大剣を振るうと、数多くの戦士達の鎧が砕けて飛び散り、武器の破片が空を幾度も舞った。

 

「退け雑兵ども!命が惜しいのならオレ達の邪魔をするな!」

 

大男が吼え、兵士達を圧倒する。誰もギャラルホルンに近づく勇気は待ち合わせていないかに思われた。

だが、ファデュイの大佐グレードニキはその通りではなかった。

 

「グレードニキ、参る!」

 

大佐はギャラルホルンに対抗して自身も戦士の雄叫びを上げ、己を鼓舞する。

双剣使いのグレードニキは仮面の男へ果敢に飛びかかり、その武を示さんと剣を振るう。しかし大男は人ではなかった。

人でない以上、生物的な格差が双方には存在する。運命は猛きグレードニキには微笑まなかった。

 

「ぶふっ、こ、あぁっ…!」

 

「もうやめろグレードニキ。お前はじき死ぬ」

 

ギャラルホルンの大剣の殴打が大佐を捉え、その肉体は半分が潰れ、かつての好漢の顔は見るも無惨になっていた。

しかしそれでも、大佐であるグレードニキは矜持だけで立っていた。

 

「死ぬのは、怖くない…私の父も、その父もファデュイのために、世界の為に死んでいった!ここが私の死に場所というのなら本望!死ねぇい!!」

 

「愚か者めが!」

 

グレードニキは縦に割られ物言えぬ身体となった。

ギャラルホルンは先に行っていた蛍と合流すると、すでに蛍と工場長が戦闘を始めていた。

 

「ククク…見た事も無かろう?邪眼を三つ、同時に使う者などな!」

 

「確かに厄介だけど…貴方、もう長くないでしょ」

 

「……よく気付いたな。だがそれがどうした?貴様を殺せば!それで終いよォ!」

 

工場長が蛍に飛びかかり、その槍で蛍を射殺さんとするも蛍は悠々と回避し音よりも速い二連の袈裟斬りで戦いに終止符を打った。

実際のところ…純粋な元素力、それも神のものと同列の力を持つ蛍にとって、邪眼程度気にも留めるべきものではなかった。

 

「や、やったか!?」

 

「まだ。あと一人…いるんでしょ?『散兵』」

 

蛍がある方向を睨みつけると、「あらら、バレてたのか」と軽薄な笑みを浮かべながら笠の男が壇上から降りて来た。

ファトゥス第六位、『散兵』スカラマシュ。またの名を国崩。かつて三度裏切られ、その心を闇に染めた神の入れ物。

彼は意外そうにしながら蛍を褒め称えるフリをする。

 

「まさか君たちがここまで辿り着くとはね。やるじゃないか……面白い、久しぶりに再会したというのに今すぐにでも命のやり取りをしたそうじゃないか?」

 

「邪眼なんて粗悪品を抵抗軍に配るなんて…!」

 

「ああ、その事だったのか。一つ君は勘違いしている事がある。確かに僕はここに居るが、計画を実行するにあたりその代理人をしているに過ぎない。首謀者は他にいる」

 

スカラマシュは意地悪い笑顔で「凄腕なんだろ?」と蛍を煽る。普段の蛍ならばこの程度の事で怒ったりはしない。

しかし、蛍の精神は度重なる負荷によって限界が近かった。

 

「あらら、こんな()()()()()で怒っちゃったの?どうやら変わっちゃったみたいだね…情けなくて、小胆で、仲間一人も守れない弱っちいへなちょこに!」

 

「些細な事だって……!?」

 

蛍よりも先に、パイモンの堪忍袋の尾が切れた。

パイモンは心優しい空飛ぶ白いふわふわである。故に、スカラマシュの発言はパイモンの神経全てを逆撫でした。

 

「間違ったことを言ったかな…?浮世では、人の命なんて雑草と同じさ。ふふふ…邪眼が無くても彼らは死んでいただろう。少なくとも、邪眼は彼らの()()とやらを叶えてくれる機会を与えてくれたんだ」

 

「お前…!」

 

パイモンはDISASTERにそうしたように、その怒りで周囲の元素を歪めていこうとするも、大切な相棒()の前である事を思い出し、思いとどまった。

 

「目狩り令がどんな価値を持つか、君たちには分かるかい?これを実現するのは、僕たちにとって有益な事だからさ」

「現状を鑑みるに…その全てが価値のあるものだということがわかるね」

 

続くスカラマシュの言葉は蛍とパイモンの神経を逆撫でするものだった。だが、一人だけその発言を意にも介さない者がいた。

 

「貴様の話は長い。気分が高揚しているのか?それとも、それを遺言にするつもりか?」

 

「なんだお前…無礼者め。そんなアホみたいな仮面つけてる奴に物を言う資格なんて無いよ。それとも、僕に殺されたいのかな?初めからそう言って欲しいな」

 

ギャラルホルンは、ただ目の前で粋がるだけの少年などどうでも良かった。彼の記憶の奥底に眠る圧倒的な力と、全身を蝕む呪いの苦しみに比べればスカラマシュなど大した敵ではなかった。

蛍はスカラマシュから感じる謎の重圧の正体に気付けないでいたが、仮面の男は敏感にそれを察知していた。

 

(奴は何故だか知らないが、あの雷神と似た気配を感じる…クズの末裔としてはお似合いか)

 

「なぜお前がそんな目で僕を見るッ……!生意気だぞ!頭が高いんだ、ひれ伏せよ、僕に!」

 

「まるで子供の癇癪だな。付き合ってられん…が、聞きたいことがある。我が友ディザスターは何処だ。ここにいるはずだ」

 

「……DISASTER?あぁ、あの亜種降臨者かい?ふふふ!アイツは友達なんて作る奴じゃないさ。僕達ファデュイも、奴を危険視してるのさ!そんな奴をここに置くわけないだろう」

 

「そうか。居ないなら良い…旅人、あとは好きにしろ。オレはお前を手伝う」

 

ギャラルホルンはその場に座り込み、事の顛末を見守ることにした。

蛍はスカラマシュに「初めからお前達の計画だったの?」と問う。散兵はそれに応えて真実を述べた。

 

「永遠なんて、意味はないんだ…抵抗軍にいる君の友達のように、どんなに努力しても無駄なのさ。水中の泡のように、一度輝きを放った後はその美しさは破裂し、破滅が待っている」

 

「…………」

 

「失えば失うほど求め、無能であればあるほどそれに抗う!アッハハ!こういう茶番は、見ていて滑稽で、実に楽しいものだね!」

 

「哲平は…彼は無能なんかじゃない!」

 

蛍は剣を抜き放ち、三つの元素を纏い臨戦態勢になる。その顔は義憤に満ち溢れていた。

パイモンは慌てて蛍を宥めて、「オイラがとっちめるぞ!」と勇んで前に進む。だが、突如として蛍が苦しみ始めた。

 

「うふふ…アハハハハ!そうだ、怒れ!憤怒しろ!この工場にある魔神の怨嗟にとって、憤怒は最高のエサ!」

 

「どうしたんだよ、しっかりしろ!わぷっ」

 

「オレに掴まれ!」

 

ギャラルホルンの行動は早かった。蛍が倒れてからすぐに行動を開始し、蛍を抱き抱えパイモンを鷲掴みにし離脱を図る。

しかし、その行動は突如として飛来した雷によって阻害される。

 

「ぐッ…!この雷、このオレをしても強烈か…!」

 

「──────すまんのう。それは予定にないのじゃ」

 

「お前っ…裏切ったな…!?オイラ達を!」

 

「はて?妾は初めからこうする予定じゃった。無論、あの男の予言が無ければ…このような事、考えもしなかったじゃろうが」

 

下手人はクスリと笑い、スカラマシュと交渉する。パイモンは何もできない自分を恥じながら、ギャラルホルンは撃滅すべき敵を見据えながら、その光景を見ていた。

 

「……亜種降臨者の掌の上というのは腹が立つけど、有り難く受け取っておくよ。君、アイツが何を企んでるのか知ってるかい?」

 

「さてな。彼奴の思考など誰にも読めぬじゃろうて」

 

直にパイモンとギャラルホルンもさらなる雷撃を浴びせられたことにより気絶し、後には企む者達のみが立っていた。

 

 

蛍の目が覚めると、八重神子の大きな双丘が目の前に大迫力で置かれてあった。

 

「ようやくお目覚めのようじゃな?お主、魔神の怨嗟にやられて三日三晩寝ておったのじゃぞ?くくく、異邦の旅人といえどもこれにはお手上げか?」

 

「────パイモンは?」

 

パイモンと蛍は固い絆と信頼で結ばれている。であるので、蛍は確信しているのだ。

「自分が大変な時は必ずパイモンが近くにいて支えてくれる」と。そんな蛍からしてみれば、自分の目が覚めた瞬間に抱きついてくる相棒がいないのは不自然な事だった。

 

「パイモン…?あぁ、あの白いのの事か。妾の腹が減っていたのでな、喰うてしもうたわ……そんなに怖い顔をするでない。冗談じゃ」

 

「パイモンはどこ」

 

「彼奴なら…そうじゃなぁ、行方不明じゃ。あの工場からお主を助け出したのは紛れもなく妾じゃが、ちと目を離した隙に大男ごと何者かに連れ去られてしまったんじゃよ」

 

事実として、八重神子が散兵と交渉している間に足の速く、力の強い者がパイモンとギャラルホルンを運んでいってしまっていた。

蛍はその言葉を一旦信じると、八重神子に自分は何のために鳴神大社まで連れて来られたかを問うた。

 

「妾の見立てでは、お主では将軍に勝てぬ…魔神の怨嗟如きに屈するようでは、先が思いやられると言うもの。と、言うわけで特訓じゃ!喜ぶが良い、妾自ら指導してやる事など滅多にないのじゃぞ?」

 

「……お手柔らかに」

 

こうして、蛍と八重神子の特訓は始まったのだった。

 

 ─────────☆─────────

 

「刹那殿!刹那殿は何処に居られるか!」

 

暖かい陽気の降りしきる正午前、九条裟羅が二人の気絶している人たちを担いで連れてきた。

私は自分が重傷者の身である事、それゆえに暫くは表立って動くことができないと言うことを説明した。

 

「なんと言うことだ…!いやしかし、将軍様の無想の一太刀を受けて命があるのだから素晴らしい事だ」

 

「私の話はこれくらいにして、私に用があってきたんだろう?要件を言うと良い。大方、君が担いできた二人のことだろうが」

 

「ええ、話すと長くなるので省略すると、計画通り白い幼子が危害を加えられた為早急に回収、序でにそこに大男も倒れていた為連れてきました」

 

「ご苦労だった。君のお陰でこの2人の命が守られたのだからもっと誉めたいが、私はあまり言葉を持ちあわせていなくてね」

 

しかしそうか…パイモンにまで危害が及んだとなれば、ファデュイも本気だということだ。

これまでは基本、パイモンに攻撃は行かなかった。当然だろう、彼らも態々子供を攻撃したくはないだろうし、そもそもパイモンは緊急時はどこかに消えることが出来るからな。

 

「おそらく不意打ちか…」

 

「ところで、何故刹那殿は将軍様に?」

 

「私の話はもういいと…まぁ良いか、彼らが起きるまで暇だから話そう。端的に言えば八重神子の策略だ」

 

「八重宮司様の?」

 

「どうやら奴は私の事を本物の英雄か何かに仕立て上げたいようでな、全く無茶を言う…」

 

「…………刹那殿なら、成れますよ。本物の英雄に」

 

なぜかほんのり頬を赤らめながら九条裟羅がそう呟く。私は礼を言うと、既に起きているらしい大男に「寝たふりはもう結構だ」と言い立ち上がらせる。

大男はその図体とは裏腹に機敏に動くと私の顔を舐めるように見てきた。

 

「お、おお…!お前は!ディ!ディではないか!」

 

「…?その呼び方、まさかヤルプァか!?何だってそんなに縮んで…!?」

 

どうやら、この大男の正体はヤルプァだったようだ。いやしかしヤルプァはヒルチャール・雷冠の王だったはず。

それが今やどうだ、3m近くあった背丈は2m程に縮み、仮面の奥からはとても理性的な瞳が私を覗かせている。

 

「ディ、お前に伝えなければならない事がある」

 

「そう畏るなよ、水臭いな。なんだ?」

 

ヤルプァが語った内容は三つあり、大雑把に言うと

「ファデュイと八重神子が組んでいること」、「抵抗軍の最終作戦が決行されようとしていること」、最後の一つは「時が来たら言う」と言って聞かなかった。

 

「それと…オレは記憶を取り戻したぞ。オレの本当の名前と、オレの故郷のことだ」

 

ヤルプァは突然正座をして私に向き直った。

互いに気心の知れた仲なのだから、そこまで堅苦しくなる必要もないと思うのだが、ある種のケジメのようなものなのだろう。そう納得することにした。

 

「オレの名はギャラルホルン。かつての故国カーンルイアで黒蛇騎兵隊長をやっていた。ディ、お前もオレに正体を明かしてくれないか?」

 

ヒルチャールは元々人間だった…というのは知っていたから良いとして、何故私の正体など要求してくるのだろうか。

私はヤルプァには特に別に隠すことも無いので、九条裟羅に一次退室してもらい自分がある日突然このテイワットに降り立ったことを説明した。

 

「やはり…記憶喪失か。ディ、お前はカーンルイアについてどれほど知っている?」

 

「どうって…500年前に滅びた、神を持たない国だろう?一般教養とはいかずとも、多少知識のある者なら知っていて当然の話だが」

 

「そうではない。もしやお前、ダインスレイヴ殿と旧知の中なのではないか…?いや、質問を変えよう──────末光の剣についてどれほどで知ってる?」

 

「何も──「惚けなくてよい」…ダインスレイヴとハールヴダンの事についてだけだ。それ以外は知らない」

 

一瞬誤魔化そうとしたが、ギャラルホルンは許してくれないようだ。

こうなれば仕方ない。ギャラルホルンには悪いが嘘をつかせてもらおう。設定としては…

 

「何を隠そう、この私はかつて故国カーンルイアで王族として傷つき、死んで蘇ったのだ。思い出せ、ギャラルホルンよ。お前が守れなかった者達の中に、私はいた筈だ」

 

一から百まで全部嘘だ。きっとギャラルホルンが元カーンルイア人の王族であることをネタに適当でっちあげただけだ。

なぜ嘘をついたか?まさか現代日本からゲームの世界に転生したなんて言えるはずがないだろう。

 

「な………お、おお…!やはり、やはりか!その顔、忘れるはずもない…!『王子様』、良くぞご立派に成長なされて…!」

 

「うむ…」

 

そんなに私と王子が似ていたのだろうか。だとすれば空くんは本当に王子様であった可能性があるな。だって、私と空くんの顔って似てるし。

空くん本人の事を言っている可能性も考えたが、そうならもっと直接的に言うはずだ。

 

「さて、話はそれだけかギャラルホルン。あと私のことはこれまで通りDISASTERと呼ぶこと、私もお前のことはヤルプァと呼ぶ」

 

「……くく、どのような立場であれオレ達は友である事に変わりはない。そう言うことだな?」

 

「当然!私とヤルプァは対等な関係だ。これからもよろしく頼むぞ?」

 

「─────ああ!して、ディはこれからどうするつもりだ?身体が動かないのだろう」

 

「そうだな…その話をさっき九条裟羅としていた所だ。戻ってきてもらうか」

 

私は大声で九条裟羅を呼ぶと、0.1秒で私の背後に立たれた。流石は天狗、速い。私はヤルプァに九条裟羅を簡単に紹介すると、今後のプランについて思案を巡らせる。

実際、この後私が出来ることは余りにも少ない。そもそも私の身体は次に激しい運動をすれば死に至り、九条裟羅やヤルプァに頼んでも良いがそうすると八重神子の『私を英雄に仕立て上げる』計画は台無しだ。

であればどうすれば良いか?それが分かれば苦労しないのだが。

 

「────一先ず、私達のするべき事はこの稲妻からファデュイを撤退させ実権を他の誰かが握ることにある」

 

「八重宮司様の計画では、刹那殿がそれに値する人物である…と。刹那殿は嫌がるかもしれませんが、私もそう思います」

 

「しかしなぁ、私はこの体たらくだ。まともに刀を振えるのは何ヶ月後か…当初のプランが使えなくなった以上、私は誰かにその役目を任せたいと思う」

 

「ディよ、オレなら行けるぞ」

 

ヤルプァがそう申し出てくれる。確かに頼もしいが、ヤルプァには稲妻国民からの信頼が無い。私は紀行から、九条裟羅は立場から。それぞれ厚いものを受け取っている。

しかしヤルプァにはそれがない。

 

「────待て、それでは意味がないのだ。刹那殿が望んでいるのは私が九条家を乗っ取り、抵抗軍を鎮圧しファデュイを追放する事だ。立場のない貴様には無理だろう」

 

「では仕方ないな。いつ決行する?」

 

「刹那殿」

 

そんなものは決まっている。

蛍ちゃんが雷電将軍の元へ行く時だ。そしてそれには、九条裟羅による『淑女』との相対が必須だ。しかしそれでは人が足りない。

ではどうするか?これに関して、私の脳裏に一つ案が浮かんできた。

 

「金色の旅人…そこで寝ているパイモンの仲間が雷電将軍と対決する時だ。そしてそれには、九条裟羅。君の協力が必須だ」

 

「私は何をすれば?」

 

「君の義父を殺害し、ファデュイとの関係を断ち雷電将軍に直訴しに行ってくれ。死にはしないだろうが、怪我は負うかもしれない」

 

「……っ、義父を、ですか。殺さなければいけないのですか!?」

 

「君が殺したくないのなら殺さない方法を考えてくれ。確実に世界から消えてもらわなくては不安要素が残るからな…尤も、君が世界を滅ぼしたいのなら話は別だが?」

 

強い言葉を使って九条裟羅を詰る。いつどんな状況で邪魔をされるかわかったものではないのだ。そもそも、稲妻対しての裏切り者なのだからどの道雷電将軍に消される運命にあるだろう。

早いか遅いかの違いだ。九条裟羅には酷だろうが我慢してもらう他ない。

 

「────ッ、わかり、ました…!」

 

「すまない。これも稲妻の為だ、我慢してくれ」

 

苦虫を噛み潰したような顔で俯く九条裟羅に若干の罪悪感を覚えたが、私が動けない以上しょうがない。

もしどこかに傷を癒すスペシャリストでも居れば話は別なのだろうが…

 

待てよ、傷を癒すスペシャリスト?

いるじゃないか。抵抗軍に!決まりだ、私は珊瑚宮心海に治癒を施してもらう。

 

 

その後、プランを粗方ヤルプァと九条裟羅に説明し終わり、私はパイモンをヤルプァに預け抵抗軍へと向かったのだった。

 

 

 ─────────☆─────────

 

 

刹那殿は、私の恩人だ。

命ばかりか、稲妻や将軍様までも救おうとしている本物の英雄だ。

 

だから、私はきっと無意識のうちに信じていたのだろう。「刹那殿は義父上までも救ってくれるに違いない」と。

あの時…刹那殿が私に義父上を殺せと命じられた時の顔をよく覚えている。

どことなく超然的で、達観というには余りにも無機質な目を私に向けていたあの顔を。

 

「本物の英雄」とはああいうものなのだろうか。あの視線は人がなり得る英雄というより、むしろ上位者。将軍様のような神の視点ではないのか?

 

いや、私の考えすぎだ。そうだ!刹那殿に質問をしてみよう。私の事をどう考えているかを。そうしたらきっと、私の望む答えが返ってくるはずだ。

 

「────君の事かい?大切な仲間だよ」

 

やはりそうだ。私は間違っていなかった。

いや、もしかしたら刹那殿が私に特別な情を抱いている可能性もある。

刹那殿は稲妻の民のことをどう思っているのだろうか?

 

「別に?どうでもいい」

 

ドウデモイイ…()()()()()()、だと?

そんな事を刹那殿が言うはずがない、だっておかしいだろう?どうでもいいなら何故救う?何故手を差し伸べる?

冗談に決まっている。きっとそうだ。

 

「冗談?いや…どちらかと言えばまぁ計画(クエスト)の邪魔だから所定の位置から動かないで欲しいんだが…そうもいかないからな」

 

その時、私の中で何かがガラガラと崩れ去る音がした。

 

ああ、()()()は。英雄(コイツ)は。コイツは!

 

 

絶対に、生かしてはおけない

 

 

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